雪の軌跡 作:玻璃
投稿できないからって3日おきになっているのを。
では、どうぞ。
宿屋の一階へと降りると、思わず言葉が漏れた。
「…全く。わたしもエステルが移ったかな…」
そんなアルシェムに、エリィが声を掛けた。
「アル、珍しく遅かったわね?」
「…エリィ。わたしだっていつも早いわけじゃねーんだけど…」
「…どうかしたの?何だか疲れているみたいだけど…」
「その状態のエリィには言われたくねー。」
エリィは、足が痙攣した状態で椅子に座って情報を集めていた…
「う、煩いわね!仕方ないじゃない!」
「いっそ帰りも歩く?」
「勘弁して頂戴っ!」
まあ、無理なのは分かっている。
「で、どうだった?」
「ダメね。農作物以外は足を捻った程度の被害しかないし、目撃者がいないのよ…」
「ふーん…こっちもダメ。ただ、聖ウルスラ医科大学は人的被害が出てるみてーだから…問題は同種かどーか、かな?」
別種である可能性があるから鬱陶しい。
「それって…別の魔獣の可能性があるってこと?」
そう言ってるだろうが。
その時、ロイド達が宿屋に入ってきた。
「毛とかが落ちてれば、科学的に証明できるかもね、ロイド。」
「ああ、そっちも手掛かりナシか…こっちも、神狼説しか出なかったんだ。」
ということは、この場所の犯人は神狼の可能性が高い。
「じゃあ、移動すっか?」
「そうだけど…歩いて帰るのは無理そうだから、バスに乗ろうか。」
バス停へと、移動する。
時刻表を見ると、次のバスは1時間後に出る予定になっていた。
「次のバスまでは1時間近くありますね…」
「てぃ、ティオちゃん…歩くのだけは勘弁して頂戴…」
「村で時間を潰すか…」
そこに、ハロルドがやってきた。
今は、少しだけ気まずいから。
「…おや?」
「…ハロルドさん。」
「アル、知り合いなのか?」
だから、何があっても一緒に帰るのだけは避けたい。
「この方は、さっき事情聴取した貿易商のハロルド・ヘイワーズさん。ハロルドさん、これが特務支援課のメンバーです。」
「そうなんですか…何かお困りですか?」
「いや、その…」
ロイドの態度で、知られてしまった。
今のハロルドは、ただのお人好しだから。
「…そうだ、私は今から市の方へ戻るつもりなんですが、良ければ空きがありますので一緒にどうですか?」
「空き…?」
こら、エリィ。
目を輝かせるな。
「…あの導力車、ハロルドさんのでしたか…」
「成る程。いや、でも悪いですし…」
「いえいえ、おっさんの話し相手にでもなって下されば。」
おっさんて。
まあ、間違いではないが。
「…ど、どうする、皆。乗せて貰うか…?」
…仕方がない。
このままでは、ロイドは押し切られるだろう。
だから。
「…ロイド。わたし、そーいえば街道に気になるところがあるから先に帰ってていーかな?」
「え…」
「だいじょーぶ、面白いモノが見れるよ。」
アルシェムは、街道を走り始めた。
暫くしてから、導力車が走り始めた。
魔獣がどんどん狩られていく様を、ロイド達は見守る羽目になった。
クロスベル市に着く。
「…アル!出鱈目すぎるわよ!?」
「え、アレがわたしのデフォルトだけど?」
導力車、遅すぎるんだよ。
「しれっと言うなよ…」
「さて、聖ウルスラ医科大学、行く?」
流石に、全会一致で明日になりました。
次の日。
「…何だろー…ものっそい、やな予感するんだけど…」
そろそろ、エステル達に捕まる気がする。
「気のせいじゃないですか?」
「因みに、支援要請は何か出てるか?ティオ。」
「ええ、昨日に引き続き食材集めの依頼、新しいのは臨検官補佐の募集ですね。」
臨検官補佐は、恐らく人手がいるだろう。
「うーん…」
「ロイド、何かねーかちょっと回ってみるから、食材頂戴。」
「分かった。頼むよ、アル。」
「そっちもね。」
単体でも動けるようになって欲しいもんだ。
そう思いつつ、《モルジュ》へと移動する。
「こんにちは。特務支援課です。」
「お…?ロイドじゃないのか。」
「済みませんね。必要な食材は何ですか?」
ロイドは別の仕事をしています。
「ああ、魔獣の魚肉が4つと、魔獣の卵3つだ。」
ということは、足りる。
自前のものだけで足りた。
「はい、どーぞ。」
「お、ありがとう。」
「じゃー、失礼します。」
外へと出ると、ふくれっ面をした女性がいた。
後、何故か視線を感じる。
「…何かお困りですか?」
「…オスカーだけズルい…私も食材足りないのに…」
…そ、そうか。
「良ければ、まだ食材はありますからお分けしますよ?」
「本当に!?」
嘘を吐いてどうする。
モノによるが。
「じゃ、じゃあ魔獣の卵を2つ、お願い出来る!?」
それなら、まだまだある。
「はい、どーぞ。」
「あ、ありがとう。」
「お役に立てて何よりです。じゃ、また何かあったら。」
《モルジュ》から離れて、視線の方角へと振り返る。
すると、そこには…
「…リュウに、アンリ?どーかした?」
子猫を抱いたアンリとリュウがいた。
「あ、その…」
「子猫が何か迷子みたいで…」
首輪はしている。
だが、どこか手作りっぽい。
「…ふむふむ、飼い猫っぽいね。どこで見つけたの?」
「住宅街の方から歩いてきたんです。しかも、何だか大人よりも僕達に懐いてるみたいで…」
ということは、子供が飼い主か…
もしくは、餌付けしているか。
「ん、分かったよ。この付近で見たことは?」
「うーん…拾った時が最初かも知れないです。」
「ありがとー。住宅街から探ってみるよ。子猫、預かっていーかな?」
柔らか。
潰しそう。
そんな子猫を、優しく抱くのに苦労しつつ。
「あ、はい。」
「じゃ、行ってくるよ。」
住宅街へと、アルシェムは向かった。
「住宅街で、猫を飼ってそーな家は…」
「にゃぁん…」
「あそこ、かな?」
何となく、子猫がリバロ家に反応しているようなので聞き込みをしてみる。
「済みません、この家で猫を飼ってはいませんか?」
「いや、心当たりはないが…」
いや、後ろの娘さんがじっくり見てますから。
「…そーですか。ありがとーございます。」
娘が追いかけてくるのを待つ。
すぐに、少女はやってきた。
「…来た。やっぱり、あなたの家だったんだ。」
「…え…分かってたの?」
「何となく、かな?飼いたいなら、説得に付き合うよ?」
このまま放置するわけにもいかないし。
「…で、でも…この子、パパの書類を…」
「躾は大事だよ。本当に飼いたいなら、それも含めて言おーか。」
「…分かった。」
リバロ家へと戻り、少女が父親に話しかけた。
「ん?どうしたんだい?サニータ。」
「サニータは、猫を飼いたいの。」
色々と必死になって言っているのを聞き流す。
聞いたところで、感情移入出来るわけでもないから。
「あ…ありがとう、お姉さん。」
話は終わっていたようだ。
「気にしないでいーよ。それが仕事だからね。じゃ、また何かあったら。」
アルシェムは、ロイド達の支援要請が終わっているか確かめに、クロスベル駅へと向かった。
すると、丁度ロイド達が出て来たところだった。
「…終わった?ロイド。」
「ああ…良い経験だったよ。」
それは良かった。
「じゃあ、このまま南に出ちまおうぜ。」
そうして、特務支援課はバス停へと向かった。
リバロさん家じゃなかった気がする。
誰だっけこれ。
では、また。