雪の軌跡   作:玻璃

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扉の中で何かが行われてないとこいつら魔獣に食べられてるよね。
扉の前で棒立ちとかシャレにならん。

では、どうぞ。


星の扉:白銀の哀れなる娘を引き連れよ。

七耀歴1202年、ボース地方、霧降り峡谷にて。

アルシェムが空賊を探して彷徨っていた頃…

アルシェムは、ウェムラーがわざと橋を掛けていなかった場所を飛び越え、竜の住処へと足を踏み入れた…

そこには、古代竜がいた。

「はっ!?古代りゅー!?」

『…お主は…』

直接話しているのではないようだ。

頭に直接響く声をもつ、古代竜。

答えは、一つしかなかった。

「喋んの!?びっくりだわー。」

『我はレグナート。よく来たな、哀れな銀の娘よ。』

アルシェムの目が細くなる。

レグナートの言い分が、癇に障った。

「…哀れまれたくなんぞねーよ。」

哀れむな。

わたしは、可哀想なんかじゃないんだから。

そう、アルシェムの瞳は告げていた。

『…アルシェムよ。我は古の盟約に縛られし存在。故に、見守ることしか出来ぬ。』

「…何であんたがわたしの名前知ってんの…?」

超絶不思議である。

何故会ったこともない古代竜に名前なんぞ知られてなきゃいけない。

だが、それは必然だったようだ。

『アルシェム・シエルよ。…お主は盟約に外れし存在。故に…話すべきことがある。…聞いては、貰えないだろうか?』

「…聞くだけならね。」

聞いたところで何かが変わる訳じゃない。

そう、思っていた。

だが…

違ったようだ。

『では…人にあらざる子よ。お主は、《七の至宝》を知っているか?』

「…リベールには《輝く環》があるとはきーたことがある。本当かどうかは知らねーけど。」

《七の至宝》。

かつて、空の女神が人間に授けたとされるアーティファクトだ。

眉唾物だと思っていた。

『…赤子のお主はその《輝く環》の中枢の一部から連れ出されたのだ。《輝く環》から、逃がすために。』

だが、違ったようだ。

何故?

何故…

そんなところで、アルシェムの名が出てくるのか分からない。

わたしはただの人間。

人間のクズ。

ただ、それだけの存在だと思っていた。

「…わたし、今何歳よそれ…」

でも、違った。

わたしは…

もっと、何か、別の…

『逃がした者の名はユーリィと言った。彼女は…いや、よそう。』

ユーリィ。

その人は…?

「…気になるじゃねーの…あ、やっぱいー。何となく分かった。…わたしのせーで、死んだんだね?」

ああ。

勿論だ。

《輝く環》にとって、アルシェムの存在が何某かの役割を負っていたのなら、アルシェムを逃がした者に待つ運命はそれしかなかった。

『…うむ。我は人の子の選択を見守るのみだが…お主は《環》の一部だ。故に追った。…1人の女が、ユーリィの元からお主を連れ去り、我を撒いて消えた。何故お主が今目覚めたかは知らぬが、目覚めさせたのはその女に連なるものに間違いない。』

目覚めた時、いた場所は《ハーメル》だった。

何故、そこなのか…

 

もしかしたら、アルシェムは何か得体の知れない計画に協力させられているのかも知れなかった。

 

乾いた声で、アルシェムが問う。

「…その女って…どんな奴?」

『不思議な雰囲気を持つ女だ。セレストやユーリィともまた違った、まるで空の女神が顕現したかのような神々しい女…』

もしも、全てが計画的に行われているのだとしたら。

その首謀者を、赦すことは出来ないと思った。

《ハーメル》も。

《楽園》も。

身喰らう蛇も。

星杯騎士団も。

全てに関わらせられているような気がしてならなかった。

「でも空の女神じゃねー、と。探してみるよ。…レグナート、1つきーていー?」

ずっと、気になっていることがあった。

誰も答えを知らない。

でも、必ずあるはずの答え。

『何だ?』

アルシェムは、恐る恐るその言葉を口にした。

 

「わたしの両親、知ってる…?」

 

両親がいなければ、アルシェムは産まれていないだろうから。

まあ、特殊な生まれなら何かあってもおかしくはないが。

『いや…知らぬ。《環》がどこかから預かってきたようだが…』

…知らないのか…

誰か、知ってそうな人なんてもういない。

もう、知りようはないのだろうか?

そう、思った。

「…そ…か…レグナート、何かありがとう。」

レグナートが知らないという情報をくれただけでも良かった。

『礼を言われるようなことではない。』

照れているようだが、竜なので怖いことこの上ない。

「…わたし、行くね。仕事のとちゅーだし。」

『…ああ。また、会おう。』

「そーね。また…いつか会いましょー。」

会うことがあれば、ね。

そう、思って。

アルシェムは、その場を後にした。

そして…

その直後に空賊の砦に乗り込み、あえなくアルシェムは捕らわれることとなった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

暫くは、映像が終わった後も呆けそうになった。

「え…」

「うふふ、普通の人間じゃないかもって思ってたけど…まさか、こんな生い立ちだったなんてね?」

だから、レンが声を掛けてくれて助かった。

「笑い事じゃねーからね?ほんっと、あの時は焦ったわー…ま、どーでもいーけどね。」

「どうでもよくはありません!七耀教会の人間として…」

リースが何やらごちゃごちゃ言ってくるが、それは関係ない。

「もう《紅耀石》には伝えてある。」

「…そうですか。では、この封印石…封印石?今更誰が…」

なんとなく予想はつくのだが、教えないでおく。

間違いなく、レグナートではない。

レグナートが出てきたら…

それこそ、事件だ。

「まあ、解放?してみよー。」

少し先にも扉があったため、その扉を開く条件を見てから拠点まで戻った。

「便利だねー。」

「まあ、そうですけど…」

封印石をかざす。

そして、そこに現れたのは…

「…は?何ここ。…って、リース!?何でアンタが…!?」

黒髪のシスター…

リオ・オフティシアだった。

「え…り、リオ!?どうしてここに…?」

兎に角リースがリオに事情を説明する。

「リースさんもリオさんとお知り合いなんですか?」

「ええ、まあ…」

「ふうん…」

関係を悟られないようにして、エステル達と交友を深めてもらっておく。

「次も、アルシェムさんでしたね…」

「うん…それにレンもだったわね。」

「やな予感はするんだけどなー…」

そうして、次の扉を開けに向かう。

その扉は、アルシェムとレンだけを取り込んだ。




のどが渇きます。
十分に一回は水を飲んでる気がします。

では、また。

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