雪の軌跡   作:玻璃

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*ネタバレへの配慮は今のところありません。

ゲームをまだプレイしていない方、プレイ途中の方は終わらせておくことを推奨します。


最終試験までの道のり

3人はエリーズ街道に出て、ロレント市に向かう。

魔獣はほぼ出ないが、警戒は怠らない。

まあ、魔獣の気配は無いから大丈夫だろうが。

微かに火属性アーツが発動する音が聞こえるのは気のせいったら気のせいだ。

すぐにロレント市に着いた。

「丁度良い時間だね。早すぎもせず、遅すぎもしないってとこかな。」

時間計算は合ってたみたい。

まあ、ヨシュアだから当然か。

ヨシュアはこういう計算には滅法強い。

エステルは滅法弱いが。

「う~っ、日曜学校を卒業したばっかりなのに…遊撃士になるためにこんなに勉強させられるなんて夢にも思わなかったよ~…」

「それも今日が最後じゃねーの。好きでやってんだし、とーぜんでしょ?」

というか、誘っておいてそれはないだろう。

「それもそっか。…よし!最後くらい気合いを入れてシェラ姉のシゴキに耐えるぞっ!」

「気合い、入ったみたいだね。それじゃあ行こうか。」

と、そこにシスターが通りかかった。

名は、シスター・メル。

金髪を長く伸ばし、後ろで3つ編みにした碧眼の美人である。

彼女目当てに七耀教会に通う人もいたりする。

…その時点で不信心者と言われたりするのだが。

「あら、エステルにヨシュア、アルシェムまで。…一体朝から何事ですか?」

だが、彼女は1人ではなかった。

もう1人、長身のシスターを連れていた。

短い黒髪で、凛とした顔立ちが特徴的なシスターだ。

「あ、おはよーございます、メル先生。実は…」

「あたし達、これから遊撃士になるためにギルドに行くんです!」

そこでシスター・メルは顔をしかめた。

「…エステル。人の話を遮ってはいけませんと何度言えば分かるんですか。もう少し落ち着きなさい。」

「はい…」

エステルはうなだれた。

まあ、毎回のことだ。

気にしていては生きていけない。

「大体エステルは…」

長くなりそうだったので口を挟む。

「…メルせんせー?わたし達、時間がねーんですけど…」

「アルシェムまで何ですか。…ここでお説教を始めても良いんですが…」

3人の顔が仲良く引きつる。

それを見てシスター・メルは溜め息を1つ吐き、言った。

「まあ、時間が無いようなので見逃しましょう。…これからは気を付けるのですよ?」

「「「はい!」」」

「よろしい。…では、頑張って下さいね。」

シスター・メルはそのまま七耀教会に向かった。

「は~…焦った。まさかいきなり出てくるなんて…」

「確かに。メル先生、一体どこに行ってたんだろう?」

マズい。

「薬草とか取りに行ってたんじゃねーの?」

メルとアルシェムは、一種の協力関係にある。

今ここでメルにいらぬ疑いがかかるのは避けたい。

…さっきの火属性アーツの主は、メルだ。

それすらも悟られるわけにはいかない。

「…そうかも知れないね。」

「さ、気を取り直して行きましょ!早くしないと、シェラ姉が恐くなるし…」

…エステル、後半で本音が出てる。

そして3人はギルドに向かった。

ギルドに入ると、受付のアイナ・ホールデンが出迎えてくれた。

「あら、おはよう。エステル、ヨシュアにアルシェム。」

アイナは、サウル・ジョン・ホールデンの孫で、実は資産家のお嬢様なのである。

もう金はないが。

「アイナさん、おはよう!」

「おはようございます。」

「おはよーございます。」

三者三様の答えを返し、目的の人物が来ているかを尋ねる。

「シェラ姉、もう来てる?」

「ええ、2階で待ってるわ。今日の研修が終われば晴れてブレイサーの仲間入りね。3人とも頑張って。」

「うん、ありがとう!」

「頑張ります。」

「頑張りますよ。じゃー、2階に行きますね。」

「ええ。」

そして3人は2階に上がった。

「…『星』と『吊し人』…『隠者』と『魔術師』に、『塔』…そして逆位置の『運命の輪』…」

…?

占い中…?

…何だか意味深な…

「これは難しいわね。どう読み解いたら良いのか…」

「シェラ姉、おっはよー!」

「あら、3人とも。珍しいわね、こんなに早く来るなんて。」

「えへへ、最後の研修くらいはね。とっとと終わらせて遊撃士(ブレイサー)になってやるんだから!目指すは打倒、父さんよっ!」

メルにからまれなきゃ、もっと早く着いたはずなのに…

悔やんでも仕方がないが、付き合わせている以上当然のことだろう。

「はあ…いつも意気込みは良いんだけど。ま、その心意気に応えて今日のまとめは厳しく行くからね。覚悟しときなさい。」

「え~っ、そんなぁ…」

厳しくされたら、エステルがヤバい…

「お・だ・ま・り。毎回毎回教えたことを次々と忘れてくれちゃって…そのザルみたいな脳みそからこぼれ落ちないようにするためよ。」

「え~んヨシュアぁ、アルぅ、シェラ姉がいぢめるよ~!」

…取り敢えず、若干フォローしといた方が良いだろう。

遊撃士になるために。

「大丈夫ですよシェラさん。」

「そーそー。べんきょー嫌いでよしゅーふくしゅーも滅多にやんないし、ついでにやたらお人好しでよけーなお節介大好き野次馬こんじょー丸出し人間だけど、カンはいー方だから、オーブメントだって実戦で覚えますって。」

ヨシュアに便乗してみる。

「はぁ、そうね…」

「ちょっとアル…何か全然フォローしてるように聞こえないんですけどっ?」

「気のせーだよ。」

気のせいじゃないけどね。

「そうだよエステル。全部君の美点じゃないか。」

「まったくもう…あ、ところでシェラ姉、タロットで何占ってたの?なんだか難しい顔してたけど。」

シェラザードは机の上のタロットに目をやって答えた。

「ああ…近い将来、身の回りで起こることを漠然と占ってみたんだけど…ちょっと調子悪いみたいで、読み解けなかったわ。」

「読み解けない??」

「へえ…そんなことってあるんですか?」

さっきのアレか…

星は、エステルで…吊し人は…誰だろう。

隠者は?

魔術師は、多分奴で…塔は、アルシェム。

…運命の輪は…多分…

「あまりに意味深な形になると逆に解釈に困ることがあるのよね…まあ、それは良いわ。最後の研修を始めるわよ。」

そこで3人は椅子に座った。

そしてオーブメント、遊撃士、リベールについて講義を受けた。

「さてと…復習はこのくらいで勘弁してあげるか。今日はやることが山ほどあるんだから、とっとと実地研修に進むわよ。」

「ねえ、シェラ姉、実地研修って…」

「ああ、実際に遊撃士に必要なこと…つまり、座学じゃなくて実践よ。分かった?」

するとエステルが目に見えて安堵した。

「えへへ、助かったわ~。体を動かせるのなら今までよりずーっとラクよ。もう…心配して損しちゃった。」

「流石エステル。体を動かせるってだけでここまで元気になるなんて…ほんと、やせーじだよね。」

「はぁ…その笑顔が最後まで続くと良いんだけど…さて、と。最初の実地研修に行きましょうか。」

「おう!」

そして1階に降り、まずは掲示板の確認。

これは難なくクリア。

同時にブレイサー手帳をアイナから受け取る。

依頼は、シェラザードからだった。

…試験かな?

次は、オーブメント工房。

「…といっても、アルは分かってるわよね?」

「まあ、1年ツァイスに留学してましたから…その関係でオーブメントももー持ってますし。スロットも全部開放してありますから。」

「じゃあ、アルは良いわね。」

エステル達が講習を受けている間、メルダースと話す。

「最近は何か面白いものでも作ったか?」

「いえ、最近は忙しかったので…」

「そうか。また、何かあったら見せてくれよ?」

「勿論です。」

そこで、丁度エステル達の講習が終わったようだ。

「さあて、次はお待ちかねの認定試験ね。」

「…え?し、試験って、何それ?」

「…まさか本気で忘れたのかい?今朝も話したじゃないか。」

本気でヨシュアが呆れている…

「あ゛…そう言えば、聞いたような聞いてないような…」

「はあ…ホント、期待を裏切らない子ねぇ。まあ良いわ、とにかく試験場に行くわよ。」

「え、ち、ちょっと待って、まだ心の準備が…」

「ほらっ、きりきり歩きなさい!」

シェラザードがエステルを引き摺って外に出た。

「ヨシュア、アル、お助け~。」

…若干無視しよう。

「メルダースさん、フライディさん、色々ありがとうございました。」

「また来ますね。新しーオーブメント細工と一緒に。」

「おう、試験頑張れよ。」

「しっかりね。」

「こら~2人とも、覚えてなさいよ~。」

何とも締まらないエステルであった…




というわけで、オリキャラが2人登場です。

そのうちの1人、メルさんの設定です。

name
メル・コルティア

七耀教会所属のシスター。
どうやら、アルシェムと何らかの関係があるようだ。

weapon
某ネギ神父と同じボウガン。
護身のために持っている。

craft
セイクリッドブレスⅡ:某ネギ神父のセイクリッドブレスの強化版。全体。
グラールスフィアⅠ:完全防御(一回) Ⅱ→完全防御(二回)
イノセントアーク:状態異常を回復する。全体。
虚無の弾丸:無属性の法術を放ち、ダメージと共に状態異常を付与する。ランダム20%
瞑想:アーツを最大限の威力で発動できるように気を落ち着ける。ATS50%上昇

S-craft
ヴァイスクライス:完全回復、完全防御(二回)、DEF50%上昇

…まあ、しばらくは戦わないのですが、ね。

黒髪のシスターにつきましては、後日出てきますのでいずれ。

では、また。

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