雪の軌跡   作:玻璃

136 / 269
コメディです。

では、どうぞ。


ツァイスドタバタ劇場(前編)

アルシェムがツァイスに留学して、数か月がたっていた。

オーブメントを弄り回したり、初日に会ったアクシデントの後遺症を克服したりと忙しい日々を送っていたが、それだけをして過ごすわけにもいかなかった。

今のアルシェムは、遊撃士協会の協力員でもある。

そして、ある日。

「カルデア隧道の手配まじゅー…ね。受けますよー。」

「ああ、好きにして頂戴。…正直、単独で手配魔獣を狩れるようになるなんて思ってなかった。」

「銃のせーのーがいーんですよ。」

…アリバイ作り、完了。

これで新興宗教を潰しに行ける。

「精々気を付けて行ってらっしゃい。」

「りょーかいです。」

アリバイが出来たので、リオを訪ねることにした。

教会で空の女神に祈りを捧げていると、半ギレのリオが教会の奥に通してくれた。

「遅いよっ!!」

「ごめん…で、行けそう?」

「勿論。3日前に連絡はしたから、時間差で出よう。」

アルシェムが先にカルデア隧道に向かい、鍾乳洞の前で待つことになった。

戦術オーブメントのチェックをしていると、すぐにリオが現れた。

どこに隠していたのか、大剣を背負っていた。

「…それ、確か法剣よね?重くねーの?」

リオの法剣は、特注品だ。

普通の法剣の3倍以上の幅がある。

「軽いよ?」

まあ確かに軽々と持ってはいる…

のだが…

その、見た目が破滅的だ。

「ある意味地獄絵図かも…」

「何でよ…」

取り敢えず、2人は乗り込むことにした。

「…で、何なの?その格好。」

「正体がバレちゃいけないっぽいから、プチ変装。」

今のアルシェムは、銀髪ロン毛のヘアピースを着け、レンが買ってくれた服を仕立て直した格好になっている。

更に顔には某怪盗ばりの黒い仮面。

不審者間違いなしである。

というか、ぶっちゃけ不審者である。

少し進むと、灰が動きはじめた。

「灰が…」

「アタシが法術で何とかするよ。だからアルシェムは近寄らせないで。」

「りょーかい。」

アルシェムはおもむろに試作オーブメントを取り出し、駆動させはじめた。

「氷壁!」

試作オーブメントは、かなりの威力で灰を押しつぶした。

「…不破・弾丸。」

ついでにこの間編みだしたクラフトで1匹残らず狩っていく。

「空の女神の名において聖別されし七耀、ここに在り。識の銀耀と焔の紅耀をもちて、全てを解き放ちたまえ。」

半分ほど消し終わったあたりでリオの法術が間に合い、灰を消し去った。

「…アルシェム、試作のオーブメント、置いていってよ。」

「…りょーかい。後詰めがメルなのが若干不安だけど。」

「大丈夫だよ。…メルだし。」

どこからその自信が…

若干不安に思いつつ、奥に進む。

どうやら、妨害の度合いをみると北西の洞窟湖が本拠地のようだ。

ゆっくり近づくと、声が聞こえる。

「…様…偉大なる君よ。どうかそのお力で…」

「くえー…」

2人のやる気が下がった。

「い、今の声って…」

「ぺ、ペングー…だよね…」

顔を見合わせ、ため息を吐く。

「さあ、踊り明かそうじゃないか!そうすれば空の女神など怖くない。踊って精霊神様に力を…!」

「サンバ・デ・ペングー!サンバ・デ・ペングー!」

明らかに異様な集団の中で、ただ1人正気の人間がいた。

「精霊神様に守護されし我、ベーコンの御名において命ずる。燃え尽きた者たちよ、今再び立ち上がれ…!」

「サンバ・デ・ペングー!サンバ・デ・ペングー!サンバ・デ・ペングー!サンバ・デ・ペングー!」

灰が、持ちあがった。

そして…

動き始めた。

色々と大丈夫なんだろうかこいつら。

「…取り敢えず、生きてる巻き込まれた人を気絶させよっか…」

「そ、そーだね…」

リオの法剣がうなる。

「インフィニティ・ホーク!」

法剣の欠片が人々を蹂躙した。

「な、何だねっ!?」

「…出ねーでね。顔割れさせたくねー。」

「分かった。…気を付けてね。」

アルシェムだけが中に乗り込んだ。

「はい、大人しくしててねー。じゃねーと導力銃が火を噴くぞー?」

「…く、七耀教会かっ!?だが何故…!?」

1発撃った。

「人を建物みてーに言うんじゃねーよ?…とーこーして。さもなきゃ手荒な手段に出るぞ?」

「せ、精霊神様っ!!我をお守り下さいっ!!」

その瞬間。

「くえーっ!!」

「おお、貴方様は…!精霊大公様っ!ありがたや…」

どうでも良いがこのベーコンという男、声だけでどんなペングーが聞き分けられるようだ…

湖が揺れる。

そして…

大きなペングーが現れた。

「確か、オウサマペングーだっけ。でも…」

「呑気に喋ってる場合じゃないよっ!!」

「だいじょーぶだから、そこにいて。危なかったらフォローよろしくねー。」

アルシェムはオウサマペングーに突っ込み、投げ飛ばした。

脂肪が無駄にあるので、ダメージは受けても致命傷には出来ない。

だからこそ、神経を揺らす方向で攻める。

「くえっ!?」

「潰してあげるよ。」

「ひいいいいいっ!?」

取り敢えず煽動役・ベーコンを気絶させる。

「法術で眠らせといてー。」

「分かった!」

ベーコンはリオに任せ、アルシェムはオウサマペングーを生け捕りにすべく体力を削りはじめた。

「…月光朧!」

結社時代に考案したクラフトでオウサマペングーの懐に入り込み、もう一度投げ飛ばす。

そして、気配を消した。

「くえーっくえっくえっ!?」

周囲に味方を呼んだようだが、それでもアルシェムを捉えることは出来ない。

「掩護するよ!インフィニティ・ホーク!」

リオが、周囲のペングー達を一掃してくれる。

それに乗じて、これまた結社時代に修得したクラフトを使ってオウサマペングーを吹き飛ばす。

「寸勁!」

オウサマペングーは壁に激突し、派手に穴をあけた。

「うわちゃー…」

外は見えないものの、どこかに繋がってそうな雰囲気ではある。

「…仕方ないと思うよ…それも一応眠らせるね。まだ生きてるみたいだし。」

「ありがとう。…でも、まだ出て来ねーでね。」

「?分かった…」

いる。

オウサマペングーをはるかに凌駕する気配を感じる。

今度は洞窟全体が揺れた。




ある意味、脅威です。

では、また。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。