今回の俺の仕事の内容は、なんとかっていう聖人とかいうのをなんか…すごいことする剣の運び屋を探すことらしい。うわあ、超うろ覚え。
「でも、個人的にはハチやんには余り動いて欲しくなぜよ」
「は?なんで」
「ね〜ちんに止められてるからですたい。ただでさえ、教会側の原因で記憶を飛ばしちまったってのに、尚もまたこちらの仕事に巻き込むのは気が引けるぜよ」
おぉっ!なんか俺が人らしい扱いを受けてる!
「でもそのセブンソードってのは聖人だろうがなんだろうがぶっ殺せるんだろ?それなら神裂だって危ないんじゃ…」
「スタブソードな。それに、ハチやんの記憶喪失は周りの魔術師に知られるわけにはいかないんだにゃー。ぶっちゃけ、比企谷八幡の名前があるだけで守られてるとこもあるし」
おい、どこまで俺強かったんだよ。これって学園都市に来なかった方が良かったんじゃねぇの?てか今からでも帰れねぇのかよ。
「だったら今回のビームソードの件でも俺の名前出せばなんとかなるんじゃないのか」
「スタブソードな。それがそうも行かないんだにゃー。なんせ今回の取引はこの大覇星祭を利用した取引だ、向こうにとってもこの取引はかなりデカイ物になってるんですたい」
「それに、君の名前を下手に出すわけにはいかないだろう」
土御門、ステイルと言った。
「なんか比企谷、お前すごいやつだったんだな…あとでサインもらっていいか?」
「漢字でいいなら書くぞ上条」
「やっぱいいや……ていうか、そんな凄いやつならなんで教会側は比企谷をこっちに寄越したんだ?これじゃ、切り札を捨てたようなもんじゃ…」
ちょっと捨てるって言い方ひどくないですか?
「それは詳しい話は言えないぜよ。ただ強いて言うなら、切れ過ぎる刃は嫌われるってとこかにゃー」
……なるほどな。結局、世の中努力した奴が嫌われ、周りから妬まれるってことか。だから働きたくないって言ってるんだろくな俺。
「だから比企谷、今回の件から手を引いてくれないかな?」
ステイルに言われて少し考え込む。すぐに口を開いた。
「…分かった。今回はお前らに任せる」
「それならこっちとしても助かるぜよ。今回の件は、俺達に任せてもらうにゃー」
「あぁ、俺は実行委員として、動かせてもらうからよ」
「「「は?」」」
「じゃ、そういうことで」
「おい、ちょっと待っ…」
「比企谷!超探しましたよ!こんな所でなにしてんですか?」
絹旗、ナイスタイミングだ。
「や、別になんもしてねーよ。じゃ、俺はこれで」
「おい、待て!神裂のことも考えてやれないのか君は!」
「お前らだって大覇星祭実行委員のこと考えてやれ。大丈夫大丈夫、無理はしないから」
そのまま逃げるように退散した。
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さて、どうやってその運び屋を探すかだな。一人で動くと決めた以上、まずはそのオリアナとやらを見つけなければならない。……無理じゃね?そんなん見つかるわけがないじゃん。いいや、上条をストーキングしてればなんとかなるだろ。
「悪い絹旗、これからちょっと実行委員の仕事だ」
「えぇーなんでですか?」
「仕方ないだろ。仕事っていうのは増えることがあってもなくなることはないんだよ」
「超なにいってんですか」
「ま、そういうわけだから。また今度な」
行こうとした俺の裾をきゅっと掴む絹旗。
「…どうした?」
「次の、次の暇はいつですか…?」
「あ?えーっと…」
運び屋を捉えるまで、とは言えんわな…。
「大体、昼飯の時かな?」
「超約束ですよ。絶対にその時間にここに来てください」
「あー…出来ればな」
「は?」
「なるべく…」
「………」
「ぜ、善処します…」
「…………」
「や、約束する…」
「はい、超きまりですからね!」
満面の笑みを浮かべると、そのまま走り去る絹旗。あー…まぁうん、善処するよ。絹旗と別れるとしばらく、上条を探す。すぐに見つかったはいいが、そこで最も出会ってはならない人間がいた。吹寄だ。
「上条、貴様比企谷を見なかったか?」
うーわ…まさに俺のこと話してるよ…。
「比企谷なら、さっきまであの辺で一緒にいたけど…」
しかもハッキリとこっちを指差してますねーその迷いのない目が腹立つ。なんとか人混みに紛れて屋台の影に隠れると、なんか胸にダイブしたり、頭突き喰らったりで一向に進もうとしない。なにやってんのあいつら…と、思ったら後ろからなんかおっぱいおばけみたいな人が上条と接触、おいてめぇ場所変われ。で、お互い手を取る。その時、なにかに反応したように二人の顔付きが変わった。
「……?」
見付けた、運び屋。俺は運び屋を尾行する上条を尾行した。この距離を保てばいけると思ったんだが…、
「見つけたぞ比企谷!」
見つかりました…俺は襟首を掴まれ、救護班本部に連行された。
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「ここから離れるなよ!」
釘を刺され、俺は身動きを取れなくなってしまった。どうするかな…これじゃあのおっぱいおば…もとい運び屋を追えない。こっそり抜けるか?それは無しだ。考えたら能力使用の認められた大覇星祭では怪我人はたくさん出てもおかしくない。救護班は必要不可欠だし、なにより俺以外全員サボってる。この野郎ども…。
すると、救護室に人が来た。
「あら?比企谷さん?」
白井と初春だ。白井は車椅子に乗っている。
「おう」
「保健室でサボってるんですの?何日も風紀委員の仕事もサボっておきながらいいご身分ですわね」
「仕事中だ。一応実行委員だからな」
「「は?」」
「おい、その反応には悪意を感じるぞ」
二人がムンクの叫びみたいな反応する。
「あの…働いたら負け病の比企谷さんが…実行委員?」
「あ、頭でも強く打ちました?」
「お前ら失礼を通り越して無礼だからな。失うどころか無くなってるから。で、なんかようか?」
「いえ、サボりに来ただけですよ。白井さんはこの様じゃなにも出来ませんから」
「まぁ、それもそうか」
あ、いいこと考えた。
「二人ともどのくらいここにいる?」
「しばらくはいるつもりですの」
「そっか。ならこれ付けて待っててくれ」
「?なんですかこれ?」
「風紀委員の腕章みたいなもんだ」
「まぁ、別にいいですけど」
「私も構いませんわ」
「さんきゅ、じゃあな」
それだけ言って、俺は職務放棄した。そして、また運び屋を探すこと数分、吹寄からトランシーバーで連絡が来た。やべっばれたか?
「もしもし?」
『あぁ、比企谷?お願いがあるの、きてくれない?』
どうやらばれたわけではなさそうだ。余り他に時間割いてる暇はないのだが、ここでごねると後で面倒だし、もしかしたら自由時間もらえるかもしれない。
「分かった」
そのまま向かった先でやる競技は常盤台中学の出る20対200の玉入れだ。人数差酷すぎだろ…。