雪の軌跡 作:玻璃
では、どうぞ。
『《影の王》に代わり、《黒騎士》が告げる。滅びし里の遺児、山猫の紅一点を引き連れよ。』
その碑文を基に、ヨシュアとジョゼット、リース、ケビンが探索に出かけた。
まあ、リースは弾かれて帰って来たのだが。
「…何故こんなまだるっこしいことを…」
「まあまあ、落ち着いて、カリン姉。」
「浮気だったら絞めます。」
某1人から黒いオーラが出ているのはさておき。
あまり時間をかけずにケビン達は帰ってきた。
「お帰り、コビン。」
「どこでも持ち運び可とちゃうからな!?って、そうやのうてや。次の碑文が出て来たんやけど…」
「またカオスな。」
そこには、こう記されていた。
『滅びし里の遺児、麗しき姫君、酒呑まれる皇子、鐘が交差する地の娘、銀の鍵を引き連れよ。』
「何の因果なのやら。」
嫌な予感がしないでもないが、兎に角グロリアスを突破する。
「…ここか…」
パイプオルガンの部屋には、何故かブルブランがいた。
「ハハ、因果なものだな。このような形で再会するとは。」
「出来れば会いたくなたったよ変態仮面。あ、違った。変態紳士。」
「怪盗紳士だと言っているだろう、いい加減に覚えたまえよ!?」
冗談じゃない。
何故に覚えなければならない。
覚える気もない。
「貴男だけですか…少し、拍子抜けですね。」
「おお、そういうことを言うなよ。次に待ち構えている御仁達が憐れではないか。」
「お黙り変態。」
達、ということはまだ彼にはたどり着けないのだろう。
「そ、それにしてもよもや我が姫と好敵手に相見えようとは…フフ、女神の計らいというものかな。」
「フッ…相変わらずのようだね。」
「あ、あははは…」
黙れ変態。
そもそも指名したのは《影の王》だから。
「あーあ、折角皆と楽しいお茶会が出来るかと思ったのに。まさかあなただけなんて、思ってもみなかったわ。」
「フフ、そう言うな。」
そう言うブルブランに、レンが止めを刺した。
「つまんない。変態紳士のくせに。」
「グフッ…」
ブルブランは、精神的にダメージを受けたようだ。
「さて、始めようか。今のうちに。」
「クスクス…賛成♪」
「え、えっと…そうですよね。」
ケビン達は武器を構えた。
そして…
「オレはジンさんみたいに空気とちゃうでぇぇ!さっさと往生せいや、デスパニッシャー!」
初っ端から派手に決めたケビンはさておき。
「…おお、我が姫よ!」
「…帰って下さいこの変態。サンクタスノヴァ!」
「ゲフゥゥゥ!?」
クローディアには冷たい目で見られ。
「やれやれ、変態に成り下がってはいけないじゃないか♪そぉら、避けきれるかな?」
「避けられないの前提じゃないかね我が好敵手!?」
オリヴァルトには容赦ない連射を浴びせられ。
「変態紳士、ゴーバックホーム。」
「今は流離いの身だから…って、何を言わせるのだね!?」
アルシェムから冷たい暴言を吐かれ。
「パテル=マテルを呼ぶのすら嫌ね。そーれ、死んじゃえ♪」
「いやいやいや、ちょ!?」
レンに全力で嫌悪され。
追い込まれた先で…
「せいっ、はっ!」
「ぐわぁぁぁぁ!?」
ヨシュアに連撃を入れられて沈んだ。
「うっわー…」
「きゅう…」
「これはもう、喋れませんよね。」
ヨシュアの満面の笑みに見送られ、言葉すら発せずにブルブランは消えた。
そして、いきなりパイプオルガンの間の扉の前まで戻された。
そこには…
『滅びし里の遺児、露出狂の踊り子、不遇なる泰斗、鋼鉄の娘、銀の鍵を引き連れよ。』
「…なーんか、嫌な予感しかしねーんだけど…」
まあ、大丈夫だろう。
カシウス並みの化け物なんてそうそういない。
「ま、まあ行きましょう。」
転移門で転移し、相変わらずのグロリアスに思わず言葉が漏れた。
「あーあ。折角落としたのに。」
「え…あ、あれ落としたのアンタだったの!?」
「うるせーのよ、シェラさん。緊張感持ってよ。このメンツって結構異例だからね?」
そこで、シェラザードは黙り込んでしまう。
この場所が何処か分かった時点で、覚悟はしていたのだろう。
パイプオルガンのある奥の部屋まで一気に駆け抜け、そこに執行者を見つけた。
「クク…こんなところまでノコノコやってくるとはな…」
「フフ…お久しぶり、とでも言えば良いのかしらね。」
「る、ルシオラ姉さん…」
いたのは2人。
ルシオラと、ヴァルター。
どうでも良い。
「ふふ…もう、二度と会うことはないとは思っていたのだけど。」
「ま、生きてるんだしいーんじゃねーの?ルシオラ、元気?」
一応、クロスベルの仕事を斡旋したのはアルシェムだから。
聞いておいて損はない。
「当たり前じゃない。…感謝してるわ、シエル。」
「そりゃどーも。」
まあ、こうなることも織り込み済みだが。
シェラザードが、アルシェムに詰め寄ってくる。
「どういうことよ。アンタ、一体…!」
「今答える必要、ある?シェラさん。」
「…後でちゃんと説明して貰うわよ。」
まあ、説明する気もないのだが。
「…ヴァルター。」
「クク、妙な場所で会えたんだ。死合うとしようぜ?」
「よーし、馬鹿ばっかだ。とっとと始めてとっとと終わらせよう。手段は問わなくていーよね、ケビン?」
面倒だ。
一秒でも早く、排除してしまおう。
「いや、アレはアカンで?」
「誰があんな面倒くせーことするって言ったよ。あーでも、ルシオラは普通に倒してよね。」
今死なせたくはない。
「…わ、分かったわい…」
そうして。
「ほな、行くで!」
「ええ!」
ルシオラに向かって、アルシェム以外は駆け出した。
アルシェムはヴァルターに向かって駆け出し…
「ほう、いい度胸じゃねえか…」
「そっくりそのまま返してあげるよ。…月光朧!」
目の前で攻撃と見せかけたフェイントを放ち、すかさず隠形で隠れて背後に回り込む。
「な…ッ!」
「ジ・エンドだね。」
ヴァルターの首が、宙を舞った。
そのまま光となって消えていく。
「さーて、ルシオラは?」
「こんなの卑怯よぉぉぉぉ!?」
「お、終わってるね。」
丁度、倒し終わったところだった。
何であのガムテープが裂けないのかが疑問だった。
「…ね、ねえシエル…いえ、アルシェム?」
「何?ルシオラ。」
「この先には、彼がいるわよ。」
やけに真剣な顔をしていると思ったら。
「…余計な御世話だよ。行けるメンツも限られてくるだろうけど…まあ、カオスで終わっちゃうんじゃねーかな。」
「ああ…ふふ、女の恨みは怖いものね。」
「就職先はどう?結構ハマってると思ったんだけど。」
ルシオラには、ちょっとした仕事先を斡旋しておいた。
まあ、裏ルートで名前を隠して、だが。
「ええ、結構楽しいわよ。今度遊びに来なさいな。」
「いや、多分行くけどさ。シェラさんは連れてった方が良いの?」
「それはダメ。自分の道は自分で見つけて貰わないとね。」
それは、いくつもの意味にとれる気がした。
実際、今は決めかねているようだし。
「後でちゃんと教えなさいよ、アル。」
「ルシオラに止められたから教えてあげない。」
「キーッ!」
それを、微笑ましく見送って。
ルシオラは、その場から消えた。
そしてその場には、扉が現れた。
もはや雑魚扱い。
あんまり強い印象がないんですよね、執行者たち。
では、また。