雪の軌跡 作:玻璃
入れなくてもいいけど、入れたほうがいいのかも。
では、どうぞ。
「ごめん…多分、暫く寝ないとこれ復活できないかも。」
それが、アルシェムの出した答えだった。
「そうか。なら俺が…」
「私が背負います。」
「って、え!?」
何故か、カリンに背負われることになって。
一行は、進み始めた。
「あー…何か、ごめん…援護はするからさ…」
「良いから寝てなさい。」
「無理。この先何があるか分からない以上、見逃すわけにはいかないし…見逃させてもくれなさそうだから。」
因みに、この道。
結構魔獣のような何かが出るのだが、レオンハルトの一撃で死んでくれる。
足りなければアルシェムが導力銃で援護。
それで、事足りた。
「…何かいるぞ。」
「あれは…この間からちょっと出て来てるグールメンかな?」
ちょっとした広場に、ソレはいた。
「…ナゼダ…ナゼ、オマエガ…オマエサエイナケレバ…」
それだけで推測がつくというのも、おかしな話だが。
「あは…どれだけ恨まれてんだろ。」
「…済まん。」
「謝んないでよ。悪いのは、アイツだから。」
これは、きっと…
「オマエサエイナケレバ…コノムラハ…!」
ハーメルの亡霊。
「黙りなさい。アレは、エルのせいじゃないわ…!」
「オマエサエイナケレバァァァァァッ!」
そう言いながら、襲い掛かってくるグールメンの群れ。
それは、きちんとあの日死んだ村人の数と…
猟兵の数だけ、いた。
「流石に、多いな…!」
「降ろして、カリン姉。」
「そうするしかないわね…!」
アルシェムがカリンの背から降ろされてから、5分。
それだけで、グールメンは殲滅されていた。
「…ごめん…皆。」
「…行くぞ。ここには…もう、用はないからな。」
カリンに背負いなおされて、進む。
「何か、ネギのとばっちり喰らってる気がする…」
「そうね…後でぶん殴ってやろうかしら。」
「そうだな。」
何でそこそんなにノリが良いの?
と、言いたいのを堪えて進む。
そうして、次の広場が見えてきた。
「あれは…」
「今度はダレかな。」
「…タスケテ…ダレカ…ダレカ、タスケテ…」
ただの亡霊にしては、聞き覚えのある声だった。
「これは…一体、誰の霊だ?」
「…ズルイヨ…キミダケ、タスカルナンテ…ジュウロクバン…」
それだけで、分かった。
「…《楽園》の…」
それならば、この数にも納得がいく。
《楽園》で死んだ子供の数。
だけど、助かったのはアルシェムだけでもないのだ。
「タスケテヨォォォォ!」
「…お願い。解放…してあげて。」
それだけで、レオンハルトとカリンは応えてくれた。
アルシェムを降ろし、一気に殲滅する。
「…ごめんね。」
「…お前は悪くない。あれは…俺のせいでもあるだろう。」
「何でさ。レオン兄は…助けに来てくれたよ。」
《楽園》という名の、地獄まで。
「…進むか?」
「うん。」
そして、再びカリンに背負われて先を目指す。
自分の足で、歩きたいのに。
「…エル…さっきのは…」
躊躇いがちに、カリンが聞いてくる。
「…ん、昔、ちょっとね。」
「…まだまだ知らないことばっかりね、私。」
「知らなくて良いよ。全部は流石に誰にも教える気はないしね。」
例え話したとして。
一体誰が信じるだろう。
こんな、クレイジーな人生を。
「そう…聞いてほしくなったら言って頂戴ね?きちんと、聞くから。」
「ありがと。」
まだ、広場はあるようだ。
「次は…?」
「ゴメンナサイ…リィサ…」
「これは誰だ?」
知らない人だった。
カリンと、レオンハルトにとっては。
「…ま…まさ、か…」
「アノコサエ…タスケヨウトシナケレバ…イキテ、カエレタカモシレナイノニ…」
だが。
アルシェムにとっては…
知らない人であっても、無視は出来なかった。
これは…
「『ユーリィ』、さん…?」
「知り合いか?」
「違う…でも…本当にそうだとしたら…!」
アルシェムのせいで、死んだ人だ。
「シンジュウシマショウ…ギンノ、ムスメ…!」
襲い掛かってくる、グールメン。
それは、今までのグールメンよりも遥かに強かった。
「何故グールメンがレイピアを使う!?」
「速い…けれど、この型って…!」
どう見ても、ユリアの剣だ。
もしかすると、ユーリィはユリアに連なる人間だったのかもしれない。
今となっては、確かめる術もないが。
「動きを止めてくれ、カリン…!」
「分かったわ!」
「鬼炎斬…!」
それでも、レオンハルトの奥義では沈むのだが。
「…やったか…」
「…ごめんなさい…」
「エル…知り合い、だったの?確か、セレストさんにも聞いていた名前だけど…」
知り合い、ではない。
知り合いではないが…
全く関係のない人間でもない。
「…わたしを、ここから連れ出してくれた人らしいよ。」
「…そう…」
死なせてしまった。
だけど、アルシェムでは絶対に助けられない人だった。
「…進もう…」
「ええ…」
そうして、アルシェム達は進む。
向かう先に待つのは、煉獄門だとは知る由もなく。
煉獄門にたどり着くと、そこにはまだ誰もいなかった。
「…来たみたいね。」
「そーだね。…遅い!」
「酷ないかそれ!?結構早うに来たつもりやで!?」
ケビンとリースが、精神的に疲れた様子でやってきた。
「《煉獄門》…『彼の門は歪にして堅牢。生者と亡者を隔てる関所なり…』」
「まんま聖典やな…これ、どうやって開くかが問題やけど…」
だが、そこであまり聞きたくない声が聞こえた。
…聞こえて、しまった。
聞きたくない声。
その名はカワイソス!
では、また。