ブラック・ブレット〜赤目の神喰人(ゴッドイーター)〜 作:緋悠梨
今回、結構難産でした。
「訳わかんねぇよ!!」ってなったかた、マジでごめんなさい。
ーーーside蓮太郎ーーー
「……何言ってんだ?悠梨が赤目?馬鹿も休み休み言え。そもそも悠梨は男だぞ」
声が裏返らなかっただけマシだと思う。それくらい動揺していた。
「私も目を疑ったよ。まさか男で赤目がいるとは予想外もいいところだ」
「だから赤目じゃ……」
「しかしどう見ても第一世代の小比奈達よりも明らかに3、4は年上に見えるからね」
「………………ん?悠梨?」
「もっと年上!!」みたいな悠梨からの突っ込みがあるかと思ったから黙っていたんだが……。
見ると目を見開いたまま固まっている。
(……これは)
「返事がない、唯の屍のようだ」
「俺の思考を読むな!!つか影胤そういうボケ出来たのか!?」
「一度使ってみたくてねぇ」
ヒヒヒッ、っと笑う影胤。マジでビビった……。
だが、今ので動揺が吹っ飛んだから感謝すべきなのか?
「……お前なら、その言葉を使えそうな場面とか、たくさんあったんじゃねぇのか? この前も大瀬フューチャーの社長がお前に殺された筈だ。不敬は分かってるが、その時に使おうと思えば……」
この前、というのは、俺達民警が聖居に集められて、『七星の遺産』回収の依頼を受けさせられたことがあった。その時に影胤が現れて場を引っ掻き回し、あげく「『七星の遺産』は自分がもらう。どちらが早く手に入れられるか勝負しよう」などと言い出した。
その時に影胤が置き土産として置いていった箱の中に、先程の『大瀬フューチャーコーポレーション』の社長の首が入っていた、という事があった。
俺はそのことを指摘したのだが、返ってきたのは……。
「基本暗殺みたいにやるから、聞いてくれる人がいないからね」
「イニシエーターがいるだろ」
「君はネタを説明するのが苦行ではないのかい?」
「…………。……悠梨は16歳な」
「なるほど、覚えておこう」
思わず何も言えなくなったあげく、話を逸らすという情けない結果になった。
……話を戻す。
確かに、さっき影胤が言ったとおり悠梨の年齢で『子供たち』だ、ということはあり得ない。何故なら、ガストレア大戦があったのが10年前。その時期に『呪われた子供たち』が突如として生まれるようになったからだ。そのことを今まで完全に忘れていた。
つまり16歳の悠梨が『子供たち』であるはずがない。年齢の要素だけで悠梨の諸問題が解決するかもしれない……。
(これは……いけるんじゃ)
「だが」
希望を持った俺に影胤の言葉が待ったをかける。
「私は一つの仮説を作ってみた」
「仮説?」
「緋上君がどうして赤目で、そして未踏査領域に1人でいたか、ということについてだ」
……ふむ。
一応俺はその理由を知っているが、事情全く知らない第三者がこのことをどう考察するか気になることがあった。危なくなったら介入することとして……。
「なるほど、聞いてやろうじゃねぇか」
「一応礼を言っておこう。 ……まず前者だが、実は緋上君はガストレアウィルス持ちだ、ということにする」
「さっきアンタがそれを否定しただろ?」
「仮定と言ったはずだ。最後まで聞きたまえ。 ……ガストレアが現れたのは確かに10年前だ。そして『子供たち」が生まれ出したのも10年前。 だが、誰もガストレアウィルスが見つかった、あるいはガストレアウィルスの初の感染者が出たのが10年前とは言っていないだろう?」
「……まぁ確かにな」
「そこで、だ。それよりも早くガストレアウィルスが存在していたとしたら?それこそ16年前にガストレアウィルスがあったとしたら?」
「……!! つまり、悠梨が感染していてもおかしくないってか?」
「その通りだ。都合のいい話だが、あり得ない事でもないだろう?」
「……じゃあ悠梨が男なのに感染している、というのはどういう理由付けだにする気だ?」
「ガストレアウィルスは新しいものを取り込んで進化している。人を学ぶ途中で男に感染してもおかしくはない。その後、女性の方が優れていると判断したからそちらだけを作り出すようになったのかもしれないね」
菫先生が、「ガストレアはデザイナーだ」と言っていたことを思い出した。それに関連してくる話か。
今の所、反論する要素もないので続きを促す。
「……で、後者は?」
「赤目で生まれた緋上君だったが、当時はガストレアウィルスという概念がないから検査にもひっかからず、目が赤いだけの普通の子として育てられる。だが、ガストレア大戦が勃発。親が、誰か親しい人でも失ったのだろう、ガストレアショックを患ってしまい、緋上君を捨てた。その後はどうにかして生きてきて、倒れたところを偶然私が発見した、というところか」
「……なるほどな」
だが、悠梨の正体からして知っている俺から言えるのは、
「詭弁だな」
「パパを馬鹿にしないで」
「ちっ……」
首筋に当たる刀に篭る力が強くなった。今の発言が小比奈の癇に触ったらしい。めんどくせぇ。小さく舌打ちをする。
「小比奈。あまりやりすぎるんじゃないよ。 そして里見君。私も詭弁だということは理解している。最初に言ったとおり、あくまで仮定の話だ。すべて嘘だって可能性もある」
「……ああ、そうだな、全部嘘っぱちだな」
完全に影胤の世界に呑み込まれていたことに今更気付く。悠梨の事情を明かすわけにはいかない。
「だが、嘘かどうか判断するのは私達ではないだろう?」
「……どういう意味だ」
影胤は俺の問いに答えず話を続ける。
「後半はほとんど冗談だが、ガストレアウィルスが10年以上前からあった云々の話はあり得ない話ではない」
「でも存在しないかもしれないだろ?」
「では聞こう。初の感染者はいつ、だれがなった?」
「……分かるかよそんなもん」
「そうだ。そして私も分からない。この世界の人類のほとんどがそうだろう」
「…………」
「なればこそ、緋上君がウィルスを持っていないと言い切れないだろう?」
「だから詭弁……」
「それが通用すると思っているのかい?」
「悠梨が赤目じゃないってことは俺が分かってる!!」
「なら教えて欲しいね。緋上君は一体何者なんだい?」
「それはっ……っ!」
危うく悠梨が別の世界の人間だと叫ぶところだった。そんなことをしては今迄のことが全て水泡に帰す。慌てて口を閉じたが、それは悪手だった。
「答えられない、か。それでは意味がない。君が分かっているから、なんてことは何の意味も持たないのさ」
「ちゃんと説明すりゃ……!!」
「甘いね。人は見た目というファクターを重視していることは君とて知らない訳はないだろう?赤目ということが知れ渡れば、それだけで迫害する輩が出てくるのは必然」
つまり、
「緋上悠梨という存在を決定づけるのは私達ではない。私の仮定を聞いて、それを真実だと信じるか、嘘だと切り捨てるか。その選択が出来る無能な人々こそが緋上悠梨という存在を決めることが出来るのだよ。……どうだい?これで最初の問いには答えたよ?」
「な……で、でも俺達がしっかりと誤解を解けば……」
「……里見君、気付いていないのかい?」
「……何にだ?」
「さっきから緋上君が『赤目』という前提に立って私と口論しているという事にだよ」
「…………あ」
「その様子だと全く気付いてなか
しまった、完全に俺のミスだ……。
目の前が暗くなる。膝をつくことだけは、首筋に刀が突きつけられていることを思い出して堪えた。
「さて、里見君は論破したが……。緋上君がまだフリーズから回復していないのか。仕方ない。 小比奈、里見君の右手を切り落とせ」
「…………あ?」
何を言われたかわからない。
刹那
ガキン!!
「蹴れなかった!?」
「切れなかった!?」
金属音が響き、刀が弾かれる。お互いがその反動を利用して距離をとりプロモーターのところまで下が「ぇぅっ!?」る。降り立った人物は……
「延珠か……」
目を紅く染め、力を解放した延珠だ。
「追いつこうと思って走って来たら……誰だ此奴らは」
「……蛭子、影胤……」
「……そうか、こいつが。ところで蓮太郎?顔がいつも以上に暗くなっているし、悠梨もいないではないか。一体なにがあった?」
しれっと罵倒された気もするが頭が上手く回らないから気のせいだと思う。それに悠梨がいない筈は……。
「悠梨ならそこに……あ?」
いない。
「……延珠ちゃん、下見て、下」
「下?」
延珠が下を向く。
右足に踏みつけにされている、地面に突っ伏した悠梨がいた。
「うわわっ!?す、すまぬ悠梨!!」
慌てて延珠が足をどける。
(そういや延珠が降りた場所は、さっきまで悠梨が立ってた所か……)
不運だったな、うん……。
「あーびっくりした……」
「悠梨、本当にすまない……」
「あはは……まぁ大丈夫だよ。おかげで意識を戻せたし」
「……そこは『重かった』って言うのがテンプれぇいっ!?」
あれ、鳩尾に裏拳が……っ!何故だ!?
「何、すんだ、よ延珠……っ!?」
「レディーに重いとは、どういうつもりだ」
「……ああ、頭が回ってなかったから何言ったか覚えてなごふぅ!!」
に、二発目……っ!!
「抑えたから大丈夫であろう」
「そういう、レベル、の話じゃない、からな……っ!!」
アカン、吐く。
「……悠梨、後は、任せた……うえぇ……」
ーーーside悠梨ーーー
蓮さんが道端で口から【自主規制】を吐いてるとても描写出来ないグロッキーな状態になっちゃったので交代。
「……あれ大丈夫なの?」
「あれなら日常茶飯事だ」
「……あ、そう……」
僕が見てないところでもやられてそうだよね(5話とか。メタァ)。
「……漫才は終わりでいいかね?」
「あ、はいどうぞ。……やるなら、やりますよ?」
そう告げてスチェッキンを引き抜く。
「やれやれ……私は事を構えるつもりは余りないんだが……」
どこからか「どの口がそんなことを……うぇっ」と聞こえてくるのを無視して影胤さんが銃を抜く。
「しかも2丁ですか……刺々しいですね」
「『スパンキング・ソドミー』と『サイケデリック・ゴスペル』という。威力は……試してみるかい?」
「待って、パパ」
突然、影胤さんの横にいた女の子が二刀を構え正面に立ち塞がる。
「あのイニシエーター……かなり強い」
「ほう、小比奈にこうも言わせるとは……里見君のイニシエーターよ、名は何と言うのかね?」
延珠ちゃんは不敵に笑い、大声で告げる。
「妾は藍原延珠!! モデル・ラビットのイニシエーターだ!!」
「延珠、延珠、延珠……。ーーー覚えた。私は蛭子小比奈。モデル・マンティスのイニシエーター。接近戦では、私は無敵。……ねぇパパ、あのちっちゃいの斬ってもいい?」
「な、お主だってちっちゃいだろうーーっ!!!」
さっきの格好良さは何処へやら、顔を真っ赤にして飛ぶ延珠ちゃん……を僕も笑えない。
「あはは……小比奈ちゃん? 人のコンプレックスを刺激するのは、僕どうかと思うなぁ」
スチェッキンを小比奈ちゃんに向けて構える。
「……パパ、あっちの髪が白いの、危ない(頭が)」
「そうだね、危ないね(頭が)。あの2人にちっちゃいは言っちゃダメだからね、我が娘よ」
「ちょっと、( )内が!!」
不本意過ぎる!!
「( )がどうかしたかい? ……それよりも、抜き差しならない状況になったがどうするかね?」
「……そりゃもちろん」
「待て、悠梨」
戦おうとした僕に横合いから声がかかる。蓮さんが口元をぬぐいながら歩み寄ってきた。
「蓮さん生きてましたか。良かったです」
「勝手に殺すな。それと今は戦闘はやめろ。住宅街で戦うと無駄に被害が大きくなる」
「……あ、なるほど」
そうか、確かに周りは人がたくさんいる。被害を抑えないといけないのか。
向こうの世界では、俗にいう廃墟みたいな場所でいつも戦闘してたから、周りの被害とか考えること自体なかったからなぁ……。
(次はちゃんと考えるようにしないと)
「ヒヒ、賢明な判断だ。私達は被害を気にしない分、君達は不利だからね」
「……悪党ですね」
影胤さんは小さく笑いを零すと、2丁とも拳銃をしまい、僕達に背を向ける。
「最初からそのつもりだ。では、ここら辺で失礼するとしよう。……とその前に」
首から上だけをこちらに向けてこちらに問う。
「最終確認だ。私達の仲間にならないかね?」
「断る」
「遠慮しときます」
「蓮太郎が行かないなら妾も行かぬ」
三人とも即答だった。
「……そうか。なら、君達には現実を見てもらうとしよう。明日、学校に行くのを楽しみにしているんだね。行くよ、小比奈」
それだけ言い残して、影胤さんは夜闇に溶けていった。
ーーーーーー
「……ただいま」
誰もいない部屋に向かって声をかける。
あのあと、蓮さんに、僕が赤目だという事に気付かせてしまった、と謝罪された。
まぁ、いつかバレることだっただろうし、大丈夫だ、と何回も告げて別れたが、
(……この分だと明日も気にしてそうだなぁ……)
まぁ、なるようになるか。
「ご飯はいいや……今日は風呂入って寝よ」
影胤さんの最後の言葉の意味も深く考えず、僕はさっさと眠りについた。
……翌日、あんなことになるとは露程も思わずに……。
【宣伝】
二作目「明仄の神喰人は黄昏の銃姫の剣となる」
執筆始めました。GOD EATER×ISの二次創作です。
ま た 神 喰 人 か
ごめんなさい好きなんです……。
よければそちらもよろしくお願いします。
感想、指摘等ありましたらよろしくお願いします。