ブラック・ブレット〜赤目の神喰人(ゴッドイーター)〜   作:緋悠梨

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これでオリ展開はひとまず終了。
次は民警が聖天子様に招集されます。
でも悠梨は蓮太郎と離れて独自行動してるかも。
また、冒頭の最初のネタは「学園キノ」よりお借りしました。

あと、今回のあとがきに必ず目を通して頂けるとありがたいです。

では、怒涛の問題解決ラッシュスタートです。



12.学校?なにそれ美味しいの?

ーーーside奏ーーー

 

 

「……んで、奏。あの子どうなん?」

 

……悠梨君が審査を通るかどうか?ってことかな。

 

「まぁ……これなら十分通るでしょ。はっきり言って、ゴッドイーターの力は想像以上だね」

 

そう言ってるそばから、悠梨君が敵をなぎ払う様子がモニターに映し出されている。

 

未織から聞いた話では、今回のステージは『リヴァイヴ・コースター』といって、遮蔽物が何もない戦場でエネミー10人が常に動き回りながら攻撃してくる、少し難易度が高めのステージということだ。

 

悠梨君は、『スチェッキン・APS』というハンドガンと小太刀1本を持ち、短剣を4本、腰に吊っていた。

 

神機を持たないことで身が軽くなったのか、動きのキレが増している。回避の合間に、近付いてきた敵には小太刀で、遠くの敵にはスチェッキンで一体ずつ確実に仕留めていた。

 

(これでも提出するデータの為に力を抑えてる、って言うんだから恐ろしいよ……)

 

動きが全く鈍る様子もない。演舞みたいな動きだ。

 

回避回避射撃回避斬りつけ回避射撃投剣回避回避トマトトマト……。

 

「ちょい待ち!!今あの子何処からトマト出したん!?」

 

「食べ物を防御に使うとかどういう発想……!?」

 

唖然とするしかない。

 

今の間に2人は倒していたと思うが、そんなことがどうでもよくなる出来事だった。

 

(これこのまま提出して大丈夫かな……?)

 

……ま、まぁ、うちの重役達を信じよう。それとボクのプレゼン次第だ。

 

そうこうしている内に、悠梨君が最後の敵に肉薄、一刀両断し、『Mission Complete!!』の機械音声が流れてきた。

 

……トマトを除けば動きは十分だからきっと受かるだろう。

 

「そうや……。奏、ちょっと耳かしぃ」

 

「ん?何さ?」

 

なんか未織に呼ばれた。

 

「……………なるほど、それはいいね」

 

「やろ?やってみい。その後はウチが何とかしたるから」

 

「了解!!」

 

超即興同盟成立♪内容は秘密だよっ。

 

ーーーーーー

 

とりあえず悠梨君がモニター室に戻ってきた。

 

「どうもお疲れ様でした。……言い忘れましたけど、神機触ってないですよね?」

 

「里見ちゃんにかなり念押しされたから触っとらんよ。持てないんじゃしゃーないわ。ーーーそれと」

 

ペシン

 

「痛い!?」

 

「食べ物粗末にしたらあかんやろ?」

 

未織が扇子で悠梨君の頭を叩いた。まぁ言った内容には同意するけど……あれ鉄扇だから絶対痛いだろうね。

 

……え?ボクも最初に扇子で叩かれてたって?……あれはもう慣れたんだよ……。

 

……慣れって、怖いね。

 

「んで………そもそもあのトマトどうやって持ち込んだん?」

 

あ、それはボクも気になってた事だ。

 

「え?あれ試合が始まったと同時にポケットが重くなって、それをまさぐったらトマトが入ってたんですけど……VRマシーンの機能じゃないんですか?」

 

「……そんな機能は搭載してへんで……」

 

やばい、笑いがこみ上げてきた。

 

「ど、どーすんの未織これっ……トマト出てくるんじゃしょうがないよ……プフッ」

 

「盛大に笑えばええやないか」

 

許可が出たので、大爆笑してやった。未織はボクを見てため息をつく。

 

「……もうええ。近いうちにアップデートすることにしたわ」

 

「すいません僕のせいで……」

 

「少し前倒しになっただけや。気にすることあらへん」

 

「そだよー悠梨君が気にすることないよー……いひひっ」

 

「そろそろ笑うのやめへん!?」

 

仕方ないそろそろやめようか。

 

「ごめんってば未織。ーーーとりあえず、悠梨君お疲れ様。後はこっちでなんとかするよ」

 

「あ、はいお願いします!」

 

「任された!」

 

うーん、頑張んないとね。

 

「とりあえず、今日やることはこれで終わりや。……送るなら車を出させるで?」

 

未織が発した内容に悠梨君が考え込むそぶりを見せる。

 

「うーんどうしよう……」

 

……あ、いいこと思いついた♪

 

「ねぇ未織。悠梨君はボクの車に乗っけてくよ。それが1番効率いいしょ?」

 

「まぁ、確かにそうやけど……どないする?」

 

「あ、僕は……」

 

期待の視線を悠梨君に送ってあげる。

 

「……奏さんの車に載せてもらおうと思います」

 

「よしきた頼まれた!!」

 

「……変なことするんじゃないで?」

 

未織に疑いの目を向けられる。失礼な、ボクをなんだと思っているんだよぅ。

 

「分かってる分かってる。んじゃ未織、あれ頼んだっ」

 

「あれっt」

 

ガシッ

 

悠梨君が何かを言う前に左手を掴んで引っ張って行く。

 

「あ、み、未織さん、ありがとうございましたあぁぁぁ……」

 

あら偉いねぇ、未織にまで挨拶しちゃって。

 

「気を付けてな〜」という未織の声が最後に聞こえてきた。

 

 

ーーーside悠梨ーーー

 

 

未織さんの鉄扇がめっちゃ痛かった。あれを「あいたっ」で済ませる奏さん、何者なんだろうか?

 

……というわけで今度は奏さんの車の中。リムジンじゃなかったけど、それでも高級車っぽかった。

 

……装甲車が懐かしい(2回目)。

 

「あ、あの奏さん……」

 

「ん?どした?」

 

「ホントにありがとうございます、僕のパトロンになるのに手を上げてくれて」

 

「まだ決まってないんだからそんなのいいよ。……でも、そうだねぇ……」

 

……あれ、突然ニヤッとしたぞ?

 

「うん、これだ。パトロンの命令には服従するんだよ?」

 

「明らかに今思いついた感が!!」

 

「実際に今思いついたんだけどねー」

 

「やっぱり!!っていうかどうしてそうなるんですか!?」

 

命令って言葉が怖い。特務とか特務とか特務とか……ガタガタ。

 

「えー普通じゃない?武器なきゃ戦えないでしょ?それともパトロンいらないの?」

 

………………………。

 

「……か、完全命令遵守は勘弁して下さいっ!!」

 

パトロンは必要。だからある程度で抑えてもらうように頼むしかない。

 

「あはは、冗談冗談!!……って、何をそんなに震えてるの?」

 

「ちょっとトラウマっぽいものが……」

 

「……ごめん。でもとりあえず、敬語とさん付けやめてよ。ボクも悠梨、って呼ぶからさ」

 

「それこそパトロンには敬語とかつけるべきじゃ……」

 

「今度から同級生になるのに、敬語のうえに『さん』付けじゃ違和感ありまくりでしょ?」

 

……うん?今すごいありえない事聞いた気がするんだけど……。

 

「あの、奏さん」

 

「敬語、『さん』付け禁止」

 

うぅ……。

 

「えっと、奏、今なんていったの……?」

 

「悠梨は今度から同級生になる、って言った」

 

……聞き間違いじゃなかった。

 

「……どうしてそんなことに?」

 

「さっき未織にいい交換条件として聞いた」

 

曰く、学校に通うことを支援の条件とするとか……。

 

「……僕学校行ったことないんだけど……」

 

「向こうの世界でどうしてたの?」

 

「学校とかそういうのはなくて、物心ついた頃から、極東支部の資材搬入とかを手伝って稼いでた」

 

そのおかげで、リンドウさんとかサクヤさん、リッカさんとかの極東支部に長くいた人とは、元々顔見知りだったりしたんだよね。特にリッカさんとは、搬入の合間にしょっちゅう話してた。

 

「そっかー……いろいろ大変だねそっちの世界も……。でも、いざって時にはボクが教えてあげるからさ。何事も経験だよ。どう?」

 

……退路が絶たれた。

 

「……分かった、いくよ」

 

「よしよし。………あ、未織?悠梨の編入手続きよろしく。勿論ボクと同じクラスでね。………うん?OK、言っとくよ」

 

……途中から未織さんに電話してた。すでに出来てた話っぽい。

 

奏が、というかAEがパトロンになろうがならまいが、学校にいく羽目になるなこれは……。

 

電話を切った奏が僕に話しかける。

 

「今未織から追加で注文が来て、里見君には編入すること喋っちゃダメだってさ」

 

「え、なんで……」

 

「そのほうが楽しい、ってさ」

 

……蓮さんって相当ないじられキャラだなぁ……。

 

「ていうか、蓮さんと知り合いなの?」

 

「……蓮さんって里見君のこと?クラスメイトだよ。……そうだ!追加命令。このこと、里見君に聞かないようにね」

 

「奏がクラスメイトだ、ってこと? ……その方が楽しいから?」

 

「勿論♪面白い反応見せてくれるといいなー」

 

蓮さんいじられキャラすぎるでしょ。それに、

 

(……僕に隠し通せるかな……?)

 

兎にも角にも、楽しみだけど、やっぱ少し怖いなぁ。学校……どんなところだろう?

 

「あ、そうだ悠梨。合否判定をすぐ伝えたいから、携帯の番号教えてよ」

 

そう言って奏がスマホを取り出す。が、

 

「……僕携帯持ってないんだけど……」

 

「……えっ」

 

いやね、向こうの世界で登録したのなんて持ってないし、こっち来てからも登録する時間は勿論、時間もなかったしね。

 

「そっか、じゃあそれもだね。うーん……課題が山積みだなぁ。因みに家は?」

 

「会社のソファ寝泊まりしてるけど」

 

蓮さんに家に来てもいいと言われたけど、そこまでしてもらうわけにはいかないので必死で断った。

 

「……それもなんとかしないとね」

 

改めて自分の置かれた状況が如何にめんどくさいか実感した。奏にも苦笑いされてるし。

 

……っと、話してたら事務所の前についたみたいだ。車を降りる。

 

「ありがとね、送ってもらっちゃって。

 

「別にいいよー。んじゃ後日、また合否判定で連絡させてもらうよ。じゃーね〜……」

 

ドアが閉まる。

 

「あ、ちょ……」

 

……行っちゃった。

 

「連絡するってどこにする気なんだろう……」

 

会社にくると思っとこう、そうしよう。

 

ーーーーーー

 

翌日。月曜日。

 

天童民間警備会社宛に荷物が届いた。送り主の覧をみると

 

「秋月エレクトロニクス……」

 

十中八九、奏だ。

 

箱を開けてみると、一台のスマホが入っていた。

 

学校から帰ってきてそれをみた蓮さんが、最新型だと言って羨ましがってた。ホントにもらっちゃっていいのこれ?

 

とりあえず蓮さん、木更さん、延珠ちゃんの連絡先ゲット。

 

蓮さんは、AEは知ってたけど、奏の話題は出てこなかった。

 

ーーーーーー

 

さらにその2日後、水曜日。

 

夕方。知らないメアドからメールが届いていた。

 

……恐る恐る開けてみるとーーー

 

 

 

奏からだった。無事に審査を通ったらしい。蓮さん、木更さん、延珠ちゃん、それぞれ皆が祝ってくれて嬉しかった。

 

後なぜか、明日の早朝に車を回すから会社まで来い、と書いてあった。なんだろう……?

 

というか何故僕のメアドを知っている……?

 

そして今日も蓮さんは奏について何も言及しなかった。

 

ーーーーーー

 

また翌日。木曜日。

 

蓮さん達には昨日、朝からいないと告げてあるので、僕がいなくても気にしないはずだ。

 

(さて、何の用だろう……)

 

朝6時。事務所の目の前に4日前に乗った車が止まってて、それに乗り込んでAE本社へ向かった。地味AE本社は初見。司馬重工ほどでないにしろ、でかい。

 

着くと、そこにいた奏から制服が渡された。

 

(蓮さんがいつも着てるやつだ……)

 

これに袖を通すのかと思うと、なんか不思議な気分だ。

 

更衣室を借りて、腕輪に引っ掛けながらもなんとか制服を着る。

 

更衣室を出ると、奏が目の前の壁に寄りかかっていた。

 

「おー似合ってる似合ってる。髪の白さと制服の黒さが対照的でいいね」

 

「あ、ありがと……」

 

少し、照れ臭い。

 

「あ、あとサングラスも外して」

 

「え」

 

「サングラスで学校行く気?」

 

どうやらそれはTPOに反するみたいだ。

 

「でも目はどうすれば……」

 

「とりあえず、これ」

 

僕に向かって何かの箱が投げられた。キャッチしてパッケージを見る。

 

「……カラーコンタクト(黒)……?」

 

「むしろそれ以外対策出来ないから、それつけといて。度は入ってないやつだから」

 

……他にないなら仕方ない。

 

初めてコンタクトをつけたので、少し手間取った。これで全部かな。

 

「うん、だいたい隠せたね。……よし、じゃ行こっか」

 

そしてAE本社からまた2人で車に乗って、勾田高校へと向かった。

 

え?道中?奏の連絡先登録しただけで、別段なんかあったわけじゃない。どっちにしろすぐついた。

 

車を降りるが、周囲に他の生徒はいない。まぁまだ早朝……というか7時過ぎだからかな?

 

僕は職員室に行かなきゃ行けないらしく、(勿論場所が分からないから)奏に連れてってもらった。職員室前で別れてそっから1人で動いてたから、奏がどうしたかは分からない。

 

そして教師に連れられて教室に入って、唖然とする蓮さんと、このクラスにいた『もう1人の知り合い』こと、秋月奏を見たのだった。

 

回想終了。

 

ーーーーーー

 

というわけで前回の冒頭シーン。

 

担任の話が終わったところで、蓮さんが席を立ってこっちに来た。まぁ当然だよね。

 

「……ちょっとこい悠梨」

 

教室がざわめいた。何でだろう?

 

立って歩こうとしたところで、蓮さんに首根っこを掴まれ、廊下に連れ出される。

 

「あ、蓮さん、逃げません、逃げませんから首離してっ……」

 

地味に痛い!!

 

というわけで廊下に連れ出された。

 

……たくさんの人がドアのところから僕達を覗いていてすごい怖い。ガン見やめてー。

 

その視線を気にした風もなく、蓮さんが単刀直入に聞いてくる。

 

「なんでここにいるんだよお前……」

 

予想通りの質問がくる。

 

「えっとそれは」

 

「……パトロンとの契約で、学校へ登校することになったんだよ」

 

理由を話そうとした僕の背後から声がした。

 

「……お前は……」

 

……あれ?

 

「………………あ、秋月だったか……?」

 

僕の後ろにいたのは、何を隠そう秋月奏その人だった。いや隠してないけど。

 

奏は一回嘆息した。

 

「……2年になって1ヶ月立つのにクラスメイトの顔をちゃんと把握してないとか驚いたよ……」

 

「悪かったな覚えてなくて」

 

(演技じゃなかったんだ……)

 

本気で覚えてなかった様子の蓮さん。

 

蓮さんもしかしてクラスだとぼっち……?と口にしかけたが、何と堪えた。

 

「……そうだ、思い出した。秋月奏、AEの社長令嬢だったな。……っつーことはお前が悠梨のパトロンか」

 

「正解♪」

 

「……なら、学校に来させるのも未織の入れ知恵だろそれ」

 

「どうしてそう思う?」

 

「未織が時々お前の話をしてたからな、俺に対してやってることを話してもおかしくはない。……もっとも、お前が同じクラスなのは知らなかったけどな」

 

「そこまで読めるとか、里見君って案外頭の回転早いね」

 

……どうもお互いに相手のことはよく知らないみたい。

 

やっぱさっきの聞いちゃおう。

 

「ねぇ奏。蓮さんっていつも教室でどうしてるの?」

 

「あ、待てそれ聞く……」

 

「基本、ぼっちかな」

 

「やめろ馬鹿!!」

 

蓮さんが制止する前に奏が言い切る。やっぱりそうだった……。

 

「なにやってんですか……」

 

「いいんだよ別に……!」

 

蓮さんが目を逸らす。せめてこっちを見て言って欲しい。

 

「皆蓮さんの優しいとこ知らないだけなんだ…………そうだ!僕が皆の誤解を解いてきますよっ」

 

「本気でやめろ馬鹿!!」

 

あれ、なんか止められた。蓮さんに肩を掴まれる。

 

「いいか!?絶対に余計なことをするんじゃないぞ!!分かったな!?」

 

「え、なんで駄m」

 

「分・か・っ・た・な!?」

 

「……分かりました」

 

仕方ない。表向きはやめておこう。

 

(……裏でバレないようにやるならいいよね!)

 

よし、奏にも協力してもらうとしよう。

 

しかし、それを伝える前に奏が口を開く。

 

「さて、里見君はもういいかな?じゃあこれから転校生への恒例、質も……」

 

キーンコーンカーンコーン

 

「……と思ったけど授業だね……」

 

なるほど、この鐘の音は授業開始の合図か。覗いてたクラスの人達も席に戻ったのか、教室のドアのところから姿が消えている。

 

「俺はサボってもいいんだが」

 

「蓮さん、受けないは無しですよ。僕が辛いんで」

 

「……めんどくせぇ」

 

蓮さんがため息をついて教室に消えた。

 

僕と奏も続いて入る。……なんか皆すごいそわそわしてた。何なんだろう?

 

「ねぇ奏、なんで皆そわそわしてるの?」

 

「恒例タイムがなかったからだよ」

 

「そもそもその恒例タイム、ってやつが何か分からないんだけど?」

 

奏の目が光って、ニヤッと笑う。

 

「そっかー。じゃあ次の休み時間まで楽しみにしときなよ」

 

「え、ちょ……」

 

あ、席に行っちゃった……。

 

仕方なく自分の席についておとなしく授業を受ける。

 

…………数学とかいう科目。ちんぷんかんぷんだった。早速奏を頼ることになりそうだ。

 

ーーーーーー

 

キーンコーンカーンコーン……

 

「「「ありがとうございました」」」

 

「あ、ありがとうございました……?」

 

なんとか皆に合わせて一時間目終了の挨拶をした直後。

 

「転校生への恒例、質問ターイム!!」

 

「うわぁっ!!!???」

 

奏の声が響いたと思ったら、僕の机に皆が一気に雪崩れ込んできた!!

 

何なの一体!?

 

そして、集まったクラスメイトから矢継ぎ早に浴びせられる質問。

 

(恒例タイムってこれのことなの?)

 

それにしても人が多い!

 

(こ、これを捌ききれと……?)

 

無理ゲーだ。人垣の隙間から、助けを求めようと周りを見る。

 

ーーー蓮さんは我関せずと言った様子で机に突っ伏している。

 

ーーー奏はニヤニヤとこっちを遠巻きに見ている。

 

(……どっちも助けてくれなそうだ……)

 

仕方ない、頑張ろう……(諦め)。

 

ーーー(クラスメイトの質問と悠梨の受け答えは割愛)ーーー

 

放課後。

 

奏が「悠梨を借りてくよっ」と蓮さんに告げて僕を連れ出した。今度は歩きだ。

 

「いやー、それにしてもすごい人の数だったね」

 

「……もう疲れたよ……」

 

昼休みになると、なんか他クラスからも人が来てたみたいで、廊下が人で埋まってた。

 

さっきも奏がいなかったら教室を抜け出せなかったかもしれない。

 

「なんで僕なんかを見にくるんだ……?」

 

「まぁ転校生ってのはそんなもんだよ。それに悠梨って、結構顔整ってるしね。女子の間では『可愛い系の男子転校生が来た!!』って持ちきりだったよ」

 

うそーん。

 

「……そんな馬鹿な」

 

「本当だよ?実際、ボクに『知り合いなら紹介してよ!』って言って来た子が、クラス内外問わず何人かいるしね」

 

「……マジで?」

 

「マジだよ。さて、そこんとこ悠梨としてはどうなの?」

 

あぁ、また奏がニヤニヤしながらこっちを見てる……。イタズラを思いついた時の顔なんだなこれ。この顔してたら気を付けよう……。

 

「とりあえず、交友は増やしたいから友達としてなら、いいかなぁ……」

 

「おや、彼女は?」

 

「いないし、作る気も今はないよ」

 

っていうか作れる気がしない。

 

「新しいイケメンがこれじゃつまんないなー」

 

「いや、そこまで頭が追いついてないから無理」

 

これは一応本音だ。やることとかの道筋はついたけど、それでもまだこの状況に納得してない自分がいる。まぁ他にも理由はあるけど。

 

「そればっかりは焦ったって意味ないもんね……うーん……」

 

「まぁゆっくり慣らしてくよ」

 

なんやかんや言って、真剣に奏が考えてくれてるみたいで、なんか嬉しい。

 

「何嬉しそうな顔してるの?」

 

あ、顔に出てたか。一応話題逸らしとこう。

 

「何でもないよ。ところでどこ向かってるの?」

 

「ん?もうちょい歩いたとこ」

 

もうちょっとかかるっぽい。

 

ーーーーーー

 

多分学校から歩いて15分程度。

 

「着いた着いた、そこだよ」

 

奏の指差した方を見る。見ると一軒のマンション。

 

「あれは?」

 

「AEの社員寮」

 

そんなとこに何の用だろうか?

 

ロック式の入り口の自動ドアに、奏がパスワードを打ち込んで開けた。エントランスを通ってエレベーターに乗る……と思いきや、奏が管理所にいる壮年の女性に声をかけた。

 

「おばちゃん!鍵受け取りにきたよ!!」

 

「はいはい803号室ね。その子がアレかい?」

 

「あ、どうもはじめまして……」

 

「そうそう!これからよろしくしてあげてよ。悠梨、こっちだよー」

 

会話についていけてない……。事務所のおばさんへの挨拶もそこそこに連れてかれる。

 

今度はエレベーターに乗り、奏が8階のボタンを押す。ちなみに15階建てだった。

 

8階につく。左右に通路が別れていて、奏は右に進んだ。右側に部屋が並んでいて、803号室の前で立ち止まる。

 

「はいこれ」

 

奏が鍵を手渡して来た。カードタイプだ。僕に開けさせるのか。

 

カードを通して、解錠しドアを開ける。

 

「さ、入った入った!」

 

奏に背後から押された。

 

「靴!靴!!」

 

「おお、ごめんごめん」

 

今度は靴を脱いで上がる。

 

まぁ普通の部屋だ。テレビとかエアコンとか冷蔵庫とかベットの設備は整ってるね。

 

……で、だ。

 

「この部屋を僕に見せてなんか意味があるの?」

 

「ここまできて分からない?」

 

「いやごめん、全然わかんない」

 

「……意外に鈍いね、君……」

 

奏が小さくため息をついたあと、告げる。

 

「……いい?ここは君の住む部屋だよ」

 

……うん?今すごいありえない事聞いた気がするんだけど……。

 

「えっと、奏、今なんていったの……?」

 

「悠梨はこれからこの部屋に住む、って言った」

 

……聞き間違いじゃなかった。というかこのやりとり、デジャヴ。

 

「……どうしてそんなことに?」

 

「父さんにちょっとおねだりしたんだよ。ちょろいちょろい」

 

AEの社長さん、ご愁傷様です……。

 

ってそうじゃない。

 

「僕の部屋が用意された理由だよ」

 

「だって悠梨、会社の事務所のソファで寝泊まりしてる、って言ったでしょ?流石にそのまま、って訳にはいかないと思ったからさ」

 

え、えー……そこまでしてもらうともうなんだか……。

 

「1LDKのリビング8畳、洋室6畳、お風呂付き。文句ないしょ?」

 

「全然ない!!十分すぎるくらいだよ……」

 

「そっかそっか。なら良かった」

 

凄い良い笑顔をされてる。可愛い。違う。

 

確かに部屋は欲しかったけど……でもここまでしてもらうわけにも……。

 

………。

 

「……有難く借りさせていただきます」

 

最終的に誘惑が勝った。

 

「よしよし。んじゃ、後で夕飯作って持ってくるから、部屋を魔改造してていいよー」

 

「いやしないから」

 

さっきも言ったけど、そもそも何も持ってないから模様替え(断じて魔改造ではない)は出来ない。

 

奏を玄関まで送ってく。

 

「んじゃ後でねー」

 

そう言って奏は右側に姿を消した。

 

(ん?右側……?)

 

そっちはエレベーターとは反対側のはずだけど?

 

疑問に思って顔をのぞかせると、隣の部屋(802号室?)に奏が入って行くのが見えた。

 

「隣!?」

 

「にっひひー。その部屋が空いてるのは知ってたから、これも父さんに頼んじゃった♪」

 

奏に甘すぎやしませんか社長……?

 

(……知らない人が隣よりは何万倍も増しか、うん)

 




悠梨は奏のおもちゃにされてしまうのか!?
感想等書いていただけるのであればよろしくお願いします。

ーーーお知らせーーー

以前言いましたように、作者受験生のため、これから更新が相当途切れます。申し訳ありません。出来次第ちまちま載っけたいと思います。

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