雪の軌跡 作:玻璃
てーか、後半ですけどね。
では、どうぞ。
星の扉:白き翼、ただ一人で足を踏み入れよ。
【先史、リベル=アーク】
銀髪の赤ん坊を抱いた男性が、金色の光にその赤ん坊を差し出した。
その間も眠り続ける赤ん坊。
一向に目を醒ます気配は、ない。
けれど、金色の光にはどうでも良いことだった。
赤ん坊はただの人質で、用などないのだから。
金色の光には、感情がなかった。
だから、赤ん坊を道具として扱うことが出来た。
金色の光は、男性から赤ん坊を受け取り、自らの中枢近くに赤ん坊を収納した。
その場所は、管理システムの中、《影の国》と呼ばれる場所。
意識のない赤ん坊に、金色の光はその場所の管理を任せたのだった…
【七耀暦4年、リベル=アーク、アクシスピラー前】
「こちらです、急いで!!」
走る集団は、地下道に入る。
短い紫色の髪を翻して走るリーダーと思しき女性。
名を、セレスト・D・アウスレーゼという。
その隣、銀髪の赤ん坊を抱いて走る薄緑の髪の女性は。
名を、ユーリィ・E・シュバルツ。
彼女は、この作戦において、最も重要な役目を負っていた。
走りに走り、分岐が見えた。
「ユーリィ、後は手筈通りに…!」
「承知しました、セレスト。…空の女神の加護を…!」
セレスト達が右に。
ユーリィが左に折れて走る。
そのままセレスト達はリベル=アークから脱出した。
「…正念場、だな。」
ユーリィはリベル=アーク内を複雑に走り回り、わざと《環》に追跡される。
「さあ、こっちだ!」
この赤ん坊は、《環》にとって重要な子だった。
この赤ん坊は、《環》のシステムの一部を管理させられていた。
まだ目を醒ましたことのない赤ん坊。
それでも、《環》と一緒に犠牲にさせるわけにはいかなかった。
生きている者を、犠牲にはしたくなかった。
彼女は、ユーリィ達の怠惰な生活を支えてくれていたのだから。
だから、尚更だ。
死なせるわけにはいかない。
死なせたく、ない。
だからセレストは自身のコピーまで作ってあそこにとどまらせたのだ。
充分走り回ったところで、セレスト達とは別方向へと脱出した。
《環の守護者》が追いかけてくるが、もうどうしようもない。
追い詰められて、動けなくて。
「…ごめんね、セレスト。私…生き残れないかもしれない…」
目の前には、崖。
もう逃げようがない…
「ごめんね、リィサ…」
せめて。
せめて、この子だけでも。
ここにいれば死ぬだけ。
どうすれば、生き残れるか?
…じゃあ、私が取るべき行動は!
「あ…ああああああっ!」
恐怖を振り払い、ユーリィは跳んだ。
赤ん坊を庇い、落ちてゆく。
これが、最善の選択だと信じて。
ユーリィが最期に見たものは、銀髪の赤ん坊を連れ去る美しい女性の姿だった。
短いです。
そして、これがすべての答え。
では、また。