雪の軌跡 作:玻璃
まあ、しばらく出すつもりはないんですけどね、このワード。
では、どうぞ。
『ストレイ卿へ
名はシスターから聞いた。
まさかお前がアレだとは思わなかったがな。
帝国で
背景にはもしかしたら蛇がいるかもしれない。
…ヨシュアに気をつけろ。
追伸
…オリヴァルトという名の皇子を知らないか?
行方不明だといってヴァンダール氏が大層困っている。
見つけたら連絡を取るように伝えてくれ。
カシウス・ブライト』
「…嘘でしょ…」
「アル?」
誤魔化さなくては。
「何っでこんな下らねーことに紙を使うの…一気に疲れた…」
「…何が書いてあるんだい?」
「…あー…ヨシュアに、手を出すのは良いが覚悟しておけよって伝えてくれって…」
まあ、あながち間違いではない…
「ただの親バカよね、それ…」
「はぁ…疲れた…」
手紙を誰にも見せないようにしまう。
見せるわけにはいかない。
「フッ、これにて一件落着だね。」
その後、人手が足りないとアイナから涙声の連絡を受け、シェラザードがロレントに帰ることになった。
ついでにオリビエがロレントに向かうので見送る。
「それじゃ、あたしはロレントに戻るけど…うーん、やっぱり心配ねぇ。本当について行かなくて良いの?」
「も~、大丈夫だってば。シェラ姉がいたら修行になんないじゃない。」
「ロレント支部のほーがヤバいんじゃねーですか?かなり人不足でしょーに。アイナさん、マジ泣きでしたよ?」
「大丈夫ですよ。何とかやっていけます。」
三者三様の返事を聞き、シェラザードも諦めたようだ。
「まあ、そこまで言うなら…あんた達の歳で正遊撃士を目指すのは珍しいんだからくれぐれも無茶しないようにね。それと、困ったことがあったらロレント支部に連絡するのよ。あんた達がどこにいようとすぐに駆けつけるからね。」
「うん…ありがとね、シェラ姉。シェラ姉こそ、あんまり呑みすぎないでよね。」
「タハハ…まあ、気を付けておくわ。」
良いことを言っても威厳がなくなるだけである。
「フッ、心配しないでくれたまえ。何といってもこのボクが付いてるからね!」
安心できるか!
「…どうしてあんたもロレントに行くわけ?しかもシェラ姉と一緒に…」
「フッ、ボースの郷土料理は網羅したからね。ロレントの料理は、野菜が絶品と聞いているから楽しみだよ。」
「こんな感じでしつこいから、居酒屋で酒に付き合うのを条件にして許可しちゃった♪」
「うっわ~…」
「頑張れオリビエ。アル中で死なねーよーにね。」
むしろいつボースの料理を制覇した…
「フッ、このオリビエ、美人と美食のためなら死ねるさ。本当はヨシュア君にも付いて行きた」
「来んな変態。もしいるんなら保護者につーほーしてやる。」
来たら即刻叩き出してヴァンダールに突き出してやる。
「全く懲りないヤツ…ロレントの治安を乱さないでよね。後、仕事明けのシェラ姉って本当にリミッター外れちゃうから、マジで注意した方が良いわよ。」
「何よぅ、失礼ね。アイナは付き合ってくれるもん。」
「アイナさんはザルでシェラさんはタガでしょーが。」
比べるのが間違っている…
「リミッターが外れる?それって…」
「ああ、多分常人じゃムリ。諦めたらどーかな?」
人生を。
「ふーん…って、え!?」
離陸のアナウンスが流れる。
「あら、もう出発か。ほら行くわよ。」
「シェラ君、ち、ちょっと考える時間を…」
「な~に言ってんのかしら。男だったらグダグダ言うな!」
「ひええ~っ!」
…何故だろう。
これから一生オリヴァルトがシェラザードの尻に敷かれるビジョンしか見えない…
「シェラ姉、まったね~!皆に宜しく!」
「お元気で!」
「ごしゅーしょーさま。」
飛行船は飛び立った。
まあ、叫び声が聞こえた気がするが幻聴に違いない。
「さてと、次はルーアンね。」
「定期船を使わねーなら西ボース街道からクローネ山道じゃねーの?ま、かなり時間はかかるけどね。」
「良いじゃない。シェラ姉が言ってたでしょ?まずは自分が守るべき場所を実際に歩いて確かめてみろって。あ、これって父さんの言葉だっけ?」
「まあ、確かに時間はあるからのんびり行くのも悪くないか。節約も出来るしね。」
むしろ最後が本音だろう。
お前は主婦か。
「そーそー、浮いた分は買い物しましょ。何せ、空賊騒ぎの時は落ち着いて買い物出来なかったし。出発はそれからでも良いんじゃない?」
「…あんまり無駄遣いはしないようにね。」
それから、残った依頼がないか確かめようとしたが、そういえば変なノートを拾っていたことを思い出してハーケン門に向かうことを告げた。
エステル達は買い物をしているらしい。
まあ、エンジョイすれば良いと思う。
ハーケン門に着き、兵士に話しかける。
「失礼します。その…空賊騒ぎの時に、こんな物を見つけまして…」
「…!それ、地下牢に持って行ってくれるかい?」
「はい。」
地下牢に行く。
「おい、この帳簿にあるミラはどこに消えたんだ?早く話した方が身のためだぞ。そのうち証拠は出てくるんだからな。」
「ですから、証拠を見せろって何度も言ってるじゃないですか。疑惑があるなら証明して下さいよ。ぐふふ…」
「ハイ、しょーこ。」
その瞬間。
ニガードの顔が引きつった。
それはもう盛大に。
「これは…!間違いない。奴の工房の裏帳簿だ。」
「そりゃ良かったですね。」
「おい、ニガード!よく見ろ、見たがってた証拠だぞ!」
ようやく再起動した彼が叫ぶ。
「そ、そんなバカなっ!それは掃除機と一緒に…」
「あー、それであんなとこに。あのそーじきもきょーみ深かったけど、それもけっこーヤバそーだったから、つい持ち出しちゃった。」
「ありがとう、お手柄だよ。やはりこの手の仕事は遊撃士に一日の長があるな。あれさえあればきっとあいつの犯罪を立証出来るはずだ。いずれ遊撃士協会を通じて正式に…」
「いや、勝手に持ち出しちゃいましたし…別に構いませんよ。」
むしろいらない。
ここから物を貰いたくなぞない。
「いやいや。…御協力、感謝する。」
「…いえ、御迷惑をお掛けしました。モルガン将軍に宜しくお伝え下さい。」
全速力で帰り、ボースでエステル達と合流する。
「どうだったの?」
「やっぱりやべー帳簿だった。…行こっか。」
そしてアルシェム達はクローネ峠へと急いだ。
いつルーアンの章にするか迷い中。
まあ、いつでも良いんですがね。
では、また。