雪の軌跡 作:玻璃
お外が寒いのです。
では、どうぞ。
旅の始まり
アルシェムがブライト家に帰り着くと、シェラザードが熱心にタロットで占いをしていた。
「『運命の輪』…またこれか。やはり何かが起きているようね…」
「ただいま。」
「ああ、アル。遅かったわね…」
適当に誤魔化しておく。
まさか、シスターと一緒に今後の事について話していましたとは言えない。
一応、アルシェムの立場は守秘義務により明かすことは出来ないことになっている。
…ヨシュアが2階から降りてきた。
「そーびを整えてたんですよ。…あ、ヨシュア、エステルは?」
「…先に食べててくれって。あまり食欲がないみたいだ。」
これで食欲がありまくりと言える方がおかしいのだが。
…いや、そうでもないか…
エステルは、自分の部屋で何か探しているようだ。
「そっか…」
「流石にあの元気娘も今回ばかりは堪えたみたいね。はあ…何て言ったら良いのか…」
いや、これはまさか…
「…無理、ないですよ。何だかんだ言って仲良し親子ですからね…」
「そうね。」
エステルは、もしかしたら…
「シェラさんは今回の件、どう思います?」
「…正直、何とも言えないわね。まさか先生が…なんて…」
やっぱり。
「有り得ないことが起きたってことですよね。」
「カシウスさんが乗ってねーなら分かるんだけど…」
エステルが2階で自室から出て来たようだ。
「ふふ、そんな顔しなさんな。あんた達はどっしり構えてエステルを支えてやんなさい。明日、あたしの方で…」
「はぁ~、良い匂い~っ。もうガマンの限界だよ~。」
それはそれでどうかとも思うのだが…
兎に角エステルは食卓まで来て座った。
「えっ…?」
「エステル…あんた、大丈夫なの?」
「もーダメダメ。お腹空いて倒れる寸前だよ。うわ、美味しそう!いっただっきまーす!」
意味を取り違えている…
「…流石エステル…いただきます。」
何というか、図太い…
「あれ、シェラ姉もヨシュアも食べないの?美味しいよ?」
「そりゃどうも…」
「ほら、シェラ姉も遠慮しないで?父さん秘蔵の《スタインローゼ》20年物でも飲む?」
ちょ…
それは、カシウスが完全に楽しみにしている酒の名だ。
勝手に呑んだとあらば…
ヤバいお仕置きが待っていそうだ…
「す、スタインローゼ!?しかも20年物ですってぇ!?」
「ちょっと、シェラさん。」
「カシウスさんに
奥義というかなんというか何がどういう原理でそう見えるかは知らないが、鬼畜ラフトであることには変わりない。
というか、絶対受けたくない…
「…はっ。コホン、遠慮するわ。ところで、何してたのよ?」
「ん~?旅行用具一式と替えのパジャマ探してたの。お気に入りがなかなか見つからなくって…」
やっぱりね。
「ぱ、パジャマぁ?」
「…行くの?エステル。しょーじき、準遊撃士には荷が重いと思うけど。」
「あ…」
この場合は、エステルに付いてくのが吉だろう。
カシウスには監s…もとい、護衛としてリオをつけてある。
そろそろ情報部も動き始めるだろう。
もう、動き始めても良い頃だ。
「モチのロンよ。あの悪運が強い父さんに限って何も無いとは思うけど…じっとしてるのは性に合わないしね。ちょっくら行ってくるわ。」
「はは…全く君って子は…前向きっていうか図太いっていうか…」
「何よ~、失礼しちゃうわね。どうせヨシュアもアルも付き合ってくれるんでしょ?」
「勿論。」
というか、カシウスが帰って来るまではエステル達に張り付くつもりではある。
やむを得ない場合は除いて。
「当たり前だよ。…定期船は運航中止みたいだし、ボースまで街道を使うしかないけどね。」
「歩いてボースまでか…どのくらいかかるのかな?」
アルシェムだけならば3時間ほどあれば着く。
全速力で駆け通し、魔獣を完全無視さえすれば。
アルシェムなら、その気になれば、3日もかけずに王国一周マラソンが出来る。
まあ、一般的な遊撃士なら…
「遊撃士なら急げば半日よ。しかし全く…そういうことなら話は早いわね。あたしも乗せてもらうわ。」
正直、シェラザードの方が足手まといだ…
確かに鞭の腕前は良い。
アーツにも適正はある。
だが、それだけだ。
才能はあるかもしれないが、知能派という訳でもない。
「こんなに遊撃士が抜けてだいじょーぶなんですか?」
正直、付いて来んなと言いたい。
だが…
「あたしは先生の弟子よ。留守番なんてしてられますかっての。仕事は他のメンバーに回して貰うわ。」
「シェラ姉…」
「シェラさん、ありがとうございます。」
こう言われてしまっては、無理だ。
「礼を言われる筋合いはないわ。これだけの仕事を新人だけには任せられないってことよ。」
もしもこの事件が猟兵団によって引き起こされていたなら、この3人は放置していくつもりだ。
足手まとい以上に、死ぬ可能性の方が高い。
ベテランのシェラザードでも同じ。
アルシェムだけで対応した方が生存率が上がる。
「む~、悔しいけどそうだよね。まあ、シェラ姉が一緒だったら凄く心強いし。」
「宜しくお願いします。」
「宜しくです、シェラさん。」
…まあ、空賊程度なら鍛えるには丁度良いかも知れないが。
その辺りを見極める必要がありそうだ。
「ふふ、こちらこそ。取り敢えず、明日の朝、出発前に
その日はそのまま寝た。
旅行の準備は、既に済んでいる。
アルシェムは、いつ自分が消えても良いようにと自分の荷物をいつも纏めてあるから。
感想ありがとうございます。
前回のネタさんは個人的にはほぼ全部「英雄伝説」から引っ張ってきたものなのですよ。
アルトネリコさんがわからないのです…
何の前触れもなしに妖精が降って来たり。
→那由多の軌跡
短剣を投げつけたら魔女の最後の力で世界が救われたり。
→英雄伝説 白き魔女
太陽が黒くなって世界を滅ぼそうとしたり。
音楽だけで世界を救える
→英雄伝説 海の檻歌
概念が違うはずなので前作、というわけではないですが、古臭い感じのゲームです。