雪の軌跡 作:玻璃
いきなり増えてた気がして割と驚いています。
それと、話数については今度編集します。
今日はちょっと無理なので、時間がとっても有り余っている日とか。
ただし、九月以降になる可能性が大です。
では、どうぞ。
アルモリカ村の魔獣
特務支援課設立より、暫くして。
「…不可解な魔獣被害、ですか?」
「ええ、そうよ。」
ベルツ副司令から、依頼がきた。
「被害の発生場所はこの調書を見て頂戴。」
「…アルモリカ村に、聖ウルスラ医科大学に、マインツ鉱山町?何このクレイジーな感じ。」
魔獣の生息範囲にしては広すぎる。
「ああ、場所がバラバラすぎるし…何よりも被害の差がおかしい。」
「一致してるのが狼型魔獣ってだけじゃなぁ…」
「不自然すぎるわね。」
それが不自然なわけではない。
全てが同じ型である保証はどこにもないのだ。
「…実際に行って調べてみますか?」
「そうだな…まずは、時系列順に追おうか。」
それ以外に手掛かりを得る方法はない、とロイドは思っているのだろう。
「引き受けてくれるのね?」
「勿論です。」
「じゃあ、宜しく頼むわよ。」
そして、ベルツ副司令は去っていった。
「因みに、支援要請は?」
「あ、はい、えっと…延滞本の回収に、食材集めの依頼、それにこれは…」
「何々?…新サービスの運用協力?ふーん…」
手分けするには、まあまあの依頼だ。
「手分けして片付けてから、アルモリカ村に向かおうか。じゃあ…」
「延滞本は人手がいりそうね。食材は…ロイド、この方って知り合いよね?」
「ああ。使いそうな食材は…まだ持ってないな。向かいながら集めるしかない。」
アルシェムは定期的に魔獣を狩っているが、流石に今はない。
「そうだな。じゃあ、どう振り分ける?ロイド。」
「うーん…じゃあ、手際の良いアルとエリィが新サービスに協力してくれ。終わったら俺達に合流…出来たら、してくれるか?」
「分かった。」
「アル、セピスは大丈夫なの?」
いや、わんさかありますが。
「実は置き場所に困ってたとこ。んじゃ、行こっか。」
IBCへと向かう。
「あ、ランフィさん。」
どうも、受付嬢は知り合いのようだ。
「これはこれは…エリィお嬢様。申し訳ありませんが、マリアベル様は今所用で…」
…ここで名前が出て来るか。
ああ、この先は面倒なことになりそうだ。
「今日はベルに会いに来たんじゃないのよ。支援要請を出してらしたでしょう?」
「ああ、あの件ですか。では、セピスをお願いします。」
「はい、お願いしま…す…って、アル。ありすぎよ!?」
アルシェムの手の上には、盛り切れないほどのセピスが。
「だって、前のが残ってて…」
「お、お預かりしますが本当に宜しいですか…?」
「勿論。」
別に、余ってる屑セピスだからいらないし。
換金を終えると、結構な額になっていた。
そのまま貯金して貰っておくことにする。
今は持ち歩くのが面倒だし。
「…うまく行きましたね。」
「あ、でもやっぱ地セピスと空セピスは取り違えそーだし、気を付けたほーがいーかも。」
「ええ、そのようです。本日はご協力頂き、ありがとうございました。」
「いえ、お気遣いなく。では、失礼します。」
出来るだけ早く去りたかったので、後があるというのはありがたかった。
行政区へと向かうと、図書館の前にロイドが立っていた。
「…お、終わりかけかな?」
「…フェイさんからの返却は貰ったよ。」
「クラリスさんって人からも貰ってきたぜ。うっかりで忘れられてたみたいだから、危なかったんじゃねぇか?」
ここまでは普通だったのだが。
「…レイモンド捜査官、軽蔑します。」
ティオが爆弾を投下した。
「何故に!?」
「そりゃ、大陸を動かした美人たちをグラビアとかと勘違いしてたんじゃねーの?」
「その通りです、アル。早かったですね?」
「え、これ時間かかりすぎ…」
いつもの平均タイムを大幅に下回っている。
「…アル、あれ以上の速度じゃあちらが処理しきれないわよ…」
「そー?」
「全く…」
ロイド達が本を返却するのを待つ。
流石に、早かった。
「さて、アルモリカ村に向かおうか。」
東通りを抜けて街道へと出ると…
「あ、バスが…!」
丁度、バスに出られてしまった。
「やられたな…」
「…次は2時間後ですか…折角ですし、歩きませんか?」
「へ…」
無理だから。
「ティオ。エリィは一般人だから。無理だから。」
「あら、意外と行けるかも知れないわよ?」
「その根拠のねー自信は一体どこから…」
徒歩で、アルモリカ村へと向かう。
無論、魔獣を殲滅しながら。
「アル。過保護すぎませんか?」
「何で?」
「街道から離れた魔獣を中心に狩りすぎなんですよ…」
其れのどこが過保護か。
「逆に、何で遊撃士が一掃してねーのかが不思議で仕方ねーんだけど。見る度に湧いてるし。」
リベールとは違うのだろうが、危険すぎる。
「流石に今の人数では無理でしょう。だからって、アルがそこまで徹底する理由が分かりません。」
「誰もやんないからわたしがやる。当然じゃねーの?」
それは、当然のこと。
そう、少なくともアルシェムは思っていた。
それに、魔獣の出没状況で異変に気づきやすいのだ。
「…それは良いけどよ…」
「どーしたの?ランディ。」
「お嬢がグロッキーだぞ。」
折角目を逸らしていたのに、指摘された。
全くもう。
「…言わんこっちゃねーな…」
「な、何で、ティオちゃんは元気なの…」
「色々事情がありまして。」
どうやら、ティオは《影の国》で修行していたようだ。
善哉善哉。
「まさか、ティオがちゃんと着いてこられるとは思わなかったけど…」
「ロイドさん。私は子供じゃありません。…まあ、エリィさんの体力を考慮に入れ忘れはしましたが。」
「あ、足が痛いわ…」
もう、エリィは動けなさそうだった。
情けない。
「休憩所があるけど、休むか?エリィ。」
「村まではもう少しなんですが。」
逆に、ティオはとっとと言って休みたいと主張している。
「こらこら、ティオすけ…」
気持ちは分かるが、言ってやるな。
「…ランディ、余裕は?」
「勿論大丈夫だが?」
「持ってってあげてよ…」
「そうだな…」
エリィはランディに担がれた。
そして、漸くアルモリカ村へとたどり着いた。
「長閑な田園風景ですね…」
「…も、もう歩けないわ…」
ちなみにティオは感動していて、エリィは疲れ果てている。
「だらしねーな、エリィ…」
「兎に角、村長に話を聞いてみよう。」
ロイドの先導の元、村長宅へと向かう。
そこでは、村長が魔獣の被害が神狼だとする説を教えてくれた。
「…神狼、ですか?」
「うむ。」
「…白い毛並みの、大きな狼型魔獣…か。」
それは、確か…
聖獣だったはずだ。
このクロスベルの。
そして、あの…
「…ありがとうございました。他の住人の方にも事情をお聞きしても?」
「ああ、構わんよ。」
考えているうちに、話は終わってしまっていた。
「じゃあ、手分けして聞き込みをしようか。俺、ランディ、ティオは村人から。アルは宿泊者から。エリィは宿屋の経営者から。…どうかな?」
「わざわざ聞かねーの。」
取り敢えず、アルシェムは聞き込みへと向かった。
その先に、誰が待つかも知らずに。
ここからまとめようと思ったのに絶対区切りたい欲求が出てました。
だめだこれ。
では、また。