雪の軌跡   作:玻璃

104 / 269
大好き?
いいえ、偏愛でしょうか。
とにかく、この人です。

では、どうぞ。


Q:誰でしょう。A:幼馴染姉弟大好きさん。

やはり、レオンハルトだった。

「…いたね。」

「いるわね…」

「ドラギオンは…ま、いーか。」

排除しなくても、味方にしてしまえば良い。

レオンハルトを説得できれば、それで良いのだから。

「…え?」

だから、アルシェムはカリンの手を引いてレオンハルトの前に出た。

「レオン兄。」

「…早かったな。誰を連れて…何?」

「どうかした?」

早い。

ヨシュアとは違って、気付くのも早い。

やはり、追い続けていたのはカリンそのものだったのだ。

「…バカげたことは止めろ。幻術で惑わすつもりなのだろうが、そうはいかない…!」

「あら、勝手に幻術にしちゃうの、レーヴェ。残念ながら、本人なんだけど…」

そもそも、アルシェムには幻術は使えないのだが。

「バカな。生きているはずがない…!」

「酷いわ、本当に。いつ誰が私を殺したと思っているの?」

「カリンはそこの女が殺したはずだ…!」

ケルンバイターの切っ先を、アルシェムに向けて。

幻影だろうが、カリンに剣を向けることは出来ないようだ。

「…ふーん?」

「え、ちょ、カリン姉?」

「やっぱり私に縛られてたのね、このおバカは。」

「わ、だ、ダメだって…!」

お願いだからその針っぽい法剣抜くの止めて!

知覚できない速度で振られると影すら見えなくて危険すぎるから!

「…ねぇ、レーヴェ?何なら今からエルすら知らないレーヴェの弱点バラすわよ?良いのかしら…?」

「お前になど分かるわけがない。」

自信満々に言い切るが、それは悪手だ。

彼女こそが、カリン・アストレイなのだから。

「…脇腹。」

「…(ピクッ)」

口の端が、わずかに動く。

「実は全力でこそばいのが苦手。」

「…(ビクッ)」

剣の切っ先が、揺れる。

そして…

「実は幼なじみ束縛系の官能小説を大量に…」

「おい、何故知っている!?」

え、そんなの持ってたんだ。

「誰がレーヴェの部屋を掃除していたと思って?」

「むぐぅ…」

アルシェムすら知らないことを、カリンは言った。

レオンハルトにも、通じれば良いが…

「…ぶっ…あ、あはははは…」

「何故笑う!?」

「い、いや、可愛い…あはははは!」

まさか真面目そうな顔をしてそんな…

ねえ?

「可愛い言うな!」

「…後は、一冊だけおと…」

「言わせん!言わせんぞ!」

おと…

何だろうか。

「…信じたかしら?」

「…ああ。…済まなかった…」

どうやら、信じてくれたようだ。

「何で謝るの?」

「…お前を、守れなかった…シエルなんぞに任せてしまって…エルならば救いは…」

その言葉に、カリンが切れた。

「…レーヴェ、正座。」

「…は?」

「正座っ!」

「はい、喜んで!」

わーお、尻に敷かれてる。

10年ぶりだというのに。

 

「…空の女神の名において聖別されし七耀、ここに在り。識の銀耀、時の黒耀、その相克をもって彼の者に打ち込まれし楔、ここに抜き取らん…」

 

って、ちょっと待てぇ。

「…な…に…?」

「…え、マジでやっちゃった?」

「私、怒ってますから。」

いや、怒ってるとかじゃなくて。

「いやいやいや…そういう問題じゃねーから…」

確証もなくやるなっての。

「バカな…じゃあ…エルは…エルは…っ!」

「ほら、錯乱したじゃねーの…」

「レーヴェにじゃないわ。そこにいるんでしょう、《面白》のワイスマン!」

面白。

いや、《白面》ですから。

柱の陰から、《白面》が現れた。

スタンバイ、お疲れ様でーす。

「《白面》のワイスマンだ…」

「突っ込まなくていーから。」

心の中では突っ込んだけれども。

「クックックックック…」

「コケコッコ?」

「フハハハハハっ!」

疲れでどうも頭がイッちまっているらしい。

「壊れたよこの人。」

「…まさか、生きていたとは思わなかったよ…カリン・アストレイ。」

「軽々しく名前を口にしないで下さいこの変態。土に還りなさい。」

酷ぇ。

まあ、変態であることに代わりはないが。

「フフ…さて、シエル。戻ってくる気になったのかな…?」

「…誰が、戻ると思う?…カリン姉、そこのおバカと一緒に下がって…!」

兎に角、ぶん殴りたい。

何が何でも…!

そう、思っていたのに。

「…クク…戻って来ざるを得ないさ…!」

「…これ…は…っ!」

アルシェムの瞳から、光が消えた。

そして、一気にレオンハルト達から距離を取る。

「エルっ!?」

「教授…」

「…君を組み上げたのは私だ。滑稽な玩具だよ全く。」

ワイスマンはアルシェムの髪を撫でた。

アルシェムは、微動だにしない。

そんな『命令』は受けていないから。

それに…

「…教授…貴様っ!」

「レーヴェ、落ち着いて。」

「しかし、カリン…!」

 

アルシェムの行動は、縛られているわけではない。

 

だから、無駄なのだ。

「エルを変態から引き離して。そうしたら、何とかするから…!」

「…分かった。…おおっ!」

「シエル。カリンを殺し、レーヴェを殺せ。」

こんな命令をされたとしても。

「ワイスマンっ…!」

ワイスマンは、そのまま去って行った。

あるいは、ヨシュアに姿を見せないためだったのかもしれない。

エステル達が、駆けつけていたのだから。

「アルっ!?」

「エステルさん…!」

「一体、どうなってるの?」

ワイスマンの気配が結構離れたことを確認して。

アルシェムは、溜息を吐いた。

「…どーもなってないよ?」

「…は?」

「いやー、マジでバカだね、ワイスマン。ぬっ殺してきていー?」

割と本気で。

「ダメですよ、アルシェムさん。」

「えー。」

まあ、最後はネギ氏に任せるけども。

「れ、レーヴェ…」

「どうした、ヨシュア。」

「レーヴェは…まだ、戦う気なの…?」

不安そうな目で、ヨシュアがレオンハルトに問いかける。

「今のところお前とは戦う気はないな。」

「え…?」

「取り敢えず教授を何とかしてからだ。」

その後ならば、いくらでも時間があると信じて。

「じゃあ、これからは一緒にいられる…?」

「そこまでは保証出来ないな。流石に甘やかしすぎたか?」

「え…」

地味に傷ついた目すんな。

このブラコンめ。

「いーかげん、義兄離れしろっての。」

「…そうだね。」

捨てられた犬じゃないんだから。

「さて、俺は先に進むが…お前達はどうする?」

「この先に、ワイスマンはいるのよね?」

「そうだ。」

今更なことを、言わなくても良いのに。

「…進むわよ、勿論ね。」

「…ほう?」

「乙女の純情を弄びまくったツケを払わせてやるわっ!」

…え。

「…乙女?純情?似合わねー…」

まあ、女子らしくなったといえばそうなのだが。

「う、うるさいわよそこっ!?」

決戦前の空気は、少しだけ和らいでいた。




フラグ。
クラゲ、じゃなかった。フラゲ。
どんな毛なんだ…(意味深

では、また。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。