雪の軌跡 作:玻璃
では、どうぞ。
エステル達との会話で心が荒んでいるところに…
「…シエル。」
「ん、どしたの、レン。」
癒しの救世主が現れた。
「シエルは…守護騎士第四位、よね?」
訂正。
何で知ってんのレン。
「…何で分かったの?」
どうして、知っているのか。
どこまで、知られているのか。
結社にも、知られてしまっているのか。
それが、問題だった。
「何となく、そうなんじゃないかなって思ってたの。あのおっきな法剣使いさんと2人で赤い星座と黒月に大打撃なんて…相方がシエルじゃなきゃ出来ないでしょ?」
「買いかぶりすぎだよ。」
アレは、運が良かっただけだ。
単純に、それだけ。
まさかあそこに《猟兵王》が来るとも思っていなかったのだが。
「それと。おっきな法剣使いさんの他にも…多重アーツの人と、レーヴェと、ヨシュアのお姉さんが従騎士なのよね?」
…本当にもう。
どこまで、お見通しなんだか。
というか、ちゃんと名前を呼んであげてくれないか。
「その通りだよ。今はレオン兄とカリン姉はリベール付きだけどね。」
「…シエルは…盟主に頼まれて共和国に行ったときに聖痕が刻まれたのよね?」
「…レン…流石にカンが良いよね。全く以てその通り、だよ。」
どこまでお見通しなのか。
聞いてみたい気もあった。
…だけど。
怖くて、聞けない。
「聖痕が刻まれたから、シエルは《銀の吹雪》になったのね。その時に結社を見捨てるって選択肢もあったと思うんだけど…どうして、あのタイミングじゃなかったの?」
それは、簡単なこと。
レオンハルトとヨシュアの記憶がどうなっているのか知りたかった。
レンと一緒にいたかった。
ただ、それだけだった。
「…違法なことをしたかったんだよ。それに…何より、レンと一緒にいたかったからね。」
「…あの地獄を壊すため、よね。でも…」
それでも、壊しきれなかった。
潜伏していた『彼』の居場所を探らなければならなかった。
そして…
やっと、手掛かりまでは掴んだのだ。
絶対に…
絶対に、逃がさない。
「あの地獄は絶対に潰す。欠片1つ、残してなんかやるもんか。」
外法認定でも何でもして、合法的にぶっ殺す。
それが、皆への弔い。
「…シエル…」
「レンは、クロスベルに向かってるんだよね。わたしも、近々行くことになってる。」
その時が、『彼』の終わりの時だ。
『彼』がいるのはクロスベル。
だから、アルシェムは決着をつけに行く。
もっとも、それだけが目的ではないが。
それだけのために行くんじゃない。
復讐だけで、終わってしまうなんて…
そんなこと、出来ない。
「…そうね。…確かめなくちゃ、いけないから。」
「そっか…レン。わたし、さ。地獄を潰すためだけにクロスベルに行くんじゃないんだ。」
「…そう、なの?」
やらなくてはならないことがあった。
ただの自己満足でしかないこと。
だけど、赦せるものでもなかったから。
「レンより先にあの人達をぶん殴っちゃったらごめんね?」
多分、レンよりも先に会うことになるだろう。
そして、個人的に赦せるものでもないから。
だから、ぶん殴る。
事情によっては平手くらいで済ますかもしれないが。
それでも、ぶん殴る。
「…え…」
「流石に、さ。わたしの気持ちも治まんないし。だから、さ…自己満足でしかなくても、やっちゃうかもしんないから。」
レンが、どうして共和国にいたのか。
とっくに調べはついていた。
だから…
だから。
今、彼らが何を考えて生きているのか。
それだけは、確認しなければならなかった。
「…シエル…」
「さて、レン。そろそろ行かないといけないんじゃない?」
エステルが怖い顔で睨んでるのが見えるし。
声が聞こえる範囲でもないが。
「ま、待って、最後にもう1つだけ聞かせて。」
レンはそう言って、深呼吸して…
そして。
「シエル、本当は何歳なの?」
そう、言い放った。
「…か、考えないようにしてたんだけど…」
「精神的にはヨシュア達と同い年、よね。だけど…」
「肉体的には、千歳くらい?あー、考えたくなかった…」
こういうのって、何て言うんだっけ。
ロリババァ?
ババァロリ?
謎である。
「じゃあ、やっぱりシエルはお姉さんね♪」
「お姉さんとかそういうレベルじゃない気がするんだけど…」
つ、突っ込んだら負けである。
「そ、それで…そ、その…」
「レーン!早くしないと置いてっちゃうわよーっ!」
ご機嫌斜めのエステルが呼んでいる。
「…んもう…エステルのバカ…」
「行こう、レン。ここにいたって、先には進めないから。」
「…そう、ね。」
そうして。
レンとアルシェムは皆の待つ広場へと向かった。
あ、意外と短い。
では、また。