雪の軌跡   作:玻璃

137 / 269
ペングー教、崩壊。

では、どうぞ。


ツァイスドタバタ劇場(後編)

洞窟全体が揺れて、水面が持ち上がる。

そして…

「…っ!?」

巨大なペングー…

ディバインペングーが現れた。

「何てでかさ…!すげー…」

言いながらも、アルシェムはディバインペングーに向かってつっこむ。

「寸け…あ。」

「くうぇっ!」

びくともしない。

というか、あまりの脂肪の多さに跳ね返された。

流石に巨体過ぎるようだ。

「仕方ねーな…」

この一瞬で棒術具を取り出す。

「見よー見まねで麒麟功!」

カシウスのクラフトを見よう見まねで再現し、更に

「もいっちょ見まねでシュトゥルムランツァー!」

地上最強の女のクラフトを使って強引に弾き飛ばす。

「…だめかー。」

一向にダメージが通っている気配がない。

「ちょっ…やめ、きゃあっ!?」

「リオ!?」

後ろでも何か起きたようだ。

「っつ…気を付けて!ベーコンが…!」

「!?ってしまっ…」

後ろに気を取られている隙に、ディバインペングーに弾き飛ばされた。

「はーっはっはぁ、精霊神様は最強なのだ!」

「お黙りベーコンの分際で!焦がすよ!?」

「我が力を受け取って下さい精霊神様!」

大したダメージすら与えられてないのに、ティアの薬を放り込まれる。

「くええー!」

「…切り札使おっかなー…もう、穴開いちゃってるしー…誰も気付かねーと思うんだー…?」

アルシェムが切り札を使おうとした、その時だった。

そこに、叫び声が聞こえた。

 

「何馬鹿なこと言ってんですかっ…焔舞!」

 

メルの声とともに、火属性アーツが多重発動した。

「くえええええーっ!?」

その一撃で、ディバインペングーは灰すら残さず消滅した。

「メル…」

「何っっでオーブメント1個しか持ってないんですかっ!?」

「いや、試作品だし…」

などと言い合いをしていると、ベーコンが嘆き始めた。

「ななな、なんてことをおおおっ!精霊神様…」

「いや、ディバインペングーにそこまでこだわられても…」

「か…か…かくなるうえはっ!」

そこで、ベーコンは思い切った行動に出た。

「目覚めよっ我が超能力うううっ!」

3人は身構えるが、何も起きなかった。

「は、ハッタリ!?」

「しまった、奥に…!」

湖を渡り、先ほどあけてしまった穴に向かって全速で向かうベーコン。

アルシェムは取り敢えず追うことにした。

「リオとメルはここに待機、10分以内に戻らなければ追いかけてきて。」

「「了解(です)!」」

泳いで湖を渡り、奥へ…

すると、何故かベーコンが逃げ帰って来る。

「ぎゃあああっ!?何だあの…ひいいいっ!?」

「…何かいんの…?」

確かめようにも、暗すぎて確認出来ない。

だが、確かにいる。

それは、1分ほどこちらを窺った後、消えた。

「…一体、何だったの…?」

「もういやだああっ…お家帰るー…」

ベーコンが逃げ出そうとするので、捕まえる。

「ふぎゃああっ!?」

「ちょっと、ご足労願うよ…?」

イイ笑顔で、ベーコンを黙らせて。

「ひ、ひいいいいいっ!?」

ベーコンを気絶させ、取り敢えず湾曲したカーブの奥を覗き込む。

すると…

「…外じゃん…」

おもいっきり森の中に出た。

しかも、若干そこだけ開けている。

まるで何かが着地して飛び去ったかのような…

「アルシェムー!」

「あ、2人とも…追いついて来たんだ。はえーね?」

「いえ…それよりも、ここは良い場所ですね。ここにメルカバを回しましょう。」

そこでメルはメルカバを取りに戻り、アルシェムとリオはそこまでオウサマペングーを運び込んだのだった。

30分後。

「…はえーね…」

「そうだね…一体どこに停めてたんだか…」

メルカバが降り立った。

「さ、乗せてしまいましょう。」

「そ、そうだね…」

ベーコンとオウサマペングーを運び込んだアルシェム達は、一息吐いた。

「…で、メル。だいじょーぶ?」

肩を震わせながら、メルが応える。

「…大丈夫じゃありませんよ…もし…範囲が…間違ってたら…どうしようかと、思いました…」

「ああ、標的だけを狙えるようなアーツしか入れてねーもん。とゆーか、あの場合使うのは火属性だけだよね?」

というか、水辺の生き物に火属性アーツが効かないことがあるんだろうか。

たまにはいるだろうが…

「まあ、そうですけど…」

「特に危険だから火属性アーツは標的にしか当たらねーようなせっけーにしてあるし、問題ねー。それに…ちゃんと、誰も巻き込まなかったでしょ?」

そう。

メルがアーツを多重発動させても、暴走しなかった。

これが一番重要である。

「あ…」

メルに、トラウマを乗り越えてもらうためにも。

「じゃあ、問題ねーのよ。だいじょーぶ。誰も、傷ついてねー。逆にメルは守ってくれたんだよ。だから…ありがとう。」

「…め、メルカバ肆号機、発進しますっ!」

照れ隠しのようだ。

が。

このまま発進されたら困る。

「いや、発進されたらツァイスに帰れねーんだけど…」

「…あ。」

「てか、まだ手配まじゅー倒してねーんだけど…」

「…すみません…」

取り敢えず着陸。

「ごめんね、メル。アルテリアまで頑張って。」

「はい、大丈夫ですよ。…でも報告書は、先に書いて下さいね。」

忘れてた。

手早く報告書を書く。

 

リベール王国ツァイス郊外カルデア鍾乳洞奥の新興宗教について

第四位《雪弾》、従騎士リオを伴い突入。

煽動役、ベーコンと神とみられるオウサマペングーを捕獲、精霊神(ディバインペングー)は消滅した。

被害者とベーコン、オウサマペングーについてはメルカバ肆号機にて輸送。

 

「このあとは書いといてねー。」

「サインだけはしておいて下さいよ?」

「りょーかい。」

 

守護騎士第四位《雪弾》エル・ストレイ、従騎士リオ・オフティシア

 

「…これで大丈夫です。じゃあ、ちょっとアルテリアまで行ってきます。報告後は直接ロレントに帰りますから。」

「気を付けてねー。ヒーナとアインによろしく。」

そしてアルシェムとリオはメルカバから降り、手配魔獣を倒してからツァイスに帰った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

…うわちゃあ。

「…どういうことなんですか、アル…説明してください。」

ティオが、詰問してくる。

まあ、仕方がないだろう。

「説明も何も…見たとおり、なんだけど…」

「アルは、星杯騎士なんですね?」

うわ、直球。

「…そうだよ、全く…明かす気なかったのに…」

「いつから…?」

「…ティオが助け出される前、くらいかな。」

正確には、直前だ。

「…そう、だったんですか…私を助けてくれたエルは貴女だったんですね。」

「そう、なるのかな。」

「水臭いです。…ちゃんと、言わせてください。…ありがとう。」

ありがとうなんて。

「別に、感謝されるためにやったんじゃないよ。ただの敵討ちだったから。」

「それでも、です。」

ティオが抱きついてくる。

ぶっちゃけ痛いのだが、それを指摘することなく拠点へと帰った。




新興宗教に限らず、宗教は怪しいものです。
と、誰かが言っていました。
怒られそうだ(笑)

では、また。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。