「風紀委員?あなた、昼間に白井さんを助けに来た人ね。あの時、私と闘うの逃げた癖になに言ってるわけ?」
「だから拘束だって。風紀委員として見逃すわけにはいかんだろ」
「ふぅーん、まぁいいケド。怪我しないようにね」
そう言ってニヤッと笑うと、結標はライトを持ってその辺の椅子と机を照らす。その瞬間、俺の真上にその机と椅子が出てくる。
が、まったく気にせず結標をそこからブン殴った。強く殴り過ぎたか、結標は窓を突き破って外にぶっ飛ばされる。俺は俺で降ってくる机と椅子を前転で回避した。そして、窓から飛び降りて結標と対峙する。
「これでお前の周りにはテレポート出来るもんはなにもない。おとなしくお縄に付け」
「はぁ?あなたの馬鹿力は確かにすごいけど、私はこんな所で諦めるわけにはいかないの。あなたこそ、今からは私だって本気なんだから」
戦闘は避けられんか…。仕方ない。俺は向こうが動く前に動いた。向こうがテレポーターならこちらは止まっているのはマズイ。その瞬間、俺の目の前に道路標識が何本も突き刺さる。慌てて立ち止まり、直進ではなく接近ルートを変更する。
「っくっ!」
「これでも飛ばせる物がなくなったって言えるわけ?」
突き刺さった標識を踏み台にしながら一気に結標に殴りかかるが、顔面になにかが強打し、後ろにぶっ飛ばされる。
「椅子!?どっから持ってきて…」
どうやら、あいつのテレポートは触らなくても使えるらしい。さっきの店の中から持ってきやがった。と、思ったら、俺の真上に車が浮いていた。
「さよなら」
そして、大爆発が起こった。
だが、それは俺の頭上での出来事だ。俺の上に浮いていた車は頭上で電撃に貫通されて爆発した。
「ちょっと、私の先輩に手を出さないでくれる?」
「御坂美琴…ッ!」
うっほほい、カッコいいなコイツ。てか俺のこと先輩だって思ってくれてたんだ。嬉しいです。
「お前、なんでここに…」
「こんだけ大騒ぎすれば誰だって気づくわよ」
で、俺に手を差し伸べてくれる。
「立てる?」
「……悪い」
それをありがたく受け取って俺も立ち上がった。そして、御坂が言う。
「これ以上やる気?悪いけど、あんたに勝ち目があるようには見えないわよ」
「確かにそうね、ここは逃げることに徹底させてもらうわ」
「あら、黒子をあれだけ痛みつけといて、逃げられるとでも思ってるわけ?」
どうやら御坂はかなりご立腹のようで、コインを取り出す。
「そうね、だからあなたの後輩を使わせてもらうわ」
「……なんですって?」
なんだ?まだなにか手があるのか?すると結標はライトをその辺のビルに当てた。こいつ、まさか…。
「御坂!あのビルに向かえ!こいつは白井の上にビルをテレポートさせる気だ!」
「えっ!?」
「もう遅いわ。さよなら。今から行けばギリギリ白井さんを助けられるかもね」
そう言って結標は走って逃げて行った。
「クッソ…!御坂、手伝え!」
「あんたはあの女を追って!」
「は?でも白井が…!」
「大丈夫、こっちにはもう一人いるから」
そう言われてしまえばこっちも結標を追うしかない。俺は走った。
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しばらく追い掛けて数分。誰もいない大通りに着いた。そこで結標は立ち止まる。
「なんだ?追いかけっこはおしまいか?」
「そうね、だって鬼がいなくなってしまうんだもの」
そう言って、臨戦態勢に入る結標。
「あなた、自分が誘い込まれてるとか思わなかったわけ?それとも私に勝てるとでも思った?」
「勝てる勝てないじゃねぇよ。職業的にお前を追い掛けなきゃいけねんだよ俺は。それにここでお前を逃がすと白井に悪い」
俺の答えを聞くとバカにしたように笑い、結標は言った。
「あなたが死ぬ理由はそれだけ?これでも私、レベル5並の力を持ってるのよ?」
「学生おまわり舐めんな」
俺はまた正面から突っ込んだ。結標はライトを当ててその辺の車やらガードレールやら飛ばして来るが、それを無視して特攻し、結標の目の前で拳を構えた。
「なっ……!?私の座標移動が追い付かないなんて……!」
まずは、顔面に叩き込んだ。軽く殴ったせいか、結標は意識がまだあるようで、手に握られているライトを振るおうとする。その手を蹴り上げてライトを弾いた。
「っ……!」
「お前の抱えてる物なんて知らねぇし興味もねぇよ。ただ、たかだか高校生があんま深いところまで入り込むな」
そして、左手を構えた。
「女学生は女学生らしく、教室の片隅できゃっきゃっうふふしてろ」
そう吐き捨てると共に左手の腹パン。メリメリッと嫌な音を立てながらも、拳を振り上げた。そこから15mくらいぶっ飛び、気絶する結標。ふぅ…終わりか……。と、思ったらまた声がする。
「なんだァ?せっかくガキの話を聞いて来てみりゃもう終わってンじゃねェか」
一方通行だった。
「一方通行……」
「あ?テメェか。なにしてンだ?」
「見ての通りだろ。風紀委員の仕事だ」
「…………」
「おい、なんとか言えよ」
一方通行はぶっ倒れてる結標を見る。
「オイ、テメェ。これ以上深入りすンじゃねェぞ」
「はぁ?なに言ってんの?主語述語目的語使って話せっつーの」
その瞬間、一方通行の足元に亀裂が入る。
「…すいませんでした」
「こいつァ学園都市の裏の人間だ。テメェみてぇな三下のいていい世界じゃねェ」
「はぁ?どういう意味…」
「そんだけだ。じゃあな」
それだけ言うと、一方通行は元の道に引き返していった。そんなこと言われても…すでに暗部グループを壊滅させかけたんですが…。
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次の日、学校の後に上条とインデックスに白井のお見舞いに付き合わされた。と、思って病室開けたら着替え中で引っ叩かれ、二人揃ってぶっ倒れた。その後、上条は御坂妹の病室に向かい、俺は打ち止めの病室へ行った。
「あ!恩人さんだ!」
「うっす。一方通行はいねぇのか?」
「あの人はまだ来てないよ?ところであなたはどうしてこんな所に?ってミサカはミサカは質問を質問で返してみる」
「え、いや知り合いのお見舞いのついでに来ただけだ。ほらこれやるよ」
ほいっとMAXコーヒーを投げる。危なかしい手つきながらもキャッチして、商品名を読み上げる打ち止め。
「MAX、コーヒー?……あぁ、これミサカ止められてるんだよねってミサカはミサカは衝撃の事実を口にして見たり」
「はぁ?なんで?」
「ん〜よくわかんないけど、あの人が『甘いコーヒーは敵だァ』とかよくわかんないこと言ってるの」
なぜか一方通行の真似をして言う打ち止め。死ぬほど似てねぇ…。てかあいつは小さい子になに教えてんだ。
「いいか打ち止め、世の中は苦いことばかりだ。つまり、コーヒーくらいは甘くていいだろ」
「おぉ!なんか深いこと言ってる!ってミサカはミサカは少し感心してみたり!」
「人生は苦いからコーヒーくらいは甘くていい…」
「きゃー!恩人さんカッコイイー!ってミサカはミサカは体全体を使って大はしゃぎしてみる!」
「ふははははっ!」
「なにしてンだテメェら」
「ふは!ふはは……はは………」
「ン?」
一方通行は打ち止めの手に持ってるMAXコーヒーに目を止める。
「クソガキ、俺ァこいつに話がある。少し待ってろ。間違ってもそンなもン口にするな。死ぬぞ」
いや死なないでしょ…と、内心で突っ込みつつも、俺は一方通行に屋上へ運ばれた。