雪の軌跡   作:玻璃

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まだまだルーアンには着きません。

では、どうぞ。


マノリア村と悪ガキ

「は~っ、やっと人里に着いたわね。なんだか、白い花があちこち咲いてるけど…ここって何て村だっけ?」

エステル達は、漸くマノリアに辿り着いた。

「マノリアだよ。あの白い花は木蓮の一種だね。」

因みに、マノリアの語源はmagnolia(木蓮)だと推測されている。

「ふーん、綺麗よね~。それに潮の香りに混じって微かに甘い匂いがするような。うーん…何だかお腹空いてきちゃった。」

「まさに花より団子だよねー…」

「だって育ち盛りなんだもん。ちょうどお昼だし休憩がてらランチにしない?」

その割には一部育っていないというのは愛嬌である。

「良いけど…何か手持ちの食料はあったかな?」

「あ、ちょっと待って。どうせだったら落ち着ける場所で出来立ての料理を頼まない?折角ルーアンに来たんだし。」

「いーね。探してみよっか。」

近くにあった《白の木蓮亭》に入る。

まあ、そこにしか食べ物屋がなさそうだったのだが。

「ようこそ、白の木蓮亭へ。見かけない顔だけど観光かい?」

「ううん、ルーアン市に向かう途中なの。」

「ボースからクローネ峠を越えて来たんです。」

「はっ!?まさか今時あんな場所を通る酔狂な人間がいるとは思わなかったな。ひょっとして山歩きが趣味とか?」

本気で驚いているようで、まじまじと見られてしまった。

こっち見んな。

「うーん、そういう訳じゃないんだけど…ところで、歩きっぱなしですっごくお腹空いてるのよね。だから…」

「何かお勧めはねーですか?」

「そうだな…今なら弁当がお勧めだな。」

「お弁当?」

何でここまで来てわざわざ…

「村外れの風車の前が景色の良い展望台になっていてね。昼食をそこで食べるお客さんが多いんだ。」

弁当。

散々これまで食べて来たってのに。

「あ、それってナイスかも♪聞いてるだけで美味しそうな感じがするわ。」

「それじゃ、そうしようか。どんな種類があるんですか?」

「スモークサモーナのサンドと魚介類のパエリアの二種だよ。どっちもお勧めさ。」

ふーん…

「うーん、あたしはサンドかな。」

「僕はパエリアを。アルはどうするんだい?」

「わたしもパエリアかな。でも、わたしは外より室内のほーが好きなのよね。2人は外で食べて来なよ。気にしねーから。」

むしろ、こっちが遠慮したい。

「そう?」

「毎度あり。しめて200ミラだよ。ついでにハーブティーもサービスだ。これもウチの名物でね。」

「わ、ありがと♪」

「それじゃ、展望台に行こうか?エステル。」

「うん!」

このラブラブにつっこむ勇気などないから…

「行ってらっしゃい。」

黙々とパエリアを食べ終わる。

「ごちそーさまでした。美味しかったですよ?」

少なくとも、エステルには作れない味だ。

「そりゃ良かった。お粗末様。」

「じゃ、連れを待たせちゃわりーんで行きますね。」

「おう、気を付けてな。」

外に出ると、エステルが凄い形相で何かを探しているのが見えた。

「あれ、エステル、どうかした?」

「どうもこうも…アル、帽子被った10歳くらいの悪ガキ見なかった?」

「…見てないけど。何?悪戯でもされた?」

エステルの顔が物凄く引き攣る。

「されたんだね。」

「そうなのよ~っ!」

思いっきり叫び、近くにいた人に話しかける。

可哀想に、顔が引き攣っていた。

「…あ、済みません。帽子被った10歳くらいの男の子見掛けなかった?」

「ああ、王立学園の生徒さんの連れかしら?」

「うん、正にその子よ!」

「どこの子かご存じありませんか?」

エステルを牽制するヨシュア。

流石ヨシュア(エステルストッパー)

「そ、そうねー…確か、マノリアの子じゃないわね。多分孤児院の子だと思うけど…」

「孤児院…?」

「マーシア孤児院。テレサ院長っていう女性が運営していらっしゃるわ。メーヴェ海道の途中にあるわよ。」

孤児院…か。

マーシアって…確か…

「あの子、孤児院に住んでるんだ…」

「早速訪ねてみようか。」

一行はマノリアからメーヴェ海道に出て孤児院へと向かう。

「この分岐ね。」

「…うーん…」

「どうしたんだい、エステル?」

何やら悩むエステルに、ヨシュアが話しかけた。

「…よし、決めた!境遇云々は関係ない!人の物を盗るのは悪いこと!見つけたらきっちりお仕置きしてやるんだから!」

「はは、エステルらしいっていうか…取り敢えず、お手柔らかにね。」

このままお手柔らかに済んだらもうけものである。

まあ、有り得ないだろうが。

マーシア孤児院に辿り着くと、早速微笑ましい光景が見えた。

「クラムったらどこ行ってたのよ!クローゼお姉ちゃん、すっごく心配してたんだからね!」

「へへ、まあ良いじゃんか。お陰でスッゲエものが手に入ったんだからさぁ。」

「何なの、クラムちゃん?」

…あの悪戯小僧は、クラムという名のようだ。

まあ、今の呼び名では少女に思えるが恐らく気配的には男だろう。

「にひひ、見て驚くなよ~。呑気そうな姉ちゃんからまんまと拝借したんだけど…」

「だ~れが呑気ですって?」

「…ゲッ、どうしてここに…!」

悪戯が見つかった子供はこんなものだ。

焦りながら後ずさるクラム。

「ふふん、遊撃士を舐めないでよね?あんたみたいな悪ガキがどこにいるかなんてすーぐに分かっちゃうんだから!」

「く、くそー…捕まってたまるかってんだ!」

「こらっ、待ちなさーい!」

エステルとクラムの鬼ごっこが始まった。

「エステル、ハーブは踏まないようにねー。」

もう聞こえてはいないだろうが、一応忠告はしておく。

「あのう、お兄さん…どうなっちゃってるんですか?」

「クラムちゃん、また何かやったの~?」

「ええっと…騒がしくしちゃってごめんね。」

ちょうどそのころにエステルがクラムを確保した。

「ちくしょ~!離せっ、離せってば~っ!児童虐待で訴えるぞっ!」

「な~に洒落臭いこと言ってくれちゃってるのかなぁ。あたしの紋章、さっさと返しなさいっての!」

「オイラが盗ったっていう証拠でもあんのかよ!」

しらばっくれる気だが、生憎そうはいかない。

怒ったエステル(暴走娘)を収められるのは真実だけだ。

「証拠はないけど…こうして調べれば分かるわよ!」

「ひゃはは…!や、やめろよ、くすぐったいだろ!エッチ、乱暴オンナ!」

「あ~、エステル、そろそろやめたほーが…」

こちらに近づく気配を感じてそう忠告したが…

この、気配は。

「ジーク!」

「わわっ!?な、何なの今の!?」

「その子から離れて下さい!」

凛とした少女が、ハヤブサ片手にこちらを睨みつけていた。




詳しいことは活動報告に書いてみようと思いますが、あと何話か投稿したら一旦投稿が止まります。
電波の届かないところに行くので。

では、また。

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