雪の軌跡 作:玻璃
ありがとうございます。
では、どうぞ。
戦闘は、程なくして終了した。
「ふう…何とかやっつけたわね。」
「うん、なかなか手強かったね。」
「…気に入らねー。」
終了したというよりも…
「?何か言った?」
「んーん、何も。」
見逃された。
これ以上損害を出すわけにもいかなかったのだろうが、それでも逃げられた。
「そう?」
「…フン、思ったよりもやるみたいだな。ま、あのオッサンの手解きを受けてたんだったら当然か。」
「え。」
「勘違いするなよ。あくまで新米としてはだ。まだまだ正遊撃士には遠いぜ。」
エステル達が呆然としている。
アガットが褒めた程度で固まるってどれだけ…
「おーい、そっちは大丈夫か!?」
「ああ、問題無い。残らず片付けたぞ。気絶してた奴はどうだ?」
エステル達が硬直している間にも会話は続く。
「思ったより軽傷で済んだよ。お前がいてくれて助かった。」
「流石だぜ。」
「大したことはしてねえよ。それに、このガキ共がそこそこ働いてくれたからな。」
「そうなのか…嬢ちゃん達、ありがとうな。」
半ば呆然としたままエステルが返した。
「う、うん…」
「自分達は念の為周辺をパトロールするつもりだ。君達は中に入ってゆっくり休んでくれ。」
「ああ、気を付けろよ。…さてと、寝直すか。もう危険は去ったはずだ。お前等も大人しく寝ときな。」
アガットが中に入ってから、漸くエステル達は再起動を果たした。
「ど、どうなってんの?あの口の悪い奴があたし達を誉めるなんて。」
「少しは僕達の実力を認めてくれたのかも知れないね。思ったよりも真っ直ぐな人なんじゃないかな。」
「うーん…そうは思えないけど」
「はいはいストップ。早く中に入ろ?風邪ひーても知んないよ?」
まあ、バカは風邪をひかないともいうけれど。
中に戻って休む。
次の日。
やはりエステルは寝坊した…
「エステル、エステルってば。」
「ふわ~っ…もう、何なのよ~…」
「起きて。出発しねーとめーわくだよ。」
むしろ起きろ。
「あれ、ヨシュア、アル…もうギルドに行く時間だっけ?」
「寝ぼけてんの?関所だよ。」
「そ、そうだった…夜中に魔獣騒ぎがあって…あれ?あの赤毛男は?」
「朝早くに出発したみたいだよ。」
それはもう豪快に峠を駆け下っていった。
何故か魔獣が避けていくほど、迫力があったという…
「そうなんだ…折角昨日は協力して魔獣を撃退したのにさ…挨拶もしないで行くなんてやっぱり失礼な奴よね。」
いや、エステルが眠りこけていただけで、ヨシュアとアルシェムには挨拶はあったのだが。
それはさておき。
「まあまあ。それより僕達も支度しよう。昼過ぎには峠を越えたいからね。」
「ん、分かった。いよいよルーアンね!」
そして支度を終え、関所から出る手続きをするために休憩所を出た。
「兵士さん、おはよ~!」
「おはよーございます。」
「お早うございます。」
「やあ、お早うさん。昨日は本当にご苦労さんだったな。」
…どうやら、あの後は何もなかったようだ。
この兵士はそこまで疲れてもいないし、他の兵士も視える限りでは疲労は少ない。
「えへへ、それほどでも。兵士さん達の方こそ、危険なことはなかったの?」
「ああ、何の異常も無かったぞ。しかし…妙なんだよな。」
「妙って、何が?」
エステル…
何をボケてるんだか。
「ああ…魔獣除けの光ですか。確かに、アレがあれば普通は寄ってすら来ねーはずですよね。」
「そうなんだ。昨日みたいに大量に群がってくるのは初めてだぜ。」
「それは確かに奇妙ですね…」
というよりも、異常事態である。
こんな事が出来るのは、余程狂暴化した古代種か…
訓練された魔獣だけである。
「ま、帝国軍よりおっかなくはなかったけどな。拠点防衛の良い演習になったと思えば良いか。」
「そ、そういう問題なの?」
勿論そういう問題ではない。
だが、上に報告しても芳しい答えは返って来ないだろう。
おそらく…
「俺達にとっちゃそっちの方が気がかりだからな。魔獣共が何を考えてるかは嬢ちゃん達遊撃士に任せるさ。それはそうと…出発するんだろう?通行手続きをしちまうかい?」
「はい、お願いします。」
「…これで良しっと。それじゃあ…青い海と白い花に彩られたルーアンへようこそ!そうそう、嬢ちゃん達はルーアン市に向かうんだろ?」
「うん、そのつもりだけど…」
むしろ、そこまで早くたどり着かないと依頼が受けにくい…
「昨日の件については
「えっ、良いの?」
「まあ、アガットの奴と山分けになるとは思うがな。それじゃあ、正遊撃士目指して頑張れよ。」
「うん!」
「色々お世話になりました。」
「ありがとーございました。」
そういって、エステルたちはルーアンに足を踏み入れた。
なんか短い。
区切りが悪いので、勘弁してください。
にしても、色んなSS見てて思うこと。
「マリノア」じゃないんですよ。
「マノリア」なんですよ。
だって、木蓮が有名なんですよ?
magnolia(gを発音しない)でこの読み方じゃないですか。
では、また来週。