リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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どこぞの魔王達「いくら寛大な儂等でも、もうちょっと出し渋る」


第六十八話 今、世界が安い!邪神様特売会!

 シュテルんこと、シュテルの度重なる卑劣な前振りに成す術無く捕まった邪神(全裸)。そんな状態で彼はクールな表情でこちらを見てくる幼女と一緒にいた。全裸で。

 

 「まあ、こちらの要求は大体通るでしょう。後は管理局のデバイスが来るのを待つだけですね」

 

 「なあ、ふと思ったんだけど何で管理局からなの?プレシアの方から貰うっていうのもアリだと思うんだけど?」

 

 彼女達ははやての持つ元『夜天の書』のプログラムにある守護騎士のような存在であるため、管理局という暗部がある組織にその存在が知れれば狙われる可能性も有ると今更ながらに考えた裕はシュテルに訊ねてみた。

 

 「それは管理局が貴方に借りがあるからです」

 

 「俺に借りがるのと今回の件で何か関係があるのか?」

 

 「何言っているんですか。お前の物は俺の物。今夜限りはお前自身も俺の物」

 

 「・・・やだ、ときめく」

 

 邪神の顎を指で撫で上げる男前美幼女に乙女ハートを持つ邪神ボーイは思わず目を逸らした。文字にするとこの上なくややこしい。

 

 「まあ、私達が出現する際にアルカンシェルとか言うふざけた物で吹き飛ばされたから私達という存在があまりにも脆弱になったのでその仕返しにと思ったわけです」

 

 「あ、なんか申し訳ない」

 

 元はと言えば『闇の書』のバグ取りが失敗したら自分もろとも吹き飛ばす作戦を立てたのは邪神の案でもあったので無関係という訳ではない。その事に関して謝るとシュテルは特に文句を言うことなくそれを受けた。逆に邪神と縁が出来たと感謝しているらしい。邪神の力を借りれば自分達は完全な存在になれるかもしれないのだからと。

 裕がアイタタタという表情をした。未だにこの邪神は『はやてが廚二ごっこしている』と勘違いしているらしい。

 さて、お互い話すことが無くなったと考えのんびり待つかとシュテルが言いだしたのでもう少し『廚二ごっこ』に付き合うことにした。

 

 「そんな事言って皆が来る前に俺を手籠めにしようと考えているんでしょっ。エロ同人誌みたいにっ。エロ同人誌みたいにっ」

 

 キャーと言いながらシュテルが呆れ顔でツッコミを入れると思って期待して待っていたのだが、ツッコミが来ない。むしろ何か考えている様子とはいってもあまり表情に変化が見られないのだがこちらを見ているシュテルがぽつりとつぶやいた。

 

 「・・・なるほど。それもアリですね」

 

 「しまった藪蛇?!」

 

 しかも丸腰。(全裸だけに)手籠めにしやすい状況である。

 まさかの事態に慌てだしそうになった裕だが、一度落ち着いて自身の能力を思い出した。

 

 自分はWCCという反則的な力を持っている。何かに触っていればそれを変幻自在に操れるのだ!残念だったな!

 

 裕の状況:全裸拘束。拘束魔法バインドによる空中固定。

 

 ・・・俺!

 

 干渉する物自体ないじゃん!魔力に触れてもWCCで加工できないじゃん!シュテルに全部脱がされたばっかじゃん!忘れていた俺って馬鹿じゃん!?

 目に見えてじたばたともがくがそこから拘束が解けるわけもなく、ゆっくりと近づいてくるシュテルに未知の脅威を感じた裕。

 

 「そう言えば町に分身体達の情報からも貴方の弱点は知らされていましたね。…フフ」

 

 「やめてそんな『今まで一度も笑う事が無かった少女が花が咲いたように笑った』ような笑顔を浮かべて近づいてこないで!」

 

 「わかってます。フリですね」

 

 「フリじゃないよっ?!」

 

 シュテルに止まる様に懇願する邪神だが、そんな願いも通る筈も無く・・・。

 

 「大丈夫ですよ。優しく。そう、とってもやさし~くしてあげますから」

 

 両手で裕の顔を包み込んだシュテルは微笑んだ。

 

 

 

 突然だが、因果応報という言葉がある。

 高町なのはを元にして出来上がったのがシュテル。彼女の知識はなのは(正確にはその姉)から来るもので、更に邪神が作り出したゲッターⅡ改良型ことA・BEEの行動から『快楽堕ち』という言葉と知識を手に入れた。駄目押しに邪神のドジとノリとウッカリがファイナルフュージョンを起こした結果がこれである。

 

 

 

 一方その頃、廚二廟ごっこしていると思われていたはやてとその守護騎士達はクロノ経由で裕が闇の書の欠片の分身によって攫われたことを知る。

裕が管理局との話し合いを終えた後、アリサ達がはやてと一緒に迎えに来て、自宅に帰り、夕食を取ってさあ、寝ようとした時に裕が連れ去られたと聞かされた八神家は騒然していた。

 

 「いかんっ。今スグに向かわねば(誘拐犯が)危険だ!」

 「ああ、これ以上私達の被害が(邪神の手によって)あってはならない!」

 

 管理プログラムさんと烈火の将は急いで現場に行き、『誘拐犯』を助けなければならないと感じていた。

 

 「あいつの事だからその分身体とも仲良くやっているんじぇねえか?」

 

 対して鉄槌の騎士は何となくだが裕が酷い目に遭うイメージはなく、むしろ一緒に誰かを酷い目に遭わそうとしているのかもしれないと考えていた。

 

 「もしや我々のプログラムを幾ばくか解析した管理局の者が操作を誤魔化すために裕のやつを攫ったのでは」

 「それはありえない事じゃない。管理局の暗部ならそれぐらいやりそうだしね。裕君の弱点は生体ないし魔力による拘束が一番だから・・・」

 

 「逆に返り討ちにして言葉にならないような仕返しをしているかもしれへんな」

 

 盾の守護獣に湖の騎士は最悪のケースを考えて行動すべきだとはやてに伝えた。

 自分の騎士達の主であるはやてはアハハと苦笑しながら言葉を漏らした。後にその場にいる全員が思った。

 

 ((((((どれもあり得る!))))))

 

 基本的には一般人と変わらない裕だが彼の持っている能力は魅力的かつ脅威的かつ非力なくせに凶悪。

はやては知らないが守護騎士達は裕が本気(マジ)で怒ると真剣(ガチ)で世界が滅びかねないのだ。管理局の暗部を知ったと同時に邪神の持つ心の闇のような物も垣間見た彼女達だからこそ早めに動くことを決意したのだった。

 それからクロノを含めた複数の管理局の魔導師達と、一応『邪神の眷属』と銘を打ったテスタロッサ研究所から貸し出されたゲッターロボと合流した八神家。

 どうしてテスタロッサ研究所の人間が動かないのかと聞けば、王ちゃまみたいなのが犯人の仲間なら害はないだろうと判断。高町家からは娘がショックを受けて寝込んでいると全く正反対な反応で拒否された。ショックを受けて寝込んでいる人間が出ているのに危険が無いとはどういうことなのだろうか?あと王ちゃまって誰?と悩みながらもレヴィが持ってきたメッセージに指定された廃ビルに行くとそこにはあまりにもひどい光景が繰り広げられていた。

 

 幼い肌ピンク色に紅潮させ惜しげも無く晒し、全身をビクンビクンと痙攣させ、虚ろな目をして、口からは断続的で荒い息遣いをしながら涎を垂らしていた幼児の姿があった。これはいわゆるポルノというものではないか?『事後』というものではないかと思わせる光景だった。

 『加害者』ははやて達がやって来たことを確認しながらも『被害者』の事をいたわるように優しく頭を撫で続けていた。その際に『被害者』がアヒンアヒンと言いながら、頭に何故か1UP!1UP!という擬音が流れているようにも見えた。

 

 お察しの通り『被害者』は我等が邪神。田神裕、その人である。

 

 「「「「「ヴィータ(ある意味)ビンゴォオオッ!」」」」」

 

 「嬉しくねえ!」

 

 管理局の人間は何がどうなっているのかと戸惑っている間にツッコミを入れながらも裕を助け出した八神一家。

 ザフィーラとシャマルがシュテルから裕を切り離すと同時にはやての近くにいるヴィータにパスする。シグナムとリインフォースがシュテルの身柄を確保する。その流れるような動作は流石というべきか。

 

 「ふう、さすが管理局と守護騎士というべきですか。ほら、ご主人様に変わって皆さんに挨拶しなさい」

 

 「はっ、はひっ。ほひゅひんひゃひゃ」

 

 「裕君しっかりしてください!」

 

 シュテルの言う事を何とか実行しようにもあまりにも刺激が強すぎたのか舌が回らない裕に回復魔法をかけながらすぐ傍に落ちていた裕の袴と金時計を彼につけてゆく。それからしばらくしてWCCで袴に施した効果と回復魔法が効いてきたのか息を整えた裕ははやて達にお礼をいった。

 

 「ふっ、ふぃっ。ふぅっ。た、助かった。危うく俺の中で芽生えた何かがカンストするところだった。ありがとう王ちゃま」

 

 「だから王ちゃまって誰やねん。というかほんまに大丈夫か裕君?」

 

 「いやぁ、あの御方のゴッドハンドが凄すぎて」

 

 「本当に大丈夫ですか?」

 

 もう既にカンストしているのではないだろうか?依存心とか忠誠心とかが。とシャマルの心配を横目で見ながらクロノはシュテルに杖の先を突きつけながら問いただしていた。

 

 「どうしてこんな事をしていたのか答えてもらおうか」

 

 「くっ、こうなったら戦うしかないですね」

 

 シグナムとリインフォースに捉えられていながらも、どう見ても悔しそうには見えない無表情なシュテルの態度に邪神が待ったをかける。

 

 「お止め下さいシュテル様っ!この数の差は貴女様でも無茶です!」

 

 「実はカンストしきっとるやろっ!裕君!」

 

 「そ、そんなことはにゃいっ」

 

 邪神の叫びに八神が答えると邪神の口調が再び怪しくなる。

 この邪神、実はチョロいんじゃないか?と管理局の人間に知られたら確実に裕の身元を確保されるだろう。

 

 「ユウ、ユウ。ここはびしっと邪神らしく止めに入った方がいいんじゃないか?」

 

 とヴィータが一応アドバイスを贈る。まあ、なんとなく駄目になるんじゃないかなと思っているはいるが。

 それを受けた裕はコクンと頷くと再びシュテルとクロノに向かって再び声をかける。

 

 「シュテルよっ、世界の半分をあげるから事情を説明せよ!」

 

 「もう籠絡されきっとるやろワレェエエエッ!!」

 

 世界の半分をあげると言いきれる邪神の凄さにつっこむべきか、それとも世界が安すぎることにつっこむべきか、どちらにせよ邪神のチョロさとウッカリにツッコミを出さずにはいられないはやてだった。

 




 神(ボケ)は神(ツッコミ)がいることでより輝く。

 だいぶ間を開けての投稿誠に申し訳ございません。リアルの生活とイベント(艦これとか艦これとか艦これとか)が忙しくて投稿遅れてしまい、申し訳ございません。実はまだ邪神誘拐騒動。というか、シュテルのターンは続きます。お楽しみに!
 あと、うちの邪神様。本当にチョロくなってしまった。どうしてこうなった?と、作者も不思議に感じております。キャラが勝手に動くとはこういう事を指すのでしょうか?

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