さて、メダルコンビから魔力を奪うことに成功したヴィータとシグナムさん。
なんかシグナムさんがつかれているように見えるけど、俺の所為で男嫌いになってしまったのだろうか。
ここは是非に榊原君に頑張ってほしい。
彼との模擬戦を通して少しでも男慣れしてほしい物だ。
なに?俺が変な事をしなければ問題無かっただって。
俺、邪神だよ!?
変な事をしない邪神なんて聞いたことありません!
さて、管理局サイドの人達から『闇の書』は一度、主とその守護騎士達と共にミッドチルダに行くことになった。
その目的は魔力の蒐集だ。
囚人達からの。
さすが世界を管理する集団だけあってか、魔力を保有していた犯罪者達も幽閉している。
そいつらから魔力をごっそり頂いて『闇の書』のリミットを伸ばそうということになった。
囚人という事は悪い事をした輩だ。遠慮なく魔力をぶっこぬける。
更には失敗した時にはアルカンシェルで吹き飛ばせるように重罪。死刑や禁固100年オーバーの囚人達だけ収容された管理惑星で時間稼ぎをすることになる。
問題は十年前に守護騎士達がやらかした罪。
クライドさんが『闇の書』が搬送する前に守護騎士達の蒐集活動で犠牲になった人達の怨嗟。
前の主のことを思いだせない。記憶の殆どをリセットさせられた守護騎士達はそれを一身に受けるだろう。
自分達の仇が幸せそうにしていたら、その恨みは募るだろう。
それは主であるはやてにも向かう。
それを説明して納得したうえではやてはミッドチルダに行くことを決心した。
守護騎士やテスタロッサ一家。なのはちゃん達もはやてが巻き込まれるのは筋違いだと言った。
いっそのこと、『闇の書』の主を辞めることが出来たら。守護騎士達が極悪人ではやてはそれに利用されただけだという事ならどれだけよかったか。
それでも数ヶ月しか過ごしていない守護騎士達を家族として受け入れた。家長として家族の罪は自分も償う。と、言ったはやての頭を叩いたのはいい思い出だ。
『子どもが何悟りきっていると』
守護騎士達が完全に有罪になるという事はないだろう。
情状酌量や減刑はあるとしても完全に無罪になるのはありない。
なんせ、暴走していたとはいえクライドさんの船を沈めかけた。
それは一クルー分の殺人未遂。しかも、彼女達は人に見えて闇の書の機能の一つ。言ってみれば暴走の危険がある機械のような物だ。
WCCでそれを取り除ければいいが、彼女達には人と同じように文字通り肉体がある。その肉が邪魔して効果が及ばない。
死体という状態ならいくらでも改変できるのだが、さすがに今から死体になってとは言えない。
説明してもごねるはやて。
そんなに一人になるのが嫌だったらうちの子に成りなさい。と、田神母の一声で強行突破。
八神から田神になるだけの簡単な案に俺は乗る気だったが、周りの美少女達に動揺が起こり、それは考え過ぎじゃないかとか、月村やバニングスでも面倒見るよと皆がこぞってそれを考え直すように諭しにかかった。
そんなに不安か、邪神様に感化されて悪戯娘に育つはやての将来が・・・。
むう、不安要素しか見当たらない。
でも、俺、家の中では割といい子だし・・・?
内弁慶ならぬ外弁慶。弁慶よりも傾奇者の前田慶次に近いが・・・。
まあ、臭い飯を食って、綺麗な体になってようやくはやての家族に成れるのではないかと。
前の闇の書の主がどんな人物かどうかわからないが、はやては以前『闇の書』が完成すれば足の麻痺が治るかもしれないと聞かされたことがあるらしい。
それでも他人に迷惑をかけるのはいけない。だから闇の書は完成させない。蒐集など行わないでいい。と、いった事があるらしい。
主であるはやての意志に逆らい、挙句の果て他人に迷惑をかけないようにと手を差しのべても彼女達はそれに逆らった。
つまり、はやての前の主の命令に逆らえた。自分の意志で行動したともとられる。
状況証拠だが、有罪になった場合にそう言えばはやてに迷惑をかけない。
元より無罪になればそれはそのままにすればいい。
はやての事を監視していたリーゼロッテ・アリアがはやての人柄を証明すればいい。
今回、比較的はやく『闇の書』の欠陥を見つけ、更には被害を出すことなく、現地での協力者を得て、更には欠陥を直すことができるかもしれない邪神がそこにいた。
邪神の事を出来るだけ知られないように、現地の協力者はプレシアと月村にして地球とミッドの技術を結集して『闇の書』を直した言えば大丈夫だろう。だぶん。
邪神。WCCの事が管理局にばれたら・・・。どうしよう。
プレシア。いや、今回コネが出来たギルアムさんとリンディさんに保護を求めるか?
自分の事になるととんと先が見渡せなくなる裕だった。
裕がリンディとギル・グレアムにごますりに言っている間にシャマルはシグナムから魔力を収集している最中だった。
「こんな時、裕君だったらいやらしい顔をしてシグナムを眺めているんでしょうね」
年の割にはいやらしい思考を持つ裕の事を考えたシャマルにシグナムが文句を垂れる。
「ま、全くだ。そんな奴に主はやてを任せるわけにはいかん」
「あら、私は結構いい線だと思うけどシグナム。あの子はああ見えて。いえ、そう見せられているんだもの」
シャマルは不機嫌そうなシグナムに教えるように訥々と語る。
「彼は切れ者よ。何せ私達をここまで追い込んだのだから」
「どういうことだ?」
主はやてを助ける手段と可能性を見出し、更には最悪の場合でも出来るだけ被害は少なくしている手腕はなかなかのものだと思うが?
「私達が今、ここに集められている。しかも敵と思っていた管理局の陣営のど真ん中に居ても緊張感はないでしょ」
プレシアは管理局を嫌っているので管理局の陣営というには少し間違いがあるが、ここから先は管理局の手を借りることになる。
「・・・主はやての体を思ってこそだ。疑いは私だって持っているぞ」
「それでも歩みを止めないのは何故?」
「それは・・・」
言葉が詰まる。
命懸けではやてを助ける。文字通り死ぬ恐れがある作業に進んで行う邪神は少しは信じられる。そう、シグナムは考えている。
「ええ。そうね。でも、もし私達が猛反対した時。いえ、彼等の申し出を断っていたらどうなると思う?」
「それは・・・。私達はどんな手段でも使って魔力を集めていただろう」
文字通り、強奪。下手すれば相手を殺してでも魔力を集めていたかもしれない。
だが、今からそれを行おうとは考えられない。
何故なら、主であるはやてが厳命するだろう。そんな時ははやてを気絶させてあちこちの世界を飛び回り、そして、来襲してくる管理局の人間を撃退しながら、そして、なのはやフェイト。プレシアにアルフといった魔導師達の魔力も強奪し、アリシアの中にあるジュエルシードも奪う。
「だが、それをすれば・・・」
「アリシアちゃんは死んでしまう。そして、友達のアリシアちゃんが自分の所為で死んだと知ったらはやてちゃんはどう思うかしら」
嘆き、悲しみ、絶望し、・・・最悪、自殺。
そのような事になるかもしれない。
だが、それも裕がはやてと友達に成り、ある程度親しくなり、友達を紹介した。その時点ではやてはアリシアの存在を知った。
もし自分の足が治った場合、真っ先にアリシアの安否を確認するだろう。
はやてがアリシアの存在。裕と友達になった時点で守護騎士達の行動の幅は狭まり、他の行動がとれないくなっていた。
しかもあれよあれよという間に、自分達の状況は管理局に知られてしまった。
今回は助けてもらえるから手を取っただけだが、考えてみるとまるで裕に手引きされている感じがする。
「まさか、これが、奴の・・・」
「ええ、もしかしたら全部あの子の手の平なのかもしれないわね。だけど、それではやてちゃんを助けられるのなら私は構わないわ」
「それは私も同じだ・・・」
そっぽを向くシグナム。
シャマルに説明されて裕に助けてもらい、はやてが助かるなら構わないのだが、どうにも自分をおちょくりながら模擬戦を断られている。
一度くらいぶっ飛ばさないとこのもやもやする物は晴れないのだ。
そう思ったからこそ、シグナムはそっぽを向いた。
そんな彼女に小さく笑いながら戻ってきた裕に蒐集は終わりましたよ、伝えると、美人が悶えるシーンを見逃したと悔しがる裕を見た時、シグナムはやっぱりこいつはこんなやつだと、言い残し部屋を出て行った。
「シャマルさん?シグナムさん何か怒ってましたけど、どうしてんですか?」
「胸に手を当てて考えればわかりますよ」
「え、シャマルさんの胸に手を置いても」
「いいですよ~」
「えっ?!」
まさかこう返されるとは思わなかったのか裕の方は一瞬固まり、顔を赤くしながらシャマルの胸に手を伸ばそうとする。
だが、その手が震えているのは見て取れた。緊張しているのがバレバレだ。
「はーい。カウントー。ごー、よーん、さーん、にー、いーち、ぜ~ろ」
「あっあっあっあっあっあああああああああああっ」
絶好のチャンスだったのにヘタレてしまいチャンスを見過ごしてしまった裕はその場に崩れ落ちた。
そんな裕の傍にシャマルは近寄って顔を上げてそのまま抱きしめた。
それはシャマルの胸の谷間に顔を埋める体勢だった、
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、ふぉおおおおおおおおっ!」
「ねえ、裕君」
「は、はい。なんでしょうか?」
優しく抱きしめられて、その上、おっぱいに挟まれた状態で思考回路がぶっ飛んだ状態で裕。
そんな彼に優しく微笑みながらシャマルは話しかける。
「はやてちゃんのこと。お願いしますね」
「え、あ、はい。当然でしょ」
考えがまとまらない所で出てきた言葉に嘘はないだろう。
そんな事を考えたシャマルは裕のおでこにキスをして、彼をハグから解放する。
「それじゃあ、明日の『闇の書』侵入頑張ってくださいね」
今度はおでこを押さえながら顔を真っ赤にした裕を部屋に残し、シャマルははやてが調理室で皆の夕食の準備をしているだろうから手伝いに行きますかと意気込みながらはやての元へと向かうのだった。
はやて「戦力外通告」
シャマル「酷い!」
さすがに食中毒はマズイ。
はやてさん、ナイスセーブ。
シャマルはコップや料理が乗せられた皿を持っていくウエイトレスさんになりましたとさ。