雪の軌跡   作:玻璃

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梅雨です。
梅雨らしいです。
どういうこった。

では、どうぞ。


ルフィナ

その場に、《影の王》が現れた。

「な…!」

「い、いつの間に…」

カリンとリース以外は、それが誰だか分かっていた。

「フフ…よくぞここまで来た。」

「どーでもいーからさ、とっとと終わらせてよケビン・グラハム。」

そうしなければ、終われないから。

「…そう、やな。早うその悪趣味な仮面外せや、ルフィナ・アルジェント。」

リースは驚愕した。

「え…」

「何なら、引っぺがしたるで…?」

「…流石に、引っぺがされるのはご免ね。」

《影の王》は…

いや、ルフィナ・アルジェントは、仮面を外した。

「ね、姉様…!?」

「久しぶりね、皆…元気そうで何よりだわ。」

「お前は元気ではなさそうだがな。」

というか、カリンとは面識があったのだろうか。

それだけが、謎だった。

「あら…レーヴェ?6年ぶりね。」

「そうだな。」

「相変わらずそっけないわね。そんなんだと愛想尽かされちゃうわよ?」

誰に、とは言わない。

真横でカリンがレオンハルトの脇腹を全力で抓っているのだから。

「鼻を延ばさないの、レーヴェ。ルフィナさんも、止めて下さいね…?」

「面識があるのか?」

「一応ね。それで…ルフィナさん。本気でグラハム卿に罰を与えるつもりですか?」

カリンが、重要なことを聞く。

「え…?」

その意味が分からないのは、リースだけだった。

「そうね。そのために私はここにいるのだから。ケビンがここに来てからの全ては、ケビン自身が望んだことなのよ。」

「言葉は正確に使ってよ、ルフィナ。望んだのは、彼自身であって彼自身じゃない。」

「ちょ、ちょい待てアルちゃん。それは…」

アルシェムには、分かっていた。

これが、本当は『ダレ』なのか。

「流石は《銀の娘》。《影の国》の前管理者だけはあるわね。」

そう嘯くルフィナを睨み付けて。

アルシェムは、言葉を吐き出した。

「…それは、ルフィナが知ってるはずがない情報だって分かってて言ってる?」

「…失言ね。忘れて頂戴?」

忘れるわけがない。

このことを知っているのは、《影の国》にいたセレストだけだったのだから。

「あっそ。別にどーでもいーしね。…罰を望んだのは、ケビンではないってのが重要なんだし。」

「え、ちょ、ちょい待てや!」

「罰を受けたがるのと、受けるのとは違うんだよ。おせっかい焼きが、わざわざ罰を受けさせるためだけにこんな大がかりでバカげたことをするわけがないってこと。」

罰を受けたがるのは、ただのマゾヒスト。

罰を受けるのは、罪人。

そして、おせっかい焼きならば罰を受けさせるために存在するわけがない。

それが、漸くリースにも分かったようだった。

 

「…姉様が、こんなことをするわけがない…貴女なんかが、姉様のはずがない!姉様が、ケビンに罰を受けさせるだなんて生ぬるいことするわけがないっ!」

 

おい。

流石に失礼だろうが。

「…成程な。ならば、ソレは別種の何かというわけか。」

「同感ね。流石に…ルフィナさんにしては、甘すぎるものね。」

レオンハルトとカリンが同時に獲物を構える。

「ふふ…驚いたわ。まさか貴女がここまで…」

「お黙り、ルフィナもどき。」

アルシェムが、導力銃を構える。

「あんたが姉さんやないんやったら、流石に黙ってやられるつもりはないで…?」

お黙り、死す近。

「待てやそれヤバいやろ!?」

あ、違った。

シスコン。

「…はあ。仕方がないわね。ならば、代わりに皆を招待してあげることにするわ。」

「…全員、跳べっ!」

因みに、無駄だった。

「挑発しすぎたかなー…」

「悠長なことゆうてる場合とちゃうで!?」

床がそっくりそのまま抜けてしまったのだ。

「仕方ないなー…我が深淵にて煌めく蒼銀の刻印よ。その力を解き放ち、平らかな床となれ。」

仕方がないので徐々に下に伸ばしつつ氷の床を作るが、結構な距離のようでなかなか着かない。

「カリン、こっちへ!」

「はい、レーヴェ!」

「ケビーン。リース捕まえときなよー。」

甘々空間作り出すな、そこ。

「これ、墜落死ってオチは?」

「流石に嫌やでそれは!?」

「あ…なさそー。衝撃まで3、2、1、0!」

どがっしゃーん、と、およそ人間が墜落した音ではない音が響き渡った。

まあ、氷が割れた音なのだが。

「…っ!」

フィードバックが、予想以上にキツイ。

「大丈夫か、カリン。」

「勿論よ。…じゃなくて。上司の確認が先でしょう!」

「生きてるよー…一応ね…」

まあ、若干頭痛がして体に力が入らないくらいだ。

むしろやりすぎた。

「ありがとうな、アルちゃん。助かった。」

「本当は脱出までしてる予定だったんだけどね?流石に無理かな…」

「…済まん。」

無茶をしたのはアルシェムだ。

だから、別によかった。

「ケビンとリースも…無事だね。」

「ああ、進もか。」

「…そうだね。」

アルシェムは、立ち上がろうとして…

出来なかった。

「エル?」

すとん、と垂直に落ちた。

「…あはは…ダメ、みたい。やりすぎたかな…」

そこで、無情にもケビン達とカリン達の間に障壁が現れる。

「これは…!」

「レーヴェ、斬れる?」

「…いや、無理だ。仕方あるまい…二手に、分かれるしかないな。」

守護騎士と従騎士のチームと、従騎士だけのチーム。

どちらが安全かと言われれば…

無論、守護騎士の含まれるチームだ。

しかし。

動けないアルシェムは、カリン達の方に振り分けられてしまっていた。

「…しゃーない。兎に角、こっちは進むわ。そっちも動けそうなんやったら早目に動いた方がええで?」

「…そーだね。」

そうして、星杯騎士達は別れて進み始めた。




狙ったところから叩き落とされる。
涙目だよおねーさん。

では、また。

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