ブラック・ブレット〜赤目の神喰人(ゴッドイーター)〜   作:緋悠梨

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【注意!】今日は2話更新しています! まだ17話を読んでいない方は先にそちらをお読み下さい。

17話は珍しく鬱展開だった訳ですが、ちょっと不評だったですかね、ごめんなさい。でも、ブラブレ既読者には予想がついていらっしゃると思いますが、この次の話も暗い展開です。もうしばらく暗い展開にお付き合い下さい。


今回は幕間。過去話です。明るいやつです。
神薙ユウのキャラに関しては後書きで説明を入れるので、気にせずにそのままお読みくださると嬉しいです。



18(sub).夢の中で1『極東支部』

2069年。極東支部。緋上悠梨、14歳。

 

 

ーーーーーー

 

 

「こんにちはー」

 

「よう、緋上のガキ。運搬ご苦労さん」

 

「いえいえ。それよりもガキって……。僕14歳ですよ?」

 

「50越えてる俺からしたらガキだ」

 

「それ、一生ガキって言われ続けるやつじゃないですか……」

 

「言われたくなかったらまず身長伸ばすんだな」

 

「それ禁句ー!!!」

 

僕の反論に豪快に笑うおっさん(悪意込み)。くっそう……四捨五入すれば150cmいくのに!!(149.7cm)

 

ちなみに会話の相手はスタングレネード製造斑の班長だ。僕の父さんの後任でもある。

 

……え?父さんどうしたかって? 3年くらい前に1人でちょっと外出して行って、そのままアラガミに襲われて帰らぬ人となった。

 

僕と母さんが残された……でも母さんも半年前に病気でぽっくり……。

 

……大丈夫、立ち直ってるから!!それにこのご時世、僕みたいに両親失った孤児とか珍しくないしね。

 

とりあえず(配給はあるが)食い扶持は稼がなきゃいけないから極東支部でバイトしてます。

 

「……とりあえず爆縮体とマグネシウム、ちゃんと届けましたよ」

 

「おう、お疲れさーん」

 

「んじゃ失礼します」

 

(さて、他は回復錠の素材と武器の素材か……どっちからいくか……)

 

「……ん?おお、悠梨じゃねぇか。運搬中か?」

 

正面から声をかけられたので、運搬表から顔をあげる。

 

「あ、リンドウさん!どうもです。ちょうど回復錠の素材運んでるところで」

 

「おー、精が出るなぁ〜。お疲れさん」

 

この人は雨宮リンドウさん。この極東支部の第一部隊の隊長で、会話から分かる通りきさくな人だ。なのだが……

 

「で、だ。お前さん、またあれ頼むわ」

 

「また逃げたんですか……」

 

サボり癖があるのが玉に瑕。要は『報告書を部隊員に任せたから、そいつが追いかけてきても何も言うな』ということだ。

 

特に強力なアラガミが集まる極東支部において、討伐班とも呼ばれる第一部隊と言えば世界屈指の実力。その隊長となったら実力はかなりのもの…………なのだろうけど、どうも支部内にいると軽口を叩いてばかりで、そんな様子が全く見てとれない。

 

「だってめんどくさいんだぜあれ……」

 

「仕事めんどくさがってどうするんですか」

 

「俺はアラガミ討伐することが仕事だってんだ。……んじゃ、後は頼んだわ」

 

「え、まだ僕は承諾してn……」

 

僕の返事を聞かずに「配給ビール配給ビール……」と呟いてリンドウさんはどこかに歩いて行った。

 

(……まぁいいか)

 

もし探してる人いたら言っちゃえー。さて、回復錠から届けるとしよう。

 

割愛、配達終了。

 

最後は神機保管庫だ。

 

残りの資材の乗った車を押して、エレベーターまでいき、来るのを待つ。

 

すぐにエレベーターが来たが、そこには先客がいた。

 

「どうもー」

 

「……あ、ああ、ごめん!今降りるよ!!」

 

黄色いバンダナにお腹の出た上着を来た人(男)。あまり見たことがない人だ。そして寒そう。腕輪がついてるので、ゴッドイーターだということが分かる。

 

何やら考え事をしてたようだ。

 

車を少しよけて、その人が降りやすいようにする。その後に乗ってドアを閉めようとしたら声をかけられた。

 

「なぁ、一つ聞きたいことあるんだけどいい?」

 

「あ、はい。なんですか?」

 

「リンドウさん見てない?」

 

(……今回のリンドウさんの被害者はこの人か)

 

普段は死神とか言われるソーマさんとかに書類仕事を無理やり押し付けていたりするが、今回はこの人みたいだ。

 

まぁ、さっきのことを言ってしまって構わないだろう。

 

「ちょっと前、と言っても10分ぐらい前ですけど、スタングレネード工場のところを歩いてましたよ」

 

「なんでそんなとこに……。とりあえずありがと!!」

 

そのまま走っていってしまった。

 

せわしない人だなー。

 

「……続き続き」

 

これ以上気にしても仕方ない。エレベーターのボタンを押す。

 

止まってドアが開くと、たくさんの神機が格納されている部屋が広がっている。神機保管庫だ。

 

「リッカさん、素材持ってきましたよー」

 

僕と似たような髪色を持っている女性が振り返る。彼女が楠リッカさんだ。技術・開発部に所属していて、神機の整備などを担当している。

 

「あ、悠梨君ありがと!ちょっと持ってきてー」

 

言われた通り持っていく。

 

「んーとね、これがあそこで、これはそっちでこれが……」

 

言われた通りに素材を分配する。パシリじゃないよ。何時ものことだ。

 

「……よし、これで全部!ありがとね〜」

 

「いえいえ。……あ、そうだ。リッカさん」

 

「ん?」

 

さっきの人のことを聞いてみよう。

 

「全身黄色の服を着たゴッドイーターの人とすれ違ったんですけど、誰か分かります?」

 

「あー、多分コウタ君だね。藤木コウタ君」

 

ゴッドイーターの人ならリッカさんは絶対知っているだろうと思い聞いてみたが、やっぱ知っていた。

 

「藤木コウタさん……新人?転属?」

 

「新人だよ。ユウ君と同期でアサルト使い」

 

「……じゃあこの間来たばっかりなのに、もう書類押し付けられてるんだ……」

 

「あ〜それか……ユウ君もやらされるのは時間の問題かな」

 

「……否定が出来ない」

 

「もうとっくに押し付けられてたりするんじゃない?」

 

「……だとしたらユウさんマジ乙です」

 

「……あれ、俺の話題?」

 

僕の背後、エレベーターの辺りから声。振り向くと、茶髪に碧眼、そして神機を持った男の人が歩み寄ってきていた。

 

「ユウさんこんにちはー」

 

「お疲れ様ー。訓練だっけね?」

 

「訓練だけのつもりだったけど、コンゴウ倒したくなったもんでちょっと沈黙の廃寺まで出向いてきたとこ」

 

「「おおぅ……」」

 

この人、ホントに新人なのだろうか?

 

神薙ユウさん、世界初の第二世代型神機適合者(確定)で、極東支部の新人(多分)。

 

着任初日にユウさんが「食堂どこだー!!」って迷子になってたので、案内したのをきっかけに知り合いになった。

 

因みにコンゴウといったら、極東支部以外では「1人で倒せたら一人前」とか言われてた気が。ヤダこの人怖い。

 

「そんなありえない物を見る目で俺を見ないでくれ。……んで、俺の名前が出てたみたいだけど何の話?」

 

「悠梨君がコウタ君と初遭遇したらしくてさ。ユウ君と同期だ、って話をね」

 

「あ〜、なるほど。コウタとね」

 

「どんな人なんですか?」

 

「ま、このご時世でよくこんな風に育ったもんだなー、ってくらいまっすぐ。馬鹿だけど」

 

「ユウさんユウさん、発言がおっさん臭い上に最後で台無しです」

 

「だって講義中に寝てたりしてるしなー」

 

あー……、と僕とリッカさんの声が被る。

 

「ちなみに何処でコウタを見たんだ?」

 

「リンドウさんの書類仕事押し付けられたみたいで、やり方知らないのか、焦って探してたのを見たんですよー」

 

「ユウ君も押し付けられないよう注意した方がいいよ」

 

「……ああ、あれね……」

 

ユウさんが遠い目をする。

 

「……まさかユウ君……」

 

「……うん、もうやらされた……」

 

「「……ドンマイ(です)」」

 

とりあえずユウさんに合掌。注意を促す前にやられてたとは。

 

「……ちょっと仕返しついでにリンドウさん探すの手伝ってくるわ」

 

ユウさんの発言が悪ふざけであることは分かっているので特に咎めない。

 

「あははっ、行ってらっしゃーい」

 

「ユウさん頑張ってー」

 

「おー」

 

んじゃ、と背中越しに右手をあげて答え、ユウさんがエレベーターに乗ってその場を後にした。

 

「……楽しそうだなぁ」

 

「まぁ、変に気負ってるよりはいいんじゃない?」

 

ポツリと呟いた一言にリッカさんが反応してくれる。

 

「ずっと気を張ってるのは余計な疲れを生むだけだから。ああいう息抜きとかあった方がいいんだよ」

 

「……そうですね」

 

「人生は楽しいのが1番! ……でも、リンドウさんが息抜きとかの理由であんなことやってるとは思えないけどね〜」

 

「……そうですね」

 

全く同じ返答なのにどうしてここまで含まれた意味が違うのか

 

まぁ、楽しいのが1番だ。

 

 

ーーーーーー

 

 

「あ、いた!!リンドウさん!! さっきの書類なんすけど……」

 

「げ、何故ここが分かったし……あー、うん、それならこの間ユウにやらせたからユウに聞け。んじゃ任せた」

 

「あ、ちょ、リンドウさーん!!?話終わってないんすけど!!!」

 

「……コウタ!」

 

「あれ、ユウ?なんでここに?」

 

「悠梨とリッカからお前が書類仕事押し付けられて困ってるって聞いたんだよ」

 

「悠梨が誰かは分かんねぇけど助かった!!さっきリンドウさんがユウに……」

 

「ん?俺?俺は何もしてねぇぞ。それよりもリンドウさんは最強の味方が捕まえに行ったからもう問題ねぇよ」

 

「まさか……」

 

「おう、そのまさか」

 

「……あらリンドウ、こんなところで会うなんて奇遇ね。どこへ行くのかしら?」

 

「……え、あの、サクヤさん?どうしてここにいらっしゃるんで……?」

 

「ユウから事情を聞いたのよ。……後輩に仕事を押し付けるなんて、一体何をやっているのかしら……?」

 

「……よぅしサクヤ、落ち着いて話をしあ、待て、その関節はそっちには曲がらな」

 

ボキッ

 

「「……あ、リンドウさんオワタ」」

 

 

ーーーーーー

 

 

うん、楽しいのが1番だ。

 

「じゃ、僕はそろそろ失礼しますね」

 

「あ、ちょっと待って! ヒバリに届け物を頼みたいんだけどいいかな?」

 

「勿論大丈夫ですよー」

 

「良かった、ありがと!!」

 

「いえいえ」

 

うん、やっぱリッカさんの笑顔はいいなぁ……。

 

さて、じゃあ最後にエントランスまで回りますか。

 

 

ーーーーーー

 

「ヒバリさーん!お届……け、物……で…………す……」

 

思わず声が尻すぼみになった。エレベーターを降りてすぐ見えた光景が原因だ。

 

リンドウさんがエントランスのソファーに正座させられて、サクヤさんに怒られていた。

 

念のためもう一度確認。

 

リンドウさんが、ロビー(階段の上。一般人は入れない)じゃなくて、エントランス(一般人立ち位置可)で、ソファーに正座させられて、サクヤさんに怒られていた。

 

「何これ、公開処刑?」

 

「ちょ、悠梨、黙ってこっちこい」

 

ユウさんから呼ばれたので、急いでヒバリに荷物を渡してしまおう。

 

一瞬リンドウさんがこっちを恨みがましい目で見てきたが……自業自得だと思うのは僕だけかな?

 

しかもサクヤさんにすぐに気付かれて「よそ見しないの」とゴキュ、と音を立てて正面を向かされるおまけ付き。リンドウさんのご冥福をお祈りします。

 

っていうかヒバリさんも顔青ざめさせてるじゃん……こんなヒバリさん初めて見たよ。

 

サクッと渡してそそくさとユウさんの所に逃げ込む。藤木さんもいるよ。

 

「ユウさん、一体何があったんですか……?」

 

「さっきの書類のやつさ、サクヤさんに手伝ってもらおう思ったらあんなことに……」

 

「……あ、ああ……」

 

ちょっとだけ申し訳ない気持ちになった。そしてそんな僕に藤木さんが声をかけた。

 

「え、っと悠梨、だっけ? ありがとな、さっきは助けてくれて」

 

「あ、藤木さん。いいですよあれくらい」

 

「ん?なんで俺の名前知ってんの?」

 

「さっきリッカさんとユウさんにきいたんですよ」

 

「あ、そっかなるほど。コウタでいいから! よろしくな!!」

 

「分かりましたコウタさん! こちらこそよろしくです!」

 

 

ーーーーーー

 

 

「……いやー若いっていいねぇ……」

 

「リンドウ、聞いてるの?」

 

「はい、すみません……」

 

 

ーーーーーー

 

 

「…………んあ?」

 

なんか変な所で目が覚めた……。

 

「でも懐かしいなぁ……リンドウさんがいなくなる前だから、もう4年くらい前の話か……」

 

随分と懐かしい夢を見たものだ。きっと影胤さんとの遭遇時に、向こうの世界と色々繋がるところがあったからに違いない。

 

「結局リンドウさんとかユウさんは極東に戻ってから会えなかったしね」

 

二人とも、クレイドルの任務で世界を飛び回ってた筈だ。いつかまた会える日が来るのだろうか。

 

「いや、絶対会いに行かないとね」

 

僕がゴッドイーターに選ばれた時に誓った約束、「いつか皆で一緒に戦おう」を果たすためにも……!!

 




ユウのキャラが違う→多分色んなところに出てくるユウの性格って、悠梨とそっくりなんですよね。悠梨との区別をつけるために性格改変させていただきました。ご了承ください。
ソーマがいない→招集がかかったわけじゃないから出てきてないんです。
勿論この後悠梨と絡みますよ。

「一緒に戦おう」の誓いは、コウタ、アリサ、ソーマとは果たされました。ユウとリンドウはこの時点では極東支部へ未帰還なので果たされてません。


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