男の娘アイドルによるスクールアイドル育成譚   作:片桐 奏斗

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一年生のターンに映画を二回観た結果、真姫ちゃんを二枚獲得しました。
真姫ちゃんファンとして、とてもいい結果でした。観賞用と保管用。うん、完璧!

……尚、一年生セットのときは凛と花陽しか出なかった模様。
今週の三年生セットは、にこ・希・絵里と三人とも出たんだけどなぁ。一年生セットはなんで、6個も買ったのに当たらなかったんだろ。


第11曲目 『μ’s』に入ってください

 

 

 

「玲奈ちゃん。『μ’s』に入ってください」

 

 俺は今、大変困っていた。

 絶対とは言い切れなかったけど、かなりの確率で諦めるかアイドル活動を挫折すると思っていたのだが、彼女らはそうはならなかった。

 真姫が裏で色々と言ってたとしても、立ち直れないぐらいの怪我は負わせたつもりだったんだけど。

 

「……兄が昨日やったこと、知ってる?」

「うん。私達の曲を使ったことだよね」

「やっぱり、ちゃんと見てたんだね。でも、なんで? あれを見てもそう言えたの」

「……正直ね、私達の曲を私達以上の実力でライブをされて、悔しかったよ。でも、私達はまだまだなんだってわかった。今以上の実力をつけて、見返してあげようって思ったんだ。だって、諦められないから」

 

 廃校のことも、アイドルのことも。

 そう言い切った高坂と後ろに控えているμ’s一同。絶対に揺るがないと一目見ただけでもわかる決意のこもった表情を見て、俺は決めた。

 

「……いいよ。μ’sに入っても」

「そ、そうだよね。急に入ってもいいなんて言ってくれるわけ……え?」

 

 入らなくてもいいんなら、入らないけど。

 

「だーかーら、入ってあげるってば。……あれを見ても、そう言い切れた時点で私の負けだし」

「やったーっ!!」

「よかったぁ」

 

 μ’sの中心核とも言える高坂が真っ先に反応し、それに六人も続いて喜んでいた。

 各々が喜びを口にする中、俺は冷静に次の言葉を放つために口を開く。

 

「あ、μ’sに入るとは言ったけど、メンバーにはならないからね? よくてマネージャーかな」

 

 空気が凍ったというのは、こういう場のことを指すのだろうか。

 俺がμ’sに入り、八人目と歓喜していた全員が口を閉ざし、目を大きく見開いていた。

 

「えぇーーっ! なんでよ、こんなに可愛いのに!!」

「可愛いいうな。高坂」

「穂乃果ちゃんの言う通りだよ。玲奈ちゃん、素材が良いから可愛らしい衣装着せて遊びたかったのに!」

「そーだよ。玲奈ちゃん、すっごく可愛いんだから!」

 

 穂乃果とことりの連携を受けるも、俺の考えは一切変わることはない。

 音ノ木坂が女子高である以上、絶対に入ることはないと言えるだろう。もしも、共学が決定するまでの間に、女装(これ)がバレてしまったら俺はもうこの学校にいられなくなるんだから。

 

 テスターとして、男性の視線を感じていないありのままの女子の生活態度を見て、感じて、共学の制度を実際に行ってもいいのか悪いのかの検査の為に俺がここにいるわけで、μ’sの件はそれと関与していない。

 

 

「そうね。確かに玲奈は可愛いけれど、玲奈の言い分を聞いてあげてもいいんじゃないかしら?」

 

 今はまだこの出来たばかりのグループを上手く纏められるメンバーがいないが、そこを補うのが親愛なる幼馴染だ。

 俺のことをよくわかっていて、助けを欲しているのを雰囲気で察して助け舟を出してくれた。

 

「……まず最初に私がμ’sに入らない理由だけど、普通のアイドル活動をしてる人がスクールアイドルを始めましたって言っても、納得出来る人ばかりだと思う?」

「え、えっと、つまり……」

「要するにμ’sが批判の対象になるってこと?」

「正解。アイドルが本職の人を入れて、有名になってもおんぶに抱っこって言われるのが関の山だし。それだったら、マネージメントしてるって感じならいいかなって。いくらアイドルをしているとはいえ、マネージャーはそこまで表舞台に立たないし」

 

 人間の嫉妬は恐ろしいものだ。

 実際にアイドルとして活動しているアイドルがスクールアイドルとはいえ、グループに入ってしまうと他のスクールアイドルグループから文句を言われてもおかしくない。

 今の状態で入っても無名のアイドルって設定だから大丈夫だろうけど。

 そんな一言をこの場で言ってしまったら、高坂辺りがメンバーとして加入してもらうってうるさく言いそうだよね。

 

 

「うーん。そういうことなら仕方がないけど」

「まぁ、マネージャーとしての仕事は覚えてるし、任せといてよ。衣装のデザイン考えたり、振り付け考えたり、歌詞考えたりも出来るからね」

 

 南に衣装のデザインを提案して一緒に議論したり、園田と共に歌詞を考えていくのが今のところ基本の動きになるかな。

 後は良さげな企画を提案して、メンバーに実行してもらって順位を順当に上げていくぐらいしかないし。

 

「作曲は出来ないんだけど。真姫なら、心配いらないよね?」

「ええ、問題ないわ。でも、聴いてもらいたいときは聴いてもらうわよ? 感想も欲しいし」

「それは任せて。人気になった曲を何曲も聴いて研究してるから」

 

 自分の歌で、だけどね。

 

 

「……むー。玲奈ちゃんって真姫ちゃんとだけは仲良いんだね」

「急にどうしたの。高坂」

「そう! その高坂って他人行儀で呼ばれるのがやだ。気軽に穂乃果って呼んで」

 

 高坂の隣で園田が驚愕の表情を浮かべていたのが少し気掛かりであったが、別に気にしないことにした。おそらく、高坂の口から他人行儀なんて難しい言葉が出たことに驚いただけだろう。

 短い間しか接してないのに、安易に想像がついてしまう辺り自分でも凄いと思ってしまった。

 

 

「はぁ。じゃあ、穂乃果だけ名前呼びだとアレだから、みんなのことも名前で呼ぶね。私のことも玲奈って呼んでくれていいから」

 

 

 こうして、俺はμ’sのメンバーとして活動をすることになった。

 ここでなら、俺の無くしたものが見つかる気がした。今はまだお世辞にも人気があるとはいえないμ’sだけど、人気が上がると同時に俺と同じ悩みを持つことになるだろう。

 そこで、彼女はどうするのか見届けたい。それが俺の悩みを解決する答えになる。そんな仄かな予感がするんだ。

 

 

 

 


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