リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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うちの邪神様は基本チョロい。が、面倒くさい。


第四十七話 邪神様ホイホイ

 はやて達がミッドチルダに向かう日。

 既に他の魔導師の皆さんからも蒐集を終えた『闇の書』にいざ、突入する時がやってきた。

 と、その前に母上と一緒に持ち物チェック。

 三日間は『闇の書』に潜り続けることになるからちゃんとしないと・・・。

 

 「裕ちゃん。お弁当は?」

 

 「持っている」

 

 「水筒」

 

 「持っている」

 

 「傷薬は?」

 

 「勿論WCCで加工済みっ」

 

 「どくけしそうは?」

 

 「えっ?『闇の書』、毒あるの?」

 

 だとしたら、『闇の書』というよりも『病みの書』じゃね?

 

 「じゃあ、最後に・・・。トイレットペーパーは?」

 

 「もちろん、再生紙!」

 

 排泄行動。それはRPG最大の謎だよな。

 葉っぱや布でふいているのだろうか?

 日本に生まれ育った俺のお尻はデリケートだからトイレットペーパーじゃないと・・・。

 

 「・・・裕君。『闇の書』は私がずっと持ってないかんのやけれど?」

 

 うえ~っ。と、嫌そうな顔で親子のやりとりを見ていたはやて。

 自分が持っている物の中で排泄物が出る時かされれば嫌な顔も出るだろう。

 

 「だ、大丈夫ですよ、はやてちゃん。『闇の書』は取りこんだ物をいったん溶かして自分の一部にしますから」

 

 「・・・排泄物を溶かして」

 

 「それ以上言うな。榊原」

 

 イメージしちゃったんだろうな。アレが解けて、『闇の書』のシミ。もとい、一部になるイメージが・・・。

 榊原君の言葉を遮るシグナムさん。

 自分達の生まれがそれであると改めて認識するのが嫌になったんだろう。

 

 「・・・裕君。半日で帰って来い」

 

 「お願い通り越して命令形か・・・。まあ、俺もそうならないように気をつけるよ」

 

 「・・・裕君、気をつけてね」

 蒐集をし終えた自分にはもう手伝える事はないと知っているなのはちゃんが心配そうに声をかけてきた。

 周りを見渡せば、一緒に『闇の書』に潜りこむヴィータを除いた全員が大なり小なり心配している様子。

 ここはいっちょ、いつもの冗談で明るくしていこうか。

 

 「大丈夫、『闇の書』のシミを数えている間に終わるよ」

 

 「変な事言わないの!」

 

 「裕君ってば・・・」

 

 おませなお嬢様方め。

 ほんのり顔を赤くしたのを見過ごしていないぞピカチュー。お前もムッツリか。

 

 「ユウ、終わったらWCCでいろいろやらかそうね」

 

 「OK。エロエロやらかそうぜっ」

 

 「「エっ?!・・・う、ううんっ」」

 

 アリシアのパスに全方位のセクハラ問答で答えるとお嬢様方に引き続き、ユーノ君・クロノさんまで顔を赤くした。

 これでムッツリは五。いや、榊原君とヴィータも赤くしているから七人か。

 守護騎士の皆さんと管理局の大人の皆さん。・・・エイミィさんは苦笑していたが、ふざけるのもこれくらいにしておく。

 あらかじめ用意していた緑色のバケツになみなみと入っている粘液。

 それを頭からかぶって準備OK。

 ヴィータも後を追うように頭からかぶる。

 粘液は白いのだとあっちの方向に思考が奔るので水色にした。

 

 ・・・緑色のバケツ。水色の液体。ボス線手前。枯渇していく資材。ワンパン大破。妖怪1残る。・・・うっ、頭が!

 

 何がどうあってもネタに走るのは前世の記憶。

 くぅ、前世の俺が今の俺を苦しめる!

 

 「とっとと行くぞー」

 

 シャマルさんが『闇の書』に触れるとあら不思議。ほんの手前に人一人通れるくらいの丸い光の渦が出現した。

 これを通れば『闇の書』の中に行けるわけですな。

 では、ヴィータ。お先にどうぞ。

 私は後から行きますんで。

 いえ、決してスカートの中を除こうという魂胆はありませんよ。

 俺が興味あるのは、「スカートの中がのぞかれているかも・・・」と、恥じらう乙女な顔を見たいだけで・・・。

 

 「「「「「とっとと行ってこい!」」」」」

 

 俺、口にしたかなぁ?

 

 

 

 裕とヴィータを『闇の書』へ送り出した直後にアリシアとフェイトを残してミッドチルダに向かった八神一家と管理局一派。考古学者としての知恵を借りる為にユーノ。そして、現地協力者のプレシアのメンバーでアースラに転移。そのままミッドチルダへと向かうのを見送ったなのは達。

 

 「行っちゃったね。裕君達」

 

 「まあ、あいつがあんな調子なら大丈夫だとは思うけどね」

 

 「・・・うん。母さんも一緒に行っているから万が一の事があっても何とかしてくれる。と、思うよ」

 

 「つまり、ユウはいつも通りってことだね」

 

 「・・・え。あ、うん、そうだね。いつも通りだと思う」

 

 「なのは。・・・あんたの目にはどう見えたの?」

 

 アリシアの言葉になのはが間を置いて答えた。

 それを不思議に思ったアリサはその間について問い詰めた。

 

 「あ、あのね。裕君がバケツの水を被る時だったんだけど、手が、ね。震えていたんだよ」

 

 「え?それってあいつがビビっているってこと?」

 

 「裕君が怯えているなんて・・・。直前までの様子からだと考えられないわね。」

 

 「うん。私と初めて会った時も少し震えていたけど、今回は怯えていないんじゃないかな?」

 

 裕を初対面で怯えさせる出会いって、フェイトちゃん何したの?

 まあ、それは置いといて。今の裕が怖がっているなんて・・・。ありえないと考える皆だったが、裕の母親のリアはなのはの頭に手を置いてよしよしと撫でる。

 

 「よく出来ました。なのはちゃん。お嫁さんポイントを3つあげようじゃないか」

 

 「リアさん」

 

 「あの子はね。とってもめんどくさい子なの。一人ぼっちの奴を見つけては強引に友達にしたり、メンバーを増やしていっている。だけど、ね。なのはちゃん。そして、皆。裕はね、ここにいる子ども達しか『友達』としか言わないんだよ」

 

 「え?」

 

 「あの子は邪神である自分の事を受け入れてくれた皆だからこそ『友達』だと思っている。裕ちゃんは『友達』のためなら何でもやるの。だから・・・、皆とは必要以上に仲良くなるのを怖がっているの」

 

 裕のお母さん。シアさんの言葉が分からない。と、悩んでいたら、アリシアが閃いたと言わんばかりに声を出す。

 

 「わかった。私達の誰かを好きになるのが怖いんだ!」

 

 「す、すきぃっ?!」

 

 「で、でも、ユウが好きなりそうな女の子って・・・」

 

 「おっぱいが大きい人だっけ?」

 

 「と、なると・・・」

 

 この中で一番大きなおっぱいの持ち主と言えば、最近ブラジャーをつける様になったすずかちゃん?

 

 「あっはっはっはっ。まあ、確かに外見ならそうだろうけどね。でもね、それはあくまでおまけみたいなもの。あの子が本当に近くにいて欲しい人はね『どうしても自分の手が必要な人』だよ」

 

 「ほえ?」

 

 「フェイトちゃん・なのはちゃん達の場合。ジュエルシードの時はこの世界が崩壊しないように。危険性を可能な限り取り除いた。レイジングハートとバルディッシュもそう。あの時、二人は裕ちゃんに頼ったでしょ」

 

 アリサちゃんの場合はWCCで加工したプレゼントを用意してもらうため。

 フェイトちゃんはアリシアちゃんを助ける為。

 

 「すずかちゃんは~。・・・あら?何か頼る様な事をしたかしら?」

 

 「え、えっと。私の場合はちょっと家庭の事情に裕君を巻き込んでしまって・・・」

 

 「・・・それは解決したのかな?」

 

 「は、はい。解決しました」

 

 「そう、なら、裕ちゃんはここに居る女の子にはあまり興味ないわね」

 

 「「「ええっ?!」」」

 

 幼馴染トリオは驚きの声を上げる自分達になんの欠点があるのかと?

 

 「欠点が無いのが欠点なんだよ」

 

 「・・・よく、わからない」

 

 「わかりやすく言うと、あの子は自分よりダメな子が好きなのよ」

 

 「常に優越感に浸りたいということ?」

 

 アリシアちゃんはさらっと毒を吐くね・・・。

 

 「そうじゃないの。頑張ってるのに上手くいかない。ぐすん・・・。となっている女の子が好き。萌え!そう、萌えなのよ!」

 

 「団長はドジっ子好きなのか・・・。なら、ここに居る女子達は当てはまらないな。みんなしっかりしているし・・・」

 

 「・・・だとしたら、フェイトが当てはまるんじゃないのかい?家の中じゃポンコツだし」

 

 「ぽ?!あ、アルフ、ポンコツは酷いよ!」

 

 「だったら毎朝私やアリシアに起こされるような真似しないでよ」

 

 「・・・寝ぼけて魔法を飛ばすのも」

 

 遠い目をしながらテスタロッサ家の末娘を見る使い魔と姉。

 

 「・・・だ、だったら、私も」

 

 「でも、ダメなところは直そうとしないと駄目よ。そうでないと萌えは無くなってしまうわ」

 

 「あう」

 

 「そう考えると団長って実は攻略難しいんじゃ・・・」

 

 「無理にドジな所を作ろうとしても駄目よ。あの子、自分が予想だにしない事に落ちるとすぐに駄目になる。純粋のポンコツだから」

 

 実の息子をポンコツと言う邪神の母。

 邪神の好みを改めて知らされた幼馴染トリオにテスタロッサ姉妹は少なからずあたふたしていた。

 本当にめんどくさい邪神。というか、嗜好をばらされた彼を気の毒に思ったアルフと榊原だった。

 

 

 

 一方、『闇の書』内部を探索している邪神はというと・・・。

 

 「うわっ、何だこれ?!罠か?!」

 

 ダンジョン化した『闇の書』内部を探索していると不自然に建てられた小屋にノコノコと入っていった邪神。中は粘着性の床で入り込んだ獲物を動けなくするというどこかで見たことがある罠だった。

 ヴィータはあまりにも不自然過ぎたので黙って見ていたが、まさかそのまま入っていくとは思わなかったらしい。

 

 「入らずにはいられない何かがそこにあるのか?」

 

 彼女の目から見ると、その小屋の屋根には『ホイホイ』という大きな字が彫られていた。

 

 


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