ブラック・ブレット〜赤目の神喰人(ゴッドイーター)〜   作:緋悠梨

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男子達をこうするつもりはなかったのに……どうしてこうなった。



13.新たな力

 

 

ーーーside悠梨ーーー

 

 

翌日。金曜の朝。

 

昨日夕飯を持ってくるついでに奏が置いていったサンドイッチを美味しくいただいたあと、制服に着替える。時間は……7時半か。15分歩けば学校に着くみたいだけど、

 

(ま、早めに出るに越したことはないよね)

 

そう考え、部屋をでることにする。

 

晴れか。うん、5月だから気温もちょうどいいや。

 

玄関を閉めて、隣の部屋ーーー802号室の部屋に向かう。

 

これも昨日の夕食時に決まった事だが、道を覚えるまで奏が一緒に登校してくれることになった。

 

ブザーを押す。インターホンからすぐに応答がきた。

 

『今出ます』

 

「え?」

 

奏の声じゃ、ない……だと?

 

戸惑う僕の目の前でドアが開く。

 

がちゃん

 

中から延珠ちゃんと同じくらいの身長の、黒髪の女の子が出て来た。

 

「えっと……緋上悠梨さん、ですよね?」

 

「あ、はいそうです」

 

「奏ですよね?すいません、奏は5分前に起きたばかりで……奏、緋上さんもう来たよ?」

 

「ーーーえぇ!?もう!?早いよ悠梨!!」

 

部屋の奥から奏の声が聞こえてきた。すごいドタバタしてる。

 

「あと20分待って〜!!」

 

「……奏に20分後にもう一回来るって伝えといてくれますか?」

 

「分かりました」

 

それだけ言って、ドアを閉じた。

 

(……結局、あの子は誰だったんだろう……?)

 

ーーーーーー

 

15分後。

 

ピンポーン

 

「お?」

 

チャイムが鳴った。少し慌てて鞄を持ち、靴を履いてドアを開ける。

 

「こっちから行く前に来たとか、早かったねー。おはよ、奏」

 

「悠梨おはよー。そりゃ急いだよ……」

 

予想通り奏ーーーとさっきの女の子がいた。

 

「ねぇ、奏。その子は?」

 

「えっとね……うちの居そうrぐふっ」

 

奏のお腹に女の子の手刀がっ!?

 

「毎回それ言うのいい加減やめてよ……。すいません、お見苦しいところをお見せしてしまって。私は趙飛狼(テウ・フェイラン)と申します。奏のイニシエーターです」

 

「へーそうな……の…………」

 

衝撃の事実。

 

「奏も民警だったの!?」

 

「……緋上さんに言ってなかったのね。どうりで私を見ても反応しなかったはず」

 

「い、いや、隠してたほうが後で面白いかなーって!!」

 

「どういう言い訳!?」

 

全く理解出来なかった。

 

「ま、まぁそれより遅刻しないように早く行こうよ!!」

 

((誤魔化す気だな……))

 

でも、ここで聞き出してる時間がないのも事実だ。行くとしよう。

 

「んじゃラン、行ってきまーす!!」

 

「あ、えーと、行ってきます」

 

「行ってらっしゃい。全く、朝から騒がしいんだから……」

 

飛狼ちゃんが奏のお母さんに見えたよ。

 

 

後で奏から聞き出した話(何故かまだ勿体ぶってなかなか話そうとしなかった)によると、飛狼ちゃんはモデル・アルマジロのイニシエーターで、2人の序列は8900位らしい。

 

元は3万位ちょっとだったらしいが、『モルフォ蝶事件』とやらを解決して一気に序列が上がった、と言っていた。

 

目立ったガストレアを討伐すると序列があがるみたいだね。

 

ーーーーーー

 

その先2週間、特に問題は起こらなかった。

 

2、3回ガストレアの討伐に出向いたけど、前に司馬重工で借りた銃(スチェッキンというらしい)と同型のをAEに提供してもらっていたので、それで蓮さん達と一緒にちょいちょいっと解決した。

 

神機は、奏と蓮さんから「目立たないように、使わないほうがいい」と言われたのでなるべく使わないことにしている。見慣れない武器は目立つ、か……なるほど。

 

 

そしてとある平日。ついに異変が起きた。

 

ーーーーーー

 

『緊急職員会議を開きます。教員は全員職員室に集まって下さい』

 

そんな放送が開始直後に流れた昼休み。

 

お昼を食べるグループみたいなのがあるらしく、誘われてそこに入ってからなんかずっとそこで食べてる。

 

蓮さんも誘おうとしたんだけど、「俺に関わんな」とでも言いたげな顔で睨まれて断念。蓮さん溶け込ませ計画はなかなか上手く行ってません。

 

さて、昼食を食べながらの話題はさっきの放送のこと……ではなかった。

 

「ーーーおい、あれ見ろよ」

 

「マジかよあれ」

 

「ん?……どしたの?」

 

偶然窓の外を見た男子が何かを発見したらしい。

 

「校門のとこ。あれリムジンだろ」

 

「あー、ホントだ」

 

確かに門の所に止まっている。リムジンときて思いつくのは一つしかない。

 

「未織さん関係かな?」

 

「あーありえるかもな」

 

未織さんが毎日リムジンで登下校してるから、この学校ではそう珍しいのでもないんだけど……。

 

「なんでこの時間に来てんだ?」

 

「実は会長とは関係ないとかか?」

 

「未織さんの来客だったりして」

 

僕の考察を述べるが、すぐに否定された。

 

「会長関係であろうがなかろうが、この時間にいるのはやっぱ珍しいけどな…………って悠梨、お前、まさか司馬会長と知り合いなのか!?」

 

あれ?そこに反応する?

 

「うん、まぁ……」

 

「なんだと!?おい悠梨、紹介してくれよ!!」

 

「え?」

 

「待て、それは俺にしろ!」

 

「いやいや俺にだな……」

 

「お前ら抜け駆けは許さねぇぞ!!悠梨、これに会長のメアドを……」

 

「「「てめぇが抜け駆けしてんじゃねぇか!!」」」

 

あれ、なんか変なスイッチ踏んじゃった?未織さんと関係あると問題あるのかな?

 

「よぅ悠梨、なんで知り合いなんだ?」

 

「て、転入する時に挨拶に行って、そこからみたいな……」

 

一応言い訳はしとく。

 

「ほうほう、なら俺も転入すれば司馬会長とお近づきになれるのか、なら……」

 

「それ実行したらタダのアホだぞお前」

 

「ああ。それにそんなことしなくても簡単にお近づきになれる方法があるだろ?ーーーこいつがいるじゃないか?」

 

僕の方を指差されたので、後ろに誰がいるか確認してみる。

 

壁だった。

 

「「「お前だ、アホ悠梨!!!」」」

 

「えぇ、僕!?そしてアホとは失礼な!!」

 

「だったらテンプレの反応すんじゃねぇ!!」

 

「テンプレとか知らないから!! それとなんで皆して僕の机を囲んでるの!?」

 

そう、いつの間にか僕の机は名もなき男子達によって囲まれていた。

 

包囲網から1人の男子が進み出てくる。……助けかな?

 

「……美少女は皆で共有するもんだろ、なぁ皆?」

 

「「「そうだそうだー!!!」」」

 

「というわけで緋上悠梨に司馬会長とのコネクトを要求する!!」

 

「「「要求する!!」」」

 

違う、リーダーだった。男子達の圧力が半端ない。

 

「え、えーっと……」

 

 

紅くー燃えるーその眼差しにー♪

 

 

「「「………………」」」

 

クラスが一斉に静かになり、音の発信源ーーー蓮さんに顔を向ける。しかも木更さん専用着メロという……。

 

「ちっ……なんだよ木更さん」

 

今は人が少ない教室の後ろのドア付近に逃げて通話を始める蓮さん。小声なので皆には聞こえてないだろうけど、僕には少し聞こえる。

 

(……ボウエイショウ?……招集?なんの話だろう……?)

 

どうやらこっちの世界特有の単語みたい……

 

ガシッ

 

「え?」

 

肩を掴まれた。……さっきの男子達だ。

 

「さぁ悠梨、里見など置いといて話をしようじゃないか」

 

(しまった!逃げるチャンスだったのに!!)

 

「お、落ち着こうよ皆!ね!?」

 

「我々は落ち着いている。なぁ皆?」

 

周囲は無言で頷きを返す。

 

「目が怖いんだよ!!何をそんな必死なの!?」

 

「知ったことか。逃げられると思うなよ……!?」

 

「う、うわあぁぁ……」

 

ピシャッ

 

「遅いわよお馬鹿!」

 

「うおッ!?」

 

ドアが勢いよく開けられる。第三者の乱入によって驚愕に包まれる教室。ドアから飛び退く蓮さん。そして、聞き覚えどころかほぼ毎日聞いてる声。

 

「え!?木更さん!?」

 

別の学校の制服を着た木更さんが、入り口に立っていた。

 

……1つ学んだ。1人だけ制服が違うと、かなり浮くんだね……。

 

その浮いてる木更さんが僕の声に反応してクラス内を見回す。

 

「あら?悠梨君の声が……」

 

「ここですここです」

 

男子達をかき分けて脱出し、木更さんの前にでる。

 

……木更さんが僕を見つけられなかったのは、僕が小さいからじゃなくて周りが身長高いから木更さんから見えなかっただけなんだ。きっとそうに違いない……ッ!!

 

密かに心に大ダメージを負った。

 

「……そう言えば同じクラスだ、って言ってたわね。じゃあ社長命令よ。里見君を持ってくから、後をなんとかしておいて頂戴」

 

「おい、持ってく、ってなんだ俺は物じゃねえぞ」

 

「……つまり、……えっと、早退?」

 

「ガン無視しやがったな悠梨……」

 

そう、早退だ。確かそういう扱いだったと思う。

 

「ええ。担任にそう言っておいてくれると嬉しいわ」

 

「ま、待て、俺はまだ同意してなぐえっ」

 

「文句言わずに来なさい」

 

ネクタイを引っ張られる蓮さん。苦しそう……。どっちにしろ助け(られ)ないけど。

 

「俺の意見は!?」

 

「そんなの聞くと思うの?」

 

「人権とかねぇのかよ!」

 

「報酬をもらい忘れる無能社員にはないわよ。さぁ仕事よ、里見君。しっかり稼ぎなさい!」

 

「まだそれ言うか!!ちょ、悠梨ヘルプぅぅぅぅ…………!!」

 

蓮さんの断末魔が聞こえるが……

 

(すいません無理です)

 

今木更さんを止めたら後が怖そう。

 

(……蓮さん、ご無事で……)

 

僕達の敵である神に祈るしかないね、うん。

 

見事に教室に取り残される僕。

 

「……おい、悠梨」

 

さっきの男子達の1人が話しかけてきた。

 

「何も聞かないで欲しいんだけど……」

 

「さっきの女子は誰だ!?」

 

「聞かないで欲しい、って言ったよね!?」

 

僕の願望は一瞬で打ち砕かれた。

 

今のを皮切りに、ざわめきが教室に広がる。

 

「あの子、美和女の制服だったよね」

「どっかのお嬢様なのかなー」

「社長命令って、俺たちと同じくらいで社長とかありえるの?」

「美人だったなぁ……」

「お前が釣り合うわけないだろ」

「なんだと!?」

 

「収集がつかない!!」

 

「簡単に収集をつける方法があるぞ」

 

「え!?何それ教えて!?」

 

すかさず飛びつく。

 

「お前がさっきの女子の情報を公開すれば済む話」

 

「個人情報っていう概念はないの!?」

 

頼った僕が馬鹿だった!!

 

「だが、皆興味がある様子みたいだぞ?」

 

「え?……うっ」

 

すごい視線が集まってきてて、思わずたじろいてしまった。

 

……ええい、ままよ!

 

「…………うちの会社の社長で、蓮さんの幼馴染みたいな人。これ以上は言わない!!」

 

「……本当に社長だったのか……」

 

僕も最初は驚いたけどね。

 

「……さて、悠梨。お前に一つ言っておく。

 

「え?何?」

 

どうせいい情報じゃないんだろ……。期待はしないが一応聞いておく。

 

「「「爆発しやがれこの野郎!!」」」

 

「なんで!?」

 

予想の斜め上が来た!!

 

「司馬会長と知り合いだということに留まらず、あの美人社長の部下という……許せるか!!」

 

「それに転校してきた時も、秋月と元から顔見知りみたいな雰囲気だったし、おまけに一緒に帰ってることもあるじゃねぇか!!」

 

「ん?ボク?」

 

「奏には関係ないから!!」

 

ぐるっと顔を向けてきたこのシーン初登場の奏を追い払う。

 

「あーもぅ……奏ってば……」

 

「ほら、名前で呼び捨て!!やっぱ仲いいじゃんかよ!!」」

 

「えぇ〜……」

 

これロミオ先輩みたいな感じ……要するに嫉妬か。

 

(……めんどくさっ!!)

 

「……もしかしたら、里見と一緒に住んでいるあの小学生とも知り合いか?」

 

もしかしなくても延珠ちゃんだ。……というかさ。

 

「延珠ちゃんの存在ってばれてたんだ!!」

 

「ほうほう……延珠ちゃんというのか……」

 

しまった、ロリコンにいらない情報を与えてしまった。

 

「……で、なんで蓮さんが女の子と一緒に住んでる、って知ってるの?」

 

「新年度が始まってから、その子が帰りに『蓮太郎、妾達の愛の巣に帰るのだ!!』って言って教室に入ってきて、里見がすぐに連れ出す?連れ去る?ってことが2、3回あってよ。それからクラス内に『里見蓮太郎は幼女と同棲している』って噂が広まったんだよ」

 

……容易に想像出来るね、その光景。

 

(しかも噂じゃなくて事実だし)

 

否定が出来ないので……はい。

 

人生諦めが肝心だよね!!

 

「……今の証言より、緋上悠梨はあの女児とも関係あると判明!!」

 

「諸君……彼をどうする?」

 

「え、どうするって」

 

「「「私刑(リンチ)!!私刑!!」」」

 

「さぁ悠梨、1人一発殴らせろ」

 

「謹んで辞退する!!」

 

「提案は却下だ」

 

「酷い!!」

 

壁際に追い込まれた僕。

 

やっぱ諦めたらだめだ。

 

(くっ、逃げ道は……)

 

ゴッドイーターの力を使わずに抜け出す方法なんか降りて来い……ッ!!

 

 

ピーんポーンパーンポーン

 

 

降りてくる前に音がした。その校内放送の音に皆が止まる。

 

『全校生徒に連絡します。本日の午後の授業は全て打ち切りとします。寄り道をせず、早めの下校を……』

 

「「「「……よっしゃぁァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!」」」」

 

「耳が!!耳が割れる!!」

 

全校からの叫びに耳がダメージを受けた。ゴッドイーターの耳の良さを呪う……!!

 

「おーし帰るぞ」

「ゲーセン行こうぜ」

「いやカラオケだろ」

「ポケ○ンの続き……」

 

(誰1人としてそのまま帰る気はないんだね……)

 

僕が悶えている間にそんなことを話しながら、名もなき男子達は全員散らばっていった。

 

図らずも助かったよ……。

 

「悠梨、お前も一緒にゲーセン行くか?」

 

さっきの囲ってた男子の1人が誘いをくれた。切り替えの早さに内心驚くが、表情に出すのは堪えた。

 

「ごめん、今日は予定があるから、また今度でいい?」

 

「そっかしゃーねーな。分かったよ、また今度な」

 

ゲーセンとやらに興味はあるんだけどね……。

 

ーーーーーー

 

というわけで下校のち予定……と言っても、家に帰ったわけじゃない。今日は奏とAEの本社にきた。

 

(これも寄り道になるのかな……?)

 

アホなことを考えてる僕に、奏の声がかかる。

 

「さて、じゃあ悠梨、今から適合試験を始めるよ」

 

「その言い方やめて。ゴッドイーターになった時のトラウマが、トラウマがががが」

 

「ほぅ、それ詳しく」

 

「悪いが、断る!!」

 

「ちっ……」

 

舌打ちしたよこの娘!!

 

まぁそれはさておき……テストと言っても、僕のじゃない。

 

『神機』のテストだ。

 

「んじゃとりあえずこのバラニウムを取り込んでもらうわけだけど……」

 

奏がそう言って並べたのは、拳程度の大きさの、真っ黒な岩石。

 

……そう、神機にバラニウムを取り込んで、対ガストレア用の武器にするためのテストだ。

 

しかし奏は疑問をぶつけてくる。

 

「どうやって取り込むのさ?」

 

「まぁまぁ見ててって」

 

僕はそれだけ言って、神機を後ろ溜めに構えーーー捕食形態(プレデターフォーム)に変形させた。

 

「……!! なるほどね……」

 

納得してもらえたようだ。

 

僕が考えたのは至って単純。神機にバラニウムを捕食させれば、その力を受けられるんじゃないか、って考えた。そしてそれを実行に移している。

 

「……いけッ」

 

神機を繰り出す。

 

バキボキ

 

神機がバラニウムの岩石を呑み込み、破砕する。

 

「……あんまいい音じゃないね」

 

「これならまだマシなほうだよ。アラガミを捕食した時はグチャ、って音がすることも……」

 

「やめて想像出来ないけどしたくない!!」

 

甲殻があるボルグ・カムランとかはいい音する時もあるんだけど。

 

……グボロ・グボロとか捕食した時の音は、SAN値が少し削られそうな気持ち悪い音がする。

 

閑話休題。

 

少し待っている。すると

 

「「おお……」」

 

神機が、全体的に黒くなり始めた。

 

真紅の大剣が、白銀の銃が、緋色の大甲が、黒に侵食されていく。

 

そして、神機が全て黒に染まった。

 

「……これはこれで格好いいね」

 

漆黒の神機……なかなかいい。

 

「黒がいいとか、悠梨は中二病の気があるね」

 

「チューニビョウ?」

 

「いーやなんでも」

 

はぐらかされた。チューニビョウ……病気かな?

 

「んで、調子はどう?」

 

「えっと、神機は正常に作動してるから、コアも生きてると思う。腕輪と接続もしてるし。でも、バラニウムは実践で使ってみないとなんとも……」

 

「んじゃ、第一段階クリアってとこだね」

 

無言で頷き、同意する。

 

これが僕の、新たなる武器だ。

 

「……あ、そうだ」

 

「どしたの?」

 

奏が何か思い出したようだ。

 

「腕輪で思い出したんだけどさ、その腕輪はどうやって言い逃れしたの?」

 

「言い逃れって言い方悪いね……。一応、病気ってことにしといた」

 

筋肉が萎縮する病気の最新の治療法で、常に薬を投与して進行を抑える為に腕輪をつけてる、って設定だ。

 

「へー。うまくいったの?」

 

「…………ま、まぁ、うん……」

 

「悠梨、ボクの方見て言わないと説得力ないよ」

 

思わず目を逸らしてしまった。

 

事実を上手くはぐらかし、且つ違和感持たれない理由を作るのは面倒だった。

 

最終的には、ごり押しで何とか納得させた。

 

あれは大変だった……。

 

 

Wanna know why Wanna know your fantasy〜♪

 

 

「……マヨマヨファンタジー?」

 

「ちがーーーう!!!」

 

過去を思い出して気が遠くなっていた僕を着メロが現実に引き戻す。

 

そしてマヨマヨファンタジーでは決してない!!

 

奏に突っ込みをいれた後、電話に出る。相手は蓮さんだ。

 

「どうしました蓮さん?」

 

『いいか、悠梨。これからいう事を落ち着いて聞いてくれ』

 

やけに切羽詰まった声色だ。

 

「……ボウエイショウとかいう所で、何かあったんですね?」

 

『何で知って……お前なら教室で聞こえててもおかしくないか』

 

「すいません少し聞こえてました。クラスメイトには話してないんで」

 

『ならいい。……本題に入るぞ。実は』

 

 

賭〜けろプライド、死ぬ〜まで狼〜♪

 

 

「……ちょっと待ってくださいね蓮さん。…………アッカリーン?」

 

「違う!!狼だから!!! ……父さん?どうしたの?」

 

奏の着メロに空耳でボケた。よし、仕返しはしたぞ。

 

「すいません蓮さん。続きをどうぞ」

 

『……俺シリアス入ってたと思うんだが……』

 

「仕返ししただけなんで気にしないで下さい」

 

『分かったよ……。で、だ。東京エリアが滅ぶかもしれない』

 

「なるほど……すいません蓮さん、もう一回お願いします」

 

脳が理解を拒否した。

 

『……いいか?東京エリアが滅ぶかもしれないって言ったんだ』

 

「…………え?」

 

聞き間違いではなかった。

 

……どうやらこの世界に来て1ヶ月で、僕は居場所を失いかねない事態に巻き込まれたらしい。

 




悠梨の着メロはGE2のOP「F.A.T.E」で奏の方はベン・トーのOP「LIFE for LIVE〜狼達の夜〜」ですね。
空耳ネタはニコ動のコメを見てもらえれば思います。
また、空耳ネタが嫌いな人はごめんなさい。

男子達は気付いたらソフトFクラスになってました。おかしいなぁ……?

感想、指摘等ありましたらよろしくお願いします。


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