邪神がキリエに捕まっていた頃、海鳴市のとある上空でウサギの人形と共に金の髪をした10歳くらいの少女、猫のような人形と緑が入った銀の髪を持った12歳くらいの少女。そして自身の身長をも超える盾と薄紫色の髪を持った8歳くらいの少女の三人が海鳴市のかなり上空にいきなり投げ飛ばされていた。
この三人の少女投げ飛ばされる前まではミッドチルダで「次元犯罪者に俺はなる!」と豪語していたとある邪神の青年を追っていたのだが気が付けばこんな上空に投げ出されていたのだ。
「またやりやがりましたねっ、あのろくでなし!」
「ま、マシュちゃん今はそんな事を言っている場合じゃないよーっ」
「てぃ、ティオ!クリスさん!ギャラハットさん!空中制御を!」
銀の髪を持つ少女がそう叫ぶと三人の少女は光に包まれ、それが晴れると三人とも17歳前後くらいの女性に変身していた。
ウサギの人形が無くなる代わりに金の少女は全身タイツの上に袖の短いコートを着たような女性に。
猫の人形が無くなる代わりに銀の少女はライフジャケットのような服装を着た女性に。
そして盾を持った女性はタイツとライトアーマーを足して二で割った服装に変化していた。
その三人は各々で展開した浮遊魔法で落下スピードが次第に緩やかになっていきながら地上へと降りていくはずだった。が、
マシュと呼ばれていた女性は降りていく途中、魔力で強化していた瞳に黒い頭と黒い瞳。更には首から下げている金の懐中時計を持った人物を移して、浮遊魔法を解いた。
盾を構えていたがそれを槍のように構え直し、空気抵抗を減らして落下スピードを再び引き上げた。
「見つけましたよ!穀潰し!」
「ちょっ?!マシュちゃんっ」
「マシュさん、何を」
落下スピードを上げたマシュを慌てて追う二人。いつもは心優しくあまり好戦的ではないはずの彼女の目がギラギラになっていた。そして盾を突き出した。
「チェストォオオオオっ!!」
キリエから王ちゃまに話し手をしている間にトイレを済ませた裕が二人の元に戻ろうとしていた時にそれは頭上からやって来た。
「チェストォオオオオっ!!」
「まっしゅっ?!」
頭上から落ちてきた黒い物体に潰された裕の姿に思わず臨戦態勢に入るキリエと王ちゃま。警戒していると落下地点に更に二つの女性が舞い降りる。
「何やってるんですかマシュさんっ、あんなスピード殴りつけたら死んじゃいますよ」
「大丈夫です。非殺傷設定ですから!でないと色々と吐き出させることが出来ません!それに邪神相手なら有無を言わさず先手必勝です!」
「あー、なるほど。じゃないよっ、マシュちゃん!」
分かってるじゃないか、邪神に考える時間を与えてはいけない事をマシュと呼ばれる女性はしっかり理解している。落下地点で目を回している裕の襟首を持ち上げているマシュ。
違うそうじゃない。それを見たキリエと王ちゃまは慌てて止めようとするがその前に金の髪をした女性が、魔法で裕を空中に縫いとめる。
「邪神相手なら空中バインドしないとっ」
分かってるじゃないか、邪神を地面につけてはいけない。それは邪神に武器を与えるような物だから。この金の髪の女性はわかっている。
違うそうじゃない。王ちゃまとキリエは思わずずっこける。助けるんじゃないのか、と。
「駄目ですよヴィヴィオさん。ちゃんと身ぐるみを剥がないとっ」
分かってるじゃないか、邪神は身に着けているもの全てを武器にすることが出来るんだから。銀の髪を持った女性が裕のジャンパーやジーパンを剥いでいく。
違うそうじゃない。あんたらがやっていることはただの追剥強盗だ。更に暴漢罪も適用されそうだ。と、王ちゃまとキリエはそう思った。
「って、いやぁああああーっ、何この人達っ、レイパー?!」
裕は空中で身じろぎするがあれよあれよと言う間に全裸にひん剥かれた。
「というかお主は裸になっても別にそう恥ずかしがることではあるまい?」
以前、分身とはいえ王ちゃまの前で裸になってもネタに奔る裕だ。今更裸を見られても何とも思わないはずだろうと王ちゃまが尋ねたが、
「自分で脱ぐのはいいけど脱がされるのは嫌なんじゃー!」
「なにその微妙な性癖」
キリエは思わず頭を抱えて蹲る。自分が探していた邪神がこんなのかと落ち込む。
そりゃ落ち込むだろう。苦労して、藁にもすがる思いでやって来た管理が世界地球。偶然にも自分が探していた物が二つも同時に手に入れた。が、その片方がとっても残念だった。
「と言うかだな、お姉さん達初めて見る顔なんですが?!」
「嘘を言わないでください。その黒い目、黒い髪、そして金の懐中時計!そしてその反応!例え子どもの姿になったとしても私の目はごまかせませんよっ、
「本当に人違いだろう!?この年でなすびちゃんみたいな子どもを持った覚えは・・・。ぐふぅっ」
前世を合わせると子どもどころか孫がいてもおかしくない自分自身の経歴に自爆する邪神。自分の言葉に傷つく裕。
「やっぱりこの反応、ユウさんです!人違いだったら私達軽犯罪者になる所でした。よかったぁ」
「よくねえよっ!きっと人違いだよっ。たとえ探し人だとしてもこれは立派な犯罪だからね?!」
「ママ達が言ってました。邪神に常識は通用しないって」
「しっかりしているママ達だな。まさしくその通りだよ!」
しっかり自分対策は練られているようだと悔しがる裕。そこに全裸にされたことを責めるような毛色はない。
「正しい対応なんだ、これ」
「残念な事にな…」
ますます落ち込むキリエの肩に手を置く王ちゃま。奇想天外な事をする邪神は身動き取れなくするよりも物に触れさせないようにするのが一番なのは王ちゃま自身も理解している。奇しくもその光景はシュテルんが裕を拘束した時によく似ていた。
「さあ、私達と一緒に帰りますよ。お母さん達に迷惑かけたりかけられたりしないでください!」
「かけるのは自重できるけどかけられるのはどうしようもないんだが…」
「お父さんがそんな頭マーリン下半身ランスロットだからですよっ!」
えー、やだー。俺ってばそんなにプレイボーイだったっけー。
「だからよくママ達に押し倒されたりするんだね」
えー、やだー。俺ってばそんなにプレイ(される)ボーイだったっけー。
「まあ、その、うん。あれだけフラグを建てたり、回収したり、処理しなかったらそうもなりますよね…」
えー、やだー。俺ってばそんなにプレイ(される:確定)ボーイだったっけー。
「…と言うかだな。本当に誰?」
「まだとぼけますかっ!そんなんだからフェイト
まさか未来の自分の娘が自分に会いに来た。とは邪神も考えてはいなかっただろう。
その頃、邪神がいなくなった事に気が付いたなのは達はと言うと、
「また、裕のやつが連れて行かれたか」
「なんか裕君らしいというか、それとも厄介事=裕君と考えるべきか、悩むところやなぁ」
大晦日で集まっていた魔導師組は管理局が駐屯しているマンション前に集まって相談していた。
その中でヴィータは呆れてはやては眉間に指を当てて考えている。
「いやむしろ邪神=厄介事なんじゃ」
「まあ、とりあえず迎えに行きますか」
「み、みんな一応ユウに助けられたことあるよね。助けに行こうよ」
アリシアとアルフがため息をつくとフェイトがフォローを入れる。この差がとある未来でフェイトがお母さんになれる可能性が含まれているかもしれない。
「皆、結界を張ったから準備してー」
「それじゃあ、レイジングハート、セートアーップ!」
シャマルが人避けの結界を張り、なのはを先頭に皆がバリアジャケットを展開していく。
すると、
と~く戦隊、と~く戦隊!
と、なのは達の持つデバイス。レイジングハート、バルディッシュ、レヴァンティン、グラーフアイゼン、クラールヴィントからギニュー特戦隊のテーマが流れた。
これは邪神がなのは達五人がデバイスを同時に起動させると流れるように『設定』した物であり、各々がギニュー特戦隊のポーズを強要させる効果がある。
「か、体が勝手にっ」
「ちょっ、ええー?」
「…やられた」
「これって裕君の仕業?」
「ちょ、主はやて見ないでください!」
しかもご丁寧になのは達の事を紹介するように替え歌まで流れていく。中でも一番格好いい(恥ずかしい)隊長のポーズを取らされたシグナムはというと…。
「野郎、ぶっ殺してやる!」
邪神へのヘイトを思いっきり高めるのであった。
今回出てきたマシュ。モデルはソーシャルゲームFGOのヒロインさんをモデルにしてます。マシュマロおっぱいサーヴァント。