ブラック・ブレット〜赤目の神喰人(ゴッドイーター)〜   作:緋悠梨

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まだオリジナルです。


6.晒される闇

蓮太郎が影胤と遭遇したその頃….

 

 

ーーーside悠梨ーーー

 

 

神機を見つけるまでに1時間近くかかった。

 

….え?どうやって見つけたかって?

 

近くまできたところで、アーティフィシャルCNSと意識をつなげ、ある程度の場所を掴みながら探してやっと見つけられた。

 

「リッカさんの言ってた『神機の意思』ってのがこんなので役にたつなんてね….」

 

普段神機を無くす、なんてことは絶対になかったから不安だったよ….。まぁ見つかって良かったよ僕の相棒!!

 

神機と腕輪を繋ぐ。さて動作は….うん、変形問題なし。ちゃんと使えるようだ。

 

他に変なところといえば、近くにアラガミ….じゃないや、ガストレアが砕け散ったようなカスが落ちてるけど、大丈夫だよね。

 

さて帰ろう。

 

何もなかったのでカット。

 

「よしモノリスが見えた」

 

何も問題なく、ガストレアにエンカウントもせずにモノリスまで戻ってこれた。

 

(えっとサングラスはどこにしまったっけかなー……ん?)

 

室戸先生の忠告を思い出し、サングラスを出そうとした時。

 

空から羽音が聞こえてきた。ガストレアだろう。そう思い、空を見上げる。

 

「……あれ、トンボかな?」

 

細長い胴体に、大きい複眼、4枚羽、間違いなくトンボだ。

 

よく分からないけど、モノリスの100m程手前をずっとウロウロしている。最後の最後でガストレアに出会ってしまった。

 

「んー、まぁ一応倒しとこうか….」

 

多分東京エリアに入れちゃいけないんだろうし。ここで落としておくとしよう。

 

神機を変形させてシロガネ強襲極型(銃身)を出し、入ってるバレットを確認する。

 

「えっと、あ、無属性連射弾があるね」

 

無属性連射弾はOP(オラクルポイント。バレットを打つのに必要となる。アラガミを攻撃することで吸収している)を消費しないので、無限に打つことが出来る。その分ダメージは小さいが、今ここにあるのはありがたかった。

 

「OP回収できないもんねぇ….」

 

OPがなければ普通のバレットは打つことが出来ない。なので、このバレットがあって本当に助かったと思う。

 

えっとあとは….

 

「……無幻弾(四属性)……」

 

とあるサイトに乗っていたバレットエディットを元に作ったバレットなんだけど、バーストlv3にして節約をつけると「無限に打てる」のでちょっと捻った名前….を……つけた…んだ……。……ロミオ先輩に「中二病だー!!」って笑われたけど!

 

因みに四属性は『炎・氷・雷・神』ね。こっちはOP消費しないと打てない。

 

でもこれは、

 

「向こうで使ってたまんまだねこれ」

 

それでいいはずだが、ご都合主義だなぁ…と思ってしまう。

 

軽く頬を叩いて気を引き締め、シロガネをガストレアに向ける。装填するのは連射弾だ。OPを使うのは勿体無い。

 

ガストレアに狙いをつけ、引き金を引く。

 

「……落ちろ、蚊トンボ!!!!」

 

今言わなくていつ言うか!!そう言わんばかりのドヤ顔をした自信がある。同時に、銃口から連射弾が放たれる。10発程打った。

 

「…………」

 

全部外れた。敵が動くのを計算に入れてなかった。

 

…ま、的が大きくないから仕方ない!!

 

自分で自分に言い訳をして軽いショックを振り払う。そうこうしている間に、ガストレアもこちらに気付いたのか、急降下してきた。

 

「うわっ、危ない!」

 

再度引き金を引く。今度は頭に着弾して、ガストレアが地面に叩きつけられた。

 

「……ふっ、たわいも無い。鎧袖一触とはこのことだ」

 

格好つけて見るが、ギル辺りが見てたら「いや全然締まってねーからな」と突っ込まれそうな気がするよ。

 

キキィ….

 

(あ、まだ生きてるんだっけ)

 

ガストレアの鳴き声がしたので、そのことを思い出す。

 

室戸先生に借りた拳銃を抜いて、ガストレアに照準を定め、撃ち抜く。今度こそガストレアの生命活動を停止させた。

 

「やっぱバラニウム使われてた。護身用だねこれは」

 

室戸先生が進んで戦闘をするとは思えないからきっとそうだろう。後でお礼ちゃんと言わないと。

 

対ガストレア戦を経験出来たし。

 

さてと….どうしますかね。

 

サングラスかけて、と。

 

「よし、とりあえず室戸先生のとこに戻ろう」

 

------

 

さてと….どうしますかね。

 

(完全に道に迷ったぁぁぁぁぁぁ!!!!!)

 

いやマジでどうしようこれ!!室戸先生に後で戻る、って言ったのに!!道を聞いてないから分からないの当たり前じゃん!!

 

さっきは必死でどこ通ったかなんて覚えてないし!!

 

人生マジクソゲーだよもう….色々ありすぎてブラッドの皆と会えない事を悲しむ暇もないよ….。

 

深くため息をつく。

 

その時。

 

「….んでお前ら….奴がエリアにい….よ!!」

 

「早く出てってよ!!….のくせに!」

 

「….悪魔め!!」

 

(?)

 

何かを罵っている声….かな?しかも大勢。

 

….ちょっと見に行ってみよう。野次馬根性ですが何か?

 

ーーーーーー

 

声の発生元へ向かって、僕がみたもの。それは….。

 

「出てけよ!!お前らなんか東京エリアにいるんじゃねぇ!!」

 

「空気感染するんだろ!?早く死ねよ悪魔!」

 

(な….何、これ…!?)

 

1人の女の子……多分7,8歳だろう……その子がたくさんの大人からリンチを受けている場面だった。

 

しかもそれを助けようとする人もいない。見ても完全に無視している。

 

….こんなのが許されるか!!

 

「何をしてるんですかアンタ達は!?」

 

すぐに体が動いた。神機をその場において飛び込む。

 

「な、だ、誰だお前!?」

 

「なんでそいつを守るんだよ⁉」

 

「お前頭おかしいのか!?そいつらは俺の家族を殺したガストレアなんだぞ!!」

 

「アンタ達の方がおかしいですよ!!子供を大勢でリンチするなんて!!それに実際に殺したのはこの子じゃないでしょう!!」

 

「うるせぇ!!そいつらはバケモンの仲間なんだ!!」

 

しまった、正論が逆効果だった!ますます大人達がヒートアップする。

 

「どこがおかしいって言うんだよ!?そいつは『呪われた子供たち』なんだぞ!!」

 

「そうよ!『赤目』なのよ!!殺されて当たり前の存在なのに、なんで守る必要があるのよ!?」

 

(『呪われた子供たち』…!?『赤目』!?)

 

大人達の言ってる意味が全くわからない。室戸先生から聞いていないことばっかりだ。

 

ここで、気付く。

 

(この表情は….憎しみ?)

 

大人達が浮かべる表情が、一様にそうだった。

 

「この子が、アンタ達の家族を殺したっていうのか!?」

 

一瞬、うっ、と言葉に詰まった様子を見せる人もいたが、全く堪えた様子のない奴が反論してくる。

 

「違う!!だが『赤目』はバケモノの仲間なんだぞ!!なんでそれがわかんねぇんだよ!!」

 

全然わかんないのはこっちだ!!

 

でも、これだけは分かった。

 

(この世界では、赤目は忌避されている、ってことか。だから….)

 

だから、室戸先生はサングラスも渡してくれたのだろう。….拳銃のことも含めてお礼しなきゃなぁ。途中で飛び出した僕が悪いんだし。

 

でも、それとこれとでは、話は別だ。

 

「そもそもよってたかって子供をリンチするなんてこと!!人として恥ずかしくないんですか!?」

 

またすぐに反論がくる。

 

「そいつらは『人』じゃなくて『ガストレア』だからな!!」

 

「そうだ!!ガストレアウィルスを持ってるんだぞ!!俺達に感染するかもしれないんだ!危険を野放しにしておけるかよ!」

 

「人殺しなんだぞ、そいつらはッ」

 

周りの人も頷いている。その考えが当たり前のようだ。

 

「アンタ達って人は……!!」

 

「お、お兄さん….」

 

更に言い募ろうとする僕を止める声。….女の子だ。目は…赤かった。

 

「大丈夫!?」

 

「はい….大丈夫です….いつものことなんで….」

 

「いつものこと!?それにこの傷だって…」

 

「この傷も、すぐに治ります。私は『呪われた子供たち』ですから…」

 

また『呪われた子供たち』か!!

 

そう思う傍から、傷が治っていく。ゴッドイーターでもありえない治癒力だ。

 

「いいからそいつを守るのをやめろ!大人しく渡せば、お前にまで手は出さない!」

 

「そいつらは、早く処分しなきゃいけないんだよっ!!」

 

….処分?この子を?罪もないのに?」

 

「いい加減どきやがれこいつ!!殺さなきゃなんないんだよ!!」

 

プツン

 

「….アンタ達、それでも人ですか?」

 

恐ろしく冷たい声が出た。

 

僕は今、一般人にも感じ取れる程の殺気を出している。それにあてられたのだろう、正面の数人が後ずさりした。それ以外の人も、殺気を感じ取ってはいるのか、顔を青ざめさせている。

 

「アンタ達も、ホントの死の恐怖は体験してるんじゃないのか!?生きたくても生きられない、自分が体験した最悪の状況に、なんで追い込む!?」

 

「それは….!!」

 

「….モノリスがあるから、あれが侵入を防いでくれるからって安心しきっているのか!?」

 

今度は反論を封殺した。

 

思い出すのは、アラガミに襲われた人々の苦しむ顔だ。皆、大怪我を負って、苦しんで死んでいった。アラガミ化した人もいただろう。

 

僕のいた世界のモノリスといえる『アラガミ防壁』は、モノリス程の決定的な対策となり得ていない。多数のオラクル細胞を配合してアラガミが寄り付かないように作られている。しかし、配合によっては、ある種のアラガミの好む味となるからだ。だから、向こうの世界は、この世界以上に死と隣り合わせ。いつアラガミが襲ってくるのか分からない。そんな恐怖に怯えて、人は生きていた。

 

『完全な守り』が出来てしまったせいで、安心しきった反動か。

 

「アンタ達のほうが、よっぽどおかしい!!そんなに人殺しが楽しいか!?」

 

「お兄さん!もう、いいですから….!!」

 

怒り狂う僕を女の子がとめる。何故か、弱々しく笑っている。

 

(どうして….)

 

そんな顔をするの!?胸が締め付けられる。

 

….でも、これ以上やると女の子が悲しむだろう。

 

だから、

 

「ちょっとごめんね」

 

「え?きゃっ!?」

 

断りをいれて、女の子を抱き上げる。周りから悲鳴が聞こえたが気にしない。大方、僕がガストレアウィルスに感染したと思ったんだろうね。

 

そのまま、人垣に近づく。すると、僕の殺気のせいか、または女の子に近づくのが嫌なのか、人垣が割れて、道が出来た。その道をさっさと通り抜けて、神機を回収し、大人達の前から姿を消した。

 

ーーーーーー

 

「….ごめんね、怖がらせちゃったかな?」

 

ある程度距離をとった所で、女の子を下ろし謝罪する。

 

「あ、いえ、此方こそ、助けてくださって本当にありがとうございいました…!」

 

女の子が頭を下げる。…というか、

 

「うわあああな、泣かないで!ね!?」

 

女の子が泣き始めていた。どうしたらいいか分からずパニックになる。

 

「ご、ごめんなさ…今ま、でずっと、怖くて、助けてもらっ、なんてなく、てっ…」

 

….ああ、そうだったのか。

 

とりあえず軽く頭を撫でてあげながら、少ししゃがんで目線を合わせて、言葉を発する。

 

「うん、もう大丈夫だよ….ほら、だから泣かないで、ね?」

 

必死に言葉を絞り出す。

 

「…す、すいませ…もう、大丈夫、ですから….」

 

「無理しなくていいんだよ」

 

流石にここで見捨てると後で絶対嫌な気持ちになる。

 

「あの…」

 

「ん?どうしたの?」

 

「どうして….私なんかを助けてくれたんですか?」

 

当たり前の事を聞かれた。

 

「いや….あれを見逃せってほうが無理かな….」

 

….ただじーっと見られてる。….今更だけどこの子かなり可愛いな。腰まである綺麗な黒髪に、キリッとした目。でもキツいイメージは全くなく、顔立ちはまるで日本人形のような可愛さだ。

 

….ここで考えることじゃないし、それに、

 

(建前ってばれてるね、うん)

 

正直に話さなきゃいけないか。

 

「よくある理由だけど、似たような体験をしたから放っておけなかった、かな….」

 

「….似てる、ですか?」

 

「うん、まぁね」

 

でも、この子に話す訳にはいかない。信じてもらえるとも思えないしね。

 

….そろそろお別れかな。落ち着いてきたみたいだし。

 

「ねぇ、君の家はどこかな?」

 

「….外周区です」

 

外周区?また知らない単語が….。

 

「えっと、どっち?」

 

「….あっちです」

 

モノリスの方を指差した。なるほど、だから外周区ね。

 

「じゃあ送って行ってあげるよ」

 

「………」

 

今度は、無言で大きく首を横に振る女の子。否定?

 

「….嫌なの?」

 

聞いてみる。すると、女の子は僕の服の裾を軽くつまんで、

 

「….お兄さんと、一緒にいたいです」

 

「………え」

 

……さてと、どうしますかね(3回目)

 

 

ーーーside蓮太郎ーーー

 

 

もやし特売、延珠と合わせて2袋手に入れた。

 

「あ〜よかった、なんとか間に合ったぜ」

 

「思い出させた妾に感謝するのだぞ、蓮太郎」

 

「はいはいありがとよ」

 

その他必要な食材を買い込み(と言ってもそんなに多くないが。家計は火の車だ)、スーパーを出る。

 

「遅いぞ蓮太郎!!もっと早く歩くのだ!!」

 

「俺はお前みたいに若くねーからゆっくり歩かせろ」

 

全く….楽しそうだな延珠のやつ。一年前じゃ考えられなかった光景だ。少し笑みがこぼれる。

 

しばらく歩いたところで、延珠が突然立ち止まった。

 

「蓮太郎蓮太郎、すごい武器を持った奴がおるぞ。あれも民警かな?」

 

「あ?….うわ、でかいなあれ!バスターブレードってやつか?にしてもあの体格で振り回せるなんてすげぇな….」

 

延珠が見つけたのは、巨大な剣を持った少年だった。隣にいる女の子はイニシエーターだろうか。

 

しかし凄い剣だ。ガン見してしまう。一体序列は如何程だろうか、あの白髪の人物は。

 

「….ん?白髪?」

 

そういえば….あの少年はどっかで見たことのある背丈に、どっかで見たことのある服装だ。

 

….間違いねぇ、こいつだ。

 

「おい、悠梨!」

 

その言葉に少年、悠梨が振り向く。同時に女の子は悠梨の背後に隠れた。

 

「あ、里見さん。終わったんですか?お疲れ様です」

 

「んー、終わったとは言い難いけどな。ところで、お前は先生のとこにいたんじゃないのか?」

 

「実は、これが見つからなくて…」

 

そう言って、その巨大な剣を見せる。延珠がそれを見て「おーっ!!」と目を輝かせた。

 

「それは?」

 

「神機、と言います。僕達の武器ですよ」

 

神機….初耳の言葉だ。

 

神機とやらを近くで見ると、刀身以外にも板状のパーツや銃身みたいなものがついている。剣以外にも使い道があるのか?

 

俺の奇異のこもった目線を察したのか、悠梨が口を開く。

 

「詳しくは、室戸先生のとこでまとめて説明、でいいですか?その代わり、室戸先生に話した分をこの後話しますので」

 

「分かった、それで構わん」

 

「助かります」

 

交渉成立。

 

「あとこれは興味本位なんだが。その剣ってどんぐらいの重さなんだ?」

 

「確かこの装備だと….30〜40kgぐらいだったと思います」

 

「「40kg!?」」

 

今度は延珠と声がハモる。今日多いなハモるの。

 

いやしかし、40kgってどうやって持ち上げてるんだ….。

 

「すごいのだ!!妾にも持たせてくれぬか!?」

 

延珠は使ってみたいと思ったのだろう、神機の柄と思われる部分に手を伸ばす。だが

 

「ッ!?駄目ッ!!」

 

「「え!?」」

 

悠梨が大声を出したかと思うと、大きくバックステップした。面食らう延珠と俺。

 

….その直後、悠梨の影にいた女の子もすぐに悠梨についていき、また悠梨の影に隠れた。なんだあれ可愛い。

 

(いや違う、そこじゃなくて)

 

….悠梨が大声を出したのも驚いたが、バックステップした距離も俺に驚きをもたらした。

 

(ひとっ飛びで3mぐらい行きやがった….もしかしたらこれが、『ゴッドイーター』の力の一部か)

 

「危ないですよ!!死にたいんですか!?」

 

三たび、驚愕する。

 

「は!?どういうことだ悠梨!?」

 

「他人の神機に触ってはいけない、ってことは常識じゃな、いです….ね….」

 

悠梨の声がしりすぼみになる。その後、バツの悪そうな顔になる。

 

「….すいません、里見さん。言い過ぎました。君も、ごめんね」

 

「いいのだ!妾も許可なく触ろうとしたしな、すまなかった」

 

延珠は基本的に聞き分けのいい子だから、すぐに和解できた。良かった。

 

「でも、改めてお願いします。この神機に僕以外が触れると、神機に『捕食』されます。そうしたら、死ぬか、アラガミ化するしかないです。もしアラガミ化した場合、責任は僕に発生するので、僕が介錯を務めなければならなくなります。….少しでも知り合った人を、殺したくはありません。なので絶対に触れないで下さい。お願いします….!」

 

「.…ああ、分かった」

 

悠梨が心優しい奴だってこともな。分からなかった捕食やらアラガミは後で聞くとしよう。

 

「悠梨、もう一つ聞くぞ」

 

「この子、ですね」

 

女の子の頭を撫でる、悠梨の言葉に頷く。

 

何故か、その女の子は俺達から顔を隠していたので、気になったのだ。….まぁなんとなく予想はつくけどな。

 

「….大人達にリンチされていたのを助けたんです」

 

その言葉で、理解する。

 

「そうか….やっぱり『呪われた子供たち』なんだな」

 

悠梨の肩が跳ねる。ビンゴだな。

 

途端、悠梨から殺気が溢れ出してきた。そのあまりの濃密さに気圧される。

 

「お、おい、悠梨」

 

「….里見さん、『呪われた子供たち』ってなんなんですか!?なんでこの子はあんな酷い目に遭わなきゃいけないんですか!?」

 

….これは相当酷い現場を見たか。でなければ、ここまでの反応を示さないだろう。

 

「……『呪われた子供たち』っつーのは、簡単に言えば、ガストレアウィルスを体内に宿した『人間』だ」

 

あえて、人間、の部分を強調する。そう、彼女達は人間なんだ。

 

「人間、ですよね。そうですよね….」

 

悠梨が繰り返す。なにか思うところがあるのか。

 

「里見さんみたいな考え方の人もいるんですね。安心しました」

 

「いや、俺もこいつと出会うまでは『そっち側』だったからな、人の事は言えねぇよ」

 

「そうですか、その子も….」

 

「藍原延珠、蓮太郎のイニシエーターだ!よろしく頼むぞ」

 

「僕は緋上悠梨です。こちらこそよろしくね延珠ちゃん」

 

自己紹介した延珠の頭を撫でる。嬉しそうに見上げてきた。こんな可愛いんだぞ、こいつらがバケモンの訳があるかよ。

 

「ちょいと講釈気味になるが、聞いてくれ。『子供たち』の特徴は主に4つだ」

 

・人間を越える身体能力

・体内に宿すガストレアごとの特殊能力

・ガストレアと同じ『赤目』

・女児にだけ発現する。男児は発現しない

 

「….っとまぁ、こんなとこだな。俺と先生がお前を見て驚いた理由が分かったか?」

 

「よく分かりました。僕が男だから、だったんですね」

 

分かってもらえたようで何よりだ。当然だが延珠には分からなかったようで、

 

「妾には悠梨が何が分かったのか分からぬぞ?」

 

と首を傾げた。どうするか….と悩んだが、

 

「里見さん、見せた方が早いです。….延珠ちゃん、こういうことだよ」

 

止める間もなくサングラスを外し、その赤目を晒す。延珠と女の子が驚きでフリーズした。

 

俺はといえば、ヤバい!と思い急いで周りを見回す。偶然にも他に人はいなかった。ふぅ….危ねぇ。

 

「….悠梨、もっと注意を払ってくれ。見られると不味い」

 

「一応周りは確認しましたが….分かりました」

 

俺の心臓にも悪いしな。悠梨はサングラスを掛け直す

 

ここら辺でフリーズから延珠達が回復する。

 

「….ど、どういうことなのだ悠梨!お主実は女なのか!?」

 

「「その発想はなかった」」

 

まぁ確かに可愛い顔ではあるが….って俺は何を考えてんだ!?そっちの気はないぞ!!

 

「え、延珠ちゃん僕は男だからね!?」

 

「むぅ、そうか」

 

次の発言が爆弾だった。

 

「名前も女っぽいし、身長も小さいから….」

 

「延珠ちゃん?」

 

悠梨の声の温度が下がった。

 

「ど、どうしたのだ悠梨….?」

 

「あはは….小さいって、面白いこと言うねぇ。でも、身長は、あまり言わないで欲しいなぁ….」

 

笑ってるけど目が笑ってない!!悠梨怖ぇ!!!!

 

「わ、分かったのだ!!分かったから元に戻るのだ!!」

 

「うん、頼むね?」

 

悠梨の声が元に戻った。….これはガチでネタにしないほうがよさそうだ。

 

俺と延珠は絶対に口にしないと硬く堅く心に誓った。

 

よし、仕切り直しだ。

 

「ごほん….そろそろ行くか?」

 

「そうしましょう。….君は、どうする?」

 

悠梨の問いに、女の子が頷いた。ついて行くということだろう。しかし悠梨の影に隠れて出てこようとしない。

 

「….安心しろ、俺達は差別主義者じゃない。それにこいつだってそうだしな」

 

「そうだぞ。それに妾は、蓮太郎のフィアンセだしな!」

 

「ふぃ、フィアンセ…?」

 

悠梨がありえない、といった目でみてくる。また一つ、新たな誤解がここに誕生した。

 

「違うからな、こいつの妄言だから真に受けるんじゃねーぞ!」

 

「分かりました、里見さんはロリコンなんですね」

 

「全く理解してねぇよコイツ!!」

 

頼むから勘弁してくれ!

 

しかし、こんなことがおかしかったのか、女の子がクスッと笑った。そのおかげか、空気が柔らかくなった感じがする。

 

「….ほら、帰るぞ。お前らもついてこい」

 

「了解です。….行こ?」

 

4人で、連れ立って歩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……あ、警部から報奨金もらい忘れてた)

 

 




女の子の容姿は「半分の月がのぼる空(著/橋本紡 画/山本ケイジ)の秋庭里香を参考にしてます。彼女をもっとロリ…もとい小さくした感じをご想像下さい。

謎な部分が多くてごめんなさい!!
本編入るまでにゴッドイーターの説明をいれるつもりで来たらこんな感じに…。
あと5話以内には説明回とオリジナル展開を終わらせるつもりです。

あと展開の関係で、オリジナル展開が終わってから、民警全体に招集がかかるまで一ヶ月の間があることにします。
影胤は東京エリアの偵察、感染源ガストレアは、数人襲ってガストレア化させたけど未だ本体は見つかっていない、ってことにしておいて下さい。

民警無能っぽくなっちゃう(汗 そんなことないのに…

感想、指摘等ありましたらよろしくお願いします。

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