俺は白井、初春、佐天、春上、枝先、絹旗に連れられてセブンスミストへ連れて行かれた。まぁ、この手の団体行動は苦手じゃない。黙って三歩後ろを歩いてればいつの間にか解散になるだろ。と、思っていたのだが、俺の後ろにおそらく店のスタッフであろう人達が着いてくる。
「あの、お客様。なにかお探しですか?紳士服ならあそこですが…」
「え、いや…あの、すいません…」
完全にストーカーだと思われちゃってるよ…。
「あの、あのお客様になにかご用ですか?」
「や、付き添いなんで…」
「なにやってるんですの比企谷さん」
あぁ、白井。助かったよ。
「あ、ほんとにお連れの方だったんですね。失礼しました」
そのまま店員さん達(フォーメーションZ)は解散した。が、俺の目は普段の数倍腐ってたと思う。
「なぁ、俺ってそんなに不審かな…」
「い、いやそんなことないですよ!」
「そ、そもそも面子が面子ですから!仕方ないですって!」
ドンヨリしている俺を必死に慰めてくれる佐天と初春。あぁ、なんていい子達なんだ…。すると、枝先が指差して言った。
「ねぇ!ゲーセン行こうよ!」
「あ、いいですね!」
「ほら、比企谷行きますよ」
絹旗が手を引いてくれる。そうだよな、俺が不審者に見えるのは今に始まったことじゃない。……それって逆にやばくね?無駄な事実に気が付き、余計にゲンナリしていると、枝先に手を引っ張られた。なにする気か聞く前に、へんな機械の中にぶち込まれる。
「なんだよ。なにする気…え?なに、うおっ!眩しっ!」
その瞬間、パシャっ!と音がして俺を光が包んだ。なんだよ太陽拳って天さんだけの技じゃなかったのかよ!その後に「もう一回行くよ〜」と、間の抜けた声がする。技を借りるぜ天津飯!
そして、ようやく終わった。
「プリクラかよ…」
「おぉー!見て見て初春!比企谷さんの目が死んでない!」
佐天さーん?それはどういう意味かなー?もはや訂正する気も起きなかった。ふと見ると、絹旗が嬉しそうにプリクラを眺めて、えへへと喜んでいた。……まぁ、あれだ。よかったんじゃねぇの?
そのまま全員で遊び、俺はその後も二回ほどストーカーと間違われたが、それなりに悪くない時間だった。と思う。その帰り道、俺は絹旗と自分の寮へ向かう。
「今日は超ありがとうございます。比企谷」
「ん?あぁ、それは神裂とか佐天とかに言えって。俺はなんもしてないし」
「でも、比企谷が私をここに連れて来てくれなかったら、こんな楽しい思い出はなかったです」
「そうですか…ま、お礼なら俺以外の奴にも言えよ」
そう言うと、絹旗は少し遠い目をする。
「私、置き去りだったんです」
「……!」
「それで研究所に叩き込まれて、実験台として扱われていました。でも、私にも居場所が出来たんです。アイテムっていう」
「……」
「暗部なんてクソッタレな居場所かもしれませんが、居場所のなかった私にとっては超嬉しかったです。なんか、家族が出来たみたいで。そしたら、また居場所が出来ました。比企谷家っていう」
そこで、こっちを向いてニッコリ笑う絹旗。
「本当に、超ありがとうございます!」
「…ちょっとコンビニ行ってくるから待っててくれ」
絹旗の返事を聞かずにコンビニへ向かう。居場所、というがそれは違う。事情を知ってる奴からしたら、俺は絹旗を拘束してる状態にある。だから、いつかは必ず終わりが来るし、その終わりがハッピーエンドとは限らない。もしかしたら、すでに麦野に居場所が割れているかもしれない。そして、最悪絹旗も麦野に殺されるかもしれない。
どうすればいい……。そのままMAXコーヒーを箱買いして、コンビニを出た。入り口の目の前では絹旗が立っている。
「お待たせ……」
その瞬間、殴り掛かって来る絹旗。俺は思わず避けた。
「お、おい!なんのつもりだ」
「うるさい!」
そのまま攻撃してくる絹旗。とりあえず周りを巻き込むわけにはいかないので人の少ない所へ逃げることにした。
「ちょっとタンマ!ハーフタイム!だから落ち着けって!」
「だまれ!」
くっそ…なんだよいきなり……。居場所って言ってた癖によ…。しかもヤケに焦ってるし…。
「と、とにかくタンマ!10秒でいいから!マジで!」
「あなたに時間を割くつもりは超ありません。ほかにも七人消さないといけない奴がいるんです」
「……おい、それって風紀委員の連中と神裂じゃねぇだろうな」
「………!だ、黙れっ!」
「ちょっ!まだ10秒……あっぶね!」
ダメだ。ゆっくり話してる時間はない。
「なるほどな…大体分かった。大方麦野から連絡が来たか」
「………!」
「お前と関わった人間を全員消さないとお前が消されるとかそんなとこか?」
「分かってるならさっさと死んでください」
「そうは行くかよ。俺だけならともかく他のやつが消されるのを黙ってられるかっての」
「……知りませんそんなの」
「お前はいいのかよ」
「なにがですか?」
「お前が居場所とまで言ってた連中が消されるのがいいのかって聞いてんだ」
「……構いません」
「間が空いたな」
「空いてません」
「空きましたー」
「殺しますよ?」
「はなっからそのつもりだったんじゃないのか?」
「………!」
ようやく黙る絹旗。さて、ここからは追い撃ちを掛けて説得してやればいい。
「しかし、自分が助かるために周りの奴を八人も消させるのか。結局、それは自分が助かりたいだけじゃねぇか」
「なっ……」
「それは自分さえよければそれでいいと言ってるのと同じだな。現代の若者かお前は」
「……さい」
「ていうか、お前本気で自分が助かると思ってんの?多分麦野は…」
「うるさぁいっ!」
そこでまた殴りかかる絹旗。俺はかわそうと思ったらつまづいて転んでしまった。そんな俺の上に跨る絹旗。
「私だって!あなた達を超殺したく無いですよ!でも…フレンダまで殺すって言うんですよ!お前が…お前が悪いんですよ!私を尋問なんてさせようとするから!お前のせいで…!」
「………」
「ホントは暗部も嫌なんです!私は…私は普通に学生らしく生活したいのに!したいのに…!」
俺の頬に絹旗の涙が落ちる。
OK、それさえ聞ければ充分だ。
「つまり、お前は暗部をやめたいんだな?」
そう聞くと、コクッと頷く絹旗。
「任せろ。お前だけじゃない。アイテムにいる連中、それも麦野を含めてなんとかしてやる」
「……は?」
「暗部を解体するにはどうしたらいいか、それは暗部の柱となっている奴を潰すことだ」
「本気で言ってるんですか……?」
「あぁ。まぁ、俺がなんとかしてやる。だから、泣くなよ」
絹旗の頭を撫でてやった。そして、俺は立ち上がる。
「でも…麦野はレベル5の第四位です…無能力者に敵うはずがありません…」
「……遺書書いていこっかな…」
「………」
マジかよ。なんか強いなって思ってたらそういうことかよあの歩くビーム砲。
「ま、まぁアレだ。お前は来るなよ。俺一人で行くから。場所教えてくれ」
「一応、私がみんなを殺した時の待ち合わせ場所は第七学区の廃ビルです」
「……じゃあな」
それだけ言うと、俺は走って向かう。これからの戦いは、数人の命が掛かっている。最悪、相討ちとなったとしてもだ。