雪の軌跡 作:玻璃
切らないととんでもなく長くなりそうでしたので。
では、どうぞ。
「…本当にご苦労様でした。やはり、わたくしの目は間違ってなかったようですわね。皆さんだったら絶対に解決してくれると思いましたわ。」
いや、間違っていたでしょうに。
もしもアルシェムがいなくて、もう少し空賊が悪辣だったら?
答えは簡単だ。
人質は、生きてはいない。
「でも、軍に良いとこ持ってかれちゃったしなぁ。解決したとは言えないかも…」
「そんなことはありませんわ。仮に、皆さんがいなかった場合、軍の突入も上手く行ったかどうか。逆上した空賊に人質を傷つけられたかも知れませんから。」
いや、実際痛めつけられたけれども。
とは流石に言い出せないアルシェムだった。
「うむ、お前さん達が潜入してアジトを制圧していたおかげじゃ。」
「潜入ってか、捕まってましたけどね…」
「じゃが、アジトについて確実な場所が分かったのは大きいぞ。…まあ、手配魔獣について、弁明があるなら聞くがの…?」
ルグランから黒いオーラが出ているのは気のせいだ。
きっと目の錯覚に違いない。
「空賊達が鬼畜なら、魔獣に人質を襲わせるとかしてもおかしくねーので。」
「ま、一理あるのう…」
というか、その可能性に辿り着かないというのが平和ボケしたリベールらしいといえばらしい。
「確かに、空賊は逮捕出来たし、人質も解放出来たけど…幾つかの謎が残っちゃったのが悔やまれるわね。」
「湖畔の男達と空賊の首領の奇妙な態度ですね。」
「空賊の首領、何か気持ちわりーことされてんじゃねーの?暗示とか、そーゆー何かヤバい感じの…」
実際そうである。
何故《白面》が暇を持て余しているかは知らないが、各地の人間に暗示をかけまくっているのは間違いない。
薬品だけでは、これほどの威力は出せない…
「かも知れないわね。兎に角、まだ裏があるとみた方が良いわ。」
「まあ、そのあたりは王国軍に任せるしか無さそうじゃのう。連中の身柄を押さえられた以上、調べようがない。」
証拠は隠滅されたということか…
もう、証拠を掴むことは出来ないだろう。
教会に協力要請だけでも行けば違うかもしれないが。
「兎に角、人質が全員無事に戻って来ただけでも幸いですわ。空賊逮捕のニュースのおかげで街にも活気が戻りつつあります。感謝の気持ちに、少しばかり報酬に色を付けさせて頂きました。…アルシェムさんにもね?」
「え、良いの?」
「てか、何でわたしにも?」
迷惑をかけただけなのに?
「ふふ、皆さんが活躍して下さったおかげですから。アルシェムさんがいなければ人質が危なかった可能性もありましたし。…オリビエさんも…本当にありがとうございました。」
「フッ…《グラン=シャリネ》分の働きが出来たのであれば良いのだがね。」
「お釣りが来るほどですわ。それでは皆さん、ご機嫌よう。何かありましたらまたお願いしますわ。」
「…失礼致します。」
市長達が去る。
…オリヴァルト…
お前、《グラン=シャリネ》って…
高級ワイン…
何でそんなもん呑むんだ!
と、絶賛言いたくなった。
まあ、策略の一部なんだろうが。
「うーん、何だか物凄く感謝されちゃったわね。」
「あれ以上事件が長引いていたら流通は更に混乱しただろうからね。市長さんが喜ぶのも当然だよ。」
「えへへ、何だか嬉しいな。あたし達が頑張ったことで皆のお役に立てたんだったら遊撃士冥利に尽きるってもんよね♪」
「フフ、ナマ言っちゃって。でも確かにあんた達ももう新人とは言えないわね。正直、今回は色々驚かされたわ。…ほんと、色んな意味でね…」
シェラザードの目が物凄く遠くを見ている…
「ごめんなさい…その、ちょーしに乗りすぎました…」
「良いのよ。あの場合はそれがベストだったんだろうし。」
「シェラさん…」
本当に甘い。
甘すぎる。
「取り敢えず今回の事件の査定と報酬を受け取るが良い。」
ルグランから報酬を受け取った。
確かに多い…
「市長が言ってた分、報酬には色を付けておいたぞ。それとこれは…わしからお前さん達にじゃ。」
そして、何故か推薦状を貰った。
「これって…」
「あの、良いんですか?」
「エステル達は兎も角、わたし、かなーり無茶苦茶やりましたよ?」
それこそぶち切れられてもおかしくないほどの。
「うむ、これだけの事件を解決したとあっては推薦せぬ訳にはいかんじゃろ。どうか受け取って貰いたい。因みにエステル、ヨシュアは7級でアルシェムは6級じゃ。」
「ありがとう、ルグラン爺さん!」
「推薦状に恥じないようこれからも頑張ります。」
「…無茶はなるべく避けるよーにします…」
避けるだけで、しないとは言わない。
無茶はしないが無理はする。
そうでもなければ、何もなせないから。
「ふふ、良かったわね。カシウス先生が聞いたらさぞ喜ぶと思うんだけど…」
「…うん…」
「…そうですね…」
「…間違い無くわたしは怒られると思うけどねー…」
怒られるだけで済むかどうか。
の連続ループな未来しか見えない…
「カシウスか…一体何をしておることやら。
「そうね…先生らしくもない。一体どこに行ったのかしら…」
済みません。
多分帝国です。
とはいえず、曖昧に誤魔化そうとしていたその時。
「ごめんください。」
そこに、受付の人がやってきた。
「飛行場の受付の…どうしたね?」
「実は、リンデ号の積荷が戻って来ましてね。
「それはご苦労さんじゃった。…いや、待てよ…ボース発のリンデ号に何故ここ宛ての物がある?」
「いえ、ロレント宛てなんですが…こちらに、カシウス・ブライトという方の御家族はいらっしゃいますか?」
その言葉は、一堂に少なくない衝撃をもたらした。
昨日は投稿しませんでした。
出来なかったわけじゃないですけど、ちょっとね。
軌跡スキーには我慢できない駄作かもしれませんが、我慢できる方はどうぞ。
アルシェムは、決して万能ではありません。
万能に見えたとしても、それには理由があります。
では、また来週。