フェレットを拾った翌日。
フェレットの様子を見に行こうとメールで連絡があった。ちょっと前に学校内ではメダルトリオが常に付きまとっているから、ゆっくり話すことも出来ないのでなのはちゃん達はトイレの個室に入って送って来た物だ。
それにしてもメダルトリオは今朝からニヤニヤしている。まるでプレゼントをもらう前の子どものようだ。もっとも子供らしさなどあまり感じないのだが…。
そして珍しくメダルトリオに追われることなく落ち着いて屋上で昼食をとることになった。
『イエーガーズ』の皆と一緒に。
「団長、ターゲット達は教室、校舎裏、中庭などで数人の女子と一緒にランチしていることが分かりました」
「こちらに気が付いている様子はないですが、女子に囲まれての食事が悔しいであります団長」
「そうか、しかし俺達にはこの学校きっての美少女達がいるではないか、しかも三人そろって食事を誘われている。我々はこの時を楽しもうではないか。万歳三唱!」
「「「「「バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」」」」」
自警団『イエーガーズ』の皆はもろ手を挙げて喜ぶ。
「そうだろう!嬉しかろう!今のうちに美少女に慣れて将来、可愛い恋人を作る為にコミュニケーションレベルを上げまくるのだ!すべては俺達がリア充になる為に!」
「「「リア充になる為に!」」」
俺もバリバリ経験値を溜めます!
そして、父上みたいに金髪でおっぱいが大きい可愛い嫁さんを貰うんだ!
ま、マザコンじゃねえし!
「それじゃあ、私達が踏み台みたいね」
「じゃあ、俺の嫁さんになってくれるのかよ?」
すると、アリサは冷たい目線で俺を見る。
「メダルトリオみたいなことを言わない」
「…裕君」
「…田神君」
「「「…団長」」」
「え、俺が悪いの!?」
あれ?ここは顔を赤らめて照れるところじゃないの?
リアルの女の子攻略は難しいです。…はい。俺、思い上がってました。
アリサとなのはちゃんから責められるような視線を浴びる。
「あのね、あの三人に散々嫁とか呼ばれているのよ。私達は三人ともお嫁さんに夢は見ない。いえ、見れなくなっているの」
「つまり、後家か」
「お婿さんになるとかいうのはないの?」
おお、その手があったか。
今度はそう言うから尻を抓らないでくださいアリサさん。
「それじゃあ」「未来のお婿さんになることを前提に」「お付き合いを」
「「「よろしくお願いします!!」」」
あ、お前らずるいぞ。俺も混ざる。
その日、『イエーガーズ(男子団員)』の告白合戦in小学校が開催された。
同時に玉砕祭りが開催されることになる。
なのは視点。
「…こちらイエーガー3。了解した。あとは気付かれずに家に帰れ、オーバー。メダルトリオはそれぞれ家に帰ったみたいです」
「お疲れ様。それにしても普段は馬鹿をやるのにちゃんと仕事はこなすのね」
「そこは団長のおかげです」
「裕君の事だよね。裕君のおかげって、何をしているの?」
「…サッカーとか野球で応援したりして皆を盛り上げたり、休みの日はお菓子を持って来たり」
放課後、数人の『イエーガーズ』の女子団員に周りを囲まれながら私達は帰宅路を歩いている。
何故か私達と目を合わせようとしないCクラスの女の子。
よそのクラスなのに『イエーガーズ』としての役割として私達を裕君曰くメダルトリオから守ってくれる心強い味方だ。
だけど、団長の裕君が団員の皆に何かを提供して動かしている。それは何かと尋ねたら少し話しづらそうにしている。
この時は知らなかったが、休日には裕君と遊んだりする私とアリサちゃん。すずかちゃんの私服姿をいつの間にか写メで取り、女子団員にも送りつけて私達の私服を参考に彼女達もおしゃれを真似しているとか…。
普通に会って話が出来ればいいのだがメダルトリオが邪魔してくるので休日に彼女達と会う事はあっても話す機会は殆どない。
しかも自然体の被写体がいいと言う事で裕君がこっそり撮った写メを見て女子団員は女子力を高めようという事だ。
「でも、アリサちゃん凄いね。裕君の告白を簡単につっぱねたんだもん」
「そりゃ、ね。私だってあいつが本気だったらぐらっときたかもしれないけど、あいつが本気じゃないってすぐわかるわよ」
口元が妙ににやけている時、裕君は私達をからかおうとしているとわかるからだ。
「そーなんだ。私は裕君の恥ずかしながらの告白だと思ったんだけどな」
「まー、すずかさんは団長と付き合いがまだ浅いですからね。でも、関係が浅いという訳ではないんですよね」
え、そうなの。
「もともと『イエーガーズ』はすずかさんを助けるための部隊だったんですが、それを先陣を切って動いたのが団長なんですよ。今でこそあなた達三人を保護対象としてますが、団長がいなければ『イエーガーズ』自体なかったに等しいんですから」
「い、『イエーガーズ』て、元は私達じゃなくてすずかちゃん専用だったの?!」
「まあ、そうなりますね。ですが、他のお二人も大変だからついでに助けちゃおうぜ。って、言い出したのは団長なんですよ」
裕君って、いろいろな所で私達を助けてくれているんだなと嬉しくなって頬が緩む。アリサちゃんとすずかちゃんもなんだか嬉しそうだった。
「まあ、話がそれるのもなんですが。…実は団長って女子の中じゃ結構人気なんですよ」
え?!そうなの?!
「まあ、あいつってば面倒見と言うか面白い事があればみんなを引っ張って連れて行くし、調子が上がらない子を見たら励まして一緒に遊ぶとかしているわね」
「あと、掃除で居残りをしている子に『掃除の手伝いをするから、お前イエーガーズに入れ』って、クラスでも浮きがちだった子も今じゃすっかり『イエーガーズ』繋がりでクラスの一員になっているんですよ」
「私が聞いた話だととあるいじめられている子を救う為に『イエーガーズ』全員でタコ殴りにしたとか?」
「タコ殴りにしたのは団長だけですよ。他の団員は周りにいじめっ子の仲間がいないかの確認といじめをしていたという証拠探しです。結果的に慰謝料を取られて、学校にいられなくなったいじめっ子は転校しちゃったみたいだけどね。入念に対象者の行動を調べ上げて一人になったところを私達で囲んで団長が喧嘩したんですよ」
裕君。いろんな所でいろんな人を助けているんだな。なんか、やり方がやくざみたいだけど・・・。
うちの道場で鍛えた身体能力で喧嘩はして欲しくないな。
「だから、早くしないと他の誰かに取られちゃうかもですよ」
「ふえええ、そ、それは嫌なの」
実はと言うとお昼時間に聞いた裕がアリサに「俺の嫁さんになってくれるのかよ?」と、発言した時、半ばハラハラしていたなのはだった。
「あいつが本気で告白する女の子ってどんな子なのかしらね?」
「団長はおっぱいが大きい人が好きだと胸を張って言ってました」
・・・裕君。
何、恥ずかしげもなく自分の嗜好を暴露してるの。
裕君の知らない一面を知れて嬉しいような空しいような、なんとも言えない気持ちになった私達はそのまま帰宅することになった。
そんな愉快な日常。それはいつまでも続くと思えたその夜。
高町なのはは魔法と言う存在に接触する。