雪の軌跡 作:玻璃
これって本当に一日で終わるの?
複数日かけてることにしといてください…
ご都合主義満載です。
では、どうぞ。
ダルモア邸から出て、一言。
「…胡散臭い…次はっと。」
礼拝堂に向かうと、そこには見覚えのある男がいた。
「…済みません、貴男がジミーさんですか?」
「…あれれ?君はこないだの…」
やはり、思い違いではない。
「お久しぶりです。本日は依頼の件で伺いました。」
「そうかい!…こほん。実はね、最近とんでもない古地図を手に入れたんだ。何とその地図は…大海賊シルマーの残した宝の地図だったんだ!」
ダレ、シルマーって。
本音はそれだが、まあ、誤魔化す。
「その地図が示すところを探せばいーんですね?」
「そうだよ。この前僕がいた場所から南東の方角に…」
…待てよ?
その位置って…
確か、何があるか確かめた場所じゃないか…?
鞄から拾ったものを取り出す。
「…まさか…この海図の切れ端とダガー…」
「な、何だって?」
「ちょうどその辺りで見つけたんですよ。これです。」
そう言って差し出すと、じっくり見たジミーが叫んだ。
「…うわあ~、な、何だこれは~!す、凄いよ!こいつぁ、凄すぎる!これこそ大海賊シルマーの宝の地図に違いない!」
「…まあ、ロマンはありますけどね…そのダガーはどうしますか?」
「ああ、それは君に進呈するよ。」
「あ、ありがとーございます。」
別にいらない。
趣味が悪すぎる。
このダガーは後でヨシュアにあげることにして、笑顔を張り付ける。
「いやあ、本当に素晴らしい。この海図はきっと凄い発見だ。ふふふ、これからまた忙しくなりそうだよ。じゃあな!助かったぜ!」
「くれぐれもお気を付けて。」
ジミーが去ったところで、メルに任務を追加しに行くことにした。
「…さて。済みません、シスター・メルはいらっしゃいますか?」
「あっちにいるよ。何か用かい?」
「はい。私用で。」
実際には仕事なのだが、それは言わないでおく。
「あの奥にいるから自由に行きな。」
「ありがとーございます。」
言われた通り奥に行くと、聖書を読みながら転寝しているメルを見つけた。
「…メルせんせ?」
「アルシェム?どうしたんですか?」
「…モーリス・ダルモアの経歴を洗って欲しーんだ。背後にいるかも知れねー奴についても頼む。」
それを言われたことに驚いた顔をしたが、すぐに情報をくれる。
「…借金はあります。十億ミラの。」
「調べてくれてたの?」
「気になりましたので。」
気になった程度で調べてくれるあたり、案外メルは遊撃士に向いているのかもしれない。
「ありがとー。お偉方が最近出入りしてるらしー。それについても頼むね?」
「任せて下さい。」
「…で、ちょっと成り行きで…学園祭に出るかも…」
「…何というか…巻き込まれ体質ですね…」
こめかみを押さえながら言われる。
まあ、正直に言って仕組まれている気がしないでもないのだが。
「ひてーは出来ねーな…その学園祭を見に来る建前で伝えて。」
「承知しました。…頑張って下さいね?」
うわあ。
楽しむ気満々のようだった。
「…ハイ…じゃー、そろそろ。依頼が立て込んでるし、行くね?」
「気をつけて下さいね?」
「りょーかい。」
そのままアイナ街道に出る。
暫く行くと、何だか硬そうな魔獣がいた。
「あれがヘルムキャンサー…」
背後から近づき、一閃。
「いった!?」
だが、攻撃が通らない。
これは…
「まさか…ソウルブラー!」
まさかの、アーツしか効かない魔獣だ。
珍しい…
「っ!やっぱり…ヘル・ゲート!」
自分で開封したスロットのおかげでかなりの威力の出るアーツは、魔獣を全滅させた。
すると、そこに導力銃が残された。
「あれ、これって…導力銃!?」
アイナ街道あたりで動力銃を無くしたという依頼があったはずだ。
何だか知り合いの気がしなくもないが…
まあ、先にエア=レッテンまで行って依頼を済ませてしまおう。
エア=レッテンへ入ると、そこには追い出された民間人がいた。
「…何でこーなった。」
「君、遊撃士じゃないか?」
「ええ…めーわくな旅行者というのは、まさか公爵閣下ですか?」
というか、それ以外に考えられない。
大穴でエレボニア貴族というのがあったが…
この微妙な時期にはしないだろう。
「…ああ…何で分かったんだね?」
「やりそうなのが閣下だけだったからですよ…何とかしてみます。中に入れて下さい。」
休憩所の中に入ると、やはりあのキノコだった。
「…だからさあ。貸切にしちまったら他の客に迷惑が掛かるだろ?どうして分かんねえのかなぁ。」
「閣下、こちらの方もこう申しておりますことですし…」
「黙れ、フィリップ!私はここが気に入ったのだ。何しろエア=レッテンの滝を間近に臨むことが出来るからな。」
「だからさあ…」
その堂々巡りに首を突っ込む。
「失礼します。」
「…ん?遊撃士じゃないか。待ってたぜ。」
「やれるだけやってみますよ。せめてルーアンには帰します。」
「頼むぜ…」
ああ、疲れ切っている。
流石にこの非常識キノコには辟易しているようだった。
「…おや?あなたは…」
「大変ご無沙汰しております、フィリップさん。…その節は、大変ご迷惑をおかけしました。」
…うわ。
覚えている…
これは、後で謝らなければならない。
「うん?フィリップ、誰と喋っておる。」
このキノコは別にして。
さあ、説得の時間だ。
「閣下、お迎えに参りました。」
「迎えだと?そんなものを命じた覚えはないぞ。大体何処から迎えに来たのだ?」
「ホテル・ブランシェから、お迎えにあがるように依頼されました。」
大ウソだ。
依頼だから、迎えなどではない。
「ほう、そうか。それは殊勝な心掛けだな。だが、今夜はルーアンには戻らぬぞ。ここに泊まると決めたのだ。」
「私めも一度泊まりましたが…公爵閣下におかれましては、お休みになりがたいかと存じます。」
「うん?何故だ?」
恵まれている王族。
静かな空間の中でしか、育っていない純粋培養。
そんな人間が、騒がしい中で寝られるか?
…答えは、否である。
「公爵閣下の仰るとおり滝は壮麗ですが…夜、騒がしい中でお休みになられたことはございませんよね?」
「…まあ、そうだが。」
「滝の音というのは存外響くものでして…閣下のご健康を害される可能性がありますし…」
いっそ、単調な音だけで気が狂ってくれても一向に構わないのだが。
「し…何だ?」
「いえ、何でもありませんわ。」
「ええい、気になるではないか!」
これは、依頼だから。
「では申し上げます。閣下の足元に、つやつやてかてかしたゴキブリが。」
「ひっ、ひいいい!ふ、フィリ~ップ!」
「は、はい!」
ようやく光明が見えたというような顔で、フィリップがこちらを見る。
「む、虫けらはどこじゃ!」
「あら、百足と蚯蚓も。」
「は、早く殺してたもれ~!」
「あら、オケラ。珍しいこともあるものですねぇ。やはり、閣下がお泊まりになるには相応しくないのでは?」
慇懃無礼に、言葉を連ねる。
陛下ならばともかく、このキノコに対する敬意などない。
「き、きいいい!だ、ダメだ、フィリップ、かかか帰るぞ!!」
「は、はい!それが宜しいかと…」
公爵が逃げるように走り去っていく。
「…ありがとうございました。」
「お気になさらず。」
フィリップもそれを追いかけて消えた。
その後、守備隊長に事情を説明する。
「…というわけです。」
「ふむ…それを聞いて安心したよ。」
「流石に手荒にするわけにもいきませんでしたし…その、済みません…ここの環境を悪く言ったりして。泊まったこともないのに…」
それだけは悪いと思っている。
「いやいや、追い出してくれて良かったよ。」
「うむ、今日は世話になったな。これからも任務に励んでくれたまえ。」
「ありがとーございます。失礼します。」
むしろ許してくれたことにホッとしながら、ルーアンのジョアン武器商会へと向かった。
「済みません、あなたがカルノーさんです、か…!?」
「うん…?あっ、アルシェム君!?」
やはり、カルノーだ。
ツァイスで会ったことがある。
「やっぱり…はい、試作品の導力銃。」
「おお!…どこで見つかったんだい!?」
「手配まじゅーが呑んでたんですよ…拭きましたからね!?」
拭いたからその汚いものを見る目で見ないで下さい。
「ありがとう!見付かって良かったぁ…良かったら、受け取ってくれよ。」
「クオーツ?ありがとーございます!わたし、行きますね。お気を付けて!」
「うん、君も頑張ってな!」
カルノーが去っていった。
これで…
終わりだ。
「…終わった…まー、本調子にはちょっと遠いけど、だいじょーぶかな。」
そう独り言を呟き、アルシェムは
あと一か月でバレンタインですよ皆さん。
あげるやつももらうやつもありませんが。
では、また。