雪の軌跡   作:玻璃

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いや、まんまですから。

では、どうぞ。


男女逆転劇

「うーん、これが衣装か。」

「ま、鎧はねーですよね。」

当然だ。

アルシェムなら出来ないことはないが、少なくともエステルには無理だ。

「ちょっ…!?ハンス!?」

ヨシュアの焦る声が聞こえたりするが気のせいだ。

「演技に支障を来すからね。王室親衛隊の制服のアレンジよ。」

まあ、青いほうは完全にそれっぽい。

問題はそれじゃなくて…

「まあまあ。」

ハンスがにやにやしているのが目に浮かぶ。

ご愁傷様、ヨシュア。

「ふーん、そうなんだ…あ、ところで、何で色違いなの?」

赤、青、紫。

赤と青は分からなくもないが、紫はやりすぎだろう。

「じ、冗談、だよね…!?」

がんばれヨシュア。

「エステルさんは貴族の紅騎士ユリウス。私は平民の蒼騎士オスカー。それぞれの勢力のイメージカラーなんです。」

「ささ、お召しになって。」

君の明日はどっちだ(笑)

「だからって紫は安直なんじゃ…」

「うう…」

本気でヨシュアを早く見たい。

意識を逸らしていたい…

「アルシェムさんは中立の紫騎士ブラッドですよ。」

「は~、成る程。」

「きーてねーし…」

「それじゃ、ヨシュアは…」

お、来る。

「騎士の身を案ずる白の姫セシリアだ。ささ、姫、どうぞこちらへ。」

「ちょ、まだ、心の準備が…」

出てきたヨシュアを見た一同は、沈黙した。

アルシェムは衝撃を受けていた。

だって…

 

「…カリン、姉…?」

 

あまりにも、そっくりだったから。

「アル、今なんか言った?」

「いや、何にも。」

「いやぁ、何て言うか…ぜんっぜん違和感ないわね♪」

「吃驚しました。はぁ、すっごく綺麗です…」

その容姿を世の中の女子に分けてあげろ…

「うんうん、自信持って良いぞ。事情を知らずにあんたを見たら俺、ナンパしちゃいそうだもん。」

「正直な感想、ありがとう。全然嬉しくないけど…」

「潜入捜査とか、女装でやればいーんじゃねーの?」

いっそその方が違和感がないかも。

「ムフフ…まさに私の狙い通り…この配役なら、各方面からウケること間違いなしね…みんな、一致団結して最高の舞台にするわよ~っ!!」

「しくしく…」

約1名の嘆きを無視して、一致団結した。

ヨシュア、ドンマイ。

4人は女子寮へ行き、ジルとクローディアの部屋へと案内された。

「あ、アルシェムさんのベッドがないわね…」

「床でかまわねーですが。」

むしろ屋根裏で構わないのだが。

「いや、ダメでしょ。」

「じゃあ、一緒に寝る?アル。」

「蹴っ飛ばされるのかくてーなの?」

寝相悪い癖に。

「ちょっ!?」

「クスクス…」

「まあ、取り敢えずエステルさんは手前のベッドを使って下さい。」

「サンキュ♪でも、クローゼさんとジルさんって同室なんだ。道理で仲が良いわけね。」

今更過ぎる。

一発で気づいても良いとは思うのだが。

ここら辺は要修行のようだ。

「ふふ…学園に入って以来の仲です。」

「ルームメイトにして腐れ縁ってところかしらね。ところで、エステルさん、アルシェムさん。提案があるんだけど…」

「何?」

まさか、クローディアの…

「私のことはジルって呼び捨てにしてくれるかな?何だかむず痒いのよね~。代わりに私も呼び捨てにさせて貰うから。」

違った。

知っている可能性は半々といったところか…

「あはは…うん、そうさせて貰うわ。」

「じゃあ、わたしのことはアルって呼んで。まだるっこしーでしょ?」

「でしたら、私のこともどうか呼び捨てにして下さい。」

いや、ダメだろう。

「そう?だったら…ジル、クローゼ、暫くの間、宜しくね♪」

「宜しくー。」

「はい、こちらこそ。」

後で女王陛下にぶっ飛ばされそうだ。

精神的な意味で。

「ま、女所帯だし気軽に過ごしても良いわよ。…まあ、床はダメだけど。」

「じゃー、椅子で。」

「うーん…ギリ許す。」

椅子なら良いのか。

かなり固いとは思うのだが。

「決まりね♪そんなわけで、建物から出なきゃ男子の目には触れな…」

「だからといって、だらしないのは感心しないけど。」

「はあ~、これだから良い子ちゃんは…カマトトぶっちゃって…」

なんで今漫才を始めた、クローディア。

落ち着け。

「あ、酷い。そんなこと言う子にはお菓子焼いてあげないから。」

「あ、うそうそ。クローゼ様、私が悪うございましたです。」

「だーめ、反省しなさい。…あら…?」

エステル、なぜそこで羨ましがる。

まあ、アルシェムはあまり構わないように努力しているので仕方がないのかもしれないが。

「どうしたの、エステル?」

「あはは、いやあ~…何だか羨ましいなって。」

「羨ましい?」

「ヨシュア、ごしゅーしょー様…」

気心が知れていないとエステルが思っているのかもしれない。

まあ、本人いわくヨシュア観察の第一人者だそうなので無意識のうちの反応なのだろうが。

「…クローゼ、どう思う?」

「どうって…ちょっと納得いかないような…」

「へ?」

うわあ、まさかの。

クローディアは、ヨシュアに気があるようだ。

まあ、無理だろうが。

色々と。

「あ、やっぱり?何言ってやがんだこのアマは、って感じよね。」

「な、何で!?」

「あんたねぇ…自分が、誰と一緒に旅してるのか分かってる?自宅では一つ屋根の下で暮らしてたんでしょうが。」

「本当にヨシュア、ごしゅーしょー様。」

異性として意識されていない…

ご愁傷様。

「あんな上玉と一緒にいるくせに女所帯を羨ましがるとは…勿体無いオバケが出るわよ?」

「因みにヨシュアはエステルにゾッコンだよ。」

「ほほう…」

獲物を見つけた肉食獣のようだ。

生贄を捧げて(エステルを差し出して)良かった(笑)

「アル?ヨシュアは家族だって。そんな、まさかねぇ。ヨシュアが…だなんて。」

「意識してる、意識してる。」

「ジル!」

「おっと、日報を提出しなきゃ。それじゃ、お休み。」

逃げたな…

「まったくもう…そうだ、エステルさん、私ので良ければパジャマを…エステルさん?」

「ふえっ!?あ、ああ、パジャマね。うん、何でも良いから貸して。」

そして、エステル達は学園生活を満喫した。

学力的に高いという噂は本当だったようで、アルシェムはまあ…問題なかったのだが、ついていくのに苦労した。

主にエステルが。




いやあ、テストって怖い。

では、また。

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