雪の軌跡   作:玻璃

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ここから各持ち場について三話に分けます。
まずはロイドたちが会議場からジオフロントへ向かうまで。

では、どうぞ。


三日目・会議場担当の動き

次の日。

通商会議が、本格的に始まる日である。

ロイドは支援要請をさっさと終わらせるべく全員に支援要請を割り振った。

「今日は臨検と手配魔獣、それにマリアベルさんからの依頼と…シスターからの依頼があるみたいだ。臨検にはランディとエリィ、手配魔獣は俺とノエル、マリアベルさんからの依頼にはティオとレン、シスターからの依頼にはアルがあたってくれ。」

それぞれが了承して、依頼を完遂すべく動き始めた。

そして、全員が依頼を終え、アルシェムを除く特務支援課全員が会議場に集合した。

見回りを続けつつ、会議の内容にも耳を傾けていたロイド達。

会議が後半に差し掛かる前の休憩時間にも、ロイド達は見回りを続けていた。

そこに、赤毛の男が声を掛けた。

「よう、ロイドじゃねえか。」

「…アガットさんでしたか。」

公平な立会人として、また会議場の警備として彼は巡回していた。

アガットは眉をひそめつつロイドに告げた。

「気をつけろよ。アルテリア代表の護衛の姿が見えねえ。」

「それって…」

「アイツはこういう警戒すべき事案に対しては鋭いからな。何か見つけた可能性も視野に入れておいた方が良いぜ。」

それは、忠告だった。

念のためと称してアッシュブロンドの男を護衛に連れていたはずのアルテリア代表は、彼に見回りを命じたのだ。

恐らく、何かが起こることを掴んだのだろう。

だからこそ、彼が動いていると分かったのだ。

しかし、ロイド達にその話はなかった。

故に、ロイドはアガットに問うた。

「アルテリア代表の護衛とお知り合いなんですか?」

「あー…まあ、腐れ縁みたいなもんだ。稽古をつけて貰ったことはあるから分かるが、アイツの身の安全については心配しなくて良い。」

アガットは苦虫をかみつぶしたような顔でそう告げた。

ロイドはそれを聞いて少し思案した後、こう返した。

「もし、見かけたら注意していて貰えますか?万が一ってこともあるので。」

「…分かった。お前らも気をつけろよ?」

「ええ。」

アガットの警告を胸に、ロイド達は見回りを再開した。

休憩時間中にロックスミスとオズボーンから呼び出しを喰らい、話したのは言うまでもないだろう。

 

それほどまでに、特務支援課はクロスベルの中で『出る杭』だった。

 

それ以外は特に変わった様子もなく休憩時間が終わるように感じられた。

しかし、それは安易な考えだった。

突然、ダドリーからタングラム門とベルガード門の索敵レーダーの故障と、《黒月》と《赤い星座》の失踪を知らされたからである。

嫌な予感が止まらない中、ロイド達はそれでも見回りを続行した。

そこで、誰かと通話しているアガットを発見した。

「あれ、アガットさん?何をやってるんですか?」

「ああ、少しばかり警戒をな…済まん、そうだ。…頼んだぞ。」

そう言ってアガットは通話を終えた。

そして、ロイド達に『会議場のアリオスに警告してくる』と言い置いて歩き去っていった。

それから、程なくして。

飛空艇が会議場の窓に現れた。

「総員、伏せろ!」

「アンタも伏せろってんだ、A級!」

前者はアリオスの叫び。

後者はアガットの叫びである。

そして。

長ったらしい口上を述べた後、飛空艇は銃弾をぶっ放した。

アガットは重剣でそれを防ぎ、アリオスは刀で弾いていく。

やがて発砲は終わり、飛空艇は上へと登っていった。

幸い、誰も怪我はしなかったようだ。

「ロイド、廊下を警戒しろ!」

「分かってます、アガットさん!」

アガットの叫びに、ロイドは油断なく構えて廊下に飛び出した。

すると、隔壁が降りると同時に何故か人形兵器が襲いかかってきていた。

レンはそれを見て目を細めた。

「…ふぅん、この型なのね。退いていて頂戴、ロイドお兄さん。一気に殲滅するわ。」

目を見開くロイドを後目に、レンは大鎌を投擲した。

その鎌は、特別耐久力の高い人形兵器を除いて人形兵器を薙ぎ倒した。

大鎌が戻ってくると同時に、ランディがスタンハルバード片手に人形兵器の群れに突っ込む。

「オラァ!」

轟音と共に、人形兵器の第一波は殲滅された。

それを見たロイドは、中にいるアガットに向けて叫んだ。

「殲滅しました!」

「おっしゃ、全員廊下へ出ろ!」

アガットの誘導に従って廊下に出る各国の代表。

すると、人形兵器の第二派が現れた。

「な…!」

「チ、ロイド達、背後は任せたぜ!」

アガットの言葉にロイドは大きく頷いた。

「分かりました!ティオ、隔壁は頼む!ノエルは代表たちを!」

「イエス・サー!」

「はい!」

ティオは、各国代表の前に座りこんで端末を弄り始めた。

その額には早くも冷や汗が浮かんでいる。

バカバカしくなるくらい強固なロック。

それを外すのに、一体いくらかかるというのか。

絶望しそうになったその瞬間。

ティオの操る端末に関係ない文字が現れた。

そこには、『お手伝いします、ティオちゃん。ヨナ君も一緒です。』と書かれていた。

それだけで、ティオは相手が誰なのかを察した。

その文字列と同時に事態は動き始めた。

めまぐるしく変わる端末の画面。

次々と解除されるロック。

送られてくるウィルスは片っ端から無効化されていった。

「ロイドさん、あと数十秒耐えて下さい!隔壁を空けます――!」

「分かった!」

そして、ティオの宣言通りに数十秒後に隔壁があけられた。

そのころには人形兵器も駆逐されており、警戒は必要なくなっていた。

「ロイドさん、テロリストは地下です!それと、テロリストはまっすぐ下降していったみたいなので、あれ以上の攻撃をする可能性があるとすれば屋上の飛空艇が危険です!」

「それに関しては…」

ティオの言葉に口を開きかけたキリカの発言は、しかし女の手によって止められた。

黒髪の美女、カリンである。

「ミス・ロウラン、ミスター・アランドール。屋上は私に任せてそれぞれを護衛していてくださいな。狙われていたのはどうも貴方方の護衛主のようですので。」

それを聞いたキリカは歯噛みして首肯した。

レクターも同様である。

カリンはふわりと一礼すると屋上へと駆けて行った。

「私達はテロリストを追いましょう、ロイドお兄さん。」

レンの声で、ロイド達と遊撃士、それにダドリーは動き始めた。

そこに警備隊が駆け付けたため、各国代表の護衛を任せたダドリーは先導して地下へと駆けだした。

途中、エレベーターのロックを外せたためにショートカットはしたものの、かなり出遅れた感は否めない。

ジオフロントまで降りた一行は、C区画に遊撃士+ダドリーが、D区画に特務支援課が向かうことになった。

「行くぞ、皆!」

ロイドの掛け声とともに、特務支援課の一行は駆けだした。

ロイド達がテロリストに追いついて見たのは、ある意味惨劇のような光景だった。




次は、ジオフロントC区画担当の動きです。

では、また。

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