リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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第三十八話 邪神様、廊下に立ってなさい。

 テスタロッサ研究所に設置された医務室で一人の少女が寝かされていた。

 彼女の名前はフェイト・テスタロッサ。

 幼い姿に似合わず、高レベル魔導師である。

 そんな彼女が今、息も絶え絶えにベッドに寝かされていた。

 彼女はその幼い体にある人物からの欲望を一身に受けた所為でベッドの上に寝かされていた。

 その表情から激しさがうかがえる。

 紅潮した頬に、汗ばんでいる体。なんを乗り切ったはずの彼女は未だに苦しんだ呻きをこぼしていた。

 そんな彼女に邪神は黒光りするアレを握らせた。

 

 

 

 アレがナニかって?

 黒光りするアレって言ったらアレに決まっているだろう?

 

 

 

 

 

 模擬戦でシグナムに壊されたバルディッシュ(WCCで自然治癒・回復の効果付与)だよ。

 

 「裕、バルディッシュを直してもらって、フェイトを治してくれて嬉しいんだけど出て行ってくれない」

 

 「なんで?」

 

 「目付きと思考がいやらしいよ」

 

 「俺口にしていた?」

 

 「やっぱり考えていたね」

 

 ぺいっ。と、アルフに医務室から追い出された裕は、ユーノの回復魔法で応急処置を施されているフェイトを心配していた八神家の皆さんと廊下でお話することにした。

 

 「どうだった、いたいけな九歳の美少女を欲望(戦闘意欲)赴くままに蹂躙したシグナムさん?」

 

 「いやらしい言い方をするなっ。模擬戦でちょっとやり過ぎただけではないかっ」

 

 ちょっとだけ、先っちょだけだからという事ですね。わかります。

 

 「だいたいっ、貴様は他の奴とは真面目にやりあっているのにどうして私だけそうやって逃げに走る?!」

 

 「いや、だって・・・。俺とやり合いたければフェイトを倒せと言った俺も悪いけど、あそこまで手加減無しでやられると、…ねぇ?」

 

 邪神の言葉に守護騎士達全員が頷く。

 

 「いくら非殺傷設定があるからってあれはやり過ぎよ。シグナム。(戦闘に)慣れていそうなフェイトちゃんでもあんなに激しい攻撃。捌き切れないわよ」

 

 「・・・うっぷんが溜まっていたのか?」

 

 シャマルがたしなめるような言葉をかけながらも呆れた視線をぶつける。

 ザフィーラはせめてものの優しさなのか銀髪マッチョから狼に変化した状態だったが、その視線の質はシャマルと変わらない。

 

 「私と黒ドリルが模擬戦をやりあっているのがそんなに羨ましかったのか?」

 

 「それ以前にこいつが普通に戦っているのが気にいらなかっただけだっ」

 

 失敬な。

 俺はただ、銀髪マッチョのザフィーラとやりあっていただけだ。

 模擬戦をね!

 ブラックゲッターのパワードスーツを着てね!

 

 「さすがに子どもボディで連戦はきつい」

 

 WCCでブラックゲッターに疲労回復効果があることは教えない。

 言ったら最後、精神的疲労で倒れてしまう。

 

 「そんな子どもに容赦なく襲いかかった女騎士シグナム」

 

 「エロいな」裕

 

 「エロいわね」シャマル

 

 「エロ」ヴィータ

 

 「・・・エロだな」ザフィーラ

 

 「エロいわー」はやて

 

 「榊原っ、貴様裏切ったな?!主はやてまで?!」

 

 唯一相手側の真面目キャラだと思っていた榊原の発言と味方からのコメントにショックを受けるシグナム。

 残念な事に黒ドリルこと榊原君は邪神の軍門に下っているんだよ。

 

 テスタロッサ研究所に通うようになってからまだ二日しか経っていないのに大分、ここの雰囲気に慣れてきた守護騎士達(一名除く)だった。

 

 『ねー、私、まだそっちに行っちゃ駄目なの~』

 

 『我慢しなさい、アリシア。あなたが『夜天の書』のバグに共鳴したら母さん悲しいわ』

 

 医務室の方からテスタロッサ母娘が画面越しに会話しているのが見えたので、今度は榊原、はやて、守護騎士達と共に再度入室する裕。

 アリシアは邪神もどきで万が一に近くにいる神技人の力を使う事が出来る『共鳴反応』が起こらないようにフェイト達から百メートル以上は離れた部屋でフェイト達の事を見ていた。

 

 「ごめんな、アリシアちゃん。私も早くまたアリシアちゃんに会いたいわー」

 

 前回、迂闊にも近づいたが幸い、裕の方が彼女の方に近かった為『闇の書』よりも裕の方に共鳴したアリシアだった。

 その事に気が付いた後のプレシアさんはあまりのショックに裕をアリシアにグリグリト押しつけながらはやて達から距離を取ったものだ。

 

 『私達を助けてくれたユウの頼みを聞かない訳にもいかないよ』

 

 『・・・まあ、私自身も『闇の書』の構造は気になるわ。まだ、裕とシャマルさんにしかその構図は見えないんでしょうけど』

 

 熟女のツンデレ頂きましたーっ。

 

 『・・・ユウ』

 

 「俺、口にしていたか?」

 

 自爆自爆。と、榊原君に突っ込みを受けたが後の祭りだった。

 あとでプレシアのシャイニング・フィンガーを受けることになる邪神だった。

 

 『でも、本当は怒っているんだからね。可愛いフェイトを模擬戦とはいえ・・・。こんな、無理矢理っ』

 

 「本当にすまなかったっ。だからもう勘弁してくれっ」

 

 どうやら廊下でのやりとりを聞いていたのかアリシアまでノリノリでシグナムをいじってくる。

 このままでは土下座までしそうな勢いで謝り倒すシグナムの隣ではやては、グロッキー状態のフェイトを見て彼女にも謝りながら、裕に榊原。テスタロッサ家族に頭を下げた。

 

 「本当にここまでしてくれてありがとうございます。裕君の紹介でここまでしてくれたのはグレアム叔父さんぐらいにありがたいと思っています」

 

 「いやいや、ここはフェイトちゃんのうなされている姿がエロいなぁ。とか言う場面だろ?」

 

 何、真剣な顔して真面目な事を言っているんだよ。と、茶化す裕だがはやては苦笑しながら言葉を続ける。

 

 「無理に茶化そうとしないでぇな、裕君。裕君から借りているこの宝石のアクセサリーのおかげでこうして元気でいられるけど、本当の事を言うとここに来るまではきつかったんやで」

 

 はやては袖をめくり、そこにつけられていた銀色に光るブレスレットを見せる。

 その腕輪には裕がWCCで『呪い耐性』の効果をつけた物だ。

 『呪い』の無効もしくは解除の腕輪も作っては見たが、それだと『闇の書』の呪いの方が大きく、その効果だと腕輪そのものがすぐ壊れてしまう。

 今、裕達が施せるものはこれだけなのだ。

 

 「はいはい。それじゃあ、学習装置のある部屋に裕は戻って勉強してきてね。一応ゲッターを偵察に出しているとはいえ、ツラヌキ(榊原君の名前です)の話だとはやて達を監視している管理局の猫?を見つけきれていないんだからあんまりここに長居するわけにもいかないよ」

 

 特に裕のような存在は管理局に知られたらまずい。

 特にJ・S事件でゲッターを使って大暴れした邪神の存在はもちろんだが、邪神もどきであるアリシアや管理局の暗部に関係しているプレシア。さらにはプロジェクトFの産物であるフェイトなどテスタロッサ家族も極力管理局とは関わらない方がいい。

 それなのに力を貸してくれるテスタロッサ一家に裕。榊原にユーノ。後からなのはの協力も得るだろうはやてはもう一度お礼を言う。

 

 「・・・本当に、本当にありがとうございます」

 

 はやてに続くように守護騎士達も頭を下げる。

 裕と榊原に出会って、『闇の書』救済処置の話を聞かなければ通り魔まがいの事をしてでも、魔力を糧に完成する『闇の書』を作り上げてはやてを救おうとしただろう。

 そうすれば自分達ははやての元には居づらくなるうえに主であるはやてにもその罪が付いて回る所だった。

 それを思うと頭を下げずにはいられなかった八神家に裕は気軽に笑って声をかけた。

 

 「気にするなって、はやて。だって俺達・・・」

 

 「・・・裕君」

 

 「HENTAIだろ」

 

 「台無しや!」

 

 そこは友達やろ!と、いつもの通りの空気を作り出す邪神に感謝と自分の思いを素直に受け取らない事に対して少しだけ憤りを感じたはやてだった。

 




 冒頭でエロい事を考えた人。廊下に立ってなさい。



 廊下
 作者「はい」
 邪神「はい」

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