雪の軌跡   作:玻璃

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はい、記念すべき100話です。
おねーさんびっくりだよ。

そろそろ、アルシェムがいることによるブレが大きくなってくるでしょうか。
今はそこまでの差異はないけれど。
それでも。

では、どうぞ。


打開策、もしくは思惑

ゼクスに押し負けそうになっているクローディアの援護に出たのは、ヒーナだった。

「それはアルテリアが保証いたしますわ、中将閣下。」

「アルテリアが?失礼ながら、内政干渉ではないかね?」

鉄面皮を崩さずにゼクスは言っているが、内心は動揺している。

まさか、出て来るとは思っていなかったからだろう。

「内政干渉、ですか。事はアーティファクトに関わります故、アルテリアにもこの場にいる権利はあるかと存じますが?」

「アーティファクト、ですと…?」

「ええ。宙に浮くあの物体は、アーティファクトでございますわ、閣下。」

にっこりと笑って言うヒーナ。

無論、これだけで言いくるめられるとも思ってはいない。

「それがリベールの新型兵器でなくアーティファクトであると、何故言える?」

「あれは、秘密結社《身喰らう蛇》の陰謀の楔ですわ。」

「口だけでは何とでも言えるだろう。」

内心は冷や冷やだ。

ここからが、一番重要なところだから。

「あら…貴男方もご存知ではありませんでしたの?独自の情報網をお持ちだと私共は認識しておりますが。」

鉄血の子供達。

彼らは、リベールにも潜伏していた。

まあ、人選がえらいことになっていたが。

何でまた《かかし男》なんぞを…

「何…?」

「ああ、それとも貴男方は因縁をつけるのがお得意なだけなのかしら。」

「それは、エレボニアに対する侮辱か?」

勿論、事実を述べているまでだ。

ハーメル然り、他のところ然り。

「あらあら、皇族が臣下を掌握しきれぬなぞ片腹痛いですわね。事実でしょう?」

「それは今、関係ないだろう!」

「…ふふ、そうお思いになられるのならそうなのでしょう。それで…アレを止める解決策でも出してみせれば、貴男方は引いて下さるのですよね?」

そう、解決策があれば、だ。

メルカバならば動く。

そのために、アルシェムはわざわざ予備燃料として巨大な翠耀石を積み込んでおいたのだから。

それに…

まだ、動くモノがある。

「…無論だ。」

「…ならば、今すぐにでも乗り込みますわ。」

「…何?」

ああ。

気付いていないのか。

まあ、確かに結構静かだから無理もないが。

「聞こえませんか?この音が。」

「幻聴ではないかね?」

そう。

アルセイユ、だ。

「…来ましたよ。」

「まさか…」

「ふふ、この先はお譲りしますね、殿下。」

「あ…」

全員の眼前に、アルセイユが下りて来ていた。

「乗り込む手段はこれですな。」

「あ、あれは…」

「アルセイユ!?な、何で飛んでるの!?」

こらこら。

こっちの仕込みじゃないとはいえ、予定外みたいな声を出すな。

「企業秘密だよ、エステル。少なくとも今は、ね。」

「むーっ…」

「さて、納得して頂けたかな?ヴァンダール中将。」

タラップの上から、カシウスがゼクスを見下ろす。

「貴官は…」

「お久しぶりですな、中将殿。王国軍所属、ブライト准将です。」

「アルセイユ、と言いましたかな?何故動いておるのです?」

興味があるのだろうが、生憎今は教えるわけにはいかない。

「それは国家機密である、と申し上げておきましょう。貴男方がお持ちの戦車のようにね。」

「ぐっ…」

「これは分が悪いよ、中将。」

そこに、オリヴァルトが現れた。

「殿下!?」

「…やあ、初めまして、だねぇ。皇帝ユーゲントが一子、オリヴァルト・ライゼ・アルノールだ。」

エステル達がぎゃあぎゃあ騒いでいるが、予測の範囲内だ。

今動かなければ、彼にもう自由などなくなるのだから。

「初めまして、皇子殿下。どうも初対面な気がしませんな。」

「おお、貴殿もかね?こちらもだよ。」

「「ハッハッハッハッ…」」

やかましい。

「…白々しー…」

ひとしきり笑いあった後、オリヴァルトはこちらには聞こえない音量で話し始めた。

まあ、アルシェムには聞こえるのだが。

「さて、叔父上。ボクはアレに乗ってくるとするよ。」

「殿下…一体何を…」

「決めたんだ。ボクはあの怪物を帝国から退治する。そのための一矢さ。」

怪物。

《鉄血宰相》ギリアス・オズボーン。

アルシェムの、敵。

「危険です、殿下!」

「心配しないでくれたまえ。ミュラーも連れて行く。」

「無論です。ですが、そういう問題では…」

「このまま言い掛かりをつけて、《百日戦役》…ひいては《ハーメル》の二の舞にはしたくないのだよ。分かって貰えないか?」

オリヴァルトの瞳には、普段にはない真剣な色が浮かんでいた。

「で、殿下…」

「あの怪物が全てを呑み込んでしまう前に…駆逐しようと思う。ついては、叔父上にお願いがあるのだが。」

「…兵を下げましょう。時間を稼げば宜しいか?」

それだけで、その決断をするということはヴァンダールはオリヴァルトを擁するという意味か。

「ああ。」

「ですが、そんなには保ちませんぞ…恐らくは、一週間。」

「充分さ。頼んだよ、叔父上。」

オリヴァルトは、アルセイユへと乗り込んでくる。

そのころ、地上では星杯騎士達が小声で今後について話していた。

「…さて、リオ。」

「はい、ヒーナ。」

「メルカバは頼みましたよ。メルに引き渡し次第、《輝く環》に乗り込みなさいとの指示です。」

誰からの、とは言わない。

まだまだ秘密にしておかなければならないことだから。

「あいあい。ヒーナは?」

「…アルセイユで、あのおバカをシバきに行きます。」

「…マジで?」

相当に怒っていらっしゃる。

「ええ、マジです。大マジです。」

「分かったよ。…突き落とさないように気を付けてよね。」

「落としませんから。」

そう、言い放って。

ヒーナはアルセイユに乗り込んだ。




誰これ。
最早オリキャラにしか見えないなあ。
冗談です。

では、また。

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