雪の軌跡 作:玻璃
では、どうぞ。
何故かケビンとリースが気絶していたようだが、全員が無事に集合した。
「さーて。セレスト、さん?ここは崩れるんじゃねーの?とっとと脱出口開けや。」
「アルちゃん、何か性格変わっとんで!?」
「喧しいヘタレネギの癖に。」
「ぐはっ…」
文句も言いたくなる。
ここは、アルシェムの世界だった。
だけど、もう違うのだから。
「分かりました。どうやら、彼女が用意してくれたようですから…今ここで、開いてみましょう。」
セレストが、浮かび上がって。
そして、《天上門》が開く。
「あ…」
「現世への…出口。」
光の先に、歩んでいけるのならば。
それは、とても幸せなこと。
「各自、取り込まれたときにいた場所の近くに戻れるかと思います。」
「そうか…」
「…お別れ、みたいね。」
みたい、ではなく、実際にそうである。
別れは、いつだって唐突だ。
それは、いつもアルシェムから切り出すものだと思っていた。
「え、え…もう、ですか…?」
「な、何だか、全然実感がないっていうか…不思議な感じ。」
それでも、別れなくてはならない。
この先、アルシェム達が彼らに関わることは…
ほぼ、ないと思っていた。
だから。
「それ…」
「悪いね、ジンさん。わたし達が先に行くよ。…これ以上、ここにいたって仕方ねーし。」
「…orz」
落ち込むな。
先陣を切るのは、アルシェム達で良い。
「さてと。それでは、あたしから。」
「メル先生…」
「そんな顔をしないで下さい、エステル。それと…いつか、言おうと思っていたんですが。」
あ。
「あたし、エステルとそんなに年齢かわりませんからね。」
言っちゃった。
「え。」
「まだ成人していませんから。そうかわらないでしょう?」
「あ、あ、あ、あんですってー!?」
驚愕の事実、だったようだ。
アルシェムは知っていたのだが。
「それでは皆さん。ごきげんよう。また逢う日が来ると良いですね。」
そう言って。
メルは、帝国へと帰っていった。
「それじゃあ、次は私達ね、レーヴェ?」
「ああ、そうだな。」
カリンとレオンハルトは相変わらずの熱愛っぷり。
「ああ、そう言えばアルシェム。」
「何?」
「今度、結婚式をやるの。来れるんだったら来なさいね?」
…やっとか。
「エステルとヨシュアに言ってよ。わたしは…多分、行かないから。」
「…そう言うと思ったわ。でも、教えておきたかったのよ。…命の、恩人にね。」
「カリン…」
行かないんじゃない。
行けない、のだ。
エステル達と顔を合わせづらいから。
「あ、出来れば今度写真見せてよ。いつになるかはしんねーけど。レオン兄のタキシード見たい。」
「勿論よ。」
「おい!?」
タキシードが負けなければ良いが。
「それじゃあ、皆。また逢う方も、そうでない方も。お元気で。」
「俺が言えた義理ではないが…その、平穏を祈る。」
そう言って、レオンハルトとカリンはリベールへと帰っていった。
「あ、じゃあ、次はアタシが行くよ。」
「ね、ねえ…リオさん。も、もしかして…さ。」
「ん?もしかして年齢の話?」
エステルの目に縋る光が見える。
だが、残念だったな。
「残念。アタシはメルの一個下だから。」
「あ、あんですってー!?」
「あはは、やっぱり同いに見られてたか。」
リオは童顔だから。
「んじゃ、またねエステル。きっと会える気がするけど、その時はよろしくね?」
「勿論!」
そう言って、リオはクロスベルへと帰っていった。
「…ティオ、一緒に帰る?」
「あ、ええ。」
次は、アルシェムの番だ。
「…その。皆さん…ありがとうございました。あまりお役には立てなかったかもしれませんが…」
「あ、あのあの、ティオさん。…また、お話ししたいです!」
「…感無量です。」
え、そこまで?
「…ティオ。」
「珍しいですね、レンさんから声を掛けて来るなんて。…どうか、しましたか?」
「…なんでもない…」
レンが、何かを言いかけてやめた。
「…そうですか。…アル、私は先に帰っていますね?」
「あー、はいはい。」
こういうところは、おせっかいなのかもしれない。
ティオも、先に帰った。
「…レン。」
「…何よ…」
「ゆっくり、悩めば良いよ。さよならは、いつか絶対に来るものなんだから。そのいつかが来るのはいつかは分からない。だけど、さ。後悔は、したくないよね?」
後悔だらけのアルシェムが言えたことではない。
だけど。
レンは、まだ間に合うはずだから。
「…そう、ね…」
「レン。わたしとは、きっとまた会えるから。それは分かってるよね。だから…また、会うために。」
そう言って、急に怖くなった。
それでも、ここからは出なくてはならないのだ。
ここは、アルシェムのいるべき世界ではないのだから。
「さよなら。また、会おうね!」
「…分かったわよ…今はまだ行かないけど、いつかきっと会いに行くわ。だから…待ってなさいよ、アル。」
そう、レンが言ってくれたのだ。
だから、アルシェムは…
現実に、帰った。
ちょっとだけ間を開けて零に向かいたいと思います。
でもね、今まだ記念祭やってるところなんだけどなあ。
では、また今度。