雪の軌跡 作:玻璃
ストックが全然増えません。
そのうち超絶間をとるかもしれません。
では、どうぞ。
「光る石、見つけて依頼人に渡しておきました。」
「もう依頼を達成したのね…」
驚いたようにアルシェムを見るが、これくらいは軽いものである。
「捜し物だし、はえーだけですよ。手配まじゅー狩ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
ギルドを出て、ミルヒ街道に出る。
道沿いに歩いてパインプラントという名の手配魔獣を探す。
パインプラントはエリーズ街道の近くのミストヴァルトに棲息していたはずなのだが、どうやら迷い出てしまったらしい。
程なくして、特徴的な丸い魔獣を見つけた。
「あれか…パインプラント。確かミストヴァルトに生息してたはずだけど…」
周囲に人間がいないことを確認してから銃撃で倒す。
何故なら、ミストヴァルトにいる奴と同じなら爆発するからだ。
案の定、パインプラントは爆発しつつセピスを残して消えた。
「危ねーな…」
まあ、爆発に巻き込まれるような迂闊な真似はしない。
「そー言えば…エステル達が確かパーゼル農園に行くって言ってたな…」
アルシェムはパーゼル農園に寄ってからギルドに戻ることにした。
パーゼル農園に入ると、双子の弟ウィルが出迎えてくれた。
「あ、アル姉ちゃん!」
「や、ウィル。エステル達、来てる?」
「うん、今お家の中だよ!」
満面の笑みを浮かべて答えてくれるので、
「ありがとう。」
とお礼を言ってからパーゼル家に入る。
「お邪魔します。」
そこには、机に座ったエステル達とパーゼル夫妻がいた。
「あ、アル!?どうしてここに?」
「手配まじゅー倒した帰りなの。一応寄ってみようかと。」
そこで、ハンナおばさんの目がきらりと光った。
「おや、アルシェム。良いところに!」
「…へ?」
何だろう。
「アル、今日はおばさんに夕食をご馳走してもらうことになったんだ。」
「ついでにアルシェムもどうだい?」
…確かに、ハンナおばさんのご飯は美味しい。
美味しいのだが…
量が多いのだ。
比較的小食なアルシェムには多すぎる。
「うーん…手配まじゅーを倒したって報告は早い方がいーし…」
一応渋ってみるが、無駄だろう。
「じゃあ、報告したら来れば良いんじゃない?」
…ほら、掩護射撃が。
ここまで来ると、断りきれない。
「あ、ティオ。…じゃあ、お邪魔にならないならご相伴になろうかな。」
「決まりだね。早く報告しておいで。」
「ありがとうございます。」
溜め息を吐きたいのを堪えつつ、道中の魔獣を蹂躙しながらロレント市に戻る。
おかげで、セピスがかなり溜まった…
そして、ギルドに報告に戻った。
「手配まじゅーのパインプラント、倒しましたよ。」
「…ツァイス支部が羨ましいわ…こんな優秀な協力員がいたなんて…」
その後もぶつぶつ言うアイナ。
優秀かどうかはさておき、確かにペースが速いとは言われる。
「あはは…あ、アイナさん。今日は何故かパーゼル家で夕食を頂くことになりまして…」
「それがどうかしたの?」
不思議そうに言うが、ちょっと考えれば分かりそうなものだ。
「もしかしたら、エステル達を手伝っちゃうかも知れねーですけど、構いませんか?」
「ええ…頼むわね。」
…それで良いのか。
エステル達に任された仕事に手を出すのは気が引けるのだが、こう言われては仕方がない。
「じゃ、また明日来ます。」
アルシェムはギルドから出てパーゼル家へと急いだ。
「はあ…」
今日も食べすぎで胃がおかしくなりそうになるんだろうな…
と思いながら、少しでもカロリーを消費するために全力で動き回る。
「済みません、遅くなりました。」
「大丈夫だよ。今からだから。」
想像以上にあった…
ハンナおばさんは、かなり豪勢な食事を作ってくれていた。
…食べきれないくらいの量で。
夕食後、ティオの部屋でガールズトークとしゃれ込む。
勿論、ヨシュア抜きで。
「はぁ、美味しかったなぁ。ハンナおばさん、相変わらず料理が上手よね。」
「ふふ、うちのお母さん、お客さんが来ると張り切るから。それより、ヨシュアにはチビ達の相手をさせちゃって悪かったなと思うわ。」
「あはは、良いんじゃない?ヨシュアって意外と子供に懐かれるし。どっちかと言うと堅苦しいタイプなのに、不思議よね。」
堅苦しいタイプに見えるのは1人しか眼中にないからだろう…
「あら、そんなこと無いわよ。確かに礼儀正しくて他人行儀なとこもあるけど…結構面倒見良いのよね。さり気ない気配りがまたポイント高いっていうか。」
「そ、そうかなぁ?」
「それに整った顔立ちと神秘的な琥珀の瞳に漆黒の髪…女の子に騒がれるのも当然よね❤」
「…ティオ、ヨシュア狙い?止めといたほーがいーよ?」
間違いなく振られるし、狙いはエステルしかいないから。
超鈍感なエステルだから、暫く気付かないと思うけど。
「分かってるわよ。告白した女の子が全部玉砕したんだから…」
「し、知らなかった…ヨシュアってば、あたしに何の相談もしないで…全く、秘密主義っていうか、水臭いっていうか、薄情なんだから!」
いやいやいや…
「ま、同性ならともかく異性に相談する話でもないし。それに…エステルなら尚更ねぇ。」
「へっ…何で?」
「…この鈍感娘…流石エステルって言えばいーのか…」
ここまで気付かないと最早才能ってレベル…
…あ、ヨシュアが扉の前に立った。
そして、ノック音と共にヨシュアが声をかけてきた。
「エステル、良いかい?そろそろ見回りの時間だよ。出来ればアルも良いかな?」
「あ、うん…分かった。」
「はいはい、りょーかい。」
手伝わせる気満々のようだ…
実績を上げるには手っ取り早いが。
「それじゃ、お仕事を片付けてくるわ。今の話、また後でね?」
「行ってくるよ、ティオ。念の為、外には出ねーでね。」
「あー、はいはい、気を付けてね。」
ティオの部屋から出ると、ヨシュアが魔獣の説明をしてくれる。
「魔獣はいつもこの時間に現れるらしいよ。早速見回りを始めようか。…って、どうしたのさ、エステル。そんなにじっと見て…何か付いてる?」
「ねぇヨシュア。あたしに隠しごとしてない?」
…そこはかとなく笑いの予感がする。
「え゛…何だい、藪から棒に?」
「ヨシュアが家に来てから…あたし達、いつも一緒だったよね?…あたし、ヨシュアのこと本当の意味で家族だと思ってる。」
「エステル…」
「だから…何かあったら相談に乗るからね!ええとその…せ、青春の悩みとか。」
「ぶふっ!?」
やっぱり…
「ハァ?」
「は、話はそれだけっ!とっとと見回りを始めましょっ!」
エステルは顔を真っ赤にして外に飛び出した。
「ふ、あは、ダメ、腹筋が…よ、ヨシュア…苦労するよね…あはははは…っ!」
「…ティオに何か吹き込まれたのかな?」
いや、単なる鈍感です。
「…はぁ…はぁ…あー、面白っ。…でも、さ。隠しごとなら、誰だってあるよね?」
アルシェムにも、ヨシュアにも。
そして、アルシェムはヨシュアの秘密を知っていた。
ヨシュアは…
「…そうだね。そろそろ出ようか。」
取り敢えずパーゼル家の外に出た。
今のところ、閃には関わる気はありません。
持ってませんので。
ただ、気が変わったらもしかしたらやるかもしれないのでそのうち伏線くらいは張ろうかな…
では、また。