ブラック・ブレット〜赤目の神喰人(ゴッドイーター)〜 作:緋悠梨
---side悠梨---
どこかに連絡し、言い合いになった里見さんが落ち込みながら電話を切った後。
約束通り、室戸先生に話した分を里見さんと延珠ちゃんに話した。
興味半分、驚き半分と言った反応。特に延珠ちゃんは、毎回オーバーリアクションで、見てて楽しかった。
そうこうしてるうちに目的地についたっぽいね。日も暮れてきた。
「こ、ここが天童民間警備会社だ!」
「….そ、そうですか」
あえて何も言うまい。
1階がゲイバーで、2階がキャバクラで、4階が金貸し(多分闇金)だなんて気にしないよ、うん….!!
「….こっちだ」
里見さんに続き、階段を3階まで登り、そこのドアを開けて入る。
「戻ったぜ、木更さん」
「ただいまなのだ!」
「遅い!どこ行ってたのよ里見君⁉….あら?お客さん?」
机を叩くバン!という音と女性の声がした。
奥を見ると、案の定女性が1人。あれが木更さん?だろうか。だが、
(すごい美人さんだなぁ….)
少し見惚れる。と
「痛い痛い痛い!?」
「「「?」」」
女の子に脇腹を抓られた!しかも3人に見えない角度で。巧妙な….。
「え、えっと、すいません驚かせて。僕は緋上悠梨といいます」
「そう、私は天童木更。この天童民間警備会社の社長よ。とりあえず、そこにでも座って」
握手をかわす。学生で社長か….すごいな。お言葉に甘えてソファに座らせてもらう。神機はその脇に置いた。
「それで、貴方はサングラスを外さないの?あとその女の子は?」
早い。
「き、木更さん、それは後でよくないか?」
「いいえ、今聞くわ。仕事相手がそんなので信頼しろ、って方が無理よ。だいたいその武器も気になるし」
「いや仕事相手じゃないんだが….」
里見さんの話が耳に入ってないようだ。仕方ない。
一応蓮太郎さんを見る。すまない、と言いたそうな表情で頷いた。差別主義者ではない、ということだろう。
サングラスを外す。
「!!….なるほど、そういうことね」
「はい。だけど『子供たち』ではありませんので。生まれつきです」
「分かってるわ。男の『子供たち』がいたならもっと大ニュースになってるに違いないわ」
それもそうだ。
「ただ、そこの女の子の様に、『子供たち』も生まれつき目が赤い、ってことを覚えておきなさい」
….あっ、なんか色々バレてる。それに赤目の言い訳考えないとなぁ。
「分かりました、ありがとうございます」
「別にいいわよ。あと貴方の過去とかも別に詮索しないから」
「助かります」
いい人だな天童さん。
「….それで里見くん、ガストレア、倒したんでしょうね?」
里見さんの顔が青ざめる。
「….か、感染源ガストレアは逃した、というか姿自体見てないが、感染してガストレア化したのを1人な!」
「ホント!?じゃあ報酬入ったのよね!?」
……里見さんがどう謝るのか、参考にさせてもらおうかな。
「….悪い、木更さん、報酬貰い忘れた」
ストレートに言ったぁ!!
「なっ….!?」
「もやしが特売で、そっち行ったら忘れた、すまん!!」
「……こ、この、おバカーーーッッッッ!!!!」
あ、天童さんがキレた。
「しょ、しょうがねぇだろ!それにほら!もやしちゃんと二袋手に入れたし!!」
「私の分は!?」
「1人一袋だから二袋が限界だった」
「そんな……」
そこで崩れ落ちる天童さん。
「もうダメ、ビフテキ、食べたい….」
「俺だって食いてぇよ….」
さっきの訂正。木更さんはいい人だけど残念だ。何がとは言わないが。
……僕もなんだか、アナグラのシェフであるムツミちゃんの料理が恋しくなってきたよ….あれもう食べれないのかなぁ….。
….とりあえず、僕はある意味すごいところに拾われたらしい。
「もう….これもどっかの誰かさんが甲斐性なしのおバカさんだから….」
「はいはいすいません」
「これもどっかの超絶不幸面の人が序列12万位とか情けないから….」
「木更さんも不幸面言うかよ!!」
不幸面ネタはそのうち言う方が礼儀かな?
ところで、だ。
「里見さん、序列って?」
「ん?ああ、序列ってのは民警の強さの指数を表すやつだ」
「なるほど。12万位はどのくらいですか?」
あ、里見さんが目を逸らした。
「……決して、高くはないな、うん」
….これ以上聞かない方がよさそうだ。
と、木更さんが突然動いて里見さんの側にいき、耳打ちする。流石におかしいと思ったのだろう。
「ちょっと、里見くん。あの子どうしたの?流石に序列まで知らないなんておかしいわよ。記憶喪失か何かなの?」
「あー、いや、そうじゃねぇんだが….」
ごめんなさい、この距離だと僕達には耳打ちはあんまり意味ないんです。
「….天童さん、僕は別の世界から来た、所謂、転生者というやつです」
「「!?」」
あ、里見さんも知らなかったか。
「すいません、ゴッドイーターは一部の感覚も強化されるので、聞こえてました」
「それでか、なるほどな」
「ゴッドイーター….聞いたことないわね、確かに。それが貴方の役目….だったのね?」
「はい、そうです。ガストレアみたいなバケモノ、アラガミを倒していました」
「それで、武器が根本的に違うのね」
「その通りです」
「なるほどね….ありがとう、でもこれ以上はいいわ。結局聞く形になってしまったけど」
「いいですよ、大丈夫です」
これくらいならまだ応えない。….うん、まだ大丈夫。
「….ところでよ、悠梨はこれからどうすんだ?」
里見さんが話題を変えてきた。質問の意味を掴みかねる。
「これから、ってどういうことですか?」
「お前住む場所ないだろ、当てはあるのか?ってことだ」
……あ。
「言われてみればそうですね。完全に根無し草なのか僕」
「気付いてなかったのかよ….」
すごい苦笑いされてる….。
これも転生あるある、だよね。○Sみたいに全寮制だから問題ない、ってわけでもないしねぇ。うーん、どうしようかな….。
「あと、その子もね。どうするつもりなのかしら?」
天童さんも続く。….そうなのだ。ここまで全く喋らず。ほぼ空気と化していたけど、この子は僕以上に問題かもしれない。
「どうも外周区とかいうところから来たみたいでして….。その、助けた後に一回は送って行こうかと聞いたんですが、『お兄さんの側に居たい』って言われ、どうしたもんかと考えながら彷徨ってたら里見さんと遭遇しました」
「「完全に落ちてるじゃねーか(じゃない)!」」
「へ?」
落ちてる、とはどういう意味だろうか?
「この子、唐変木の片鱗ありね….」
「それはともかく、やっぱ外周区か….」
「残念だけど、今の僕には養う金なんてないですしね….」
なんか言われた気もするが、突っ込んでたら話が進まないからスルーする。でも発言したことも事実だ。
「そんな!?なんとかならぬのか悠梨!?」
延珠ちゃんがそういうが、無理なものは無理だ。
「僕、今1fcも持ってないからね….」
「悠梨、この世界の単位は円だ」
「….僕、今一円も持ってないからね….」
なんか、すごい、締まらない。
とにかく….今は無理なんだ….。
「うぅ…ぐす……」
女の子が、また泣き出してしまった。僕のせいだ….。
結局、泣いてる女の子1人救えない、ただの非力な人間だよ….ホント、嫌になるなぁ。
「….すいません、里見さん。その子を外周区まで送り届けてもらえませんか?僕だと道が分からないので」
「….いいのか?」
「いいも何も、悔しい事に僕には何も出来ませんから、ね」
そう言って、部屋を出ようとする。
「待て、悠梨!!どこ行くつもりだ!?」
「室戸先生のところですよ。このサングラスと銃を返さなきゃならないので」
「落ち着け、もう暗い。だから明日にしとけ。だいたい、そっちへも行き方も分からないだろ?」
うっ….全く持ってその通りだ。
「明日は土曜だから、俺も行く。だから明日にしろ」
「….分かりました。でも、少しだけ、1人にして下さい。必ず戻ります。….なので、その子を、お願いします」
背後の鳴き声が一層大きくなったが、すべて無視してドアをくぐった。
ビルを出る。確かにもう夜だった。
….いい加減、頭の整理もしたかったのも事実だ。
だけど、それ以上に胸が疼く。
「….結局悲しませることになっちゃ、意味ないだろ僕….!!」
自分に悪態をつく。
….僕は当てもなく、疲れるまで歩き回った。
---side蓮太郎ーーー
悠梨が本当に出て行ってしまい、女の子が一層激しく泣いている。
….どうすんだよ、これ….。
「ほ、ほら、泣き止むのだ! ….! ….!! ….駄目だ、止まらぬ!!!」
延珠も色々試していたようだが、効果は全くなさそうだな….。
このまま連れてくのは相当不憫だが、だからと言って、俺達に養える金があるわけでもない。
….お手上げだな。
「….里見くん、延珠ちゃん。ちょっと聞いてくれない?」
だが、木更さんが俺と延珠を呼び寄せた。
「ああ、この状況を解決出来るなら何でもいいぜ….」
本気でそう思っている。
……しかし、木更さんの出した案は、今出せる案で最良に思えた。俺が反対する理由はない。
力強く頷く。横で、延珠も頷いた。
「よし、作戦決定ね。…….ねぇ、貴女、少し私の話を聞いてくれないかしら?」
木更さんが早速話しかけた。
….うまく行くといいんだがな。
悠梨をSAOの世界に放り込んで、両手用大剣で大暴れさせてなおかつアルゴとイチャイチャさせる構図を思いついたのですが、オリジナルソードスキルとかボスのネーミングがセンスなさすぎることになりそうなので今は自重しときます。
….え?勉強しろ?全くもってその通りですごめんなさい!!
感想、指摘等ありましたらよろしくお願いします。