雪の軌跡 作:玻璃
では、どうぞ。
「暫く待て、アルシェム。」
「犬じゃねーんだし。待てるよ。」
警察署内の、会議室にて。
アルシェムは、他に来るはずのメンバーを待っていた。
リオもきちんと就職出来たらしい。
「…お、1人目だな。」
扉を礼儀正しく叩き、入ってくる女性。
「済みません、失礼します。」
「良く来たな。特務支援課、課長のセルゲイだ。」
「エリィ・マクダエルです。…いえ、こちらからお願いしたことですから。それで…そちらは?」
銀色、というよりは真珠色、の方が近いだろうか。
兎に角、色がかぶっていることに変わりはなかった。
まあ、気にはしないが。
「初めまして、アルシェム・シエルです。宜しくね。」
「エリィ・マクダエルです。気軽にエリィって呼んで頂戴ね。」
それなら良かった。
間違いなく全員が年下だから、そう言ってくれると助かる。
「りょーかい、エリィ。年齢は多分そう変わらね、ないだろーし、呼び捨ててくれて構わね、ないよ。」
「ふふ、普通に喋っても良いわよ?アルシェム。」
「ごめん、直らなくて…暫く自由に生きてたもんだから。」
まあ、堅苦しく話す機会もなかった。
「あら、そうなの?」
「早速親睦を深めてる所悪いが…」
次の人が来るのだろうか。
そう思って、気配を探ると…
「…え。ちょ、セルゲイ課長?ねー、じょーだんだよね!?」
とても身に覚えのある気配がした。
「何がだ?」
そうこうしているうちに、彼女が入ってきた。
「…失礼しま…す…」
彼女は…
ティオ・プラトーは、その場で固まった。
「何だ?知り合いか何かか?」
そのセルゲイの声で再起動したティオは、控えめに叫んだ。
「な、何でこんな所にいるんですか、アル!?」
「あー…色々あってね。てことは、エプスタイン財団の技術者ってティオなんだ。」
「そうです。まさか貴女がいるなんて…」
アルシェムもそんなこと思ってもみなかった。
「えっと、アルシェム?そちらの方は?」
そこで、取り残されていたエリィが話に入ってくる。
「ティオ・プラトー。わたしの友人にしてエプスタイン財団の技術者ちゃんだよ。ティオ、こっちが同僚になるエリィ・マクダエルさん。」
「ティオ・プラトーです。宜しくお願いします、エリィさん。」
「宜しくね、ティオちゃんって呼んでも良いかしら?」
どう見ても、下に見ている。
まあ、確かに年齢は下なのだろうけれど。
「構いません。」
「ティオちゃんは、エプスタイン財団の人なのよね?何かのテストか何かで来たの?」
「はい、そんなところです。エリィさんは…?」
兎に角、会話を続けられるのならば続けなければ。
人間に、ティオは慣れなければならなかった。
初対面の人間には特に。
「私は…そうね、社会勉強かしら。アルシェムは?」
「え、セルゲイ課長にナンパされたから?」
そう言った瞬間。
「課長…?」
「…じとー。」
女性陣の目が生ぬるくなった。
「その言い方は止めろ…来るって言ったのはお前だろうが。」
「ま、そーなんだけどね。…おっと。」
気配を探りっぱなしにしていたら、異質な気配がやってきた。
「どうかしたの、アルシェム?」
「おいでなすったようだな。」
扉が開かれると、そこには…
「チィーッス。」
「あれ?ナンパ男?」
オルランドのご子息がいた。
「え゛…」
「あ、ごめん。こっちの話だよ。初めまして…でもねーんだけど、アルシェム・シエルだよ。」
一瞬見ただけだ。
だが、強烈過ぎて記憶に残った。
「ランディ・オルランドだ。いやー、それにしても、課長さん。よくこんな綺麗どころを集めたっスね!」
「偶然だから…っと、流石に遅いな。ちょっと見てくる。」
「行ってらっしゃい。」
セルゲイが外に出て、最後の1人を探しに行く。
「…と、兎に角、初めまして。エリィ・マクダエルです。」
「…ティオ・プラトーです。宜しくお願いします。」
エリィとティオが自己紹介する中。
アルシェムは、ランディを品定めするような眼で見ていた。
「おう、宜しくな!…っと、どうした?アルシェムちゃん。」
「いや、気のせーだよ。」
ふ抜けている。
これでは…
「何だぁ?もしかして、もしかすると…」
「その手の話じゃねーから。ほら、姿勢正して、シャキッと座る!」
「うぇっ!?いきなり何だよ!?」
最後の奴が来たからだ。
「ええっと、失礼します。」
扉が開き、入ってきたのは…
「コレで全員だ。」
「ロイド・バニングスです。本日付で…」
「あー、堅苦しいのはナシだ。」
まさかの、バニングスだった。
「初めまして、エリィ・マクダエルです。」
「ランディ・オルランドっす。」
「…ティオ・プラトーです。」
「アルシェム・シエル。宜しくね?」
こいつは、まさか…
「な、何で疑問形?」
「や、ごった煮感半端ねーし?何このクレイジー人選。」
いや、そうなのだろう。
何だこの人選。
元猟兵に、市長の孫、エプスタインの技術者に、あのガイの弟。
クレイジーすぎる。
「…言うだけ無駄かと。」
「兎に角、業務内容は実地でだな。ほら、キリキリ移動しろ。」
そうして、特務支援課の面々はジオフロントへと向かった。
実は全員に何かしらの関係がありましたフラグ。
重要か否か。
では、また。