雪の軌跡   作:玻璃

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はい、いつの間にか五十話超えてました。
びっくりだぜ。

では、どうぞ。


ジェニス王立学園

「おや?迷子かい?」

ジェニス王立学園に足を踏み入れると、用務員と思しき人物に呼び止められた。

「準遊撃士のアルシェムです。クローゼ・リンツという女生徒をご存知ですか?2名の遊撃士を連れていたはずなんですが。」

「ああ、彼女達なら学園長室にいるよ。」

あまりにもあっさりと答えてくれたので拍子抜けした。

ここの警備は大丈夫なのか。

「ありがとーございます。」

校舎に入り、学園長室と書かれた部屋に入る。

「失礼します。」

そこには、案の定エステルたちがいた。

「あ、アル!早かったわね?」

「…こんなもんだよ?」

「そ、そう?何か疲れてない?」

あ、バレた。

そこまで気を抜いてはいなかったはずなのだが、どうもエステルには分かってしまったらしい。

「ん、ちょっとね。済みません、学園長。話の腰を折ってしまったようで…初めまして、準遊撃士のアルシェムです。」

「学園長のコリンズだ。」

「それで、アルシェムさんにも手伝って貰おうかと思いまして。」

話が読めないのだが、まあ気にしないでおく。

どうせ、手伝いの話だ。

「良い考えだと思うよ。…どうか、宜しくお願いする。」

「あ、はい!」

「微力を尽くさせて頂きます。」

「…右に同じです。」

若干不安なのだが。

アルシェムは決して潜入とかには向いてはいない。

演技など…

まあ、ずっとだましてはいるのだから演技ができているともいえるのかもしれないが。

「劇に関しては、ジル君に全て任せている。クローゼ君、案内しておいて欲しい。わしの方からは…寮の手配をしておこうか。」

「え…」

「…長期戦になるかのーせーがたけーんですね。みっちりねっとりやるんでしょー?」

掲示板の仕事を終わらせておいて良かった。

メルツ準遊撃士だったか…が、かなり大変にならなくて良かった。

「その通りだ。」

「あ、なーるほど…」

「それは助かります。」

そこで、チャイムが鳴った。

「丁度授業も終わりだな。早速、ジル君に紹介してあげると良いだろう。」

「はい。…エステルさん、ヨシュアさん、アルシェムさん。次は生徒会室に案内しますね。」

「宜しく~。」

学園長室を辞し、生徒会室へと向かう。

中から声が漏れ聞こえる限りでは、なかなか大変そうだ。

「は~、忙しい、忙しい。各出店のチェックと…招待状も良し。」

「残る問題は芝居だけか…」

溜息の間を縫うように、アルシェム達は生徒会室へ足を踏み入れた。

「只今、ジル、ハンス君。」

「あ、クローゼ!?火事の話、聞いたわよ。大変だったそうじゃない。」

「院長先生とチビ達は大丈夫だったのか?」

顔に心配そうな色を浮かべて、クローディアに話しかける。

実際には心配はしているのだろうが、自分のことではない。

多少なりとも感情は混ざり合ってはいるが、それは偽善だ。

「うん、一応、皆無事だったわ。ただ…孤児院が完全に焼け落ちてしまって…」

「そうか…」

「元気だしなさい、悩んでたって仕方ないわ。チビちゃん達が楽しめるように成功させないとねっ。」

わざと明るくいうが、アルシェムには響かない。

上辺だけを取り繕った言葉なんて…

「うん。全力で頑張るつもりよ。」

「あんたが本気を出しゃあ百人力なんだから、期待してるわよ。ところで、その人達は…?」

先にそれだろう。

不審者だったらどうするつもりだ。

…ああ、クローディアがたたき出すのか。

「初めまして、あたし、エステルっていうの。」

「ヨシュアです、宜しく。」

「アルシェムです。」

とりあえず名前だけは伝えておく。

「それじゃ、あんた達が…!」

「ふふ、約束通り連れてきたわ。3人共協力して下さるって。」

「いや~、助かったわ!…初めまして、エステルさん、ヨシュアさん、アルシェムさん。私、生徒会長のジル・リードナーといいます。今回の劇の監督を担当してるわ。」

「副会長のハンスだ。脚本と演出を担当してる。宜しくな。」

演出は1人でできるわけがない。

音楽を鳴らしながら照明を照らす?

無謀でしかない。

だから、きっと演出を考えたのであって実行するわけではないのだろう。

そんな、トンデモ構造しているわけでもあるまいし。

「うん、こちらこそ。」

「宜しくお願いします。」

「宜しくです。」

「う~ん、それにしても…」

ニヤリ、と笑いながら見てくるジル。

若干怖い。

「な、何?」

「流石、スポーツも得意そうね。エステルさん、アルシェムさん、剣は使える?」

「まあ、それなりには…棒術がメインだけど、父さんに習ったこともあるし。」

「わたしは…まあ、出来ねーことはねーですよ。」

まあ、嘘ではない。

その気になれば軍人と一騎打ちでも勝てるかもしれない…くらいか。

流石にチート親父には勝てないが。

「うーん…そうだ!エステルさん、あなたにはクローゼと決闘して貰うわ!」

「け、決闘!?」

「そしてアルシェムさん!あなたには、そんな2人を鍛える役をやって貰うわよ!」

「え…」

何で鍛える役。

最早いらないだろう。

「クライマックスに2人の騎士が決闘するのよ。」

「へ~、そういうことなら!クローゼさん、頑張ろうね♪」

「はい、宜しくお願いします。」

え、無茶。

クローディアに剣なんかむけられない。

後でザックリ殺られる…

「はは、それにしても…女騎士達の決闘なんて、なかなか…」

「女騎士?れっきとした男の騎士役だぜ?」

「…成る程…ヨシュア、ドンマイ。ヨシュアなら可愛くなれる。ほしょーしてあげるよ。」

女装だ。

絶対に女装だ。

女顔してるし、カリン姉に似てるし、似合うに違いない。

「…えっと、その劇…どういう筋書きなのかな?」

「題名は『白き花のマドリガル』。貴族体制を廃止した頃の有名な物語なの。平民出身の騎士と貴族出身の騎士による幼なじみ同士の王家の姫君を巡る恋の鞘当て。それぞれの思惑と陰謀がからんで来るの。ま、最後は大団円だけどね。」

「へ~、面白そうじゃない♪」

主にヨシュアが。

「…ジルさん、その後は衣装合わせまで内緒にしません?おもしれーから。」

「そうね♪」

「ちょっ…」

ヨシュアの気づいたようだ。

これは、死亡フラグだと。

「ジル、本気で追加役やるのか?」

「あったり前でしょ!アルシェムさんならやれるわよ!」

「はあ…分かった。」

「さ、衣装合わせに行くわよ!」

意気揚々と進むジルを先頭に、講堂へと向かった。




はい、というわけで配役追加です。
様々なSSで見られるある意味お約束な展開が待っています。
だがしかしBUT。
ネタを忘れてはいけない。

では、また来週。

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