「バカなのかなとうまは!能力もなんもないのに崖から飛び降りるなんて!」
「バカなのですかあなたは!テレポーターの私がいるのに助けるような真似なんてして!」
俺と上条は支部にて正座させられてインデックス、白井に怒られていた。不思議なことに俺も上条も無傷。強いて言うなら擦りむいた程度だ。
「「す、すいません…」」
二人して謝ってしまった。あの後、MARとかいうよくわからん奴の隊長がやってきてそれに俺達は保護されたようだ。てかなにあのモビルスーツみてぇなの。超かっこいいんだけど。俺も風紀委員よりMARになりたかったわ。あ、あと初春と春上と佐天は帰宅。春上さんがなんかぶっ倒れたらしい。
「きいておりますの!?比企谷!」
き、聞いてませんでした…。とは口が裂けても言えない。つーか今呼び捨てにした?
「わ、悪かったよ…」
すると、上条が立ち上がる。
「じゃ、俺達はもう帰るわ」
「またね!はちまん!」
インデックスを連れて部屋を出る上条。俺もその流れに乗ってフェードアウトしようとしたら後ろから首根っこを掴まれる。
「……なに」
「少し調べたいことがありますの。時間ありますわね?」
「いや、俺はこのあとちょっとアレだから」
「わかりました。ではちょっと手伝ってもらいますわ」
どういうことなの?この子日本語不自由なの?
「お姉様はお帰りになられてもいいのですよ?風紀委員ではないのですから」
「いやいや、私だってもう関わっちゃったしさ」
いや手伝ったからなんだよ。と、思ったが白井は特に異論はないようでお礼だけ言ってパソコンをカタカタいじる。
「で、なにを調べるんだよ。さっさと終わらせて帰りたいんだけど」
「レベルアッパー事件と今回のRSPK症候群のことよ。なにかしら関係があると思ったの」
「え、レベルアッパーってなに?」
「「はぁ?」」
え、なにその反応。俺、関係あんの?
「あーあれか。れ、レベルアッパーねうん。思い出した思い出した」
「あんた、本当に大丈夫?」
っぶねぇあっぶねぇ。ついうっかりバレるとこだったわ。
「で、そのれべるあっぱー事件とメタボリック症候群になんの関係があるんだよ」
「その二つは確かに関係ありませんわね」
「てかなんでレベルアッパーの部分だけおばあちゃん発音なのよ」
二人にジト目で見られる。マズイ…非常にマズイ。ここはなんとか流さないと。
「や、でもその首謀者は捕まったんだろ?なら関係ないんじゃないか?」
「確かにそうですわね…」
「でもRSPK症候群はAIM拡散力場になんらかの形で干渉して暴走させるもの、レベルアッパーはAIM拡散力場を強制的にリンクさせるもの。なんとなく似通ってるよね?」
「それと、私は地震が起こる前の春上さんの様子がおかしかったのが気になりますわ。彼女が転校してくる前の19学区では地震が多かったらしいですの。彼女がこっちに来てからは向こうの地震はピタリとなくなったそうですのよ」
「それじゃまるで…で、でもあんな大人しい子がそんなことするわけないじゃない!」
「分かってますのお姉様。私だって春上さんを疑いたくなんてありません」
ここまで討論を続けている二人。俺の台詞ほとんどないのでホントに帰りたいです。
「だったら調べてみればいいんじゃないか?春上の能力」
よし、なんとか話せたぞ。俺が言うが否や二人はパソコンをいじり始める。出て来たのはレベル2の精神感性。レベル的にもあんな地震起こせるほどじゃないし、そもそも精神系能力者が地震を起こせるはずがない。精神系能力者がどんなのか知らんけど。
だが、気になるのはその後だった。
「特定波長下においては、例外的にレベル以上の能力を発揮する場合がある…?これって…」
……ほとんど決まりだな。
「調べ物は終わりだな。じゃ、俺は帰る」
「待ってくださいまし!あなたは春上さんが犯人とでも言うつもりですか!?」
「意図があるにせよないにせよ、そいつがなにかしら関係してるのは間違いないだろ」
そこまで言うと白井は言葉に詰まる。その間に俺は支部を出た。多分、このままだと白井と初春が喧嘩になるだろう。明日、なにかしらまた地震が起きて、その中心に春上がいて、白井が疑って初春がそれに反論する。
今ここで喧嘩なんてされたら捜査は進まなくなるだけだ。なら、俺がそれを変えればいい。
この後、家に帰ったら心配してたらしい神裂にめっちゃ怒られた。
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次の日、支部へ向かう俺。俺が入ると、全員がこっちを向く。その瞬間、ため息。おいその反応やめろ。うっかり自殺して欲しいのか己らは。
「悪かったな。帰るわ」
「ま、待って比企谷くん!違うの!いつも来てる初春さんがいないからつい…」
「はぁ?」
眼鏡さんに言われ反応する。初春がいない?ってことはさ、どっかに春上と逃げたか…。いや、俺達が昨日の推測
した時にはあいつはいなかったな。なら春上と仲良くなるためにどっかに遊びに行ったか?あんまり震源地に動き回って欲しくないんだけど…。
案の定、地震がどっかで起きたらしく、初春と春上は病院に運ばれた。
その病院へ向かう。俺は行きたくなかったのだが白井のテレポートで無理矢理連れて行かれた。初春も春上も目立った外傷はないが、春上の意識が戻っていない。
「春上さん…」
心配そうに呟く初春。その初春に白井が聞いた。
「初春、地震が起こる直前に春上さんの動きにこう…なにか不審な点はありませんでした?」
「……白井さん。それどういう意味ですか?」
初春はその質問に冷たく聞き返す。
「白井さん、もしかして春上さんを疑ってるんですか!?」
その質問に白井は言葉を詰まらせる。やっぱりこうなるか、そこから先は俺が引き継ごう。
「あぁ、そうだ」
俺の台詞に全員がこっちを向く。おい佐天、「い、いたの?」とか小声で呟くのやめろ。
「昨日の地震の直前は春上の様子がおかしくなったりしてたし、昨日の夜俺が独自で調べた結果、春上がいた時の19学区では地震がひどかったそうだ。でも、最近は地震はピタリとやんだらしい」
別な独自で調べたわけじゃないし、なんなら俺が調べたわけでもないが、そう言わないと白井や御坂が一緒に調べてたことがバレる。
「そ、そんなの偶然で…」
「それに、春上は特定波長下においては、例外的にレベル以上の能力を発揮する場合がある。ていうか、春上がいた自然公園で地震が起きたんだ。疑う余地なんてないだろ」
「ひ、比企谷さんは春上さんがそんな人にみえるんですか!?」
「外見だけで人を判断するな。人間には表があるんだから当然裏もある。そんな簡単に人を信用するな。そいつがどんな闇を抱えてるかなんて分からんだろ。疑いたくない、そんなハズがない、そんな先入観は仕事の時は捨てろ。私情を仕事にまで持って来ると解決出来ることも出来なくなるぞ」
そこまで言うと俺の頬がパァンッと音を立てた。殴られた。ってか初春って人を殴るタイプの人なの?見ると、目尻には涙が浮かんでる。やっべ…言い過ぎたか…。そのまま初春は走って廊下に出て行った。それを追い掛ける佐天と白井。
「お前は行かなくていいのかよ」
御坂に言うと、御坂がゴミを見る目で言った。
「あんた、黒子と初春さんを喧嘩させないためにあんなこと言ったんでしょ?」
「え、なんで分かったの」
「分かるわよ。第三者からしてみれば。しかもなにが『独自で調べた』よ。あんた昨日なにもしてなかったじゃない」
はい、おっしゃる通りでございます。
「で、あんたはこのまんまでいいわけ?」
「別に構わんだろ。俺がいたってなんの戦力の足しにもならんし、多分あいつら春上の無罪を証明するためにもっと必死になるだろうから仕事率が上がるぜ」
「ふーん…まぁあんたがいいならいいけど。辛くないの?損な役回りして」
「損なのはいつものことだろ。じゃ、あとは初春のフォローよろしくな」
それだけ言って俺は病室を出る。帰ろう…割と心も体もズタズタだ…。