雪の軌跡   作:玻璃

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はい、爆弾投下。

では、どうぞ。


胡散臭い男達とメルの報告

不良達を見送った後、思わず言葉が漏れた。

「何て言うか…」

「陳腐ですね。」

「まー、お約束なんじゃねーですか?メルせんせ。」

そこでクローディアが反応した。

「あら?エステルさん達はメルさんを御存知なんですか?」

「日曜学校の先生だったの。」

「そうなんですか…」

ということは、メルは早目に来たらしい。

かなりこの街に溶け込んでいた。

「済まなかったね。街の者が迷惑を掛けてしまった。シスター・メルは知っていると思うが、私はルーアン市の市長を務めているダルモアという。こちらは秘書のギルバート君だ。」

「宜しく。君達は遊撃士なんだね?」

紋章をつけているのに何故か確認されたので、取り敢えず自己紹介する。

「あ、ロレントから来た遊撃士のエステルです。」

「同じくヨシュアといいます。」

「アルシェムです。」

「そういえば、ジャン君が有望な新人達が来るようなことを言っていたが…」

…こら受付の人。

期待させるな。

面倒だから。

「えへへ…有望かどうかは分からないけど。」

「暫く、ルーアンで働かせて貰おうと思っています。」

「おお、それは助かるよ。今、色々と大変な時期でね。君達の力を借りることがあるかも知れないからその時は宜しく頼むよ。」

「大変な時期…ですか?」

ヨシュアが真剣な顔で聞いている。

まあ、聞いておいて損なことは…

「まあ、詳しい話はジャン君から聞いてくれたまえ。ところで、そちらのお嬢さんは王立学園の生徒のようだが…」

損だった!

「はい、王立学園2年のクローゼ・リンツと申します。お初にお目にかかります。」

クローディアは、今はクローゼ・リンツと名乗っているようだ。

それに何の意味がある。

アルシェムも似たところがあるが、クローディアもどっこいどっこいだった。

「そうか、コリンズ学園長とは懇意にさせて貰っているよ。そういえばギルバート君も王立学園の卒業生だったね?」

「ええ、そうです。クローゼ君と言ったかい?君の噂は色々と聞いているよ。リードナー生徒会長と一緒に主席の座を争っているそうだね。優秀な後輩がいて僕も鼻が高いよ。」

爽やかマスクでギルバートが言っているが、気持ち悪いことこの上ない。

正直に言って、黙って欲しい。

「そんな…恐縮です。」

だが、クローディアはそれには気付かないようだった。

「ははは、今度の学園祭は私も非常に楽しみにしている。どうか頑張ってくれたまえ。」

「はい、精一杯頑張ります。」

「うむ、それじゃあ私達はこれで失礼するよ。先程の連中が迷惑を掛けたら私の所まで連絡してくれたまえ。ルーアン市長として然るべき対応をさせて頂こう。」

そういって、市長達は離れて行ってくれた。

「うーん、何て言うかやたらと威厳のある人よね。」

「確かに、立ち振る舞いといい市長としての貫禄は充分だね。」

あんな胡散臭いのが市長…

ルーアンの人が、気の毒だ…

「ダルモア家といえばかつての大貴族の家柄ですから。」

「…胡散くせー。」

「…えっ?」

思わず言葉が漏れてしまったので兎に角誤魔化す。

「何でもねー。」

「貴族制が廃止されたとはいえ未だに上流階級の代表者ともいわれている方ですから。」

「ほえ~…何だか住む世界が違うわね。…けど、それにしてもガラの悪い連中だったわね~。」

「そうですね。ちょっと驚いちゃいました。ごめんなさい、不用意な場所に案内してしまったみたいです。」

知らなかったのか。

ルーアンの王立学園に来ているのに、ルーアンのことを知らないのか。

それは、王族としてどうなのか…

「君が謝ることはないよ。ただ、わざわざ彼らを挑発しに行かない方が良いみたいだね。倉庫区画の奥にはなるべく近付かないようにしようか。」

「う~ん、…納得いかないけど仕方ないか。…にしても、何でメル先生がここにいるわけ?」

「…転属になったんですよ。暫くはルーアンにいることになるはずですから、何かあれば頼むかも知れませんよ?準遊撃士さん達。頑張って下さいね?」

上手く誤魔化した。

本当は、転属して貰ったの方が正しいのだ。

ルーアンなら、最悪何があってもエア=レッテンからローツェ水道を伝い、泳いでグランセルへ侵入できる。

そのためにここに赴任して貰った。

「ありがとうございます。」

「転属の手続きは終わりましたか?」

「あ、まだです。受付の人が話し中だったみたいで…」

あ、ギルドに入るの忘れてた。

忘れたふりをしてエステル達と手続きをすることにする。

「そうですか。あたしはそろそろ戻らないといけないので、行きますね。」

「はい。またね、メル先生!」

メルが教会に向かう。

見えなくなったところで、エステルが大きく溜息を吐いた。

「まさかメル先生がいるなんて思わなかったわ…」

「はは、エステルはメル先生が苦手だもんね。」

「相変わらずよねー。エステルも。…そろそろ遊撃士協会(ギルド)に行かねー?」

「あ、そうね。」

ところが、そう上手くは行かなかった。

「あ、アルシェム。そういえば、前に出しておいた課題は出来ていますか?」

「ひえっ!?め、メル先生!?」

「いつの間に…」

そういえば、調査を頼んでいたっけ。

「はい。…ごめん、エステル、ヨシュア。クローゼも。先にギルドに行っててよ。ちゃんと追いつくからさ。」

「あ、はい…」

メルに連れられて教会内の人気のない場所に移動する。

時間がないことをわかっているのか、かなり早口で報告してくれる。

「では、報告を。まずは主な遊撃士ですが…ロレントには《銀閃》のシェラザード・ハーヴェイ(中途半端なオールラウンダー)。ボースにはユン・カーファイの孫アネラス・エルフィード(可愛いもの大好きの変人)グラッツ(ほぼ空気)。ここルーアンにはカルナ(姐さん)と《重剣》のアガット・クロスナー(ロリコン)。ツァイスにはグンドルフ(実はやり手)と、そろそろカシウス・ブライト(《剣聖)》の要望で《不動》のジン・ヴァセック(文字通り空気)が来ます。グランセルには《方術使い》のクルツ・ナルダン(凄腕のヘタレ)と…遊撃士ではありませんが、《演奏家(オリヴァルト)》がいるそうです。」

「…グランセルのメンツが何でそんなカオスなの…ま、いーけど。武術大会に向けて恐らく移動がある。動くとすればグンドルフ以外かな。」

何故《演奏家》がまだいるかはなはだ疑問ではあるが、考えても仕方がない。

「次に、分かっている執行者の経歴です。まず、No.Ⅱ《剣帝》レオンハルト。この方は説明不要ですね?」

「勿論。補足として、今恐らくじょーほーぶにいるってことだけ頭に入れといて。…名前さえわかれば何とかなる気がするし。」

「はい。今のところ分かっているのはNo.0《道化師》カンパネルラ(UMA)。No.Ⅵ《幻惑の鈴》ルシオラ・ハーヴェイ(ガムテープの露出狂)。No.Ⅷ《痩せ狼》ヴァルター(筋肉達磨)。No.Ⅸ《死線》シャロン・クルーガー。No.Ⅹ《怪盗(変態)紳士》ブルブラン。No.ⅩⅢ《漆黒の牙》ヨシュア・アストレイ。No.ⅩⅤ《殲滅天使》レン・ヘイワーズ。No.ⅩⅥ《銀の吹雪》シエルです。」

…たまに今どうなってるか分からない人がいる…

「質問。ルシオラの『ハーヴェイ』ってハーヴェイ一座?も1つ。クルーガーって今何してるの?おまけ、レンの姓ってヘイワーズなの?」

「《幻惑の鈴》の件についてはそうです。《死線》は今一線を引いてラインフォルト家に仕えています。《殲滅天使》の姓は教団の被害者から該当者を探しました。」

「…ん、分かった。使徒も同じ感じで。」

素早く頷き、メルは更に早口で言った。

「第二柱《蒼の深淵》ヴィータ・クロチルダ。第三柱《白面》ゲオルグ・ワイスマン。第六柱F.ノバルティス。第七柱《鋼の聖女》アリアンロード。」

「…ありがと。」

「《ハーメル》ですが…今のところ、ほぼ調べがついていません。」

申し訳なさそうな顔をしているが、どのみちそろそろ時間だ。

「りょーかい。暫くはリベール国内のじょーほーに目を光らせてて。わたしがルーアンから去ったら以後はヒーナと連絡を取り合うこと。以上。」

「承知いたしました。」

教会を後にし、アルシェムは遊撃士協会(ギルド)へと向かった。




やりきった感満載。
後悔はしていない。
だって、ちゃんとアンチ・ヘイトタグ付けたもの。

年内最後の投稿がこんなのでごめんなさい。
七草粥を食べる前くらいには、お目にかけられますよう頑張ります。
え、何を頑張るのかって?
…ネット環境の整ってる場所に行けないから投稿できないのです。
つまりは、引きこもり解消?

では、また来年。

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