ブラック・ブレット〜赤目の神喰人(ゴッドイーター)〜   作:緋悠梨

11 / 23
未織&新オリキャラ登場です。


11.仮想空間の戦闘

蓮太郎さんからパトロンをつける話をもらったのが土曜日で、今日は5日後の木曜日。

 

さて……

 

(どうしてこうなった)

 

もうそれ以外感想はない。

 

状況説明。

 

今着てるのは、いつもの赤い半袖パーカーと黒のスラックスじゃなく、蓮さんが普段着てる『あの』制服。

 

そして目の前にある空間には、40人程の僕と同世代の男女。男子は僕と同じ格好だ。その中には蓮さんもいる。唖然としてるけど。

 

蓮さんと『もう1人の知り合い』のニヤニヤした表情以外の、全ての目が好奇の視線でこちらを見ていてすごい居心地が悪い。

 

……もう予想がついてると思うけど、ここは勾田高校2年のとある教室。転校生として教壇の前に立っている。

 

「え、えっと……緋上悠梨です。気軽に悠梨、って呼んで下さい。これからよろしくお願いします」

 

「はい、じゃああの席に……」

 

「分かりました」

 

担任に指定された廊下側の一番後ろの席。蓮さんの席は窓際の列だから少し遠いな……心細い。

 

着席して、改めて思う。

 

(ホントに、どうしてこうなった……)

 

4日前の出来事を思い返す。

 

ーーーーーー

 

パトロンの話をした翌日、日曜日。

 

蓮太郎さんから「車が迎えに来るらしいから午後1時に事務所の前で待ってろ」と言われたから待ってた。

 

この道はあまり交通量が少ないのだろうか、全然通らない。あ、一台目が来た。ーーーけど普通に通り過ぎて行った。

 

しばらく待っている。

 

(暇だなぁ……ん?)

 

通算3台目の車が来た。

 

(あれ、リムジンってやつかな?)

 

長い。なんだあれ。あんなのほんとにあったんだ。……あるぇー僕の前で止まったよ!?え、まさかこれに乗れと?

 

戸惑ってる僕の前で窓が開く。その奥には1人の着物を着た女性が座っていた。……美人さんだなぁ……。

 

少し僕の顔を見ていた女性が口を開く。

 

「……白い髪にサングラス、赤い半袖パーカー……君が悠梨君やね?」

 

「あ、はい、そうです。じゃあ貴方が未織さんですか?」

 

「せやで。司馬未織。一応司馬重工の社長令嬢ってことになっとる」

 

……うわぁ、すごいVIPなんだろうなぁ……。

 

ところで、蓮さんの知り合いって美人とか可愛い系ばっかじゃない?

 

……え?どうでもいい? ……ごめんなさい。

 

「まぁとりあえず乗りぃ。話は移動しつつさせてもらうわ」

 

「あ、あの……」

 

「ん?どうかしたかえ?」

 

階段裏から神機を持ってくる。

 

「これ乗っけてもいいですか……?」

 

「……まぁ床に寝かしとき」

 

ーーーーーー

 

というわけでリムジンの中。広い。落ち着かない。装甲車が懐かしい。

 

「んで、悠梨君。君の素姓は一通り里見ちゃんから聞いとる。君の知らんとこで聞いてしもうて申し訳ないけん、堪忍してや」

 

「あー、まぁ大丈夫ですよ。でも漏らすのは最低限でお願いしますね?」

 

「勿論や。君がトライアルを受ける先の担当の子にしか話しとらん」

 

「あ、うん、まぁ、大丈夫、です」

 

ちょっと微妙だけど。

 

「因みに、うちと相手先については聞いとるん?」

 

「いえ、全く」

 

「んじゃ説明せなあかんな……。うちの会社こと『司馬重工』は、自分で言うのもなんやけど、世界に名だたる企業や。日本でも勿論トップ。里見ちゃんみたいなのも他にもいるで」

 

ふむふむ……。

 

「んで今回、君が受ける会社は『秋月エレクトロニクス』ゆうところや。略称は『AE』。以前は電気工業の会社やったけど、ガストレア大戦以降、兵器開発に力を入れとって、うちに続く国内シェア2位の会社やね」

 

エレクトロニクスは電気工業時代の名残か。それにしても、

 

「詳しいんですね?」

 

「そこの社長令嬢と高校、学年も同じやからなぁ。立場が似とることもあるから、結構仲いいんやよ」

 

なるほど、それでか。

 

「因みに里見ちゃんも同じ学年やで。それと、うちが生徒会長やっとるんや」

 

「未織さん万能人間ですか」

 

「いやんそんな褒めんといて〜」

 

頬に手を当てて体をブンブン振る未織さん。そこまで褒めてはいない気が……。

 

それにしても蓮さんの学校か……ちょっと興味あるな。

 

「ま、冗談はさておき……今ウチらが向こうとるのは、司馬重工の本社ビルや。そこで、君の戦闘データをとる。で、それを元にAEで審査が行われて、合格したら晴れてパトロン獲得、という風な流れになるから覚えときぃ」

 

「了解です。……でもビルの中にそんなデータとれるところなんてあるんですか?」

 

「それは見てからのお・た・の・し・み♪にしとき。……ほら、見えたで」

 

未織さんが扇子を向けた窓の外、巨大なビルが見えた。

 

「でっかい……」

 

「戦争で儲かっとるから、微妙やけどね」

 

そう言って苦笑する。

 

 

入り口の警備員は完全顔パスだった。流石だ。

 

「こっちやで」

 

車を降りてビルに向かう未織さん。神機をもってついていく。

 

なんか神機兵のデザインみたいな鎧をつけた人がたくさんいる……警備員かな?

 

途中で社員っぽいスーツの人が、未織さんに「人が来てる」みたいな事を告げて、すぐにフェードアウトした。

 

エレベーターで地下へ降りると、通路があり、そこに1人の女性が寄りかかってスマホを触っていた。あの人が未織さんの来客かな?

 

「アンタにしては、早いんちゃう?」

 

やっぱり来客みたいだ。

 

「ボクが早く来ちゃ悪いって?うちの広告塔にふさわしい奴がいる、っていうから期待してんだよ」

 

「普段出かけない癖によう言うわ……」

 

口調が男の子っぽい上にボクっ娘か……。っと、視線が僕の方を向いた。なんかジロジロ見られてる……。

 

っていうかまたしても綺麗、というかかっこいい人だ。

 

茶髪のショートで、ウルフヘアとでも言えばいいかな?そんな感じに髪をセットしている。目は大きく、意思の強い感じ。全体的に活発な印象を持つ。でも身長は僕より一回り小さい。160cmあるかないかくらいだ。

 

そんな人が見つめてくるから、無駄にドギマギしてしまう。

 

「ふーん……君が悠梨君かぁ……。……へーぇ………………あいたっ」

 

「こら奏、そんなジロジロ見たら失礼やで。あとさっさと自己紹介せぇ」

 

未織さんが扇子で奏さん?の頭を叩いて止めてくれた。た、助かった……。

 

「はいはい……。あ、君のことは聞いてるから自己紹介しなくていいよ」

 

あ、それは助かる、かな?まぁいいや。

 

「ボクは秋月 奏(あきづき かなで)。奏って呼んで。んで、秋月エレクトロニクスの……お助け要因みたいなもんかな?」

 

「社長令嬢やろ」

 

「あ、この人があの……」

 

「ん〜それ言われんのあんま好きじゃないんだよ……。ボクに似合ってないし」

 

「立場フルに活用していろいろしとるんやないの?」

 

「兵器の設計とかなら未織もやってんじゃん。それを言われてもなー」

 

「え、2人ともそんなの出来るんですか!?」

 

そんなの学生がやれることなの……?

 

「それなりに採用されるで。あとウチが独自に作ったもんやと、延珠ちゃんのバラニウムしこんだ靴とかもそうや」

 

「……全然気付かなかった……」

 

なんだろう、ホントにこの人達のハイスペックぶりは。

 

いろいろ驚愕してる僕を他所に、「ほないくで」と未織さんが言い、2人がまた歩き出したので、慌ててついていく。

 

少し進んだところのドアの前で未織さんが止まり、ロックを解除する。続けて入る。モニター室かなにかのようで、色んな計器があった。

 

「これに名前を登録してや。終わったらこっちに来てな」

 

登録を済ませ、未織さんが立っているドアに向かう。

 

ロックを解除してもらい、入った部屋は……

 

「……なに、この部屋……」

 

とにかく真っ白。どこを見ても真っ白。距離感が全く掴めない。

 

「やっぱこの部屋、落ち着かないなぁ……」

 

奏さんがそう漏らす。以前に使ったことがあるみたいだ。

 

目の前に青いワンピースをきた女の子と、時計をつけた白うさぎが現れて、追いかけっこをしている。

 

(あ、不思議の国のアリスがモチーフかな?……データ、だよね?)

 

そう思えるほどの再現度だ。

 

少し待っているとアリス達がふっと消え、上空から機械音声が降ってくる。どうやらアリスはロード待機中のアレっぽい。

 

『初めまして、緋上悠梨。よろしくお願いしますね』

 

「よ、よろしくお願いします」

 

思わず返事してしまう。あ、奏さんが笑ってる。そんなにウケたのかな?

 

「あっはは!!悠梨君ってば機械音声なのに!!面白〜い」

 

うわなんか恥ずい。

 

「まぁ初めて使ぅ人だとたまにおるから気にせんでええで」

 

「あ、はい……」

 

よし、気にしない気にしない……。

 

「とりあえずこのパットを全身に装着頼むわ」

 

そう言って渡される幾つものパット。それを言われるがまま装着していると、

 

「んじゃ、ウチらはさっきのモニター室に移るから、合図があったら戦闘開始してな。奏」

 

「はいはい今行きますよ、っと。んじゃ悠梨君頑張れっ!!」

 

「いや、戦うって……」

 

バタン。

 

無情にもドアが閉まる。

 

(いや、何と戦えってんだ……)

 

考え込む僕。……パッドをつけ終えたが、合図も特に来ない。

 

その時。

 

『ステージ【廃墟の街】起動しますーーー』

 

機械音声に続き……部屋が、作り変えられた。

 

「な……!?」

 

ボロくなったビルや、家が出来てくる。亀裂の入った道も敷かれた。

 

気付けば、廃墟に取り残されたかのような状況に、僕は置かれていた。太陽が照りつけて暑い。

 

「一体どうなってるの!?」

 

続いて、僕の頭上から、未織さんの声が降ってくる。

 

『んっふふー、驚いたやろ?これこそ司馬重工最新テクノロジーを駆使して作り上げた【モーションリアリティ・プリズム・バトルシミュレータ ver9.00】や!! 直径1kmの仮想訓練室。視覚は勿論、触覚、聴覚、痛覚まで完全再現しとるんやで。仕組みは当然企業秘密や♪」

 

それを聞いて、ビルの壁を触ってみる。確かに、コンクリートの感触が伝わってくる。

 

(なんて技術力だ……)

 

司馬重工……恐ろしい子!!

 

『今回はその街に5人の敵兵が潜んどる。そいつらを君の神機で全員殺したら終了や』

 

「え、いや殺すって……」

 

『安心せぇ。敵兵も全部バーチャルや。今の痛覚レベルで実際に人が死ぬことはないで』

 

(……痛覚レベルが上がると、人死にが出ることがあるのか……)

 

戦慄する。というかそもそも、

 

「僕、対人戦をしたことないんですけど!?」

 

『あら、そうなん?でも、初見の敵に対応するのも戦士として必要やろ?ま、頑張りぃ』

 

鬼だっ!!

 

『んじゃ、そろそろ始め……あ、ちょっ、奏、何するん……』

 

……あれ、未織さんの声が途絶えた。しかし、すぐに奏さんの声が降ってくる。

 

『あー、あー、悠梨君、聞こえてる?』

 

「聞こえてますよ」

 

『よし。それじゃ悠梨君。ーーーボクが君を推薦するに足る、と思えるだけの力を見せてくれよ?』

 

「言われなくてもそのつもりですよ!」

 

『よし、じゃあ楽しみしてるぞ、少年♪』

 

そう言って、奏さんはよけたらしい。いや少年て……。

 

再び未織さんの声が降ってくる。

 

『あーもう、奏ったら乱暴なんやから……。んじゃ、邪魔が入ってしもうたが、今度こそ行くで』

 

『Mission start!!』

 

始まったみたいだ。

 

ーーーーーー

 

とりあえず、側のビル壁の残骸に身を隠し、戦略を練る。

 

(1km四方に敵は5人……敵がペアで動いてない限り、1対多になることないね…………ッ!!)

 

ザリッ……ザリッ……。

 

地面をする音。敵が近づいているようだ。

 

壁から顔を出す。

 

(いた……)

 

50m程先に、刀を構えた兵士。銃持ってないが、隠しているかもしれない。

 

(銃で撃ってしまおう)

 

神機を変形させ、シロガネを出す。バレットは連射弾を選択。

 

敵をしっかりエイムし、

 

(……ごめんね、でも負けられないから)

 

引き金を引く。

 

決して音が小さい訳ではないので、発射した音で気付かれたようだ。が、振り向いた瞬間に腹に着弾。、空洞を作り、死へ誘う。

 

(よし、残り4人!!)

 

とりあえず移動しないと。今の音で気付いた人もいるだろうし。

 

 

走って移動する。しかし、

 

パパパパッ!!

 

走っている側面に銃撃。即座に大甲を展開。防ぎきる。

 

マシンガンタイプなので一発が軽く、ノックバックは発生しなかった。

 

(どこだっ……!?)

 

再び銃声。今度は左にステップすることで回避。今の攻撃で敵の位置が判明。すぐさま突進する。

 

まだ本気じゃないが、それでも僕の動きが早いため、敵が焦って銃撃してくるが、狙いが甘い。右に左にステップし、簡単に回避。

 

マシンガンだけあって手数が多い……!!でも、

 

カシャン!

 

(……きた、弾切れ!!)

 

この瞬間を待っていたんだ!!敵までそんなに距離はない。一気に仕掛けようとする。

 

だが、敵が懐に手を伸ばして何かを取り出す。

 

(……手榴弾か……!!)

 

不味い!!

 

敵がピンを抜く。しかしそれを投げることは叶わなかった。

 

ピンを抜くと同時に敵に到達。ガルドラを展開し横薙ぎに振るい、敵を上下に両断。その勢いを利用し一回転して、敵の手から手榴弾を遠くに蹴飛ばす。ここまで一秒。

 

すぐさま大甲を展開して、右手で支えつつその影に隠れ、目をつむり、左手は耳をふさぐ。ここまで更に一秒。

 

バガァァァァァン!!!

 

展開した直後、手榴弾が爆発。近くの建物が崩れたか、破片が正面から飛んでくるが、大甲を展開したので無傷だ。

 

破片がぶつかる音が止むのを待って、大甲を格納。

 

(光を遮断するためだったけど、予想外の役立ち形だったな………ん?)

 

右耳が、全く聞こえない。

 

(くっそ、抑える方法がなかったとはいえ、戦闘に支障がでるな……)

 

とにかく、ここからも早く移動しないと。

 

……欲を言えば、先程の兵士から残りの手榴弾を頂きたかったが、爆風で吹っ飛んだようでどこにも見当たらなかった。仕方なく場を離脱する。

 

 

またしばらく走ると、今度は広場のような場所に出た。

 

(まずいなぁ……狙撃兵がいたら絶好のポイントだ)

 

早く抜けるに限る。

 

だが、ここでも銃撃。慌ててバックステップ。左側面からだったのでなんとか音に反応できた。

 

射撃された方を見ると、今度は敵が身を晒してきた。

 

(余裕の現れかな……?)

 

アサルトライフル?っぽいものと、腰にナイフを持っている。取り回しが良さそうだから、ガルドラで戦闘するには分が悪いと判断。近接戦は除外する。

 

再びシロガネを展開し、射撃戦を開始。

 

「乱れ撃つぜぇ!!!」

 

敵もライフルを構え、撃ってくる。お互い、回避しながら撃ち合う。

 

当たらない。お互いに、当たらない。

 

……ふと、その動きに違和感覚える。

 

(……まるで僕をこの広場から出さないようにしているかのような……何が目的だ?)

 

殺す気がないようにも見える……。

 

刹那、背後から殺気。

 

急いで右に飛び退くが僅かに間に合わず、左の二の腕を銃撃がかする。

 

(後方にもう1人……!?)

 

確認するのは不可能だ。気を抜くと打たれる。

 

今の銃撃で、少し肉を持ってかれたようで二の腕が痛む。

 

(最初に1対多にはならないよねー、とか思ってたバカはどこのどいつだー!?)

 

もちろん僕です。

 

しかし、これはまずい。右耳がやられてる状態だと音が聞こえにくい。

 

(さっさと目の前の敵を倒して狙撃兵をなんとかしないと!!)

 

だが、簡単にそうさせてくれるはずもなく、むしろさっきから、攻撃より回避してるほうが多いくらいだ。後方からの射撃も殺気を感じてなんとかよけているが、ジリ貧になるのは目に見えている。

 

「ああもうめんどくさい!!

 

なので、逃げ回る敵の背後をとるために疾駆。敵は背後を取られないようにしようとするが、ゴッドイーターの脚力に普通の人間が勝てるはずもなく、呆気なく抜き去り、あえて、敵の目前に立つ

 

(これで、簡単に狙撃は出来ないだろ!!)

 

それを理解しているのか、敵が下がろうとする。

 

「させるかっ!!」

 

下がろうとする向かって神機を投げる。ゴッドイーターの膂力で持って投げられた神機は、かなりのスピードでもって、相手に突き刺さる。反応する間も与えられず、敵は絶命。

 

だけどまだ危険な状況だ。それを分かっているから、僕は投げた神機に追従する。

 

敵が刺さった神機をそのまま持ち上げる。直後、兵士の死体に着弾。

 

(……距離をとった瞬間に撃ってくると思ったけど、やっぱり!! あと仮想敵だけど死体を冒涜してごめんなさい!!)

 

一応謝っとく。

 

神機を一振るいして死体と血を落としたあと、射撃があった方角へ向かって全力で走る。普通のスピードで走ってたらただの的だ。

 

(どこだ、どこにいる……!?)

 

どこから撃たれたのか分からない以上、止まるわけにもいかない。

 

それに敵も移動してるはずだ。同じ場所に留まる愚はしないはずだ。早く見つけないと逃げられてしまう。

 

その時、前方100m程に見える崩れかけのビルから、1人の男が出てくるのが見えた。肩にはーーー狙撃銃。

 

「お前かぁっ!!!」

 

声が聞こえたのか、狙撃兵が慌てて銃をセット。腹這いになり撃ってくる。

 

……だけど、そんな射角制限ある銃じゃ勝てないよ!!

 

射撃をジャンプすることで回避。

これで敵は最悪でも膝立ちにならないと僕を打てない。

 

(それだけあれば十分!!)

 

クモ型ガストレアにやったように、上段からガルドラを振り下ろし、銃身を破壊。返す刀で狙撃兵の首を切り落とした。

 

(……ラスト1人!!)

 

ーーーーーー

 

さて、その最後の1人が見つからない。

 

(どこだろ………ん?)

 

ガサ……ガサ……

 

動く音だ音に気付き隠れる。

 

(いやでも、あれ何の音?)

 

ガサ……ガサ……

 

まずい、こっちきてる。

 

顔を少しだけだして確認すると、

 

(……さっき会社の周りを警護してた人の格好だあれ)

 

例の神機兵みたいな鎧をつけた人がいた。

 

(まだ距離はある……射撃でカタをつけよう」

 

シロガネに変形させ、連射弾をセット。敵の前に躍り出て撃つ

 

「終わりだよ……ッ!?」

 

弾かれた。剥き出しの顔を狙ったが、腕をクロスさせることで防がれた。

 

「嘘ん!?」

 

あ、やばい走ってくる。逃げないと!!ひとまず逃走にうつる。

 

(えーとえーとどうしようどうしよう……!!!)

 

逃げてる間に、無我夢中でバレットを変える。無幻弾のどれかだけど、どれをいれたか分からない。

 

「えーいままよ!!」

 

止まって撃つ。敵はよけもせず着弾。弾かれそう……、というか弾かれたが、

 

「あれ?」

 

なんか敵が動かない。

 

というか必死に動かそうとしてるが、全く動かないようだ。

 

(チャンス!!)

 

間合いをつめ、動けない敵の、これまた首を切り落とす。

 

(これで……5人か……)

 

『Mission Complete!!』

 

機械音声が流れてきて、廃墟が消える。やった終わりだ……。

 

最後の敵が動かなくなった理由はなんだろう……?とりあえずバレットを確認してみると、

 

「…………あー……」

 

すごい納得した。

 

『お疲れ様、悠梨君。とりあえずモニター室に来てな』

 

「分かりました」

 

ーーーーーー

 

モニター室に入って時計を見ると、さっきから15分程度しか経っていなかった。1時間近く戦ってた気もするけど……。

 

「いやー悠梨君すごいわー。というかえげつないわ」

 

「そうだねー。でも、これなら戦闘力としては十分いける筈」

 

やった、これはなんとかなるかもしれない。

 

「……ところで、最後の敵のことなんやけど」

 

「あー、っていうか、あれそもそもなんですか?」

 

すごい潰したくなるんだけどあの鎧みたいなの。

 

「あれはうちの会社で開発された外骨格(エクサ・スケルトン)っていう装備なんやけど……あんな不調は今まで起こったことがないんよ。なんかしたん?」

 

「多分これですね」

 

神機を指す。

 

「神機がどうかしたん?」

 

「神機、というよりはバレットですね」

 

僕が無我夢中で装填したのは『無幻弾・雷』だった。だから電気で麻痺ったか外骨格自体が壊れたかのどっちかだと思うんだよね。

 

そのことを告げると未織さんは考え込んだ。

 

「……まぁ、確かに耐熱、耐冷にはしたけど、電気は予想外やったなぁ……」

 

「司馬重工としてこのままにしとく気はないっしょ?」

 

「勿論、設計を変えてみるわ」

 

「さっすがー」

 

奏さんがすごい茶化してるんだけど大丈夫なんだろうか……。

 

「あの、とりあえずこれでデータ取りは終わりですか?」

 

「……残念、まだ終わってないよ」

 

「え」

 

あ、なんか奏さんが黒い笑みを……。

 

「え、って悠梨君さ、その神機のことを知られていいの?」

 

「……あー」

 

確かにまずい、というか僕が知られたくない。

 

「んじゃ、もう一回頼むよ少年♪」

 

「武器はそこにある倉庫のやつ自由に使ってええから」

 

……この2人息ピッタリだな……。

 

兎にも角にも、僕のデータ取りはまだ終わってないらしい。

 




奏の容姿のイメージは「ベン・トー」(著/アサウラ 画/柴乃櫂人)に出てくる「ウルフヘア」っていうキャラです。見てみて下さい。

次回でオリジナル展開が終わる、かな?

感想、指摘等ありましたらよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。