雪の軌跡   作:玻璃

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あけましたおめでとうございました。
今年も(見放さないで頂けるのなら)よろしくお願いします。

朝早いと辛いし眠いですね。
では、どうぞ。


ルーアンのギルドにて

何故か教会の前でエステル達が待っていた。

聞かれてはいない。

そんな気配があれば察する。

だから、とても不思議そうな顔でエステルに話しかける。

「あれ、待ってたの?エステル達。」

「うん。手続きは一緒の方が手間がかからないかなと。」

「…それもそーだね。ごめんね、お待たせ。」

そして、エステル達と共に遊撃士協会(ギルド)へと向かった。

「いらっしゃい、遊撃士協会へようこそ!っておや、クローゼ君じゃないか。」

「こんにちは、ジャンさん。」

どうやら、持ち上げまくってくれた受付はこの男のようだ。

「また学園長の頼みで魔獣退治の依頼に来たのかい?ああ、分かった!学園祭の警備の依頼かな?」

「いえ、それはいずれ伺わせて頂くと思うんですけど。今日は、エステルさん達に付き合わせて貰っている最中なんです。」

「あれ、そういえば…学園の生徒じゃなさそうだけど…待てよ、その紋章は…」

こいつもか。

注意が足りない。

「初めまして、準遊撃士のエステルです。」

「同じく準遊撃士のヨシュアです。」

「同じくアルシェムです。」

取り敢えず自己紹介を済ませておく。

「ああ、君達が!いや~、ホント良く来てくれた!ボース支部から連絡があって今か今かと待ちかねていたんだ。」

「そっか、ルグラン爺さん、ちゃんと連絡してくれたんだ。」

「感謝しなくちゃね。」

「改めまして。僕はジャン。ルーアン支部の受付だ。君達の監督も含めこれから色々とサポートさせて貰うよ。宜しくな。」

ああ、こっちの方が幾分爽やかかも。

例えるならば、ギルバートは山芋でジャンはオクラだ。

どっちも質が悪いことに変わりないが。

「うん、宜しくね、ジャンさん!」

「宜しくお願いします。」

「宜しくです。」

「はは、君達には色々と期待しているよ。何てったって、あの空賊事件解決の立役者だからな。」

ほら、また期待を上乗せする。

潰れたらどうするつもりなのだろうか。

まあ、エステルは兎も角アルシェムは潰れないが。

「空賊事件って…あの?私、《リベール通信》の最新号で読んだばかりです。あれ、エステルさん達が解決なさったんですか?」

「あはは…まさか。手伝っただけだってば。」

「実際に空賊を逮捕したのは勿論王国軍だしね。」

「謙遜することはないよ。ルグラン爺さんも誉めてたぞ。特にアルシェム。」

嘘だ!と叫びたいのを我慢してゆっくり言う。

「…うっそだー。わたし、かなり無茶したからちゅーいしろって言われてるんじゃねーかと思ってたんだけど。」

「いやいや、人質の安全を完全に確保してくれたからね。そうじゃなきゃ、怪我人が出ててもおかしくなかったっていうじゃないか。」

「まあ、怪我人は出さなかったけど…それだってぐーぜんの産物だし。しょーじき、わたしはまだまだだと思うよ。…ほんとーに、ぐーぜんに助けられるだけじゃダメだって思う。」

あ、しまった。

何故か語ってしまった。

「アル…」

「さ、悟ってるというか何というか…そうそう、早速、転属手続きをしてくれるかい?さあさあ、今すぐにでも。」

「う、うん…?」

「それでは早速…」

ぐいぐいと押し付けてくるのを受け取ってからサインする。

「うんうん、これで君達もルーアン支部所属というわけだ。いやぁ、この忙しい時期に良く来てくれたよ。ふふ…もう逃がさないからね。」

「な、何かイヤ~な予感。」

グラッツとアガットが来てるはずじゃなかったのか…?

「先程から聞いてるとかなり人手不足みたいですね。何か事件でもあったんですか?」

「事件というほどじゃないけどね。実は今、王家の偉い人が来ているのさ。」

うわあ。

それか。

「ってことは…クローディア姫かキノ…いや、デュナン公爵?流石に女王様はねーだろうし。」

「はは、王家の一員であることには間違いないんだけどね。何でも、ルーアンの視察にいらっしゃったんだとさ。」

「へー…」

ということは、キノコ頭か。

今ここにいるクローディアではないだろうし。

「じゃー、ごえーがいるわけか。それにけーびも。それなりの人間がいりそーだし。」

「その通りだよ。万が一のことがあるといけないとダルモア市長がえらく心配してね。ルーアン市街の警備を強化して欲しいと依頼に来たんだ。」

「なる程。それにしても、市街の警備ですか。」

どれだけ治安が悪いのかと言っているようなものである。

まあ、実際はルーアンの治安なんて安全そのものなのだが。

あの不良連中さえ押さえれば済む話だし。

「まあ、確かに港の方には跳ねっ返りがいるからね。」

「アレはそんなどきょーねーんじゃねーですかね。何かしでかしはしねーとは思いますよ。あくまで何かりゆーがなければ、ですが。」

理由があってもしないだろう。

あの根性なしは、ビビッているだけだ。

「何だ、知っているのかい?」

「実は、さっきちょっと絡まれまして。」

「ああ…倉庫区画の奥に行ったのか。あそこは《レイヴン》という不良グループのたまり場なんだ。君達に絡んだのはリーダー格の青年達だろう。」

「《渡り鴉(レイヴン)》ねえ…なーにカッコつけてんだか。」

鴉というよりは、兎の方が合っている。

「少し前までは大人しかったんだが、最近はタガが緩んでるみたいでね。市長の心配も尤もなんだが、こちとら地方全体をカバーしなくちゃならないんだ。とまあ、そんなわけで本当に人手不足で困っていてね。君達が来てくれて感謝感激雨霰なんだよ。」

「あはは…期待に沿えると良いけど。それじゃあ、明日から早速手伝わせて貰うわ。」

もう時間が遅いから今日は働かないという意思表示をさらっとしているエステルが恐ろしい…

「何かあれば僕達に遠慮なく言いつけて下さい。」

「ああ、宜しく頼むよ!」

「そーだジャンさん。多分、手配まじゅーだと思うんだけど…ジャバって奴かな?倒しましたよ。」

「…あー、出てたね。ありがとう。」

「いえいえ。通行の邪魔だったんで。」

話もそこそこに、遊撃士協会(ギルド)から出ることにした。

何故かクローディアがそわそわしていたから。




新年早々進まない(笑)
明日はきっともうちょっと進むはず。

では、また。

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