雪の軌跡 作:玻璃
今回は掲示板の仕事を片付け回です。
では、どうぞ。
アルシェムがハーケン門から戻ると、西ボース街道の方に行こうとしているエステル達に出会った。
「あ、アル!遅かったじゃない。今からリンデ号の手掛かりを探しにラヴェンヌ村に行くとこなの。」
「そーなの?じゃあ、わたしは掲示板の仕事に戻るね。」
「アル?」
ああ、そうだ。
こっちにも根回ししておかないと。
「あ、シェラさん。耳貸して下さい。」
「何よ、また?」
「また、です。…リンデ号を探しに行って下さい。軍の中の内通者を炙り出す手筈をつけました。モルガン将軍と鉢合わせても、うまく切り抜けて下さい。」
「…遊撃士は国家不干渉なんだけど?」
「リンデ号に関わりがある時点で、一般人を巻き込んでるでしょー。問題なしです。」
声を出来るだけ潜めていないと、ヨシュアに聞き取られる。
それだけは避けなければならない。
まだ結社とつながりがある可能性があるため、用心するに越したことはない。
「…そうね。…分かったわ。じゃ、あんたはしっかり掲示板の仕事、頑張んなさいよ?」
「りょーかいです。」
エステル達と別れ、
「只今です。えっとまじゅー捜索終わりました。次はベアズクローの調査と西ボース街道の手配まじゅー受けますね。」
「だ、大丈夫かの?」
「心配ごむよーですよ。ベアズクローは前に見つけたことありますし。行ってきまーす。」
まあ、結構前なのだが。
「済みません、スペンスさんですか?」
「何でしょう?うちの薬は良く効きますぞ。」
いや、どこの薬でも一緒だから。
「準遊撃士のアルシェムです。ベアズクローの調査を請け負わせていただきました。」
「おお、お待ちしておりましたぞ。実は、つい先頃ホルス教区長に新薬の調合を依頼されましてな。」
…!
それって、あの親書の…
「ああ、あの。霧降り峡谷で見つけました。一応採取してきましたので、どうぞ。」
「ありがたい。」
「まじゅーの羽も一応余ってますが、要りますか?」
「…良いんですかな?」
やっぱり。
「りょーりに使うには多いので。…では、これでしつれーします。」
ボースマーケットから出てそのまま西ボース街道に出る。
手配魔獣を探しながら歩いていると、丁度ラヴェンヌ山道との分岐で赤毛の遊撃士と出会った。
「手配まじゅーは…あ。」
「何だ、今日は珍しい日だな。遊撃士に4人も会うなんてな。」
ということは、エステル達に会ったのか。
「初めまして、先輩。準遊撃士のアルシェムです。」
「…妙な呼び方するな。アガットで良い。ラヴェンヌ山道の魔獣を倒したのはお前か?」
アガット…
《重剣》のアガット!?
結構有名なアイツ!?
何でこんな所に。
「はい。それが何か?」
「お前みたいなヒヨッコが?」
「ええ。ぴよぴよいーながら倒しましたよ。今から手配まじゅー狩ってくるので、しつれーしますね?」
ちょっとふざけてみたのが悪かったのか。
「…おい。」
アガットに呼び止められた。
「何でしょーか?」
「手配魔獣をヒヨッコが1人で倒せるわけねぇだろうが。俺に任せろ。」
「…嫌ですよ。」
仕事取んな。
一応正遊撃士目指してるし、本気になればアガットごときは瞬殺できる。
…しないけど。
「意地張ってんじゃねえ。」
「…そんなに言うなら見てりゃいーじゃねーの。多分この先だし。」
暫く歩き、手配魔獣まで辿り着く。
「おーがたまじゅーさんか。しゅーいに人影なし、と…先手ひっしょーですよ。」
「お、おい!?」
「…ペトロブレス。」
サンダークエイクが仰け反った所に弾丸を叩き込む。
何かをしそうな不穏な動きをするが、それまでに倒しきれば良い。
というか、動く間もなく攻撃する方が手っ取り早い。
「アースランス!」
念のためにアガットから引き離し、大分弱ってきたのが分かったのでとどめを刺した。
「オマケの不破・弾丸!」
サンダークエイクは完全に沈黙した。
というか、はっきり言ってやりすぎた。
「ちょっと張り切りすぎたかな…」
アガットは暫く呆然としていたが、再起動を果たして叫ぶ。
「いやいやいや、手配魔獣に攻撃させないとか、どれだけだよ!?」
「…倒せたよ?アガット?」
前言撤回してもらおう。
無言の圧力に負けたのか、暫くして吐き捨てるように言った。
「…わ、悪かったな!」
「ガキじゃねーんだし、そんなツンデレ的な答えいらねー…ま、いっか。じゃー、わたしは
アガットを放置して
全速力で、魔獣を退治しながら。
きっと、後ろでアガットが呆然としているに違いない。
「西ボース街道の手配まじゅー、倒しましたっと。あ、ごえーの依頼とアンセル新道の手配まじゅー受けますね。それから霧降り峡谷の手配まじゅーに行きます。」
「くれぐれも無茶はしないようにの。」
その足でフリーデンホテルに向かう。
「済みません、準遊撃士のアルシェムです。こちらにハルトとゆー方は泊まっていらっしゃいませんか?」
流石に部屋に直接訪ねるのはマズいだろう。
ということで、受付に聞いてみる。
「泊まっていらっしゃいますよ。…こちらです。」
「ありがとうございます。」
「いえいえ。」
客室の扉を叩く。
「どうぞ。」
客室に入り、取り敢えず挨拶をする。
「しつれーします。ハルトさんはいらっしゃいますか?」
「うん…?もしかして…」
「はい、準遊撃士のアルシェムです。掲示板を見て来ました。」
すると、ハルトは目に見えて安堵した。
「やっと来てくれたか~。待ちくたびれたよ。大至急ルーアンまで行きたくてね。クローネ峠までの護衛を探してたんだ。」
ああ、飛行船が止まっているからか。
全く…
無駄なことをして人を困らせるのは軍の専売特許なのだから仕方がないと言えばそうなのかもしれないが、しわ寄せは
何とも迷惑な話だ。
「お任せ下さい。」
「良かった~。いや~、救われたよ。山道には魔獣も多いし、街道を1人で歩くのは怖いからね。」
というか、街道を1人で歩ける商人がいたら紹介してほしい。
「関所までとゆーことですが…関所から先はどーなさるおつもりですか?」
「ああ、
「そーでしたか。差し出がましー真似をして済みません。…もし都合が宜しければわたしはすぐにでも出発出来ますが。」
「じゃあ、お願いしようかな。」
依頼者を連れてホテルを出る。
そのまま西ボース街道に出て、クローネ山道に差し掛かる。
途中の魔獣は近寄らせなかったのだが、ここでは立体的に襲ってくるから質が悪い。
いつの間にか大量のヒツジンに取り囲まれていた。
「…!離れねーで下さいね!」
「う、うん!」
「…不破・弾丸!」
それを機に、ヒツジン達は襲い掛かってくる。
「吹き飛べ、寸勁!」
何匹か纏めて吹き飛ばす。
…そうだ。
ここにいるのは素人だけ…
なら、奥義を使っても何の問題もない。
「わたしは、ただ一人の空をゆく。」
その、言葉と共に銃弾をまき散らす。
「誰にも邪魔はさせねー。」
銃弾は跳弾によりヒツジン達を蹂躙し、足止めする。
「…消えて。アリアンシエル!」
そして、取り出した棒術具で徹底的にヒツジンを叩きのめした。
そして、ヒツジンは跡形もなく消え去った。
「ふうう~。た、助かったあ~。」
「ほんとーにご無事で良かったです。」
「はあ~…何だか信じられないよ。いやぁ、遊撃士ってのは凄いね。あんな魔獣共を簡単にやっつけちゃうんだからな。」
簡単ではないが…
まあ、エステル達には見せられない類の技ではある。
見る人が見ればどんな技なのかは分かってしまうから。
「いえ、それ程でも。このくらいは出来ないと遊撃士は務まりませんから。…ですが、早く移動した方がいーでしょう。まじゅーが来るかも、ですからね。」
この技は、人を跡形もなく殺すための技だ。
「そ、それは困る!さ、さあ、早く出発しよう。」
「はい。」
その後も魔獣は出て来たが、先ほどのヒツジン程は時間もかからず片付けられた。
そうこうしている内に関所に辿り着く。
「はあ、漸く着いたか…」
「すぐに引き継ぎの遊撃士が来ると思います。…ほら。」
気配を感じて、扉を見ると扉が開き、青年が出て来た。
「お疲れ様ッス!ルーアン支部所属のメルツ準遊撃士ッス!」
無駄に元気だ。
張り切りすぎて失敗されては元も子もない。
「お疲れ様です。ボース支部所属のアルシェム準遊撃士です。こちらは依頼者のハルトさんです。後は宜しくお願いしますね?メルツさん。」
「了解ッス!…宜しくお願いするッス!」
…大丈夫だろうか?
「な、何か元気が有り余ってる感じだね。兎に角宜しく頼むよ。…それじゃあ、君、色々とありがとう。」
「お気を付けて、ハルトさん。お仕事、頑張って下さいね。」
「ははっ、そうだね。…もう遅刻しちゃってるけど…」
…え。
「そーなんですか!?…済みません、もー少し早く掲示板を見ていれば良かったですね…」
「いやいや、依頼を出した時点で遅刻だったんだ。気にしないでくれ。」
ならそういう事は言わないほうが良いと思う。
気にする人は気にするものだ。
「そーですか…分かりました。メルツさん、頑張ってねー。」
「はいッス!頑張るッス!これで失礼するッス!」
「元気だな…よーし、頑張ろ…」
クローネ山道と西ボース街道を駆け抜け、ボースに戻った。
というわけで、アガット氏が出現です。
あとは、Sクラ。
いやあ、厨二な気がしますなあ。
では、また。
明日…は、できたっけ。
多分、明日。