ブラック・ブレット〜赤目の神喰人(ゴッドイーター)〜   作:緋悠梨

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こっちでは一ヶ月振りです。長らくお待たせ致しました。

さて、明日は2/14。何の日?
……そうですね!! 「血のバレンタインデー」ですよね!!
ヒャッハースペースコロニーに核……もといリア充爆発しろ(真顔)
……とか言いながら、友達に「心ぴょんぴょん言いに行くぞ」と誘われているので言うべきか否か……。

……ま、来年にはこの作品でもバレンタインネタやれればいいかなーくらいです。

悠梨「……ところで、読者様を1ヶ月待たせてこのクオリティ?」

……すいませんごめんなさい許して下さい。
分かってたけど暗い話は苦手なんですよ!
また論理がめちゃくちゃな予感……。
読みにくい、何言ってるか分からないと思われた方、ホントにごめんなさい。

……そ、それでは本編どうぞ!!



19.突きつけられる現実

ーーーside悠梨ーーー

 

 

いつも通り、ランちゃんに見送られて奏と一緒に登校した。

 

「……あーなるほど。確かに悠梨の歳で赤目っていない、っていう考えも、確かに合ってるっちゃ合ってるね」

 

「うん。バレた時にそれで通せる……かも、くらいだけどさ」

 

「まー1つ逃げ道が出来たってのはいいことじゃん」

 

返事は返せなかった。

 

いいことなんだろうとは思う。でもその言い方だと、「僕と『呪われた子ども』達は全く別の生物だ」と主張しているみたいで……。

 

蓮さんの言葉を借りるなら、『彼女達は人間』じゃないと言っているみたいに感じられてしまう。

 

「……ま、僕も化物なんだけど」

 

「ん? なんか言った?」

 

あれ、どうやら言葉にしてたみたいだ。誤魔化しておこう。

 

「夢でさ、向こうの世界の仲間といた頃を見てさ、ちょっと懐かしくて」

 

「……そっか。早く戻る方法見つかるといいね。ボクも協力するからさ」

 

「……ありがとね、奏」

 

(……でもその時は、奏と別れる時でもあるよね……)

 

それはそれで寂しくない訳がない。一度でも仲良くなったら、別れが辛くない理由はないわけで。でもまた向こうの仲間と会える、一緒に戦えるということは間違いなく嬉しいわけで。

 

……最近よく思う。どっちの世界が、僕の正しい居場所なんだろう、って。いやまぁ、向こうが本当の世界だってことは分かってるけど……でもこの世界でも、人と繋がりを持って生活してる訳で。

 

(……これは戻る時に難しい決断を迫られそう……)

 

「……り、悠梨! 危ない!!」

 

「……はい?」

 

気付くと赤信号に突っ込もうとしていた。

 

「……うっわ危な!!」

 

「それはこっちの台詞だよ!! どうしたの? 今日ボーッとし過ぎじゃない?」

 

「いや、そんなつもりはないけど……」

 

「傍から見てると凄い危なっかしいんだけど……どうする? ボクから担任に休む、って伝えとこうか?」

 

「あー……体調悪いわけじゃないし、大丈夫だよ」

 

「……無理だけはしないように、いいね?」

 

「……うん」

 

 

 

 

……ここで帰っていれば、というのは意味のない言葉だ。それは結局問題の先送りに過ぎないからね。

 

 

ーーーーーー

 

 

いつも通り、遅刻ちょっと前に教室に滑り込む。

 

「おはよー」

 

「ん? ……よ、よぉ悠梨?」

 

……あれ、なんか違和感。

 

「どうしたの皆? なんかあった」

 

「い、いやなんもねぇよ」

 

「ほら、先生来ちまうから席つこうぜ」

 

そう言うとすぐに自分の席へ戻ってしまった。

 

「……なんだろ?」

 

「……さぁ?」

 

まぁ、気にしても仕方ない。席につかないと。

 

ーーーーーー

 

 

そして昼休み。

 

「あーお腹空いた……」

 

さっさと弁当食べよー……

 

「本当ですかッ!!??」

 

「っ!?」

 

何事!?

 

突然蓮さんが大声と共に立ち上がった。クラスは前に木更さんが電話が来た時のように唖然として見ているが、今回は周囲の様子に気付いていない。

 

……というか、

 

(周りを見る余裕がない?)

 

表情が異常な程焦っているように感じる……とか思ってたら鞄持ってダッシュで教室を出て行った。

 

(……後でどうしたのか聞いてみよ)

 

今気にしても仕方ないかな。そう考えて、いつものグループに移動する……のだが、

 

「どしたの皆?」

 

やけにそわそわしてる。今日多くないかなそういう人?

 

「あ、いや、なんでも……よ、よし食うぞ!」

 

「……勿論そのつもりだけど?」

 

そう言って席につくが、皆は食べようとしない。それどころか、何やらアイコンタクトを飛ばしあっている。

 

……まさか。

 

「今日はアイコンタクトで会話しなきゃいけない日だったり!?」

 

「「「「「「違ぇよ!!!」」」」」

 

「なんだ違うのか……」

 

あってると思ったんだけどなぁ……。

 

「なんでこいつはいつも通りなんだ……」

「マジで聞くの? 俺やだよ?」

「でももしそうだったらどうするのよ」

「いや、どうって言われてもな……」

 

「あーもう! 分かった、俺が聞く!!」

 

何やら皆が小声で話しているのを見かねたのか、そう叫んで僕の隣にいる男子が立ち上がった。

 

「ん? 何を?」

 

「悠梨、単刀直入に聞くぞ。嘘は答えんなよ。いいな?」

 

「あ、うん……」

 

なんだろう……嫌な予感が。

 

「お前さ…………赤目って、マジか?」

 

「……ッ!!??」

 

ガタン!!

 

「奏!? 大丈夫!?」

 

「あ、うん……ビックリし過ぎただけ……」

 

奏がひっくりかえって友達に心配されているようだけど、

 

(…………え、うん、バレたってことでおk?)

 

ぼくはその程度しか考えられてないです。

 

「あ、あれ……どっからそんな噂が……?」

 

「いや、なんか今朝来たらどこからともなくそんな話が流れてきてよ……多分クラスの大半が聞いてるぜ? だよなぁ?」

 

その言葉に頷く僕と奏以外の全員。……人の口に戸は立てられぬ、とはよく言ったもんだなぁ……。

 

「……んで、どうなんだ悠梨?」

 

「あ、えっと……」

 

「悠梨、ちょっと来て!!」

 

「うわっ!?」

 

どう答えようか悩んでた僕の腕を、奏が突然引っ張って廊下に連れ出し、「見ないように!!」と告げて扉を閉じた。その時に悲鳴を押し殺したような声があがったけど……大方、奏が僕に触れてガストレアウィルスに感染したとでも思ったんだろう……。

 

(……って以外と冷静だな僕……)

 

「自分が以外と冷静だな〜、なんて驚いてる場合じゃないよ!!」

 

「……奏、何でわかったの……?」

 

「顔に出てる!!」

 

あれー? そんな馬鹿な。

 

「ってそうじゃないよ……どうするの!?」

 

「あー、うん、どうしようか……」

 

いや、どうするもこうするもないんだけど。ちゃんと話すしかないような気がする。

 

「っていうかどっからそんな話が出たんだろ……悠梨に心当たりはある?」

 

「心当たりは……………あ」

 

困ったことに一つあった。

 

「あるの!?」

 

「うん。昨日の影胤さんの発言だけど……」

 

ーーーーーー

 

 

「君達には現実を見てもらうとしよう。明日、学校に行くのを楽しみにしているんだね」

 

 

ーーーーーー

 

 

このことを奏に告げる。

 

「影胤って敵のあの人だよね?……そっか、そんなことが……ってあれ、待って。さっき里見君が急いで教室を出て行ったよね?」

 

「うん、でてったけど……」

 

それがどうかしたのだろうか?

 

「……それで確か、里見君のイニシエーターは学校に通ってるんだよね……?」

 

「うん……あ!! 延珠ちゃんも僕と同じことになってるかもしれないってこと!? なんとかしないと……」

 

「ないとは言えない……」

 

「そんな!!」

 

延珠ちゃんが酷い目にあってるかもしれない!!そう思ってすぐに駆け出そうとした僕の腕を、奏が掴んで引き止める。

 

「奏!? なんで行かせてくれないの!?」

 

「それはこっちのセリフだよ!! どうして里見君のイニシエーターを1番に助けようとしてるの!?」

 

「どうしてって……延珠ちゃんに限らなくても、仲間を助けたいって思うのは普通でしょ。……じゃ、僕行くよ!?」

 

そう言って腕を振り払おうとするが、奏の手は離れない。……腕力どうなってるのさ?

 

「待ってってば!! この状況でいなくなるのは1番まずいって分かってるでしょ!?」

 

「分かってるけどそれどころじゃないよ!!」

 

「なんで!? 自分がどうなってもいいの!?」

 

「僕はどうでもいい!! 早くしないと延珠ちゃんがッ……」

 

 

Wanna know why Wanna know your fantasy〜♪

 

 

「蓮さんからだ!!」

 

「……このタイミングでシリアスブレイクとか、ボクもう……」

 

ついに奏が腕から手を話した。シリアルないと作者が持たないから……って何の話だこれ。

 

「蓮さん!!延珠ちゃんは!?」

 

電話口から聞こえてきた蓮さんの声は、明らかに弱っていた。

 

『ああ……担任が早退させたって言ってた』

 

「そっちも『赤目』だって噂が……?」

 

『……延珠が『赤目』だって噂が突然立ち上ったらしくて、昼休みには嫌がらせが……って、そっち『も』って、まさかそっちもか!?』

 

……あ、しまった。蓮さんに余計な不安を与えるつもりはなかったんだけど。

 

「ええ、まぁ……まだこっちは直接的なのには発展してないですけど。……それよりも早く延珠ちゃんのところに!! 僕も行きますから……」

 

『なんでお前が来る必要があるんだよ。こっちは俺がなんとかする。……悪いな、そっち行けなくて』

 

「僕の心配はいいですから!! それよりなんで僕が行くのをとめるんですか!?」

 

『止めて当たり前だろ。余計な負担を背負わせるつもりはねぇよ。……俺はこのまま延珠の様子見に帰る。……本当にすまん」

 

それだけ言って、通話が途切れた。

 

「……来なくていい、って言われた……なんでだろ……?」

 

呆然となる。仲間の危機に、『またも』自分が何も出来ない。……それが、悔しくて悔しくてたまらない。

 

でもそのことは、奏にも分からないみたいで。

 

「当たり前だよ!! 自分が辛い状況の時に人の心配するとか普通ありえないよッ」

 

「でも、僕も何かしなきゃ……」

 

「そっちは里見君が行くんでしょ? 少しは信頼してあげなよ!!」

 

「……信頼、ね……」

 

……蓮さんのことを信頼しているかどうかと聞かれたら、勿論しているって胸を張って答えられる。そして、延珠ちゃんのことを1番分かってるのは蓮さんだ。これもある種の信頼だろう。

 

(……でも、それでも!!)

 

仲間が辛い思いをしてるんだと思うと……!!

 

 

そうだよ……あの時も、絶対無事に帰ってくるって、明るい笑顔で帰ってくるって信じこもうとしたんだよ……!!

 

 

けれど、けれど2人は……ッ!!

 

 

「……り!! 悠梨!? どうしたの!?」

 

「……あ、ごめん、ちょっと意識飛んでたかも」

 

どうやらけっこうな時間黙り込んでいたみたいだ。手のひらに爪が食い込むくらい拳に力を込めていたことに今更気付く。

 

「ずっと黙ってるから心配したよ……それで、本当にどうするの? 皆待ってるよ?」

 

「……分かった、じゃあこっちのカタを早目につけて帰る」

 

「あ、ちょ、悠梨!?」

 

早く助けに行きたきゃ、早くこっちを解決すればいいだけだ。後ろから奏が止めようとしたが、無視して教室の扉をあける。その瞬間、教室中の視線が僕に集中した。

 

「……来たか。話がまとまったんなら、話してもらうぞ」

 

「勿論。……だけどちょっと待ってね」

 

「まだ待つのか?」

 

「大丈夫、今度はすぐ」

 

そう告げて……両目のカラーコンタクトを外す。その動作で、もうばれてるだろうけど。

 

「……ご覧の通り、僕は『赤目』だよ」

 

「「「……ッ」」」

 

「化物!!」「お前、騙してたのか!!

 

そう叫び出すクラスメイト。……予想の範囲内。心は想像以上に痛いけど。

 

しかし、非難するのを制する声。先ほど僕に赤目かどうか聞いてきた男子だ。

 

「待て!! まだ俺の話は終わってない。……悠梨、まだ聞きたいことが3つある。いいな?」

 

「答えられる範囲でなら」

 

「……分かった。一つ目。何故隠してた?」

 

これは、セーフ。

 

「いらない混乱を産まないため、かな。騙すつもりじゃなかった、とかは言わないから安心して」

 

むしろこれ以外にはない。

 

「そうか。……二つ目。なんで目が赤い?」

 

これも、セーフ。

 

「生まれつき……ってのは『子供たち』と一緒なんだよね。元々だよ」

 

「元々か……。……最後だ。お前は『呪われた子供たち』なのか?」

 

これは……ある意味、アウトだ。

 

「僕は『子供たち』じゃない……って言いたいけど、それは違うね」

 

「悠梨!?」

 

「奏、大丈夫だよ」

 

そう言って軽く笑いかける。

 

「舐めてんのかお前!!」

 

「『赤目』は早くいなくなってよ!!」

 

「……やだなぁ……僕の話はまだ終わってないんだけど?」

 

「うるせぇ!! 化物の話なんか聞くかよ!!」

 

「なんで普通溶け込んでるのよ!?」

 

「まだ何も話してない……」

 

「両者一旦落ち着け!!」

 

その声にクラスが静寂に包まれる。

 

「まだ話してないことはある、って言ったな? 話していいぞ」

 

「おい!!」

 

「いいから聞け!!」

 

その言葉にまた押し黙る。この男子にここまでのカリスマがあるとは思ってもいなかった。感謝をしながら持論を展開する。

 

「ありがとね。……『僕は『赤目』じゃありません。普通の人間です』……って言ったら少しは収まるのかもね。……でも僕はこれ、嫌いなんだよね。なんでか分かる?」

 

……しばらく待つが、冷静組からも答えがなかったのでもう一度口を開く。

 

「何故嫌いか……それは『赤目の子達を人間じゃないと認めることになる』からだよ」

 

「『赤目』は全部バケモンだろうが!! 何が人間だ!?」

 

ああ……大人でもそう言う人がいるから、高校生でもいてもおかしくないとは思ってたけど……いくらクラスメイトでも、流石に気に入らないなぁ……。

 

「じゃあさ、その子達と触れ合ったことがある?」

 

「あるわけないでしょ!! 触ると感染するのよ!?」

 

……これは、さっき悲鳴を押し殺した女子か。

 

「接触感染とか、空気感染はしないんでしょ? そういう結果は出てるんだから」

 

確かそうだった……記憶が正しければ。

 

「それが確実って話はないのよ!?」

 

「じゃあ逆に絶対空気感染する、って話があるわけでもないじゃん?」

 

怒りに支配されてもいいのに、何故か心はどんどん覚めていく。つられて頭もどんどんクールダウンしていく。

 

「『子供たち』は危害を加える、とはよく言われるが、そっちはどうなんだ!?」

 

それには一応持論がある。

 

「これは完全に僕の予測だけど。……結局『子供たち』を外周区に追いやってるのは『奪われた世代』? だよね? 彼女達から生きる術を奪っているのはその『奪われた世代』でしょ? 人間として扱わないで、それで問答無用で取り締まるってのは酷すぎると思うんだけどね」

 

逆に何故そう思わないのかが不思議なんだけども。……と、思っていたが、

 

「化物を人間として扱えってのが無理な話だって……」

 

ドゴン!!

 

冷えていたはずの頭が、たった一言で爆発した。

 

「何度言ったら分かるの? 彼女達は人間なんだ、って」

 

思わず机に拳を叩きつけてしまった。直前に力を抜いて、机を叩き潰すことだけはなんとか避けたが。

 

「何を言おうと『呪われた子供たち』は人間。そこを認めない限り、僕は、話は平行線だと思うけど?」

 

「じゃあそれでいいからでてけ!!」

「そうよ!! 『赤目』なんて滅べばいいのよ!!」

「……でも悠梨君のいうことも何となく分かるかなぁ……」

「正気かお前!?」

「まぁ……俺も確かに、『子供たち』を憎むのは違うかも、って思うなぁ……」

「あの『赤目』の化物によって家族が殺されたんだぞ!! 許すのか!?」

「そう!! 『赤目』は全て消え去ればいいだけなの!!」

「……化物って結局なんなんだろうな」

「『赤目』全部!!」

「……ガストレアだけで、『子供たち』は違う?」

「俺、ちょっと差別主義者ってなんか間違ってたかなって思い始めたんだけど」

「ウィルスを持ってるのが近くにいるとか耐えられないわ!!」

 

「静粛に!!」

 

またクラスが静寂につつまれる。

 

「悠梨の意見にも一理ある、というか俺は差別主義者じゃないから、むしろお前には賛成だな」

 

「てめぇ、裏切るのか!!!」

 

「裏切るもなにも、この手のことで立場表明したことはないんだが。……だが、悠梨。せめて証拠みたいなのはないのか?」

 

「……証拠、ねぇ……?」

 

そんなことを言われても、今すぐ用意出来るような物は……

 

『それならあるで!!』

 

……おや、未織さんの声が……。

 

「「「「「何やってんですか会長!!!???」」」」」

 

その姿を認めた瞬間、クラスが一斉に突っ込んだ。……うん、皆が突っ込みたくなるのも分かるよ。だって今、未織さんは……

 

「……なんでラベリングしてるんですか?」

 

何故か窓の外にロープでぶら下がっていた。

 

「階段降りるより早いやんか……よっ、とぉ」

 

空いてた窓から未織さんが教室に入る。もはや何も言うまい。

 

「……で、司馬会長? 証拠があると聞いたが……」

 

驚愕からいち早く立ち直ったらしい進行役の男子が、未織さんに証拠について問う。……正直、僕はその証拠に全く心当たりがないんだけども……。

 

「それなら……ほら、この通りや」

 

そう言って懐から二枚の紙を取り出して、カリスマ持ち男子……もういいか。本名、新堂君に手渡す。そして僕に目配せ……合わせろ、ですか。

 

しばらくして、2枚の紙を見続けていた新堂君が驚いたと言わんばかりに目を見開いた。

 

「……これは……!!」

 

「悠梨君の血液を採取して検査した結果や。1枚はうちの会社の研究所からのやつ。もう1枚はあの室戸菫医師に頼んだ奴や」

 

……菫先生そんな仕事もしてたんだ、とか思う前に、僕そもそも血液を採取された記憶すらないんですがね……。

 

「どうや!! これでも悠梨君が人間やないと言う……」

 

「「「「……誰?」」」」

 

「あら?」

 

未織さんの惚けた声。そこへ奏が冷静に指摘を入れる。

 

「会長、ボク達はガストレア関連で知ってると思いますけど、普通は知らないんじゃないんですかね……?」

 

うん、申し訳ないけど、僕も同意。あそこに引きこもってる人が有名人な訳がないと思う。

 

「……あ、ま、まぁ、そうやね! ……でも1人くらい知っとらんの?」

 

最初に妙などもりがあったが、僕はいないと思う……。

 

「あ、あの……私知ってます……」

 

「「いた!?」」

 

奏と声がハモった。声をあげたのは、数学でクラス……どころか学年トップの女子だ。

 

「え、どうして知ってるの?」

 

「今まで解かれなかった数学の理論を次々と解いている人がいて……誰かと思って調べてみたらその室戸先生という人だったんですよ」

 

……あの人、天才だったりするのかな?

 

「そうや! 天才なんや!! ……これで、今そこの子が持っとる書類の信憑性はバッチリやろ?」

 

「……まぁ俺はいいですけど……」

 

「信じられるかそんなもん!!」

 

「偽装ってこともあるかもしれないじゃない!!」

 

「……っとまぁ、こんな意見が出るのは予想出来たことかと」

 

……新堂君、達観してるなぁ……。

 

「そもそもなんで会長は悠梨の肩を持つんですかッ?」

 

今度は未織さんを批判する声まで出てきた。

 

「まっ……」

 

「悠梨君、黙っとき」

 

立ち上がろうとした僕の目の前で、扇子が開かれる。

 

「……友達を助けるのに、理由なんているん? 当たり前のことやないか」

 

その言葉、一部のクラスメイトが、ハッとしたような顔をする。

 

「……まだ希望は残ってるみたいやね」

 

そう言って不適に笑う未織さん。その姿は格好良くて、凛々しくて……。

 

そしてその姿を見てる僕は……。

 

「……すいません未織さん。ありがとうございます。僕、行きますね」

 

「……帰るん?」

 

「ええ。……まだ半数以上は、僕がいることに反対でしょうからね」

 

僕に向けられる敵意を持った視線は、最初に比べれば幾分か減ったものの、それでもまだまだ多い。

 

(……しばらくは来ないほうがいいよね)

 

僕だってこの視線の中いたくはないし。

 

「ま、そんなわけで……。奏もありがとね。……じゃあ、また」

 

それだけ言って、誰の返事も聞かず、僕は教室から逃げるように駆け出した。

 

(……いや、実際に逃げたんだよ)

 

奏でもなく、新堂君でもなく、クラスメイトでもなく……。

 

 

 

……未織さんから。

 

 

 

守る側になると、仲間を絶対守るんだと、あの時誓ったはずなのに。

 

なのに結局僕は、1人じゃ何も出来なくて、守られて……。

 

……だからさっきの未織さんの姿を見た時に、格好良い、凛々しいと思うと同時に、……『悔しい』なんて感情が出てきたんだ。

 

あの器の大きさ、つまり人を受け入れる度量、そして何より守る為に必要な力を、彼女は用意していた。

 

僕の為に、だ。

 

(僕が皆を守る力に、なるって誓ったのに……ッ)

 

これじゃあ何も意味がない!!

 

あの時は2人を助けられず、今は延珠ちゃんを救えず、それどころか未織さんに助けてもらっている。

 

感謝の気持ちがないわけじゃない。むしろ多大にある。……でもそれを、黒い気持ちが邪魔をする。

 

……ただひたすら、自分が惨めだった。

 




暗い話は筆……もとい、指が進まない……。
iPod touch持つ手が重いです。
プロットは6巻終了+αはあるんですけどね……orz
あと面倒くさいのでクラスメイト1人テキトーに名前つけちゃいました。悠梨の理解者側としてこれからも出てくるでしょう、多分。……出なかったらごめん新堂……。


さてGE2RB発売まであと5日強!!
俺は当日にvitaも同時購入するとこからスタートです!!
悠梨を魔改造するのが楽しみです(*´∀`)♪

「明仄の〜」でも書いたんですが、GE2はPSPだった上に、周りでやってる人がほぼいなかったので、通信とかしたことないんですよね〜....。だからRBではオンラインプレイが楽しみで楽しみで....!!
色んな人とアバカ交換したり、マルチしたいなと思ってたりします!!

....読者様で、悠梨のアバカ欲しいよー、とか、マルチしよう!! っていう方いらっしゃいますかね....(つД・)チラ

悠梨「チラチラ見ないの!!キモいよ!!(作者の腹に蹴り)」

ぐっふぉあ....うん、キモいのは分かってたけど。
「明仄の〜」で宣伝紛いのことして、数人から「アバカ交換かマルチやろー」ってメッセージ頂きまして....嬉しい限りです。

もしそういう方がいらっしゃれば、ここのメッセかTwitterにリプなりメッセなり下されば絶対対応致します。神機も悠梨のセット(4話参照)でも、それ以外でも構いません!!
……「遺された神機」をちゃんとつけてからになると思いますが。そうしないと俺が納得いきませんので。

感想、指摘等ありましたらよろしくお願いします。

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