雪の軌跡 作:玻璃
では、どうぞ。
アルシェムは、獣を狩るべく駆けだした。
「獣は任せてよ。すぐだしね。」
「ああ、任せたで、アルちゃん!」
さっきからずっと持っていた剣で、獣を狩る。
「…は、でくのぼーが。」
すぐに獣は死に絶える。
獣を狩るのは、得意だった。
訓練ではいつも狩っていたから。
「な…!」
驚愕するキリカに特攻するアルシェム。
「おせーのよ。」
「くっ…!」
双剣ほどではないが、一刀でもスピードは変わらない。
防御一辺倒にさせるには、十分だ。
その隙に、上空から…
「雷神脚!」
ジンが降ってきた。
「あ、空気から脱却?」
「誰が空気だ、誰が!」
この場所の作者(影の王)にも認められているんだから、空気でも構わないと思ったのに。
そう思っていると、シェラザードが何を乱心したのか…
「ヘヴンスキス!」
「ギャー変態!?」
味方に鞭を振るってきた。
「もーじゅーじゃねーのよ!?」
言っておくが、アルシェムにそっちのケはない。
ないったらないのだ。
「ええい、つべこべ言わずに攻撃なさい!」
「まだまだまだまだ…そこっ!…八葉滅殺!」
その影響で若干怯えながらもアネラスが突っ込んでくる。
「くっ…」
「いくわよーっ!」
そして、エステルが空気を読まずに…
「はあああああああああっ!奥義、太、極、輪っ!」
どう見ても自爆技なのに、自爆していないのはご愛嬌と言ったところか。
というか、目は回らないのだろうか。
「絶影!」
「ちょ、ま…」
ヨシュアが容赦なくキリカをなで斬りにし…
そして。
「ゴルゴンアロー!」
「よーしゃなさすぎじゃねーの!?」
ネギが、
「誰がネギや!」
ケビンが、キリカにゴルゴンアローを叩き込んだ。
「…く、かくなる上は…!」
そう言ったキリカが、クラフトを発動させる。
「はあああああっ!」
キリカが宙に飛び上がり…
「僕はもう逃げない…!秘儀、幻影奇襲!」
ヨシュアに叩き落された。
「もう止めろ、キリカのHPはもう0だ!」
「いや、まだだから。」
冷静に突っ込みを入れながら、ジンを踏み台にしてアネラスに合図を送る。
「今!」
「うん!」
それを好機と、アネラスがSクラフトで迎え撃った。
キリカは膝をつくが、すぐに立ち上がる。
「ちょ、だから、もう止めてあげろ…」
「はい、仕上げはジンで。」
「その、通りよ…貴方の功夫…見せてみなさい…!」
半泣きになりながら、ジンはキリカに突っ込んでいった。
「コオオオオオ…(以下略)」
そして…
「むぐっ!?」
「…っ!?」
勢い余って、顔と顔がぶつかり合った。
「す、すすすすすすまん!?」
「…この、朴念仁。」
キリカ、ジン双方ともに顔を赤らめて…
「…気をつけなさい、アルシェム。まだ、先が…」
そこで、消えてしまった。
「…え、まだあんの…」
「しかも、アルシェムちゃん名指しだったよ…?」
「ゆーうつだわー…」
そして、出て来た扉には…
『音楽家、音楽家に付き従う騎士、大いなる銀の鍵を引き連れよ。』
と、書かれていた。
拠点に帰り、パーティを解散させたケビン。
「皇子殿下と、ミュラーさんお願いしてもええか?」
「勿論さ♪」
「…調子に乗るな。だが…今回はこれだけなのか?」
ミュラーの疑問ももっともで、そもそもの絶対数が少ない。
「しゃーないですやろ。」
「…そうか。」
そうして、扉の前に立った。
「…さて、入りますで。」
そう言って扉を押し開けた割に…
再びケビンだけが弾かれた。
「何でやー!!!!」
その叫びは、結構響き渡ったという。
「フフ…一体誰なんだろうね?」
「さあな。」
アルシェムには見えてしまっていた。
ちょっと待て。
あれは…
「…人、じゃねー?」
「失礼な。人だっつの。」
ソレが誰なのか…
今は、誰も知る由もない。
「兎に角俺はお前らを倒さなくちゃなんないらしいんだが…」
どうも、青年のようだ。
「何でここに《放蕩皇子》殿下とその剣がいるんですかねえええええ!?」
敵の割には情けない。
「…何か…」
「フフン、テンパってるねえ。」
若い、男。
蒼い謎の機械の彼は、そのまま襲いかかってきた。
「取り敢えずしゃーねえからくたばれやあああ!」
暑苦しい。
「…うわー、壊していー?」
そう思ったアルシェムは、全力で倒すことを誓った。
「え…壊せるものならドウゾ…」
アルシェムは、導力銃を抜き、取り敢えず頭に向かって撃ってみた。
「え、ちょ、何で頭から!?」
それでも、流石に死にはしないようだ。
「一発で消えてくれたらはえーのに。」
「ミュラー、中々に激しいと思わないかい?」
そのカオスな状況を…
「黙れ。」
ミュラーは一言で終わらせた。
「「「ハイ…」」」
「真面目にやれ。」
至って真面目だったのだが。
「んじゃ、右任せた。」
そう言って、アルシェムは左に駆けだす。
考えを理解したミュラーも右に駆けだす。
「おらあ!」
振り回された右手を難なく避け、アルシェムは左腕を切り取った。
「え、ちょ、ま…」
その隙に、ミュラーも右腕を切り取る。
「何で千切れるんだよおおおお!?」
半狂乱になる男を尻目に、ミュラーとアルシェムは叫んだ。
「「気合だ!」」
珍しく息が合った。
「そんなバカなああああ!?」
混乱している彼を尻目に、オリヴァルトがSクラフトを発動した。
「今こそ、葬送の調べを奏でよう…!レクイエムハーツ!」
それで、男は膝を付く。
「いや、奏でちゃダメだろおおおおおおお!?」
そうして…
蒼い機械の彼は、沈黙した。
「くそ…まだまだだってのか…」
「せんとーけーけん少なすぎんの。どーせエレボニア関連の人間なんだろーし、言っとくけど。」
「…?」
ゆっくりと、首をあげる。
どういう構造だ、アレ。
そう思いながら、アルシェムは続けた。
「エレボニアを変えたいなら、このオリヴァルトと組むのが一番だ。」
「ちょ、一体何言ってくれちゃってるんだい!?」
そういう手を使えるのならば、まっとうな世俗の人間。
「…そうか…そういう手も、あったんだよな…」
つまりは、その手を使えない人物。
《鉄血宰相》に反し、オリヴァルトと懇意に出来ない勢力…
つまりは…
「…あばよ。」
そのまま、彼は消えて行った。
「消えた、か…」
「不思議だねえ…」
「…始まるよ。」
オリヴァルトとミュラーの不思議そうな顔を前に…
映像が、始まった。
かませ犬。
はっはっは。
…クロウ好きな人ごめんなさい。
では、また。