雪の軌跡   作:玻璃

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連続投稿です。
明日から何日か、投稿できません。
しばらくお待ちください。

というわけで、連続投稿(これだけだけど)します。

どうぞ。


食材収集と魔獣退治

アルシェムは、そのまま遊撃士協会(ギルド)を出てレストラン《アンテローゼ》に向かった。

魔獣の鳥肉は、ロレントで嫌ってほど手に入れた後だからだ。

魔獣を狩りに行く必要はない。

「いらっしゃいませ。ご予約のお客様ですか?」

「準遊撃士のアルシェムです。グルナさんはいらっしゃいますか?」

「ああ、グルナでしたら厨房にいます。ソムリエの隣の扉にお入り下さいませ。」

「ありがとうございます。」

ソムリエの隣をすり抜けて厨房に入り、奥の方にいる女性に話しかける。

「あなたがグルナさんですか?」

「あら、何かしら?」

「準遊撃士のアルシェムです。ご依頼のまじゅーの鳥肉をお持ちしました。お納め下さい。」

そう言って、手が汚れないように袋に入れた魔獣の鳥肉を渡す。

流石に生肉に素手で触れたくはない。

若干菜食主義の人間の主張が分かる気がする…

「ああ、ありがとう。わざわざゴメンね。忙しいのに…」

「いえ、まじゅー狩りしてれば自然と集まりますので。」

というか、増えすぎて困っていたところだ。

これ以上増えたら毎食鳥肉どころの話じゃなくなる。

携帯食料にも限度があるのだ。

「ありがとう、そう言って貰えると助かるわ。」

「それでは、しつれーします。」

「たまにはうちの店で食事を楽しんでってよね。」

価格設定が高いから、一生来ないだろう…

「ミラに余裕があれば。」

余裕があっても、勿論食事には費やさない。

装備を整える方が先決だ。

まあ、そのうち丈夫な素材で服を量産しようとは思っているが。

《アンテローゼ》を出て遊撃士協会(ギルド)に戻る。

「食材の収集終わりましたっと。」

「早いのう。」

「持ってましたので。ラヴェンヌまで行って来ます。」

…にしても、ラヴェンヌ村か…

あそこと交流があった村。

でも、きっと真実を知る者はいないだろう。

あの“山崩れ”で何があったかを知るものは。

「気を付けての。」

「りょーかいです。」

遊撃士協会(ギルド)を出ると、エステル達がメイドを連れて歩いているのが見えた。

「…メイドさん?」

「あ、アル、どうしたの?」

いや、そっちがどうした…

と言いたいのを堪える。

何でメイドを連れて歩いているのか、アルシェムには分からない。

だが、メイドはさっき教会の脇でもめていた女性の片割れだったはずだ。

「今からラヴェンヌ方面に行くんだ。エステルは…何してんのー?」

「市長さんを探しに行くの。頑張ってね、アル。」

…じゃあ、あの金髪美人がメイベル市長か…

若い。

腕は確からしいが…

「そっちもね。」

そこでエステル達とは別れ、西ボース街道からラヴェンヌ山道に出て、ラヴェンヌ村に着く。

途中の魔獣も勿論一掃して、だ。

結構癖のある魔獣が多いようだ。

アルシェムの敵ではないが。

「けっこー高いな…」

山を登ってきたから当然だが、かなり田舎だ。

ロレントよりも更にのどかな風景が広がっていた。

…あそこも、こんな感じだったな…

考え事をしていると、道具屋の角で子供達が言い争っていた。

「ルゥイの嘘吐き。」

「見間違いじゃないもん。本当に飛んでたんだって!」

取り敢えず、仲裁に入る。

ルゥイと呼ばれた少年が涙目になっていたからだ。

流石にいじめを見逃すわけにはいかない…

「こら、イジメちゃダメでしょー?」

「…お姉ちゃん、誰?商人さん?」

こうしている分には無邪気なのである。

まあ、無邪気の中には悪意がこもっていることもままあるのだが。

「遊撃士のアルシェムよ。いじめっ子は…成敗しちゃうぞ?」

「ちぇっ、あっちで遊ぼーぜ。」

「うん。」

ちょっと脅しただけで、子供達は逃げていった。

「…で、ルゥイだっけ?何を見たの?」

気になるのは、飛んでたという言葉。

「あのね、ボク、星を見るのが好きでよく桟橋のあたりで星を見たりするんだけど…こないだの夜、まるで親子連れみたいな影が2つ動くのを見かけたの。」

「…それ、どっちに向かったの?」

「北の方だよ。それで、そのまま見えなくなっちゃった。…だけど、兵隊さんが来たの山道を調べても何もなかったって…ボクが寝ぼけて夢を見たんだろうって…」

…成程。

兵隊が見ても見つからない、か…

見落としがある可能性はあるけど…

「ふ…ん…確かめてみてもいーかな?」

「え…」

「本当に北にあったら凄いしょーげんだよ。なかったらまあ、アレなわけだけど…確かめるだけ確かめてみたいな。」

「ほんと?」

若干目を輝かせている。

子供ってかわいいなー。

作る気は全然ないけど。

「うん。ちゃんと教えてあげるから。ね?」

「…うん!」

ルゥイと別れ、村長の家へ向かう。

「しつれーします、こちらライゼン村長のお宅ですか?」

「おや…!?もしや君は遊撃士かね?」

「はい、掲示板を見て来ました。」

ライゼン村長は、かなり安心してくれたようだ。

…そんなに遊撃士ってありがたいものだろうか?

「おお、そりゃありがたい。…もう御承知じゃろうが、近頃村の奥の山道に凶暴な魔獣が出るようなのじゃ。」

「どんなまじゅーかは分かりますか?」

「いや、しっかりと見た者はおらぬ。ただ、獲物を待ち伏せする魔獣じゃろうと思うのじゃ。鉱山が盛んじゃった頃はよく現れておったからのう。」

「…成程。」

待ち伏せする魔獣…

「廃鉱になった後は人通りもなく魔獣共も眠っておるものと思っておったんじゃが…一体どうしてまた再び現れたのか…まもなく今年も苗木の植え付けが始まるんじゃ。一刻も早く魔獣を退治してくだされ。」

再び現れた…

何故?

「分かりました。」

村長の家を出て、村の奥に向かう。

すると、何故か止められた。

「この先は通行禁止だよ。」

「遊撃士です。依頼を受けたのですが…」

「そうなのかい!?…頼むよ。」

「りょーかいです。」

そのままラヴェンヌ山道に出る。

眠っていたはずの魔獣が、再び現れたのは何故?

「怪しーのはねーな…」

左に折れ、奥の分岐まで来る。

気配が、近づいてくる。

見えないってことは…

上か。

「…来た。」

魔獣を導力銃の乱射で仕留める。

魔獣は地響きと共に倒れた。

誰も周りにいないからこそできる芸当である。

その魔獣は…

急所という急所をすべて撃ち抜かれていた。

「…廃鉱になってから今まで出なかったまじゅーが出る…のは、まじゅーの住処付近に人が踏み入ったから?」

更に奥に進むと、行き止まりに辿り着いた。

「ここは…廃鉱?」

廃鉱の入り口には南京錠がある。

奥を覗き込むと、微かに風を感じた。

「…風が来てる…てことは、向こうで通じてる?…確かめてみるか…」

アルシェムは、色々と考えつつラヴェンヌ村に戻った。




遊撃士協会。
打ち間違いが、凄かった。



『優雅騎士教会』



どんな教会…?
では、たぶん来週には投稿できるようになりますので。
また来週。

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