雪の軌跡 作:玻璃
では、どうぞ。
一行は、石碑から異空間に飛んでいた。
「レイストン要塞か…」
「…これは参った。…決死の覚悟で挑む必要がありそうだな。」
「た、確かに…」
該当しそうなのは…
シード中佐に、モルガン将軍に、
大穴で女狐くらいか?
「ヘッ、またここに乗り込む羽目になるとはな…全く。」
「厳しい戦いになりそうだね…」
まあ、カシウスがいそうだから何とも。
「うふふっ、ドキドキしてくるわね♪」
まずは状況確認のために一端ぐるりと回ってみる。
「ここは発着場か…」
そう、ケビンが言った瞬間。
アルシェムは、その気配に気づいた。
「…わーお、熱烈歓迎?」
「下がれ…!」
発着場に入った瞬間、飛空艇に一斉掃射された。
解せぬ。
「なっ…!」
「くっ…!」
全員が下がる中で。
「あら…」
「レン、ダメだからね?」
レンがしそうなことに推測がついたので止めておく。
「むーっ…」
流石に、パテル=マテルで突破は頂けない。
「め、メチャクチャだわ…」
「ほら、兎に角別のところ行こう?」
丁度、研究棟が狙い目のようだし。
それ以外は鍵が開いていないのだが。
研究棟に入ると、そこには…
「シード中佐…!?」
がいた。
マクシミリアン・シード。
レイストン要塞の警備責任者だ。
「久しぶりだね。ようこそ…とでも言えば良いのかな?」
「いやいやいや、言わんでええですやろ…」
何て面倒な。
首を飛ばしても終わらないじゃないか。
「リシャールさん、お久し振りです。まさかこんな形での再会とは思いませんでしたよ。」
「全くだ。しかし、君が一番か…先が思いやられるよ。」
「ふふ、ご謙遜を。ですが…負けるつもりもありません。」
シードは、力をためて…
シード は おうこくぐんへいし を よびだした!
だが、それは悪手だ。
「先手ひっしょおおおおお!」
「…え。」
アルシェムが、王国軍兵士に突撃して…
アルシェム の こうげき!
おうこくぐんへいし は ぜんめつした!
まあ、当然の結果である。
「お、王国軍所属、マクシミリアン・シード中佐…レイストン要塞、元守備隊長の名に賭けて貴方達を無力化する…!」
涙目。
可哀想に。
さて、やるか。
アルシェムは、シードに向かって特攻する。
「よっしゃ、行くで!」
「え、めんどくさーい。」
「ちょおおおお!?」
やるよ、ちゃんと。
まあ、真面目にではないが。
そう、嘯きながら。
アルシェムは気配を消す。
「絶影!」
「あは、ナイス、ヨシュア。」
思わず漏れた声。、
一気に間を詰め、そして…
アルシェムの手には、何も握られてはいなかった。
「…くっ!?」
「…っ!寸勁!」
浅く一撃を貰いながら、アルシェムはシードを吹き飛ばした。
「ぐっ!?」
「食らいやがれ!」
追い打ちでアガットがシードを打ち返し…
「ぐふっ…」
「せぇいっ!」
「みぎゃ!?」
それをエステルが叩き潰し。
そして…
「うふふ、死んじゃえー♪」
「ぎゃああ!?」
レンが、あと一息のところで首を飛ばしかけた。
「レン、危ないから。死んじゃったらどうするつもりなのよ!?」
「レンには関係ないもん。」
「…レン…」
もう少し加減してあげてください。
「く、喰らえ!」
シードが反撃しようとするも…
「誰が喰らうねんな!…往生せいや。」
ケビンのクラフトにやられた。
「いや、ネギ!?」
「ええやんけ別に!オレにも見せ場くれや!」
あげない。
ネギだもん。
最後は勿論、リシャールが決めた。
「洸波斬!」
「…ぐっ…さ、流石はリシャール、さん…こ、これを…」
ボロボロになりながら、シードはリシャールに何かを渡した。
「…これは…」
「次の相手はそこです。…はは、惜しいですね…もう、終わりだなんて…」
「何を言う。道は違えど、志を同じくする者同士だ。またあい見えることもあろう。」
会ったところで戦えるとも限らないが。
「ありがとうございます…どうか、ご無事にお帰り下さい…」
シードは、そのまま消えた。
「…ったく、律儀だな。」
「シードさんらしいよね。」
「…先に進むとしようか。折角中佐が道を示してくれたのだから。」
兵舎に向かい、探索し始める。
「どこにおるんやろ…」
そう言うケビンに、気配を探って手に入れた情報を伝える。
「1階上。多分女だよ。」
「さらっと答えるなや…」
2階に上がり、部屋に入るとそこには女狐がいた。
「閣下…お待ちしておりましたわ。」
にやりと笑うカノーネ。
「君か…カノーネ君。」
「ああ…何という運命の…」
何か口上を述べようとするカノーネに、アルシェムは言葉をぶつけた。
「お黙り、この大佐フリークが。さっさと結婚してしまえ。」
カノーネは、真っ赤になって機能停止した。
「…え、これで良いの?良いの!?」
カノーネの姿が、薄れていた。
「さ、流石の《影の王》さんも砂糖吐いてたんじゃないかしら…」
「うーん…何というか。」
「ははは…」
何も言えずに、カノーネは消えてしまった。
そこには司令部の鍵が残されていた。
「さ、さて…いよいよ本丸みたいですな。」
「まあ、本命かどうかは分からんがな。」
「ぐぅ…」
哀れ、ネギ。
「ええい、行きましょ!」
「はいはい。」
兵舎から司令部に向かい、鍵を開ける。
「あれ、ここって1階だけ…じゃないわよね、流石に。」
「高さから見積もってみたけど、3階分くらいはあるんじゃないかな。」
「侵入者対策のために階段は隠されていてね。かくいう私ももう思い出せない。」
ダメだろうそれは。
一時とはいえ、ここにいたのだから。
「えー、しっかりしてよ、タマネギ大佐♪」
「タマネギではない!」
「冗談は髪型だけにしてね、大佐。兎に角、進みましょー。」
アルシェムからのブローを受けて、大佐は沈没した。
「それくらいにしてやれよ…」
「冗談なのに。」
「冗談なのかよ!?」
ちょっとしたカオスな雰囲気の中、一行は2階へと登って行った。
すると…
「遅いぞ!何をしておった!」
モルガン将軍が、ハルバードを振り翳して追いかけてきた。
「アイエエエエエ!?」
「全く…何という理不尽!何故に《影の王》なる人物に顎で使われねばならん!ええい、腹の立つ…!」
「落ち着いてくださいや、将軍!死にますから!?」
振り回すな。
当たるから。
そう言って、逃げ回る一行。
「リベールの武神、落ち着け!無茶だろおおおお!?」
「ええい、カシウス並みに腹の立つ…!」
ハルバードを振り回しながら、エステル達を追いかけるモルガン。
「「父さんにぶつけてそういうの!?」」
どんどんと、司令部が破壊されていく。
「無茶苦茶な御爺さんね…」
「言うな、レン…頼むから…せい!」
いつの間にか召喚されていた兵士を、一撃の下に消滅させる。
「…!よくも我が部下をぉぉぉぉ!?」
絶賛アルシェムを追いかけ始めるモルガン。
「止めればいーと思うんだ。」
「おんのれえええええ!」
逆効果でした。
「うをりゃああ!」
「何を!ふん!」
「嘘だろおおおお!?」
アガットは吹き飛ばされるわ。
「えい!」
「甘いわあああ!」
「え、きゃあ!?」
エステルも吹き飛ばされるわ。
「おおおっ!」
「くっ…!」
「もう、逃がさない…!」
ヨシュアが足止めして、レンが止めを刺そうと近づくが…
「死んじゃえ♪」
「ふんぬ!」
「え…きゃあん!?」
レンも吹き飛ばされるわ。
「ど、どうしたらええねんこれ!?」
もうどうしようもないので、仕方がない。
「対人地雷、投下しまーす♪」
「え、ちょ、ま…」
モルガンと、ついでにネギが地雷に引っかかり飛ばされた。
「「ぎゃああああああ!?」」
「で、出鱈目すぎるぜ…」
「ほ、本当にね…」
そこで、空気になっていた大佐が大技を発動する。
「散りゆくは運命云々。(以下略)」
いや、そのセリフ言ってる間に回復されるでしょうに。
「桜花斬月!」
まあ、あっけなく沈没したのだが。
漸く、バーサーカーが止まった。
「…済まぬ…頭に血が上っていたようだ…」
モルガンの謝罪に、一同が絶叫した。
「「「「「「本当にな!」」」」」」
その気迫にモルガンが押される。
「ぐぅ…だ、だが儂程度に手古摺るようでは、と思ったが…可能性はありそうだな。」
暴走しておいてよく言う。
「それでは、やはり…」
「うむ。…乾坤一擲の覚悟で挑むがよかろう。」
つまり、次はカシウスということだ。
これ、どうやって上るんだろう。
「…承知。」
モルガンが、消える。
「もしもあやつを破るものがいたのなら、またの機会にでも教えてくれ…」
「いや、破らな出れませんし。」
「それもそうか…」
そして、完全にモルガンが消えた。
ギャグのつもりはなかった。
後悔はしていない。
では、また。